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医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議(第2回)議事録・配付資料

1 日時: 平成17年7月12日(火曜日)13時30分〜15時30分

2 場所: 三田共用会議所第3特別会議室

3 出席者:
協力者: 高久座長、福田副座長、大橋、小川、川崎、佐藤、水田、田中、辻本、寺尾、名川、橋本、垣生、松尾、南、吉新、吉田、吉村の各協力者
文部科学省: 泉審議官、石野医学教育課長、山本大学病院支援室長、小谷医学教育課長補佐、加藤医学教育課長補佐、ほか関係官

4 議事
1.開会
(1)協力者会議委員及び参考人の紹介
2.関係者、委員からのヒアリング及び質疑応答
(1)ヒアリング
1 邉見 公雄   兵庫県赤穂市民病院長(医師確保対策等検討委員会委員長)
2 村瀬 久子   福島県保健福祉部長
3 大橋 俊夫   信州大学医学部長
国立大学医学部長会議地域医療・医療人育成に関する小委員会委員長
4 佐藤 慎哉   山形大学医学部脳神経外科講師
(2)質疑応答
3.その他

5 配付資料
資料1   邉見参考人提出資料
資料2   村瀬参考人提出資料
資料3   大橋委員提出資料
資料4   佐藤委員提出資料

6 議事
高久座長
 それでは、時間になりましたので、ただいまから第2回目の、「医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議」を開会いたします。
 本日は、関係の方々並びに委員の方々からヒアリングを行う予定になっています。特に委員以外として、2名の方にヒアリングをしていただくということで御出席をお願いしています。
 それでは、事務局から、本日の委員の出欠状況の報告と参考人の方々の御紹介をよろしくお願いします。

小谷医学教育課長補佐
 本日は、各委員の皆様方、また参考人の皆様、大変お忙しい中をお集まりいただきまして誠にありがとうございます。
 まず、出欠状況でございます。本日は、北村 聖委員、新道 幸恵委員、福井 次矢委員が欠席となっております。
 続きまして、前回の会議で御欠席でした委員の御紹介をさせていただきます。
 東海大学医学部免疫学教室教授の垣生 園子委員でございます。

垣生委員
 よろしくお願いします。

小谷医学教育課長補佐
 奈良県立医科大学学長の吉田 修委員でございます。

吉田委員
 吉田でございます。よろしくお願いします。

小谷医学教育課長補佐
 続きまして、参考人の方々を御紹介させていただきます。
 兵庫県赤穂市民病院長、医師確保対策等検討委員会委員長の邉見 公雄様でございます。

邉見参考人
 邉見でございます。よろしくお願いします。

小谷医学教育課長補佐
 福島県保健福祉部長の村瀬 久子様でございます。

村瀬参考人
 村瀬でございます。よろしくお願いいたします。

小谷医学教育課長補佐
 以上でございます。

高久座長
 本日は、大変御多忙のところを、委員の皆様方、さらに参考人のお2人、御出席いただきましてありがとうございました。
 事務局から配付資料の確認をよろしくお願いします。

小谷医学教育課長補佐
 それでは、配付資料の確認をさせていただきます。
 まず、議事次第、2枚目に座席表がございます。誠に恐れ入りますが、座席表、小川委員の名前がございませんでした。お詫びして訂正させていただきます。大変失礼いたしました。
 そして、3枚目がメンバー表、4枚目が当面のスケジュール(案)でございます。
 その後に、第1回目の協力者会議の議事録を付けさせていただいております。委員の先生方におかれましては、現在まで2回ほど確認をさせていただいておりますが、万一訂正漏れ等がございましたら、事務局までお申しつけくださいますようお願いいたします。後日、文部科学省のホームページで掲載させていただきます。よろしくお願いいたします。
 それから、参考人と委員の先生方から御提出していただきました資料が、資料1から資料2、資料3、資料4とございます。
 不足等ございましたら、事務局までお申し出ください。

高久座長
 皆さん方のお手元に資料があると思います。ない場合には、今申し上げましたように事務局に申し出てください。
 本日は、4人の方にお話を伺う予定になっています。邉見先生、村瀬先生、大橋委員、佐藤委員の順番に、大体お一人15分ぐらいお話ししていただきまして、それぞれの御説明の後に一つ二つ質問をして、すべての説明を終了した後に参考人の先生方も加わっていただいて、意見交換の場としたいと思いますので、よろしくお願いします。
 最初に、邉見先生からよろしくお願いします。

邉見参考人
 先ほど御紹介いただきました赤穂市民病院長の邉見でございます。
 赤穂は300年前に塩田の方で商業をやられておりました。箱根から東へ行くのは非常に気が重い。『坊ちゃん』の清ばあさんの逆でして、箱根から東には鬼しかいないということを言う市民もおりますが、私の言うことは抑えて言っています。2分の1しか言っていないと思いますので、2倍に聞いていただきたいと思います。よろしくお願いします。

高久座長
 どうぞ、お座りになってください。

邉見委員
 今日は、「日本の医療をよくするためのお願い」ということでお話させていただきます。
 私は医師でございますが、一応、地方の田舎の地域中核病院の院長を20年やっております。そういう意味で市民の代表、地域住民の代表としての意見を述べさせていただきたいと思います。業界とか、外科医とか、病院界とかの意見ではないというふうにお聞きいただいた方が良いかと思います。
 (図表を示しながら)私の属している全国の自治体病院が大体1,000余りございます。全国の病院数が9,000余りですので、全国の病院数に占める自治体病院の数は10パーセント余りということになります。
 そして、病床数で言いますと、300床以上が300、100床から300床が300余り、100床以上が300余りと、大体3対3対3ぐらいの割合でございます。
 民間病院と個人病院が、日本の病院のほとんどでして、それが100床以下ですので、全病院数を大中小と分けますと、やはり大が占める割合が自治体病院は多いということになろうかと思います。病院数では10パーセント余り、病床数になると16パーセントぐらいになります。
 それから、医師数は100床当たり大体10名余りで、公的病院、日赤、済生会、農協病院JA厚生連が大体100ずつあります。日赤は全国に100余り、済生会も100ぐらい、それからJA厚生連病院が100ぐらいですが、ここが大体100床当たりの医師数は12名です。自治体病院の方がちょっと少ないのです。というのは、これはへき地とかがあるため、ちょっと少ないのだろうと思います。
 それから、何をしているのかということですが、へき地医療は自治体病院がやはり圧倒的に多くやっております。これは我々の使命ですので、離島・へき地・山村・中山間部とかでやっております。それから、都市とか地域の地方都市、中都市ぐらいにもたくさん救命救急センターとかがございます。それから、臨床研修指定病院も3割弱ございます。これは少し古いデータですが、今度の新人医師の研修制度で大分増えております。
 また、感染症になりますと、地域のほとんどの役割をしています。例えばSARS(サーズ)などに関しては民間病院は非常に困りますので、自治体病院がSARS(サーズ)拠点病院などでやっております。
 それから、不採算部門が非常にたくさんあります。その中でも小児科が非常に問題になっています。北海道では40パーセントぐらいの不採算部門があるのではないかと思っています。
 主な学会、基本的な学会では大体4割ぐらいが学会の研修施設になっております。
 サブスペシャリティーの学会でも消化器、呼吸器、アレルギーなどでもでもやはり25パーセントぐらいが学会の研修施設になっております。それから、救急とか総合診療とか、他領域に横断的に関連する学会でも20パーセント弱が学会の研修施設になっております。
 これから、私個人の意見を述べます。私の友人で日本でも2年間研究した消化器外科医でおるのですが、彼に、「日本の医師は足りているでしょうか。」(“Japanese doctors sufficient ?”)と聞くと、“No,No,No,No,No”と言って、しばらくして、“……but yes”と言ったわけです。
 この、「Noの数が5つというのはどういう意味ですか。」と聞きますと、まず医者の総数が足りない。2番目、田舎に医者が足りない。3番目、小児科、産婦人科に医師が足りない。4番目、リサーチャーが足りない。5番目、行政医が足りない、ということです。そして、“but yes”の“yes”は何を指すのかと言いますと、駅前のビル開業の内科医は増えている、あるいは、心臓外科医は専門医がたくさんいて、あの心臓外科医の数だったら、日本の心臓手術はトータル1年に10人ぐらいしか割り当てがないのではないかという意味です。これも学会で言われていることです。ある分野では医者が足りているということです。
 次に、「今、日本で小児科が非常に困っているが、小児科をふやすにはどうしたらいいですか。」とお聞きしますと、「アメリカであったら多分給料を2倍にします。」という答えが返ってきました。うちは自治体病院ですからそういうことはできませんが、給料を増やすということができなかったら診療報酬を2倍にするとかいうことが考えられます。
 3番目は、地方の医師確保対策です。私はいつも医師が足りないと言っているものですから、君はいつもそんなことを言っているが、まじめに何か対策をしているのか、と言われまして、いろんなことはしているつもりだがと答えましたら、こんなことをしていてもいつまで経っても解決できないのではないかと言われました。例えば徴兵制という言葉は悪いですが、総合診療を習うためにいったん田舎へ2年間ぐらい行く、つまり、今の卒後臨床研修と同じように、地域医療を義務付けたらどうかとか、開業医はたくさん増えているので、開業しても総合診療ができなくては困るから、開業前に2年間ぐらい義務付けたらどうかとか、そういう折衷案みたいなこともおっしゃっていました。また、今の日本の診療報酬は適切かということについては、クレージーだと言っていましたね。まず、外来部門の比が多過ぎるといっていました。本当に死ぬか生きるかという人々の入院医療の方が少な過ぎるのではないかと。それから、病院の方が診療所より診察料、再診料、初診料も割安なのはおかしいと言っていました。君が言っているのは逆じゃないのという感じでした。
 私の20年の院長経験では、定員を埋めるのが精いっぱいで、本当に欲しいような医師は足りていません。だから、本当に欲しいような医師は恐らくどこの病院にもなかなかいないです。だから、競争原理が働いていないように思います。
 医師がなぜ足りないか。これは我々の、「全国自治体病院開設者協議会」と、「全国自治体病院協議会」の二つの会長から諮問された委員会である、「医師確保対策等検討委員会」と、もう一つは総務省の方から諮問されました、「地域医療の確保と自治体病院のあり方等に関する検討会」の両方の委員会の中で出たいろいろな意見を述べさせていただきますが、なぜ医師が足りないかというのは、医師の仕事の質と量が増大しているからです。これは、厚生労働省の担当の方も皆おっしゃっています。平成10年の閣議決定した時とは、全く質や量が違うと。
 特に質に関しては、インフォームドコンセントというのが非常に重要視されるようになりました。私が10年前に、乳がんの手術をやった時は、説明が5分から10分。「乳がんが出ました、お乳取ります。」ということで大体いけました。手術が終わって、「取り切れたと思いますが、抗がん剤飲みますか、放射線当てますか。」というのも、2、30分でいけました。
 今は、まず、乳がんの診断が出たら、セカンドオピニオンに行くかどうか、どういう手術をするか、手術をするならば、「乳頭からの距離が何センチですから、ぎりぎり乳房温存できるかもわかりません。どうしますか。」とか、手術後に、御主人が来たりお姉さんが来たりするので、手術時間は2時間弱であっても、手術前に2時間ぐらい、手術後も2時間ぐらい、計6時間。これは以前であれば2時間ちょっとで済んだことが6時間もかかっています。
 量に関しても、今は平均在院日数が非常に短くなっていて、今まで30日でやったことを20日ぐらいでやるわけですから、ものすごい量になっています。それから、会議とか訴訟対策のための書類とかがたくさんありますので、むちゃくちゃに増えています。
 それから、「診療科偏在」については、南さんの読売新聞にも取り上げていただいていますが、非常に偏在しています。3Kとか5Kとか言われている科には行かない。
 「地域偏在」については、今日も来られていますが、特に東北、北海道、特に北海道と北東北に多く見られます。我々の近畿地方でも周辺部、丹後、但馬、南紀、湖北、西播磨、こういうところが近畿でもドーナツの側のようなところです。関東であれば、芳賀日赤と大田原日赤、固有名詞を出して申しわけないですが、危機に陥っています。救急から始まって、産婦人科、小児科というものになっています。つまり、診療科と地域のマル・ディストリビューション(不適正配置)です。
 「病院医師の開業志向」については、これはもう皆さん御承知のとおりです。今まで、年間大体4、5,000千人開業し、2、3,000千人が廃業して、1,000人ずつ増えていたのですが、2年ぐらいは、数字は確かではないですが、恐らく2倍以上の開業医師増になるだろうと思います。
 「大学志向(大学院大学)」についてはこれは、大学院大学が地方から医師を結構吸い上げております。
 それから、「専門分野の細分化」です。
 「女性医師の増加」については男女共同参画に反するような意見かもわかりませんが、現実に起きています。33〜34パーセントの国家試験合格者が女性医師です。さらに、現在、入学している女子学生が40パーセント以上の大学もたくさんございますので、今後この方々をどのように使うかということが大事だと思います。
 また、「利用者の高望み」ということについては、夜来て専門医を呼べとか、コンビニ感覚で病院へかかる方が非常に多いということです。これは医療関係者だけの力ではどうにもならないのでいろんな方々の御努力というか理解を仰がなければいけないと思います。
 「労働基準法遵守」ということについては、最近は労働基準法の遵守が厳しく言われているので、これを守ったらますます日本の医療は難しくなるだろうと思います。今の日本の医療は、若い医師の向上心と責任感で成り立っていると思っております。

