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:公開されている財務情報については、非常に簡単なものから何ページにも渡って説明しているものまである。早稲田大学のホームページによる公開はどのような考え方、どのような方向で作成されたものか。
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:早稲田大学では、だれでも、どこからでも、いつでもアプローチできる形で情報公開を進めようという方針の基にホームページの掲載について検討し、この形になった。計算書類については、所轄庁への提出書類として作成した内容をそのまま掲載している。また、不明な点がある場合、Eメールで問い合わせも受け付けている。さらに、今年度からは、四半期報告を載せることとし、各四半期ごとに予算がどのように執行されているか分かるようになっている。大学広報などによる広報は、どちらかといえば情報を共有するということであり、もっと広く、社会のために積極的にいろいろな工夫をして情報提供するのが本来の情報公開、情報開示であると位置付けている。
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:早稲田大学のディスクロージャーへの取組みは、増減分析までされており、上場企業なみだと思うが、これは格付けの取得に当たっての要請でもあったのか。
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:そういうことではない。
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:この中では、部門別内訳表は出されていない。
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:基本金、負債、寄附金の内容なども詳しく掲載されており、かなり進んだ内容の情報公開をしていても、部門や学校ごとの内訳表を公開するのは難しいということか。
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:財務状況に関する外部からの問い合わせはどのくらいの頻度であるのか。
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:消費収支が最終的に収入超過か、支出超過か、あるいは貸借対照表上の繰越収支差額をどう評価するかについて説明しているのか。
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:四半期ごとの収支を見ると、経年推移で借入金が減っているという記述はある。格付けの評価の際に、繰越消費支出超過や負債が多いという指摘はあったが、それよりも帰属収支差額が重視されたようである。また負債については将来のキャッシュ・フローの中で賄っていけると判断されたようである。
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:流動的な社会の中で、教育研究活動が生業として成り立っていくかということについて評価を受けたのではないか。会計基準の問題点を整理するに当たって、他にこういう事項を入れなくてはならないのではないかということがないか。例えば、利益という概念はないにしても、収支差額をどのようにとらえて説明していくかというのは、大事なことだと思われる。資本取引と損益取引をどう区分して、少なくとも損益取引をどう評価するかについては分かるようにすべきではないかと思われる。
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:法人単位で見た場合、例えば国所轄の大学法人が中高も併せて設置している場合、中高分は公開しなくていいという取扱いは、整理として難しいのではないか。
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:次に、財産目録の作成例について、ご意見を伺いたい。
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:情報公開を前提とした時、単独で財産目録を考えるのか、事業報告書の補完と考えるのかによっても位置付けが違ってくる。
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:財産目録の位置付けを貸借対照表の明細表と考えれば、実務的には案1の方が作成しやすいので、案1の科目の内訳を細かく表示するようにすれば、それで足りると思う。また、財産の概要を別の切り口から示すという位置付けで考えれば、案2でもよいと思う。
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:貸借対照表は流動法的に作られた資産の明細であり、棚卸法に基づいて作られた財産目録との違いはないのではないかと思う。民法の要請では、収支計算書と財産目録の2つの計算書類について、収支計算だけでは財産の状況が分からないので、棚卸法によって財産目録を作成することとしているが、現在の会計は、非営利であっても流動法に基づいて貸借対照表を作っているのだから、むしろそれをベースにした財産目録にした方が混乱を招かないのではないかと思う。
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:財産目録の作成様式については、短大協会でも議論をしたが、基本財産と運用財産を分けるべきという意見はなく、作業的には案1の方がやりやすいという意見が多かった。また、建物の明細の作成に当たって、図書館が独立した建物で、図書館だけの機能を持った建物であればよいが、そうではない場合はどう整理するのかという質問もでた。つまり、建物の別で区分するのか、用途で区分するのか、説明がないと分かりにくいかもしれない。
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:貸借対照表上の特定目的引当資産が有価証券の形態になっている場合、有価証券の現在価値をどうやって表すかということが問題になってくると、案1ではやや不十分である。しかし、案2のように基本財産と運用財産に分けるということになると、そのように区分することの意味を各学校法人がどこまで分かってやっているのかも問題である。
