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私学共済年金制度の在り方等に関する調査研究協力者会議

2003年12月16日 議事録
私学共済年金研究会(私学共済年金制度の在り方等に関する調査研究協力者会議)(第3回)議事要旨



1 日   時     :平成15年12月16日(火)13:30〜15:30

2 場   所   :東京ガーデンパレス 3F「扇」

3 出席者  
委          員 :青木、雨宮、上野、神田、北村、黒田、真田、角田、田村、長木、西村、吉田の各委員
事   務   局 :久保私学行政課長、山本私学共済室長 ほか関係者
厚生労働省 :藤田年金課課長補佐 ほか関係者
私学事業団 :小池常務理事   ほか関係者

4  議事概要
(1)    委員の出欠状況報告
  事務局より委員の出欠状況の報告がなされた。

(2)    議題に関する資料説明及び質疑・意見交換
[議題1 年金制度改正に関する厚生労働省案について]
  「資料1 持続可能な安心できる年金制度の構築に向けて」に基づき、年金制度改正案について厚生労働省より説明。
  説明後、次の質疑等が行われた。(●委員、◎厚生労働省)
 個人単位の給付と負担の関係の見直しとなる年金分割制度の導入については、専業主婦の加入する第3号被保険者制度が解消され、第2号被保険者制度と合体し、その後、新たに制度を分けるという話なのか。また、専業主婦の負担が増えるのか。

 専業主婦は昭和60年以前は任意加入だったため、加入していない方には年金が全く出なかった。このため、専業主婦の年金権を確立するということで昭和60年に基礎年金制度を作り、専業主婦は第3号被保険者と位置付け、基礎年金を給付することとされた。一方で保険料負担については、第2号被保険者全員が負担するとした。この第3号被保険者制度については議論があることから、今回の年金分割では、夫の賃金の半分は妻の働き、つまり共働きの夫婦であるものと考え、二人が65歳になったときにはそれぞれの名義で基礎年金と厚生年金を出そうというものである。このため、新たに第3号被保険者の方から保険料を徴収するという話ではない。

 保険料負担が増えるということではなく、現状どおりということか。

 世帯単位での負担額と給付額は変えないという趣旨である。

 現役世代と若年者の世代の負担について、すでに年金を受け取られている受給権者に対して現役世代から不公平感が出ているかと思うが、この点の調整はどうなのか。

 従前は、今後年金を受け取る方への調整を基本に制度改正をやってきたが、今回は世代間の公平ということである程度、既裁定年金も調整した方がいいのではないかと考えている。ただ、年金の名目額を減らすというのも難しいので、既裁定年金については物価でスライドさせていくこととしている。つまり、1%物価が上がったら給付を1%上げるところを0.5%にさせていただくといった形で既裁定者にも痛みを分担してもらおうというようなことを考えている。

 報道によると、改正内容について、年内に結論づけるものと来年になってからのもの、さらに、制度全体の考え方については一年ぐらい議論をしようという、3つくらいに仕分けをするようなことが書いてあったかと思うが、その辺の段取りはいかがか。

 まだ流動的であるが、年内に決めなければならないのは予算に関係するもの、具体的には国庫負担の2分の1への引上げや保険料といった、お金の出入りに絡むことである。また、来年2月中頃の法案提出期限までにその他の改正事項の調整が必要であり、制度の根本の議論に及ぶことになれば、もう少し時間が必要になろうかと思う。

 今回の年金分割は第3号被保険者だけが対象なのか。共働きの場合も合算して二分するという話もあったと思うのだが。

 今回は第3号被保険者制度の解決としての年金分割であり、第3号被保険者制度に限定したいと思っている。2号同士の夫婦の場合は結婚していれば分割しないが、離婚分割については2号同士の夫婦も2号と3号の夫婦も分割するということで対応することになろう。

  [議題2 年金制度改正に関する私学共済法改正の方向性等について]
  事務局より「資料2 年金制度改正に関する私学共済法改正の方向性(案)」に基づき、私学共済法改正の方向性等について説明。
  説明後、次の質疑等が行われた。(●委員、○事務局、□私学事業団)
 「65歳以降の老齢厚生年金の繰下げ制度の導入」について、厚生年金との並びは考えずに国共済の対応を踏まえて検討するとしているのは、国共済に繰下げに関する別の規定が既にあって、それを踏まえる必要があるということなのか。

 繰下げについては、厚生年金は制度を持っていた時期があるが、一方で共済側は繰下げ制度を持たなかったということも過去にあったので、そのような経緯も踏まえながら検討してみる必要があると考えている。ただ、国共済が厚生年金に準ずる改正を行うということであれば、それを踏まえながら私学共済も考えていくことになろうと思っている。

 今は私学共済制度には繰下げ制度はないのか。

 支給開始年齢の原則を60歳から65歳に引き下げるという改正はあるが、支給開始年齢を自由に選択できるようにするという、今回の繰下げの制度はない。厚生年金についても今は繰下げ制度はない。

 「保険料水準の固定」について、厚生年金との並びの改正は行わないとなっている。これは、給付率については厚生年金の変動と同じようなものを適用する一方、保険料率の固定はしないということを意味しているものと思うが、給付率の変動は職域部分まで適用することになるのか。それとも厚生年金相当部分までなのか。

 私学共済制度の趣旨から職域部分も国共済を準用している関係上、国共済がどのような対応をとるかということを踏まえる必要がある。過去の例としては、前回の制度改正の給付の5%カットについて、職域部分も含めて実施したということはあるが、今回の改正事項への対応については、国共済でもまだ確定されていない。