 現在、医学が進歩しているので、医師の仕事は拡大しております。
 「IC(インフォームド・コンセント)に要する時間」については、インターネットなどで患者さんもたくさん調べて来ますから、それに対していちいち答えないと信頼ある医療はできないのです。それからIT化などもありまして、我々のようなちょっと時代遅れの医者は非常に苦労しています。

 「診療科偏在」の原因について申し上げます。
 一つ目は、苦労するような科には入らないということです。きつい、汚い、危険、こういうところはあまり入らないですね。さらにこのごろは休暇がないとか、KでもマイナスのKかプラスのKかわからないようなKがたくさんあります。
 次に「拘束時間」が長いということです。
 産婦人科などは被訴訟率が圧倒的に多く、内科の3、4倍です。
 それから子どもが少なく、お産も少なくなるだろうというので将来性がないということ。構造不況業種という感じにも言われていますね。
 それから、ローリスク、ハイリターンのところに人が行くということ。また固有名詞を挙げて、関係者がいたら非常に申しわけないのですが、眼科とか、そういうところへ行くわけです。現在、麻酔科が非常に少なくなっても開業するのは、自分たちで診療報酬を決めようとして、グループ開業や病院離れをしているからです。自分たちで、1日行ったら20万円というふうに決めているわけです。

 これからの麻酔科、放射線科、病理を病院の生命線はドクターズドクター(医師のための医師)です。これは病院の医師のためにある科です。こういう医療があったら羅針盤のある航海、ちゃんとした地図のある、マップに従った医療ができるわけです。だから、こういう人たちを是非育てていただきたい。同じ医師でもこのような人たちが欧米の医療との差になっているような気がします。それから、大学と一般病院との差も、こういう人たちがしっかりいるかどうかによるだろうと思います。地方病院の内科、外科には、しっかりした医者がたくさんおります。こういう人たちを育てて欲しいということです。
 それから、「セーフティマネージャー」です。医療紛争になりますと、このような人たちがきちんとやってくれれば医療紛争はなかなか起こりにくいのです。正しい診断、手術の時のモニター、手術あるいは診断を確定的にし、オーバーな医療、アンダーな医療をしないための御意見番みたいなのです。

 地域偏在については、普通の産業も皆そうですので仕方がないかとは思いますが、都市に集中しているということが言えると思います。例えば、ある女性医師に来てくれるかということで私と電話をしていると、「赤穂市にはデパートはありますか。」と聞かれました。「デパートは残念ながらありません。スーパーならばあります。」と言ったら、その次の日から電話はありませんでした。
 それから、「西高東低」、「県都集中」ということが理由として挙げられます。これはもう子どもの教育とかいろんな家族のQOLです。患者さんのQOLはいいのですが、田舎の方に行くとやはり家族QOLが悪くなります。地方勤務にメリット策みたいなものをつくって欲しいと思います。

 次に、「一県一医大は機能しているか」という問題なのですが、私はかなりの部分で成功して、地域医療に役立っていると思います。ただ、設立時はかなり理念がしっかりしていたのですが、開設30年とか経ってきますと、始めは旧設大学のやれなかったことで地域医療をやろうとしていたものの、このごろは旧設医大を食いにかかろうということで、大都市志向になってきつつあるような気がします。やはり原点に回帰してほしいと思っております。

 平成14年度の医療施設調査では大学に43,138人の医師がいることになっていますが、平成16年1月の名義貸し等の実態調査において、名義貸しをしたかどうかの調査の対象となった人数を見ると73,000人いることになっています。実際はそんな1万人もいるとは思えませんので、大学に7万人以上いるのではないかと思っております。
 この中には、ぬるま湯につかって、大学では、「私は臨床しています。」といっぱしの臨床家のような顔をして、病院では、「私は研究しています。」と、いっぱしの研究家みたいなことをした、「こうもり医師」のような、二足のわらじを履いている人がいますので、この人たちもどちらかに早く帰趨をはっきりさせて、日本の医療を良くするために出てきてほしいと思います。本当の研究者は少ないのだと思います。

 次に、「生涯学習」についてです。大学の研究室で試験管を見たり、顕微鏡を見たりすることは悪いことではないのですが、ある程度経ったら患者を診ることがやはり医療の根本です。基礎研究も最後は患者に結びつくだろうと思います。よく言われている足の裏の飯粒です。学位を取らなければ気持ちが悪い、取っても食えないということをまだ信じている人も少しいるということです。

 次は、「病院医師の開業志向」についてです。昔は定年前の人か卒後10年ぐらいして一人前になった人が開業していたのですが、今は部長クラスがどんどん開業するのです。これは、病院医師のQOLが低いということと関係しています。ほとんど24時間、365日オンコール体制です。例えば産婦人科などは、お産で妊娠が決まった日からもう生まれる時の予約をされておるわけです。そうすると、十月十日(とつきとおか)そのドクターは一人であれば、その人に対して契約を負っているのと同じです。これは精神的にもしんどいと思います。
 それから、“患者の重症化”、“。在院日数短縮化”ということも理由として挙げられます。それから、“チーム医療”がありますので、自分で好きなように好きな医療はできません。昔は病院医師は自由業と言われていましたが、今は不自由業だとみんな言っております。

 専門分化が進んでいることも医師不足の原因になります。昔は医者だったのが内科医、外科医になって、今は消化器、循環器、呼吸器、一般内科と専門分化されています。さらには、私は腎臓専門の先生に診てもらいたい、肝臓専門の先生に診てもらいたいわということです。専門医制度がどんどん進んでいきますと、一人の体を診るのに50人もの医者が要ることになりますので、非常につらいことになります。だからこそ、プライマリ・ケア医の位置付けを、学内教育の時点からやっていただきたいと思います。それから、救急診療医の位置付けにも同じことが言えます。

 私は、もう5年から10年ぐらい医学部小児学科はなぜないのか、というのをあちこちで言ってまいりましたが、工学部というのは教育の優等生だと思うのです。日本の工学部というのは非常にいい人材を日本の社会に送ってまいりました。例えば、官製富岡工場の時は繊維、八幡製鉄の時は冶金・鉱山、戦後の復興期は土木・建築、そして自動車の時代は機械、航空機になれば航空工学、石油の時代になれば高分子化学、公害が出れば環境工学、今は情報とかバイオ。非常にその社会の要請に応じた教育をして、いい学生、社会人を送ってきました。
 しかるに、医学部医学科は全部80の医育機関が横並びで金太郎飴です。社会の要請と全く無関係です。自分達が自己撞着で、自己満足的な医師を出してきているわけです。なぜ、今のように小児科が足らなかったら医学部小児科の医師が出ないのか、私は不思議でなりません。
 以前、地域枠のことを言いましたら、それは教育の機会均等を奪うといって、憲法違反だと言われましたが、やっと地域枠は通り始めました。是非、今度は診療科枠をつくってもいいのではないかと思っております。