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:財産目録については私学法上すでに作成、備え置きが義務付けられている書類であり、改めて様式を示してそれに従ってもらうという意図はあまりなく、今までやっていただいていることを継続していただければよいと考えている。実態がばらばらで、ある程度統一を図るべきという意見があれば、参考例ぐらいは示してはどうかという判断である。
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:実態としては、案2で作成しているケースがほとんどだと思う。実務上は、基本財産イコール基本金なのかという部分の判断で難しい部分がある。しかし、案1が示されれば、作成は難しくないので、実務上の問題はない。
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:案2の、基本財産、運用財産、収益事業用財産の区分は私学法上の区分でもあり、多くの学校法人では、寄附行為上も同じように財産区分をしていると思うので、その考え方をにわかに捨てるのはどうかと思う。案1で何らかの形で基本財産という概念を残しておくということも考えられるのではないか。
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:公益法人の場合は、財産目録で、基本財産と特定資産が分けられている。公益法人の場合は貸借対照表の表示をそのまま財産目録でも使っていて、公益法人の会計基準を検討する委員会の中で、貸借対照表の貸方を「基本金の部」としようかという議論の際、借方の基本財産と区別がしにくいので、基本金という表現をやめて、「正味財産の部」としたと聞いている。
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:例えば案の1にした場合、アローランスが広いというのがイメージできるよう、科目を全部表示するのではなく、「・・・」を入れた方が、実務が流れやすいのではないか。また、この例では合計の記載がないので、資産、負債の内訳だけ書けばよいのかととられるが、基本金の中味を何で持っているかを財産目録で示すのか示さないのかも検討が必要だと思う。
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:次に、基本金の取崩しの弾力化について整理しているが、これについてはどうか。
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:例えば第2号基本金について、将来計画を見直したら取崩すということで本当によいのか。ガバナンスとして、それで果たしてよいのかどうか、例えば、建物を建てるために寄附金を集めたが、建設計画を見直して中止となった場合に、取崩してしまってよいのか。そこには、ガバナンスの基本的な問題が出てくると思う。枠組みをきちんと作っておく必要がある。
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:第2号基本金については、組入れに恣意性が介入するのではないかという批判があり、計画がしっかりしていれば組み入れてもよいということになった。第2号基本金の取崩しを弾力化するのは、計画性を重視してきた流れに逆行するのではないか。
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:実際問題として、経営難で支払いができなくなったような事態になると、取崩しもやむを得ないということもある。
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:取崩しを弾力化するのであれば、ここまでは認めるが、これ以上はだめだという指針が必要である。外部との約束に対して、どうやってガバナンスを働かせるのかという問題がある。法人の自助努力で積み上げたものと外部との約束で積み上げたものでは制約の内容が違ってくると思う。
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:基本金の在り方について、報告書に盛り込むためには、もっと基本的な議論が必要だと思う。例えば国立大学法人については、損益計算書を作成し、経常収益、経常費用、経常利益という概念が入ってくるが、それとの比較はどうなのか、というような議論も必要だと思う。
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:第2号、第3号基本金については収入源泉から見てもあまり難しい問題はないと思う。問題は第1号基本金であり、収入源泉から分けたものを基本金という形で表示しながら、その金額が増加していって、なおかつ財産内容を保持していかなければならないという考え方は他にはない。第1号基本金の問題さえ将来の指針が明らかになれば、第2号、第3号基本金の取崩しの弾力化の問題を取り上げても問題はないと思う。
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:基本金について、社会的に特に大きな批判がある問題点は、帰属収入から基本金組入れを先に差し引くという計算構造であるので、その点も整理する必要があると思う。また、第2号基本金の取崩しの弾力化のことを言うと、組入れについても弾力的な取扱いができるという考え方を助長するおそれがあると思う。
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:他の法人との比較の検討など、必要な議論が残っているという認識は持っているが、当面の措置としては、情報公開に向けてこういうこともあるのではないかという整理もあるのではないか。残された課題は、来年度以降も検討を続けてまいりたいと考えている。
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:今の会計基準の中では「諸活動」という表現がよく使われるが、「事業」の方がなじみがあり、トータル的なイメージがあるということでは「事業」でも通じやすいかと思う。ただし、収益事業をやめたような場合には「事業の見直し」という言い方はなじまないという意見もあり、その場合は「諸活動」という表現もよい表現だと思う。
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:現行の学校法人会計基準は中長期的な収支均衡を目指しているが、単年度の収支均衡は出さなくていいのかということについても議論をして応えていかなくてはならないと思うので、その点も「見直しの方向性」の中に盛り込んでいただきたい。 |