 「有限均衡方式」と、私学共済制度の課題である保険料率引上げの前倒しとの関係がはっきりしない。厚生労働省の考える有限均衡方式では50%台の給付率を実現するために積立金の一部を取り崩すようだが、私学共済制度としてはその点を倣う必要はないと思うのだが、いかがか。

 積立金の取り崩しを行えば保険料が安くなるということは概ね間違いないとは思うが、一方で閣議決定で示された課題である保険料の引上げの前倒しには対応できないことになってしまう。また、積立金は年金資産として保有しているものであるが、その一部は私学共済制度の他の事業に貸し付けているものもあるため、単純に積立度合いを10から1に取り崩していくことはできないのではないかと思っている。

 制度改正の方向性は厚生労働省の案に私学共済が引きずられ、独自性がないように思える。最近は学校破綻の問題があるが、これに対する救済措置を共済制度として独自に打ち出せるだろうか。

 日本私立学校振興・共済事業団としては、破綻が懸念されている学校法人に対する融資の新しい姿というものが考えられないかを検討している段階である。

 文部科学省としては、共済制度での措置というより、私立学校法の改正をしながら、一方で破綻対策をどうするかということを同時に打ち出そうと考えているところ。まず骨格を作り、その後、具体的に検討して導入可能なものからやっていくことになろう。

 御指摘の救済措置については、直接、共済制度には関係しないかと思う。ただ、仮に学校が破綻したら掛金が入ってこないし、教職員が退職するので加入者が減る。そういう点に関しては共済制度としてどのように対応していくかということはあるだろう。

 積立金の取り崩しについては、私学共済制度の場合、日本私立学校振興・共済事業団の貸付制度へ貸し付けている資金もあるので、簡単に取り崩すわけにはいかない。他制度に同調して取り崩していけば、確かに保険料率は下がるかもしれないが、積立金というものは私学共済制度全体を支えているという側面もあるので、その点も踏まえて検討されるべきかと思う。

 今後、具体的に法改正の作業に取り掛かることとなるが、法改正の最終的な内容については各委員より文部科学省に一任の上、法案を国会に提出していただき、その後、先ほどご説明のあった改正の方向性から大幅に変更があった点については、事後的に報告してもらうこととしたい。

 承知した。次回会議において改正法案のご説明をさせていただくこととしたい。

  [議題3 公的年金制度の一元化の推進に関する対応について]
  事務局より、公的年金制度の一元化の推進に関する閣議決定で示された2つの課題のうちの「保険料の引き上げの前倒し」の検討状況について説明。(○事務局)
  公的年金制度の一元化の推進に関する当面の課題である、私学共済年金の保険料引上げの前倒しについては、前回の研究会において、厚生年金で予定している保険料率の引上げ幅と同程度で引き上げた場合など、複数のケースを試算したものをお示しするとともに、加入者や学校法人の負担額への影響なども御覧いただいたところ。
  その中で、もう少し緩やかな引上げ幅が考えられないのかといった御意見もあり、私どもとしても検討を進めてきたが、一方で、引上げの前倒しの試算を行う上での前提となる基礎年金に対する国の負担割合の問題並びに厚生年金の保険料率の引上げ幅や最終料率の在り方等について、関係各方面で様々な議論が交わされ、現段階においても政府案として決着をみていない状況にある。
  また、年金制度改正の内容については、例えば70歳以上の在職者については被保険者として保険料を負担していただくとともに年金の支給制限を行う案など、年金財政に影響する様々なメニューが打ち出されてきているところ。
  保険料引上げの前倒しの検討材料となる年金財政の将来見通しを試算するにあたっては、このような点が政府案にどのように反映されるのかを踏まえつつ、できる限りの変動要素を織り込むことが適切であると考えている。
  したがって、今後、年金改正の政府案が確定した後に、その内容を踏まえた前倒しに関する新たな試算を作成し、次の研究会でお示しするとともに、事務局としての考え方等も含めて御議論いただきたいと考えている。

  [議題4 加入者推計に関する調査結果について]
  日本私立学校振興・共済事業団より「資料3 「加入者推計に関する調査」について」に基づき、調査結果を報告。
  報告後、次の質疑等が行われた。(●委員、○事務局、□私学事業団)
 私学を取り巻く環境については、株式会社化や構造改革特区、さらには小泉総理が言っている幼保一元化などの動きがあるが、この点は加入者推計と相関関係はあるのか。

 そのような不確定要素は一切見込まずに推計している。

 このような動きは私学にとって大きな問題。株式会社やNPOの参入となれば学校法人以外の学校の種別ができ、私学共済に加入しない民間学校が多く出てくる。この場合、この加入者推計のような動きを維持できるかが問題となってくる。
  また、この調査によれば西暦2050年で悪い場合は35万人、良い場合は38万人程度で、前回と10万人以上の開きがあるが、これはどのような見方によって変わってきているのか。

 前回の試算では、機械的に学齢人口の変動に比例して加入者が減っていくという計算で数を出している。今回の調査では、将来人口の変動以外の要素として、進学率の向上や経済成長による教育費への影響等、別の要素も入っていることから、10万人の差として現れてきたのだと思う。
  なお、一番厳しいケースの見込みを立てた上で財政の安定が保てる保険料の引上げ計画を策定することにより、今後における私学共済の安定的な運営を立証できることになろうかと思っている。

 加入者数が35万人を維持できれば、私学共済制度としては十分にやっていけるとは思う。

 調査結果は将来推計として有益なものだと思う。ただ、公的年金制度の一元化の全体の流れの中で、油断はできないだろう。

(3) 次回の日程について
  私学共済法の改正案を来年の通常国会に提出した後、連絡することとされた。

(了)



(高等教育局私学行政課私学共済室)

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