 最後になりますが、麻酔科は、今、裏手当てをつけたりして、我々にも手術手当をくれとか、あるいはナースに対するフィーをどうするかとか、病院医療のまま子というか、逆の鬼っ子のようになっています。これをこのまま認めていくと、日本の病院医療はやっていけません。ただ、もう裏で手当を出している病院は、公立病院でもたくさんあります。そうしないと潰れるからです。救急ももちろんそうですね。コンビニ感覚で夜来る人はたくさんいるのです。

 最後にお願いとまとめでが、「医師の需給に関する検討会」ではまだ医師需給見通しがはっきりしていません。これはやはり行政や、我々みたいな地域医療を本当にやっている人が、何科がどのくらい足りないかというのを出して、積み上げ方式でガラス張りでやって欲しいと思っています。業界とか関係学会で足りている足りていないという議論は止めて欲しいと思っています。

 これも地域枠ですが、今、地域枠は大分増えてきて、今度も増えそうですが、地域枠の実効ある拡大をお願いしたいと思います。現在の地域枠は多分枠がなくてもそれに近いだけの人は成績で通るというのを枠でやっていると思います。これは、ある政党の代議士、国会議員の方々ともお話ししたら、皆そういう意見でした。地域枠は最低3割、最高5割を目指していただきたいと思います。5割以上を超えますと、特に国立大学であれば、地域の県立大学になってもおかしいと思いますので、5割までだとは思います。
 それからまた専門医認定。この専門医のことなども分野別の育成計画と地域枠と、入学定員でやっていただきたいなと思います。

 最後は、診療報酬体系についてです。私は護送船団方式はもう終わりだろうと思います。「これ去年と同じです。」と足を出して、それが足の水虫である人と、物言わぬ子どもを抱いてお母さんがおろおろして、おばあちゃんがついてきて、兄ちゃんか姉ちゃんが周りを走り回って、エレベーターに乗ったりもうめちゃくちゃして、採血するのを3人で押さえつけるような医師と同じ初診療、再診療ではおかしいと思っております。
 最後に、特定診療科、特に小児科、産婦人科ですが、これは地域の医療対策協議会が実効ある働きができるように、地域や県知事、県の医師会長さん、大学関係者たちが皆寄って、地域医療協議会で明日からでもできるような対策、施策を講じないと、子を持った親、あるいはお産の前の若夫婦は大変だと思っていますので、是非その辺のところをお願いいたします。
 最後に、我々の出した決議だけお配りしておりますので、関係省庁、文部科学省、厚生労働省、総務省の大臣宛てに出しましたので是非見ていただいて、皆様方の御尽力で我々の地域医療が少しでも良くなるように、よろしくお願いいたします。
 早口でしゃべりましたが、どうもありがとうございました。よろしくお願いいたします。

高久座長
 どうもありがとうございました。
 1つか2つ御質問がおありでしたら、邉見先生にお伺いしたいと思います。
 先ほど、小児科の割合が40パーセントぐらいとおっしゃっていましたが、一般では10数パーセントですね。

邉見参考人
 10から20ぐらいです。

高久座長
 自治体の要望で、政策医療のような形で小児科の割合が大きくなっているということですね。どうもありがとうございました。
 ほかにどなたか……。よろしいでしょうか。
 それでは、またいろいろと御議論をお願いしたいと思います。
 引き続きまして、次に村瀬部長からよろしくお願いいたします。

村瀬参考人
 福島県の保健福祉部長の村瀬と申します。本日はこのような機会をお与えいただきまして感謝を申し上げます。
 では、早速、「福島県の地域における医師確保対策と医学教育に関する提言」と題しましてお話しをさせていただきます。
 2つお話しをさせていただきます。1つは、平成16年3月に、北海道東北自治協議会、これは北海道、東北、新潟県の知事と議会議長が構成員となっておりますが、その協議会と北海道東北地方知事会が連名で、総務省、文部科学省、厚生労働省の3省に対しまして、へき地を含む地域における医師確保対策に対して緊急提言を行ったものについてでございます。2つ目は、福島県における医師確保の取組について発表をさせていただきます。
 まず、1つ目の緊急提言の内容についてお話しをさせていただきます。この提言書のコピーにつきましては、資料として後ろの方に付けてございますので、後で御覧をいただきたいと思いますが、まず、提言書の背景であります医師不足の現状についてお話しをさせていただきます。
 まず、1つ目はかなり長期間にわたりまして医学部の入学定員の増員が行われていないこと。
 2つ目は、北海道、東北地域におきまして、医療施設に従事する医師数が、中国、四国、九州地方などと比較してかなり少ない状況にあるということ。
 3つ目は、へき地を含む地域の病院、診療所等におきまして、地域医療に従事する医師不足が非常に深刻化しておりまして、診療体制の維持が困難、あるいは綱渡りという状況にあるということでございます。
 4つ目は、へき地で開業しております医師が高齢化しておりまして、74歳の医師が一人で頑張っているという村もありますが、そういう状況で医師不足が今後さらに深刻化するおそれもあるということでございます。
 5つ目は、地元大学の医学部を卒業した医師の大都市圏への流出。大学の独立行政法人化及び臨床研修義務化等の大学を取り巻く環境が変化をしておりまして、専門医療における医師不足も、郡部の自治体病院を中心に深刻なものになってきているという背景がございます。
 これは、人口10万人に対する医療施設従事医師数、平成14年12月31日現在でございますが、全国平均は195.8人おります。青森から東北地方の医師数を見ていただきますと、162、172、多い宮城県で183人という状況でございます。一番多い徳島県は258.7人いるということになっております。
 福島県の人口は約210万人でございますので、本県の場合で全国平均と同じ医師数を確保したいと考えますと、10万人当たりで25人足りないことになりますので、全国平均と同じにするには500人以上の医師を確保する必要があるということでございます。
 次に、5つの提言の内容、先ほどの緊急提言の内容でございますが、1つ目は、「地域医療に関する関係省庁連絡会議」における医師確保の実現を図っていただきたいということ。
 2つ目は、医師不足地域の医学部の入学定員の拡大と地域枠の創設。それから、自治医科大学の入学定員と医師不足地域への配分枠の拡大をしていただきたいということ。
 3つ目は、全国的な医師配置の調整等と、医師不足地域を支援するシステムを構築していただきたいということ。
 4つ目は、臨床研修を終了後、一定期間へき地医療機関等に勤務させる方策について検討していただきたいということ。
 5つ目は、各道県で実施する医師確保対策を支援する措置を講じてほしいと。こういう緊急提言の内容となっております。
 その次のページは、ただいま申し上げました緊急提言の具体的な内容でございますが、時間の関係上省略をさせていただきますので、資料をお読みいただきたいと思います。
 以上が、北海道、東北からの緊急提言の内容でございます。
 次に、福島県における医師確保の取組について申し上げます。
 これは、福島県の地図でございますが、福島県は、まず左上の地図から見ていただきますと、阿武隈高地と奥羽山脈に分断されておりまして、海に近い方から浜通り、中通り、会津地方というふうに、3つの地方に分かれております。同じ福島県でも、この3つの地方によりまして気候も人口の集積度も違う。この中通りに非常に人口が集積をしている傾向がございます。
 右上は主要な交通ネットワークでございますが、一応縦横、ある程度高速道路は完備しておりますし、中に新幹線も通っております。ただ、会津に行きますと、まだまだ縦の流れが、JRも高速道路も良くないという状況にございます。
 それから、一番下の地図は人口を書いておきましたので、後でご覧いただきたいと思います。大体県北の福島市、郡山市、いわき市、この辺に人口が集中しております。
 それから、福島県の、先ほど申し上げました会津と南会津を拡大させていただきました。非常に高齢化が進んでいる地域でございまして、ここに一番際立った高齢化の村町を挙げましたが、昭和村というところ、非常に過疎山村でございまして、何と52.9パーセントですので、2人に1人は高齢者でございます。金山町、そのすぐ隣でございますが、ここも50パーセントを超えております。大体この地域の高齢化が非常に進んでいる地域でございます。
 その管内の診療所が非常に深刻な状況でありますが、この地域になりますと医師が1名、あるいは多くて2名という状況でございます。中には80代の医師が一人で頑張っているというところもございます。
 それから、大体40代というのはまだ若い方でございまして、おおむね50代以上の医師がこの地域で医療を確保してくださる。しかも、学校の診療とか、あるいは介護保険の認定とか、いろいろな地域のお医者さんに係る仕事というのが一手に負担が押し寄せてくるという状況がございます。
 次に、福島県がなぜこのへき地医療に危機感を持って取り組みだしたかというきっかけを申し上げます。南会津郡只見町、これは新潟県とのほとんど県境の山の中でございますが、そこに国保診療所というのがございます。ここが15年9月に、それまで協力をして医師を派遣してくれておりました大学から、派遣が打ち切りになりました。そこで医師が1名残ったわけですが、このお医者さんが過労で倒れてしまいました。全く医師がいないという状況になりまして、県としても大変危機感を持って、へき地医療に何とか取り組まなければいけないという状況になりました。
 しかも、この診療所の隣には特別養護老人ホームあるいは老人保健施設もありましたので、非常に高齢者がその地域に集中をしているということもございました。それまでは医師が3名体制であったものが、大学からの医師が15年9月までに引き上げられ、あるいは1名残った医師も倒れたという状況になりまして初めて、只見町は町を挙げて、近隣の町村も巻き込んで、12,000人の署名を県に持ってまいりました。町と村だけでは解決できないので、何とか県としてこの問題に取り組んでいただきたいというお話がございました。
 そこで、県は平成15年12月に、「へき地医療対策アクションプログラム」を策定いたしまして、16年1月にはその推進機構として、「へき地医療支援機構」というものを立ち上げたところでございます。
 次は、「へき地医療対策アクションプログラム」の中身でございます。1つは、へき地医療を担うための医師の定員枠18名をまず何とか確保しようということです。県と医科大学に確保しようということで、医科大学の地域医療支援センターに15名を確保していただき、それから、県が募集をして何とか3名の医師を確保したいという取組を始めたところでございます。県が3名募集しておりますが、現在、採用できたのは1名でございまして、先ほどの南会津のへき地診療所等の診療の応援をこの医師が行っております。
 2つ目は、県のホームページを利用いたしまして、現在でも医師を公募いたしておりますが、なかなか思うようにはまいりません。
 4つ目は、県内の医師に意向調査を実施いたしまして、へき地勤務の希望があるかどうかを調査しました。
 さらに5つ目、保健所の所長を医療情報アドバイザーということで依頼をして、地域あるいは地域外の情報を収集に努めております。
 県としてお金を出しておりますのは、へき地医療の医師確保のための修学資金貸与制度を作りまして、毎年3名枠を確保いたしまして、県立医科大学に限らず他県の医科大学でも、いずれ福島県のへき地医療に従事してくれるならば修学資金をお貸ししましょうという制度を作っております。月額235,000円ほどお貸しをいたしております。
 次が、県と医科大学で確保した医師を、どういうふうなシステムで派遣をしているかということでございますが、県の中にある、「へき地医療支援機構」で派遣調整をいたします。右側はいわゆる代診をするお医者さんです。ずっとそこにいるのではなく、週に何回かというような形で代診で行くお医者さんの派遣のシステムです。俗にトコロテン方式などと言わせていただいております。左側が常勤の医師の派遣のシステムということになっております。
 それから、福島県はいろいろ国にお願い事をする要望活動をいたしておりますが、その中で、是非このへき地医療を確保するために、今年の6月に2つのことを各省庁にお願いをいたしております。
 1つは、医師不足地域の医学部、特に福島県は県立の医科大学しかございませんので、この県立の医科大学の定員を県の判断で増やさせていただきたいというお願いを申し上げております。それから、自治医科大学の入学定員も増加をさせていただいて、やはりへき地に勤務する医師をもう少し確保をさせていただきたい。こういった医師確保対策の取組につきまして、国にお願いをいたしております。文部科学省、厚生労働省、総務省に、知事を先頭にお願いをいたしたところでございます。
 以上申し上げましたが、へき地の医師はまだまだ足りませんし、全国マクロ的に見て医師が足りるというお話もあるかもしれませんが、私ども東北、北海道は非常に医師不足に悩んでおりますので、その辺の事情をよくよくお組み取りをいただきまて、十分な御配慮をお願いできればありがたいと思っております。よろしくお願いいたします。
 以上でございます。

