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学校法人会計基準の在り方に関する検討会

2003年12月25日 議事録
学校法人会計基準の在り方に関する検討会(第7回)議事要旨


1.日   時     平成15年12月25日(木)10時00分〜12時20分

2.場   所   文部科学省別館10階   第5・6会議室

3.出席者  
(協   力   者) 大橋英五、片山覚、齋藤勉、齊藤秀樹、佐野慶子、清水至、西村昭、長谷川昭、松本香、森公高、森本晴生の各委員
(文部科学省) 加茂川私学部長、久保私学行政課長、栗山私学助成課長、浅田参事官、岡参事官付学校法人調査官   他

4. 議   事
(1)    事務局から「学校法人会計基準の見直しの論点整理等について」の資料に基づいて説明があり、その後、討議を行った。

○:委員      ●:事務局

:学校法人制度の改善方策についての最終報告で、収益事業に係る計算書類の取り扱いについて述べられているが、資料2の財務情報公開対応関係の論点整理のうち「公開する書類の範囲」の中には入っているのか。また、私立学校法改正において、理事、監事のうち少なくとも1名は選任の際現に当該学校法人の役員又は職員でないものとすることについて、全員が重任することは不可能と解するべきか。それとも学内関係者以外の者が1名入っていれば重任は差し支えないと解してよいのか。

:学校法人の事業には本来の教育研究事業と収益事業の2つがあり、会計処理の仕方が違うだけで学校法人会計としては公開の対象になると考える。
   また、外部理事の重任については、国立大学法人法にならって、再任の場合は、「外部理事とみなす」という規定をおくことを考えており、重任ができる。

:現行の会計基準により作成した内訳表について、一定の会計処理方法がとられていることから、直ちに各部門の予算の編成あるいは管理の実態を正確に反映したものではない旨を明らかにして公開するとしているが、各学校法人が自ら明らかにする必要があるのか。

:内訳表を作成する際、人の貼り付けについてはルールが決まっている。注釈をつけないで出した場合に、そのルールを知っている人はいいが、知らない人に対しては誤解を招くおそれがある。

:現行の内訳表は補助金交付の効果等を把握するためのものである。外部報告を目的とする場合、附属明細書としての内訳表は現行のものとは変わってくるのではないか。現行の内訳表を公開することには無理があると思う。新しい会計基準では内訳表の作り方も変わってくるはずなので、注釈をつけるというのは過渡的な処理だと思う。

:法律的に解釈すると、私学法で作成を求める計算書類と私学振興助成法で作成を求める計算書類は別のものと整理せざるを得ないが、会計基準によって作成された計算書類を活用してもよいのではないかということである。われわれの整理はどうしても法令的に見た場合の整理になってしまうが、会計的な観点から見て不都合と思われる点があれば、ご指摘いただきたい。

:ステークホルダーの立場からは、設置されている学校ごとに収支がどうかということは必要な情報かもしれないが、これは補助金の効果を見るための内訳表であると言って説明するしかない。国立大学は文系、理系を問わず全て同じ授業料であるが、それをどう説明するかは難しいと思う。ステークホルダーをどこに見出すかということが課題だと思う。今後、内訳表を見直しても、学部の内訳が納得のいくものになるかは疑問がある。法人全体として運営しているということが公開できればいいと思う。

:学校法人会計基準に定める様式を参考としつつ、各学校法人が適宜作成した計算書類は、公認会計士の監査対象となるのか。

:法令的には別のものであっても、会計として真実を示すものは一つだけなので、具体的なものを指し示さないと、「参考」で「適宜」作成するということでは困るのではないか。

:私立学校法上の計算書類について監査を受けるのは各学校法人の任意であり、義務付けではない。

:各学校法人が適宜工夫して作成するということは、学校法人会計基準に準拠してということが前提であり、それを改ざんしてよいということではないと思う。コンセプトとして、簡略化したり分かりやすくしたりするということだと思う。

:法律的には別のものだと言っているだけで、会計基準に従って作ったものがあれば、普通はそれを使うという認識がある。原則として2種類の計算書類を作ることを考えているわけではない。

:各学校法人の経営状況がどうなっているかを説明するために公開するのであるから、内訳表を出さなくても情報公開の目的は達するのではないか。内訳表を公開したいところはしてもいいが、義務化する必要はないのではないか。

:それでは公開に耐えられる内訳表を作ろうという方向で議論するということについてはどうか。

:人の貼り付けについては実態を踏まえて見直すという作業はできないこともないが、やはり内訳表を出すと、その数字だけが一人歩きすると思う。収支バランスが学校によって偏っている場合もある。

:内訳表は内部資料としては必要であるが、一般的にはユニバーシティとして評価されることが多いので、無理に内訳表を公開する必要はないのではないか。

:情報公開をもっと積極的にとらえるべきで、仮に赤字の部門がある場合にその部分を公開するのを避けたいというのはおかしいと思う。内訳表の問題は、ほとんど人件費の部分だけのことであり、必要であればそこを見直せばよい。情報公開で何を説明するのかということについて、学校法人の場合、決して全体の状況だけではないと思う。実際には自分の所属する学部が存続するのかということも気になることである。

:企業会計ではセグメント情報とはどこを見るものなのか。

:企業では支店ごとというセグメントというのは基本的にはやらないと思うが、学校法人においては、各部門でどういう形で学納金が使われているか把握することが求められると思う。少なくとも文系、理系、医学系ぐらいのセグメントは必要ではないか。方法はいくつかあると思うが、基本的な構造は同じだと思う。