高久座長
 どうもありがとうございました。
 どなたか御質問、御意見おありでしょうか。
 どうぞ。

水田委員
 大変興味あるお話でしたが、大学の定員を増やして、それがそこに残るということを強制されるようにするのですか。大学の定員を増やしても、卒業した後またどこかへ行ってしまったら、何のために増やしたか分からなくなるということもあるのですが、それに対して何かモチベーションを上げたりして、教育プログラムに組み込みながら、必ず残る気持ちにさせるということまでもお考えですか。

村瀬参考人
 はい、医科大学の教育の中身についてまではまだ考えておりませんが、県立医科大学を卒業した人たちの大体54〜55パーセントが県内に残ってくれます。幾らかでも定員が増えれば、先ほどの地域枠の活用、あるいは修学資金の活用などをして、毎年何名かずつでも県に残る方が増えてくれれば大変ありがたいと思っております。

高久座長
 福島県立医科大学は随分歴史が長いですね。54〜55パーセントも残って、それでも足りないのですか。

村瀬参考人
 実は、県には県立病院が10ございますが、ここですら診療科に必要な医師を十分確保しているとは言いがたい状況にございます。まして過疎、へき地になりますと、それよりなお厳しい状況があるという現状でございます。

高久座長
 他にどなたか、それではよろしいでしょうか。どうもありがとうございました。
 それでは、引き続きまして大橋委員よろしくお願いします。

大橋委員
 信州大学医学部の大橋でございます。それでは報告させていただきます。
 今日、私がお話しさせていただきますのは、お手元の資料にございます、「地域における医師の確保等の推進について(提言)」です。これは今年の3月に国立大学医学部長会議と国立大学病院長会議が合同で出した提言でございます。それの取りまとめの経緯並びに当大学の具体的な県内枠入試の実例についてお話しさせていただきたいと思います。
 まず、提言の目指した解決目標が大きく3つございまして、1番目は「医師の地域別偏在」です。これに対してどういう解決策があるのかということです。2番目は「医師の分野別偏在」です。特に産婦人科、麻酔科、小児科の医師の確保ということです。3番目は「女性医師の労働力確保」です。女性のお医者さんで家庭に入ってしまった方がまた社会復帰して、医師として活躍いただくための労働力確保の仕組みをどのように構築するのかの問題でございます。この3つの視点に焦点を絞りまして、医学部長会議、病院長会議では討議をいたしました。
 今回の提言の非常に大きなところは、解決すべき課題の責任の所在といいますか、医科大学だけで解決できる問題ではなくて、政治の問題、地方自治体などが協力しなければ解決できない問題等を非常に明確にさせて記載したことです。その中でも特に重要な課題と、重要度がやや薄いという課題を明確にさせて、しかも時系列、すぐにでもできるものと政治が変わらないと変わらない問題と、そういうことを時系列を勘案して審議をしたのも特徴でございます。大変お恥ずかしいところでございますが、時間が不十分だったところもあって、時系列については小委員会のバイアスがややかかっているかもしれませんので御寛容の程、よろしくお願いします。
 最後に、これを出した趣旨と基本姿勢について追加させていただきます。こういう具体案はどの大学も一律に当てはまるものではなく、地域には医師の偏在の仕方や大学の実情に大きな違いがございますので、それに応じてこの内容を取捨選択していただいて、具体的にできるところはやっていただいたらいかがだろうかという趣旨のものでございます。これをすべてやれということを決してもくろんだわけではございませんし、後ほどお話しします地域枠の入試といったものについての議論は、かなり地域の細かな解析をしないと、妥当性については議論できないのではないかと考えております。
 資料にあるのは提言作成の委員会メンバーですが、3月現在の所属でございますので、現在、医学部長さんと病院長さんが代わられておりますが、提言を出した時のメンバーでございます。その点御理解ください。お恥ずかしい話なのですが、今日おいでの水田先生が委員長の国立大学病院長会議と国立大学医学部長会議が初めて、実は両委員会が一つの提言を出すのは、長い歴史の中でもこれが初めてでございます。
 そういう形で、特に九州大学さんにも大変な御協力をいただきながら作らせていただいたことを御紹介させていただきたいと思います。
 内容は、“現状の分析について”と“地域における医師不足の解消に向けての提案”などから構成されています。“地域における医師不足の解消に向けての提案”ということでは、医師紹介システムの構築、専門医の不足解消について、女性医師の労働力確保、自治体病院などの機能の見直し、医療制度における取組、最後に医師の育成・教育制度等における取組ということでまとめてあります。今日は特に私が医学部長会議としてまとめた6番の、“医師の育成・教育制度等における取り組み”というところについてお話しをさせていただきたいと思います。
 これにつきましては、短期的に取り組む必要がある事項として、以下の事項を挙げております。
 1番目は、地域特別推薦枠などの学部入試方法の改革を行い、地域医療を担う優秀な医師の育成を図る、ということです。地域特別推薦入試などの拡大を図って、優秀な医師が地域に戻るような仕組みができないかということです。先ほどから何辺も議論がありますように、受験の機会均等の問題、そして果たして入れたから地域に残るのかといった問題などございますが、これこそ地域によって様々であり、実は背景に違いがあることを後でお話ししたいと思います。
 2番目は、地域医療の意義と重要性を体験させるために、学部教育、卒後臨床研修カリキュラム等の見直し、改善を行うということです。カリキュラムで特に地域医療と言いましても、学生時代に実際に何をするのかということが見えておりません。例えば鹿児島大学などは、離島実習で、離島に残る学生を増やすために大変貢献しているカリキュラムがございます。あるいは当然自治医大さんのように、長い経験の中から幾つかのユニークな地域医療体験実習などがございますが、そういうものをもう一回見直しさせていただいて、地域の医科大学においても導入してまいりたいということでございます。
 さらに、「地域医療教育コース」などというコースも設けて、特に地域医師を目指す医師志望者の人には特別な教育コースをつくったらどうだろうかということも挙げております。同時に、今までのお話の中で抜けているかと思うのですが、やはり少子化による医学部に来る学生の質の変化が最近著明に起こっております。
 もう1つは、文芸春秋8月号を御覧いただいて御存知だと思いますが、今、医学部に入れるとなれば日本中どこへでも行くという時代でありまして、必ずしも第一番目の選択が東京大学ではないという時代に入っています。東京大学の母集団もかなり変わってきているということが載っているかと思います。まさしくそのとおりでありまして、国立大学医学部であれば受かればどこでも行ってしまうという母集団があります。その母集団の中には、やはり資格を持ちたい、社会的な安定を保ちたい、ある意味でプライドを持ちたいということが存在しているかと思います。そういうことが必ずしも医師というモチベーションの不十分な学生の入学を生み、入ってからの留年率などにおいて問題になってきています。あるいは国家試験の合格率にも問題が波及していますそれゆえ、ここにいらっしゃる福田先生を中心に、CBT、OSCEなどが入ってまいりまして、そうした学生の事前チェックにも自助努力をしたいということでございます。
 これは、例えば当大学においてはCBTを学年ごとの統一試験として導入しました。今までの医学部では信じられないと思います。というのは、医学部は大体講座制が敷かれていて、主任教授が進級の判定決定権を持っていましたが、それを剥奪して、統一試験を学内で作って進級をやっているというようなことまで導入してまいりました。
 さらに、そこにございますように卒後研修においても、まだ3カ月というプログラムしかございませんが、地域医療体験枠が入っております。この具体的なプログラムは決定しておりませんが、ここが非常に重要な初期体験ではないかということでございます。例えば当大学では、佐久総合病院といったところの長い歴史のある地域医療の病院と連携をしまして、協議会をつくり、特色あるカリキャラムをつくり始めている次第でございます。
 最後は、先ほどございました、経済的な支援というのもやはり必要であろうと考えています。

 次に、今日は地域枠について、当大学が導入した経過と結果について御報告したいと思っております。
 私ども、法人化前までは確かに機会均等ということで推薦入試自身もやっておりませんでした。聞くところよりますとその前から推薦入試のうち幾人かを県内枠に使っていた大学もあると聞いておりますが、うちはそういうことではなくて、推薦入試は長野県に限り、枠を5名にしました。このメリットは、対象校が限られておりますので、きめ細やかに当大学の情報、そして県民を上げて医師育成をどうするのかという意識形成や意識改革をするのに大変有効な形であったかと思っております。
 その機会均等も、来年は6大学、さらに検討している大学は10数大学に及ぶと言っておりますので、かなりの地域が行えば、機会均等はある程度お認めいただけるのではないかと考えています。その枠も、なぜ5人かということについては後で御説明申し上げたいと思っております。
 法人化をした地域にある医科大学は地域医療に従事する医師を育成するという地域に唯一存在する医育機関として、責任を果たさなければなりません。そうでないともうとても存在意義がないと県民から言われてしまいます。また同時に法人化後、いわゆる国立大学医学部といっても、やはりその目標や目指すところに少しの違いが出てきて、いわゆる従来の護送船団方式では全く成り立たず、やはり地域というものにあって、地域に唯一存在する医育機関は、地域の自治体ともいろんな相談をしながら医師育成、医療人育成、あるいは医療人の提供といったところまで考えなければない状況になっているのが現実です。
 長野県には現在、人口220万人中、4,000名近くの医師がおりますが、その約4,000名の医師のうちで本校の卒業生が1,200名。長野県出身で他校を卒業し、信州大学で研修、あるいは大学院に入ったのが1,200名です。つまり、長野県で医師として従事している人の約3分の2が当大学の関係者でございます。この60数年の歴史の中で、信州大学医学部の卒業生は約4,600名で、そのうち長野県内出身者が11パーセントでございます。これは60年間の平均です。また、県内比率は下から2番目に低い大学であります。県内の高校からほとんど入らない、さらに現役に至っては約3パーセントで、60年の歴史の中で135人しか入っていないという、信じられないような状況の大学でございます。
 その1,200名のうち、県内出身者がやはり200名程度残っておりますので(入学者は500名)、黙っていても40パーセントぐらいは最終的には県内で医療をしています。ところが県外出身者は約1,000名残っておるわけですが、約22パーセント程度が縁あって信州に来たので信州で医療をしているということでございます。
 2年間の県内マッチング数を調べてみますと、実は100から118と増えておりますが、この数は従来信州大学出身者と他校から信州大学で研修をされて県内に残った医師数と、トータル数で変わりませんで、卒後臨床研修制度が導入されてもマッチングが起こっておりますが、余り変わっておりません。ただ、違っているところは、自校出身者の比率が少なくなってきているということです。
 平成17年度に長野県で国立の医科大学に入学した方、これは個人情報もあるので内々に校長先生にお聞きしていることでございますが、実は大体40名くらいしかないのです。それで、今回はこの現役5名の県内枠を入れて、11名ということで平均値を上回ることができました。そしてこれを志望した学生は54名くらいございます。つまり、県内で1年間に医学部に入る学生数くらいが、この県内枠にとりあえず興味を示したということを知ることができました。
 具体的には、高校長会とか市町村に行って趣旨説明、協力依頼、地域マスコミを介して県民全体への趣旨説明依頼など、いろいろさせていただきました。実際、学部長自らが実績校というところへ出向きまして、高校生に今の日本の医師の育成の現状、問題点、信州大学医学部は何を目指すのかということまでお話しさせていただきました。
 そういうことで、説明会を夏に開いておりますが、昨年は54名参加いただきました。信州大学医学部のいいところを全部お見せしようということで、医学部の5年生でやる手術場実習体験までやってしまいました。これは大変好評でして、やはり医学部に入るとこういう実習をやるのかということを肌で知ることができたようです。また、うちは遠隔医療に力を入れてやっておりますので、地域に行っても大学がこういう手段でいざとなった時に支えてくれるというスタイルが長野にはでき上がっているのだということを説明し、特徴を示したことがとても良い宣伝になったと考えております。
 そういうことでセンター試験をやりまして、5名入れることができたのでございますが、驚くほど成績優秀者でございました。長野県には高校四年制という意識がいい意味で残っております。すなわち、高校はエンジョイして、1年浪人して大学へ行けばいいと考えているようです。特に受験校にはそういう風潮がございます。そういうことはセンター試験の成績を見せていただいてもわかります。関東甲信越の受験校と長野県の受験校が内申書Aで1年浪人すると一体平均値で何点上がるのかというのを調べた私どものデータがございます。長野県出身者で内申Aの人は、1年浪人すると95点ぐらい上がります。900点満点です。それに対して関東甲信越からの受験校の方は82点であります。これを考えますと、今回入った方のセンター試験の成績は、1年置いておくととんでもないところへ行ってしまう可能性があり、これを信州大学医学部に止めたという意味もあったということがあります。
 もう1つは、長野県内にスーパー・サイエンス・ハイスクールというのが2つあります。これは御存知のように理数系に特化した高校をつくろうという趣旨で作られた学校です。ここに大変医師志望の学生が多いのです。そこで、いわゆるモチベーションというのをどのように定着させるかが問われてくるのです。欧米はメディカルスクールになっているので、自分で社会経験して医師になりたいというモチベーションがあるのですが、日本の18歳の青少年ではなかなかモチベーションが付き辛いのです。このような意味では今回の県内枠は、高校生に医学教育、医療行政、医師育成の仕組みなど正確な情報を与えるということで大変良かったと思います。なおかつ県内枠をやることによって、校長先生などが大変理解を示していただき、サポーティブになったこともメリットと感じています。
 結果的には、長野県を担当する医療機関、厚生連、日赤、地方自治体が信州大学医学部が頑張っているので寄附講座を作ってあげようと合同で寄附講座を作っていただく予定です。県内枠で入学した学生のフォローアップまで全部やれるということまでできるようになりました。思わぬ御駄賃をいただいたと思っております。
 同時に出てまいりましたのが、クリニカル・クラークシップを行っていただいております関連病院の、特に院長先生あるいは教育担当の先生と、合同のファカルティ・デベロップメントを泊まりがけでやろうということまで企画され、実際、運用しました。やはりその地域の先生方も学生時代から自分の病院に来た学生に地域医療のモチベーションをつけるために大変な努力をしていただくことができるようになりました。最後は、学外担任までさせてくれという院長先生まで出てまいりまして、ちょっとやり過ぎかなと思っておりますが、ある意味では進路指導などで相談に応じてほしいという程度でお願いしているところでございます。
 これで、では次に県内に残るかというと、先ほど言ったように40パーセントですので、長期展望でございます。ただ、それでもやらないよりは良いのではないかと思います。そして信州大学医学部への県内高校からの合格率が11パーセントという極端に少ない大学にすると、県民にとってみると大変ありがたい方式であるというようなことと、医学部というところと地域の患者さんである県民が同じ視点で県の医療を考えましょうということを考えさせる機会にはなったかなと思っております。
 中長期的には、幾つかの点で卒後臨床研修、そして臨床系の専門研修と医療系大学院の問題など、やはり単なる入試で済むものではなくて、入試から生涯研修まで一貫したプログラムをつくった形で地域の医療をやっていただく医師を育てないと、入試だけやればいいというものでは決してないということを私どもも重々肝に銘じているところでございます。
 以上でございます。

高久座長
 どうもありがとうございました。
 どなたか御質問おありでしょうか。
 よろしいでしょうか。
 それでは、大橋先生、どうもありがとうございました。
 引き続きまして、最後に佐藤委員よろしくお願いします。

佐藤委員
 山形大学の佐藤でございます。今日は、地方大学である山形大学が地域の医療の活性化、それから医師の確保にどのように取り組んできているか、ということを御報告させていただきたいと思います。
 先ほど来お話がありましたが、なぜ地域医療における医師不足が起きているのかということですが、やはり絶対数の不足ということだけではなくて、若い医師がどうしても地方に定着しない。なぜかということになりますと、やはりなかなか専門の技術を得る機会が少ない、あるいは自分が経験したいような症例が少ない。あるいは先ほど来出ています小児科、産婦人科ではやはり医師不足で、かなり精神的にも肉体的にも負担があると。それから子どもの教育の問題、こういうものがあります。
 では、地方大学でどのようにこの問題を解決できるかということにつきまして、現在、山形大学でも取り組んでおりまして、その中心になるのが蔵王協議会という協議会でございます。蔵王というのは、御承知のとおり宮城県と山形県の県境にあります。山形を代表する山ということで蔵王という名前がついておりますが、この協議会は平成15年6月に開設されたものであります。
 ここに会則がありますが、本会は会員相互の密接な連携と協力によって、大学及び関連病院の医療の充実、そしてそれによって地域の向上に寄与するということを目標としておりまして、実際には卒後臨床研修と関連病院との連携を第一の目的として開設された会であります。
 実際には教授会と関連病院からなります関連病院会という会、それから教授を除きます大学の教員から構成されます教室員会という会、この3つの会が中心となって構成されています。
 関連病院会と言いますのは、いわゆる大学医学部に関連しております医療機関から構成される会ですが、県内外含めまして、現在、約80の地方の施設と関連を持って取組を進めているということになります。
 その蔵王研究会のもう少し細かな内容に入りますが、本会は3つの部会によって成り立っておりまして、もう少し後で実際に業務の関してはお話ししますが、「関連医療施設部会」、「研修部会」、「企画・広報部会」という3つの部会に分かれております。
 例えば、「関連医療施設部会」におきましては、先ほどの、「教授会」、「関連病院会」、「教室員会」からの委員がもちろん委員の中に入っておりますが、関連病院との関連におきましては、および行政との兼ね合いが非常に大切ということで、その他の機関として山形県の健康福祉部長あるいは病院事業局長にも委員会の中には入っていただいております。
 それから、「研修部会」にはやはり学生からの意見というのも反映させる必要がございますので、「研修部会」では学生もその構成員となっております。