:現在の会計基準は私学振興助成法への対応のための基準であり、補助金だけでなく、情報公開にも対応できるような、学校法人が拠りどころとすべき会計基準をどう考えればよいか。私学振興助成法の適用を受けていない学校法人にとって学校法人会計基準とは何なのか。

:私学振興助成法の適用を受けない学校法人も、会計基準に従って会計処理を行うことが望ましいと指導している。

:予算を作る段階で内訳表を作ることはない。あくまでも、内訳表は、まとまった決算を便宜上分けているに過ぎず、現行の方法が正しい方法かどうかは分からない。

:コストの側面から実態を把握するという手続き自体は問題ないと考えている。医学部の臨床系の教員を学部に貼り付けると病院の収支を正しく表さないが、医学部と病院の問題は教育研究の在り方にかかわる問題でもあるので、非常に難しい議論であると思う。したがって、人件費の部門別内訳表への配分については、今の考え方が限界だと思う。

:人件費については、予算管理との兼ね合いで、トータルで全体を見ながら貼り付けをすればよいと思うが、それでもミスリードとなる可能性はなくならないと思う。

:配賦基準もいくつか方法が考えられるが、採った方法によって全体がゆがんだ形になることはないと思う。

:基本的には内訳表を含めて公表するという整理でよいのではないか。社会に対して積極的な公開の姿勢を打ち出すという方向で進めたらどうか。

:そもそも各部門ごとに見た場合でもそれぞれ収支バランスがとれていなくてはいけないものかという基本的な問題がある。国立大学では大学トータルで収支バランスを見るということになる。

:本質的には部門ごとに収支バランスがとれているべきだが、とれていない場合でも、文系と理系で収支がどう違うかということを知らせる責任はあると思う。知らせた上で、コンセンサスを得るという手続きが必要である。

:ステークホルダーが学生であるとすれば、内訳表はどこまで出すべきであるか。

:例えば経済学部の学生の授業料で法科大学院を支えなければならないという状況も起こり得ることである。

:それを説明することが世の中から求められているのではないか。

:私学が健全な運営をしていくためには、セグメントごとに収支を出して、それを説明していく必要があると思う。ステークホルダーが明確でないと言われるが、幅広に、多くの関係者に対して説明責任を負うのが公共的な法人としての私学の役割だと思う。

:財産目録及び事業報告書の様式等については、様式例を示すことが適当であると思う。

:情報公開の相手方について、閲覧を希望する者はみな利害関係者といえるのではないか。

:情報公開の相手方を「入学・入園希望者その他の利害関係人」としたのは、社会福祉法人の規定等を参考にした表現であり、現在のところこの案で調整している。利害関係人の例示の仕方についてはさらに法制的に詰める必要がある。

:「非開示」とし得る情報について、「企業秘密」に当たるような情報は、今の会計基準では想定されないのではないか。

:事業報告書における「企業秘密」の取り扱いはどうするか。

:例えば第2号基本金の組入れ計画などは「企業秘密」に当たるという判断もできるが、基本金の明細は公開対象ではない。また「企業秘密」であれば、普通はそのような情報は事業報告書には書かないと思う。

:「非開示」とし得る情報については、今までの議論で出てきたものを例示しているが、具体的な内容を想定しにくいものもあるかと思う。

:個人情報については、具体的には職員の個人名、給与額等が示されているが、内容を限定する必要はないのではないか。また、法人の運営の基本に関わる重要情報保護に値する情報かどうかについては個別に検討が必要だと思われる。

:企業で言えば、例えば研究開発に関わる情報で、製品の原価や耐用年数などが「企業秘密」に当たる。そういうものはどの法人にも必ずあるものであり、学校法人だからない、ということはないと思う。「企業秘密」という表現が適当でなければ「運営上の機密」としてはどうか。また、「不正な目的への対抗等」とは、企業で言えば、訴訟の和解金額などがそれにあたる。「企業秘密」とは違うが、保護すべき基本的な項目だと思う。医学部附属病院を持っていれば、訴訟もあると思う。

:現行の会計基準により作成した計算書類を公開した場合の問題点整理ということであれば、空の基本金が存在することなど、現行の会計基準のひずみについては触れる必要はないのか。

     (2)    森委員から学校法人会計基準見直しに係る論点整理に関して、資本取引と損益取引を区分した計算書類のイメージについて説明があり、その後、意見交換を行った。

:学生納付金を資本取引にあたるものと損益取引にあたるものに明確に分けるのは難しいと思う。また、設備費や維持費として徴収したものについてはどう整理すればよいのか。

:いろいろな考え方があり、今後議論をしていく必要があると思うが、よりシンプルで分かりやすい考え方で整理しないと実務は混乱することになると思う。

:現行の学納金の徴収システムの中で資本取引と損益取引を区別するのは難しいが、例えばイメージとして考えた場合に、学納金の中に特別施設費のような形で特定の目的で集めるものがあれば、収受の段階で基本金対応資産との関係が明確なものもある。

:学納金を入り口のところで分けて徴収すれば、取引の仕訳は容易に理解できる。しかし、現状では施設の維持のためにお金がかかること自体が問題となっている。

:結局、学納金は使途を指定して徴収するものではないので、それを何に使うのかの判断は学校法人にゆだねられている。

:新しい公益法人会計基準では、寄附者の意図が明確な財産とそうでない財産を、指定正味財産と一般正味財産に切り分けた考え方をとっている。

     (3)    次回は、1月16日に開催することとした。

以   上



(高等教育局私学部参事官室)

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