 次に、この3つの部会、部門の主な仕事について御説明させていただきます。
 まず、「関連医療施設部門」と申します部門では、地域医療の実態調査を行ないまして、実際に医療のニーズというのがどのようになっていることなどかというのを調査する部門です。そのデータに基づいて適正な医師の配置というものはどういうものであるかというのを検討します。全国的に見て、先ほど来、北海道、東北地方の医師が少ないという、あるいは配置の不均等が問題になっておりますが、山形県という狭い範囲をとりましてもやはり医師の不均衡という問題が存在します。山形県は4つの2次医療圏からなっておりますが、ある特定の医療圏では心臓血管外科を標榜し、開心術ができる施設が3カ所ある、そういった2次医療圏もある一方で、逆に一つもない医療圏もあります。こういうような県内における医師の不均衡、そういう配置というものに関しても、やはり取り組んでいかなければならないということによりまして、「関連医療施設部門」が蔵王協議会の中に開設されています。
 それから、「研修部門」というのは、卒後臨床研修あるいは生涯教育も含めた教育に関するニーズを組み上げ、現在あります教育のカリキュラムを変更していこうという目的のためのものです。
 そして、やはりこのような取組を県内あるいはその関連病院全体に広報する必要もありますので、「広報部門」あるいは、「医療政策部門」が情報の提供、生涯教育のセミナーの開催などを行っております。
 これは、とある医療雑誌に載った記事で、「関連医療施設部門」の紹介をしているものですがが、先ほどの、「教授会」、それから、「教室員会」、そして、「関連病院会」のメンバーに加えまして、県の行政職員を加えることによりまして、やはり県内の医療というものを行政も含めた形で検証していかなければいけないという、そういう取組が紹介され、また実際に活動が進んでおります。
 このスライドは、去年(2004年)の4月に公表されたものですが、蔵王協議会の、「施設関連部会」で調査した(これはあくまでも医療機関の要求の調査ですので、実際にこの数が足りないということではないと思いますが、)どれくらい医師がどの科で少ないのかというような内容にまで踏み込んで実態調査を行いました。この数が果たして本当にその地区で必要な数であるかというようなことを科学的根拠をとりまして、それに基づいて適正配置を今後検討する予定です。これはまだ具体化されていません。
 スライドは、去年の6月の、「関連医療施設部会」の開催案内をコピーしてきたものですが、この6月9日の部会では実際に地区の放射線科医の配置転換について、これが適正であるか、ということについて検討されております。特別問題がなく配置転換がなされたと聞いていますが、このような活動が既に行われています。
 さらに、現在、医師の配置というものに関しまして、「地域医療医師適正配置委員会」というものを設立しまして、この中で医師の適正配置を検討しております。会則の第2条を見ていただきますと、本委員会は学部長、基礎医学系の教授、臨床医学系の教授、独立専攻の教授、それから医学部長が指名する若干名から構成されるという形で、当初は医学部の中の評価配置委員会でありましたが、来週の7月20日に、この、「地域医療適正配置委員会」に行政と、「病院長会」からの委員を加えるということで県からの了承も得られまして、この配置委員会には大学だけではなく、行政と、「関連病院会」からの委員を含めた形で今後活動することが決まっております。医師の適正配置というのは、必ずしも住民や自治体の要求、それが地域の医療の質を保つための医師不足ではないと考えられます。県及び関連病院会からの委員を含めることで、「地域医療適正配置委員会」というものがある程度オーソライズされた形で、公平な立場から県の医師の配置というものを見ていけるのではないか考えております。
 次に、「研修部門」に関してですが、スライドは山形大学の卒後研修プログラムを示しています。上段にあるのが一番基本的なプログラムで、1年目は基本研修科を研修した後、2年目は必修科目を約半年、大学あるいは地域保健医療圏、保健所などで研修した後、先ほどの関連病院会の中から研修協力をしていただける病院で約半年間研修をするという形のプログラムになっております。先ほどの蔵王協議会の研修部門のニーズの調査、これは研修医あるいは学生、それから関連病院会からの要望によりまして、やはり2年目に、「必修科も外の研修協力病院で何とか研修できないか」という要望がかなり強くありまして、そのニーズをくみ上げ、今年度のプログラムからは従来のプログラムに加えて、2年目の1年間を必修科も含めて外の関連病院で行えるような改編が行われております。
 これはまだマッチングになりまして2年しか経過しておりませんので、本当に実効性のあるものになっているかは今後の評価を待たなければならないわけですが以下のような事実もあります。山形県は平成15年度の県全体のマッチ者は43名でした。このような卒後研修プログラムの改編あるいは卒後教育を受けた後の様々な教育プログラムに関する広報を行った結果かどうかはまだはっきりしませんが、実際に今年のマッチ者数は59名に増えております。ばらつきはありますが、東北地方でマッチ者数が平成15年と比較して増えたのは山形だけであります。
 最後に、、「医療政策・広報部門」になりますが、先ほど提示しましたスライドのように、関連病院あるいは大学病院には、『蔵王協議会だより』という会報を発行して、現在の協議内容であるとか、あるいは関連病院の状況というようなものを広報しておりますし、大学病院のホームページの中には蔵王協議会のホームページをつくりまして、その中でも広報活動をしております。
 そして、例えば生涯教育セミナーは去年から今年にかけまして約5回行われておりますが、このような教育セミナーの広報もホームページ上で行っており、県内外の医師も自由に参加できる体制をつくっております。大体毎回200名前後の参加を得ております。
 最後になりますが、昨年度、「現代教育ニーズ支援取組プログラム(現代GP)」ということで、山形大学医学部の、「生涯医学教育拠点形成プログラム:包括的地域医療支援機構創設」が採択されました。このプログラムは今お話ししました蔵王協議会を発展的に活用して、地域の包括的な支援機構を設立しようというものであります。
 模式的に書きますと、中心に従来からの蔵王協議会があり、さらに県との連携をより強力なものにする。それから、後でもう少し御説明差し上げますが、大学院独立専攻に新設された、「医療政策学講座」との連携を深め、医療行政に積極的に関与していこうというプログラムであります。
 既に県との間は非常に良好な関係を保っておりまして、県と大学医学部が協力して、県の健康福祉行政というものを推進していこうということで一致しております。
 最後になりますが、この現代GPで取り組んでおります生涯教育の支援機構の眼目は、従来の蔵王協議会を発展させたプログラムに加えまして、山形県医療問題協議会との連携にあります。この協議会は平成15年に発足し、山形大学の元学長、医学部長、県医師会長、それから山形県の健康福祉部長からなる協議会であります。この協議会で山形県における医療問題というものを掘り下げて考え、そしてこの内容を本包括的地域医療支援機構の中心となる総合医学教育センターへ反映してもらうということを考えております。
 それから、先ほど出てきました医療政策学講座ですが、これは平成16年度に開設されました大学院の独立専攻の中の講座で、この講座の教授は厚生労働省で25年間医療行政にかかわられた行政官の方をリクルートしまして教授に就任していただきました、また、助教授は山形県の医療福祉事業に20年近く関わられた方をお迎えしまして開設された講座です。このお二人が中心になって、山形県の医療政策というものを、行政の見方も含めた形で検討しまして、その結果をやはり総合医学教育センターに反映させ、最終的に山形県の包括的な地域医療支援機構というものを立ち上げていこうと考えております。
 まだ、蔵王協議会にしましても今年で2年目ですし、包括医療のプログラムはやっと1年を過ぎたところですので、本当にこの取組の成果が出るのか否かは、これから5年10年と経たなければ評価できないとは思いますが、地域医療を活性化させるには、やはり国全体の施策というのはもちろん大切ではあると思いますが、地方大学として早急に何かできることはないかということで、県と協力して山形県の医療の活性化、学生の確保に取り組んでいるのが現状でございます。
 以上です。

高久座長
 どうもありがとうございました。
 今の佐藤委員の御報告にどなたか御質問おありでしょうか。
 では、佐藤委員、どうもありがとうございました。
 あと、35分ぐらい時間が残っていますので、4人のお話しいただいた方々に対する御質問あるいはコメントを御自由によろしくお願いします。
 どなたか御質問御意見おありでしょうか。
 私も邉見先生の言われたことに全面的に賛成ですが、病院医師の開業志向は栃木県でも起こっています。その理由は確かに先生がおっしゃられたとおりです。もう1つは、最近、医師のストレスが非常に多いということがあります。医療関連事故の時に警察に届けるとか、またいつ訴えられるかもわからないというストレスが非常に強い。それが先生のおっしゃった理由に加えてかなり大きなファクターになっています。
 私の大学でも事故が地方の新聞に報道されまして、その結果、辞めて開業する方が2人ぐらいいました。かなり優秀な中堅どころの人たちでした。そういうことが一つの原因になっているのではないかと思います。
 それから、余り明るい話でなくて申しわけないのですが、たまたま小児科の方のお話を聞く機会がありました。臨床研修の必修科の時に、コア・カリキュラムの中に小児科を入れたのは小児科の先生方のかなり強い希望だったのですが、実際には学生の時に小児科をやろうと思っていたのが、臨床研修で小児科を回るといかにも大変で、辞めたという研修医が結構多いようです。
 ほかにどなたか御質問は。
 どうぞ。

吉田委員
 邊見先生のお話、大変おもしろく聞かせていただいたと言ったら怒られるかもしれませんが、大変勉強になりました。
 最初におっしゃった医師の仕事の質と量がともに増大したということは当然医師としてやらなければいけないことが多くなったということと、もう1つは医師以外の人がやってやれるようなことも多くなったということです。
 例えばアメリカで言うならば、スクール・オブ・パブリック・ヘルスなどがありますから、その方の専門家が当然やるようなことを、日本の場合は同じ医師がやらなければいけなくなっているという面があるのではないか、ということがあります。

邉見参考人
 当然医師がやるべきこともありますし、アメリカだったら秘書というか、クラークがやるような診療録を全部作るということも日本は医師が全部やらなければいけません。だから、特に文書が増えるということでそういうことをちょっと言いたかったのです。
 今までは信頼関係というか、お任せ医療といったら悪いのですが、どちらかというとお互いの信頼でいけていたことが、一つ一つ書類に残さないと後でいろんな問題が起きるということで、非常に書類が増えています。だから、夜に患者さんが消灯時間を過ぎて眠ると、ドクターがいろんなことをやっているという時間は、大体書類を書いたりしています。だから、医療事務の人などがいればもうちょっとベッドサイドでやれるようなこともできないでいるのです。非常にそういうこともこのごろ痛感しております。
 さらにチーム医療がございますので、いろんなICTとかNSTとか、チーム医療でナースとか薬剤師とか臨床検査技師とかと一緒にやらなくてはいけない時間が非常に多くなりますので、自分で患者さんを見たり手術したりする時間の中に大分食い込んできたりします。
 医師の定数が昔のとおりでいけないというのは、厚生労働省の医政局の偉い方々も言っておられます。量も幅も質も、横の広がりも含めて、時間的な拘束も含めて、やはり病院勤務医のQOLは随分悪くなっていると思います。

吉田委員
 その点に関して言えば、例えばインフォームドコンセントのために時間がかかるというのはむしろ望ましいことです。それはむしろ結構ですが、それ以外のことでも時間が非常にかかるようになったということと分別して考えていただいたらというふうに思います。

松尾委員
 名古屋大学の松尾と申します。私は、腎臓内科です。
 私は大学で、ほぼ毎日、医局長と人事の話をしていまして、地域のニーズと我々が送り出すお医者さんのニーズとの間に随分差があるのを感じています。我々は腎臓内科の専門医を育てていまして、地域に医師を派遣しますと、腎臓内科といっても何でもやらなければいけないのです。7、8割は自分の専門ではない救急ですとか脳卒中など全部を見ないといけないのです。地域が求めているのは、まず全体を診ることができる医師です。そういう専門のミスマッチがあって、地域に行くと大抵半年か1年で辞めたいという医者がほとんどなのです。ですから、取っかえ引っかえやっているというのが現状なのです。
 地域の医療ニーズというのはもっと総合診療、総合内科的なもののニーズが非常に高く、必ずしも専門家を全部そろえることは特にへき地などではニーズではないのではないかという気がしています。卒業臨床研修の特に最初の2年は初期研修ですが、その後の研修というのは専門研修か後期研修においては、(用語や定義については議論があるのですが、)是非、総合研修、あるいは総合臨床とか、内科総合とかをやれる人を、一つの専門として認めていただきたいと思います。病院の中でやはりそういう人材を確保するということが非常に大事ですし、大学の方もそういった人を送り出すことが重要であると思います。
 個々の病院の中でもそういった人を育てるということはすごく大事ですが、必要やむを得ぬ時に専門家に相談をしないと専門家の質についてはすごく高いものが要求されていますから、ミスマッチが起こりやすいと思います。その辺のところ、一口に医者が足りないと言ってもいろんな種類の医者が足りないのだと思います。小児科や産婦人科はもちろんのことですが、もう少しそういった医者の中身といった点で何か御意見がありますか。

邉見参考人
 先生のおっしゃるとおりだと思います。総合診療医=ゼネラル・フィジシァンや救急医というのは、日本では格が低いという感じで見られていて、救急科とか総合診療科というのは、診療標榜科の中に認められておりません。外国では認められるところはたくさんあります。救急科や総合診療科で開業しているというのもございません。それから、大学ではもう40以上、救急も総合診療も両方講座はできているのですが、やはり入る方々は非常に少ないです。
 卒後臨床研修が新しくなりましたので、総合診療というのは3つ4つの役があるかと思います。
 それからすき間です。余りにも細かく分けたからニッチのところがあると思うのです。そのニッチのところを見る。全体の中の見落としを診る人、これが二つ目だと思います。
 3つ目は、医療経済とか医療疫学とか、行政と関係があるような、基礎と臨床のすき間みたいな総合診療が三つ目だと思います。
 4つ目は、やはり救急とか研修というトリアージ的な救急とか研修医を教えるのは全人的に教えないと、私は腎臓だからといって腎臓だけを教えていたらいいドクターに育たないような気がします。ですから、研修医を教えるための講師としての総合臨床医が必要なのです。
 この5つぐらいが役目かと思いまして、うちの病院もやりたいと思っています。佐久総合が先ほど大橋先生がおっしゃいましたが、そういうことをやっておりますので、我々も南の佐久、北の沖縄中部を目指そうと思ってそれをやり始めましたが、それの核になる人がいないのです。だから、核になる人がいれば、是非そういうのを日本中に広げていっていただきたいなと思っています。

高久座長
 どうもありがとうございました。
 ほかにどなたか御質問御意見あおりでしょうか。せっかくの機会ですので。
 垣生先生、どうぞ。

垣生委員
 私は基礎ですが、女性という立場から邉見先生の先ほどの質、数、女性がいるということが挙げられていて問題なのかなと思って伺いたいのですが、どちらの方に問題があるというふうにお考えでしょうか。
 育児や出産のために一度お辞めになるという、ある時期働かなくなるということが量的な問題になるのか。そうした時に時間が制限されて余り働いていただけないので質的にも落ちるということなのか、そのあたりは何か調査の結果とかはおありになりますか。

邉見参考人
 調査は持っておりません。当院にも何名かの女性医師がいるのですが、これは個々の問題で、質が全体的にどうこうとは全く思っていません。どちらかといいますと、今、性差医療とかが出てきていますので、女性外来とかという問題も出ています。これを活用すれば、何ぼでもいけると思うのですが、やはり産休・育休の問題があると思います。
 それから、長い間3人ぐらい連続で子どもを産みまして来なくなると、遅れているのではないかということで、自分より若い医師の方がいろんな知識があるのではないかと遠慮させて引っ込んでしまう人もおられました。そういうふうに、自分が子育てやらやっている間に医療の進歩に遅れてしまったのではないかと、自分で思い込んでしまう人もおられます。
 やはりこれは、特に我々公的病院は公務員法がかなりきつくて、例えば9時・5時というふうな勤務形態です。これを10時から4時にしてあげるとか。ただ、看護師はみんな働いておるのに、なぜ医師だけそんなことをするのだと、また労働組合とかいろんな問題もありますので難しいところはあります。しかし、これから工夫して、1名を1名としてずっと使うと言うとおかしいですが、一人の医師の養成に1億円ぐらいかかるそうですから、やはりその人たちを女性医師は1であるというふうに言えるように、我々病院管理者もやっていかなければいけないのではないかと思いますが、今は0.7だろうとみんな言っております。

高久座長
 どうもありがとうございました。
 ほかにどなたか……。
 どうぞ、水田委員。

水田委員
 私は育児やその他の事情で勤務時間の特別配慮を求める女性医師の仕事量の評価をその期間0.7とする事は悪いこととは思いません。男性医師が育児や家事を引き受ける場合も同じです。しかし、先日ある、「女性医師の会」でこのような意見もあると言うことを紹介しましたら、その場合お給料も0.7となるのでしょうかと強いブーイングがありました。医師として、「1」だけ仕事ができる家庭状況でない場合、育児という大切な、また楽しいことも並行して行うために医師の仕事を0.7にすることで、その分医師としてのお給料も0.7ということが受け入れられない人が多いのですね。人間はあれもこれもはできません。あれもこれもすべてやりたいと欲張るから自分もパニックになりますし、周りも迷惑し、次第に仕事が続けられなくなります。まず自分のプライオリテイを決めて1つ1つやっていくことが大切だと思います。女性医師も価値観を変えるというか、そういうことも考えていただきたいと思います。
 次に、大学院の定員も増え、大学院に進学する人も増えていますが、その人達が将来も臨床を辞めて全員研究者になるのではなく、4年間の研究が終了後はまた臨床に戻ってきますから、大学院の定員が増えたからと言って臨床の医師が減ると言うことは問題にはならないと思います。

高久座長
 どうぞ。

邉見参考人
 おっしゃるとおりです。今の短期的な見方でこの大学院大学と、それから国立病院あるいは国立大学附属病院の独立行政法人化、新人医師、卒後研修制度、この3つがパンチとして一発に効いたと、一時的に医師不足問題が急激に起こったというふうに考えております。徐々には緩和されてくるだろうと思いますが。

高久座長
 ほかの方。
 どうぞ。

吉新委員
 私は大学の関係ではないのですが、自治医大の一期生なものですから、奨学資金制度がうまくいくかどうかが試金石になった人間として言わせていただきます。
 へき地・離島医療、そしてプライマリ・ケアをきちんと教育するためには、きちんとしたモデルのセッティングがないといけないと思うのです。大学でプライマリ・ケアを教えろとか、重要性を強調することはできると思うのですが、例えば自治医大であれば学生が早期のうちから卒業生のところへ行くとか、いろいろ現場に行って、そこに住んでいる住民がどういう思いで生きているのかとか、病気をしたらどうしているのかなというようなアンケートを戸別訪問を通してとるとか、現場に行って地域のことを肌で感じるというか、そういう学生時代からの経験が必要だと思うのです。
 さらに、卒業してからも、できれば研修医の最中に先輩医師のいるところに行ってみるとか、きちんとした受け皿をつくる、自分たちの問題を解決する仕組みを各医科大学につくるとか、新しい機能を作ってあげないと、多分従来のいろいろな組織に吸い込まれて、本来の目的を遂げることができないのではないかと思います。
 先ほど、邉見先生から、プライマリ・ケア医の位置付けという話がありましたが、やはりそのためにはプライマリ・ケア医を育成するきちんとした組織なり仕組みをつくらなければいけないと思うのです。
 現在、各都道府県でへき地医療支援機構ということでへき地を支援する仕組みは少しずつできていますが、量的には大変お粗末なもので、きちんとした支援が本当にできるというのは数件だと思います。これは、プライマリ・ケア医の足場が弱いためです。
 そういう意味では、例えば自治医大の卒業生も義務年限がちょうど終わるころに、県職員の職員を離れて市町村に移らなければいけないのです。公の県のポストというのは定数が限られていますので、専門医として県立病院にでもいない限りは臨床医として県に留まることはできないわけですが、その場合になかなか地元の医科大学の枠組みに留まれない。身分を変えて小さい市町村に行くことになり、大抵孤立するというか一人になってしまうということになりますから、なかなか支援も受けにくいところがあるわけですが。プライマリ・ケアを支える受け皿の狭さというか、日本の医療組織自体が実は非常に巨大なようで、一つ一つは大変きちんと運営されているのですが、他人を排除してしまうというような懐の狭さがあって、全体としてはうまくいっていない問題があります。
 プライマリ・ケア、へき地・離島の支援をするということであれば、できれば各大学にきちんとした大きな受け皿をつくって、そういったプライマリ・ケアを中心とした教育ができるような仕組みをつくっていただきたいと思います。

高久座長
 ありがとうございました。
 ほかにどなたか。
 どうぞ、辻本委員。

辻本委員
 邉見参考人のお医者さんの仕事の増大が、患者の要求が高くなっているという背景のもとにあるということを伺がって、患者の自立支援などということを15年間やってきましたCOMLとしても、何となく耳の痛いお話のように伺っておりました。しかし、それはやはり時代の要求の中で私は大切なことだと思っています。
 ただ、電話相談などを受けておりますと、行き過ぎているというような状況が、今、私たちも少し懸念を感じること、患者さんが暴走してしまっているところを何とかしなければいけないというのが1点あります。そのために、医学教育の中でコミュニケーションということが非常に重視されてきておりまして、これは大変喜ばしいことと歓迎もしております。ただ一方に、今申し上げたような患者の成熟・自立教育ということがないということを、今日の課題ではないかもしれませんが一言申し上げておきたいと思っております。
 それで、教育ということの中に、患者の立場からとしてお願いしたいのは、山形、福島のお取組、それが果たして県民の方にどれぐらいアビールしているのかということも含めて、やはり協働ということです。特に地域などにおいては、患者さんとか住民の人との交流の中で、この問題を一緒に考えていくということを、是非とも同じように働きかけていただきたいと思います。
 卒前教育の中で、地域、患者との交流ということをプログラムの中にさらに充実をさせてほしいという思いと、研修2年目のプログラムの中の地域医療ということ、そこにも実はいろんなところで話を聞くと、指導医の情熱が非常に足らなくて、指導医そのものが地域医療の重要性ということを理解していないという現実もあると思います。その辺への働きかけということもあっていいのではないかと一方で思います。
 さらに、地域特別推薦枠というお話が出ておりましたが、地域への働きかけということも含めてですが、学部編入というか、そういう枠をもっと広げていくことで、地域医療に興味関心を持つというお医者さんが増えるのではないかという期待も患者の立場としては持っておりますので、以後の議論の中でそうしたことも取り上げていただけたらありがたいと思います。
 以上です。

高久座長
 どうもありがとうございました。
 地元枠は、私も非常に結構だと思うのですが、これは日本の医科大学ではないのですが、アメリカの一部の医科大学では単なる地元枠ではなくて、へき地で、非常に医者が少ないところの出身で、医者がいないということを肌に感じている地域の出身の、もちろんある程度優秀でなければならないし意欲もなければならないと思いますが、そういう意欲を持った学生を地元枠で入れるということで、きちんと選んで、せっかく枠をつくられるならばそういう学生を努力して選んで入れるという方が、ただ枠を作っている分入試をするよりはずっと有効ではないかと思います。そういう外国の例もありますので、そういう点を参考にしていただければと思います。
 どうぞ、福田委員。

福田委員
 この会議のタイトルが、医学教育の改善・充実ということになっていますので、今までのお話をいろいろお聞きすると、いろんな問題が出てきております。医学教育上の問題点というのは、やはり専門医の育成に偏ってきていた。先ほど松尾先生や邉見先生からもお話がございましたように、やはり総合診療をできる医師をどうやって育成していくかというのが大きな課題の一つではないかと思います。大橋先生の提言の中でもたしかそれが入っていたと思います。
 ところが、この認識が十分でないのと人材が十分でないということがあって、例えば医師会のかかりつけ医と混同されるようなことではまずいのです。この辺をどうするかが一番問題ではないかと思います。
 田中先生がいらっしゃるので、総合診療部でどういう教育が必要かということと、それからあと一つは、総合診療ができる人が余りいないのではないかということを伺いたいと思います。
 実は私のところでは、附属病院の総合診療部に開業医の先生をお呼びしましたが、全く違います。非常に優れているのです。そのような人材をいかに育成するか。国立大学でも総合診療部はありますが、この体制をどのように変えていくかということもお伺いしたいと思います。
 田中先生、もし御意見がありましたらお願いします。

高久座長
 田中先生、どうぞ。

田中委員
 総合診療部がある大学が増えてきたのですが、1つ大きな問題は病院に居場所がないということなのです。要するに、開業はする。地域の診療所に行くことはあるかもしれないが、例えば中核病院で腕を磨くといってもどこに行ったらいいかわからない。受け皿が、総合診療科と確かにつくっている病院も最近増えてきていますが、まだまだ全然少ないです。
 ですから、例えばアメリカではホスピタリストというのがあって、開業医のGPに相当するような病院のGPというポジションがありますが、そういう病院の受け皿ができないとなかなか展望が開けてこないのではないかと思います。ただ、病院の中でどのようにそれを増やしていくのかというのは、私も今の時点ではいい案が思いつかないのです。
 ただ、先ほど大学院の重点化と卒後臨床研修と開業医の増加のトリプルパンチで、医師需給が非常にアンバランスになっているというお話がありましたが、私はこれは、2年臨床研修が終ったから一息つけるとは思っていなくて、後期研修で結構病院にそのまま残るという人たちは多いような情勢なので、まだまだこのトリプルパンチ状態は続くのではないかと思っています。
 ですから、やはり社会的に、例えば総合診療医というものの位置付けを明確にして、病院でもそういうものを増やしていくことが大切だということを、どこかで社会制度としてアビールしたり補助したりするスキームが必要ではないかと思います。

高久座長
 どうぞ。

松尾委員
 今の田中先生のお話なのですが、実は名古屋のトップクラスのある病院の病院長先生が、うちの内科医の半分はもう総合内科でいいと言っていました。専門家に救急をやらせるほど危ないことはない、もう見ていられないと言うのですね。
 それともう1つ。今、田中先生がおっしゃったように、後期研修の時に、自分のところの研修医を自分の病院に置いて、3、4年目に何をやらせているかというと、救急です。専門科には直ぐに行かせずに、麻酔科とかICUとかでやるのですね。
 ですから、結構大きな病院でも、総合的な診療をやるドクターのニーズというのは増えてきているということはみんなわかっているのですが、それをレジデンスとか変な格好でやるのです。だからゼネラリストというのは、さっき邉見先生が言われたように、まだ低く見られているということがあると思います。
 地域枠でとったような人は、そういう病院で働くゼネラリストの種にする、核にするというような、特別なプログラムを組んで、私も関連病院では特に中小の先生には言っているですが、ゼネラリストとしてやる人は給料を倍出してくださいというふうにお願いしているのですが、そんなようなことをして自己増殖させていかないといけないのです。例えば地域枠の人だけで地域医療を支えるなんていうことはとても無理なので、自己増殖のしかけを考えないとなかなか増えないような感じがします。

高久座長
 どうもありがとうございました。
 ほかにどなたか御意見はおありでしょうか。
 どうぞ。

福田委員
 従来の学部の臨床実習の教育のやり方を見てみますと、ベッドサイド・ラーニング、各診療科の診断のついたような人のところでやっています。外来の初診の実習というのはほとんどやられていません。これが患者さんと接する第一番目になるのですが、その辺がなおざりにされてきたというのが1つあると思います。
 その点では、大学でできないかもしれないから、卒前の段階で関連の協力病院に出して、そこで実際にやらせるということがこれから必要になるのではないかと思います。初期診療外来実習です。意外に、程度が低いと言ってはおかしいのですが、そんなのはどうでもいいというような認識でいたと思いますが、それを学部の教育の段階で導入していくことがかなり大事ではないかと思いますので、もしそういうのを導入しているところがあったら紹介していただくとか、臨床実習の改善がその辺からできるのではないかと思います。

高久座長
 どうもありがとうございました。
 それでは、事務局の方から今後の日程をよろしくお願いします。

小谷医学教育課長補佐
 それでは、今後の日程について発表させていただきます。
 配付資料の中で当面のスケジュールということでお配りをさせていただいておりますが、次回の開催は9月6日の火曜日、13時30分から、場所はこの三田共用会議所第3特別会議室で開催させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 議事の内容といたしましては、事務局の方で前回また今回の会議における委員の皆様方の御意見、参考人の方々の御意見、あるいは最近の各種の医学教育について、また他省庁の検討会など、あるいは各種団体ございますが、そういったところからの提言などを項目ごとに整理させていただいた上で、それをもとに次回は卒前教育を中心に御審議いただきたいと考えております。
 なお、スケジュール(案)にもございますように、第4回会議は10月4日火曜日、第5回会議は11月1日火曜日に開催する予定でございますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 以上でございます。

高久座長
 非常に過密な日程で申しわけありませんが、そのようになっていますのでよろしく御予定をお願いします。
 本日はいろいろ御意見をいただきましてありがとうございました。特に、参考人として御出席いただきましたお二人の方には、御多忙のところ、貴重な御講演を賜りましてどうもありがとうございました。


(高等教育局医学教育課)

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