審議会情報へ

学校法人会計基準の在り方に関する検討会

2003年10月23日 議事録
学校法人会計基準の在り方に関する検討会(第4回)議事要旨


1.日   時     平成15年10月23日(木)13時30分〜15時30分

2.場   所   文部科学省分館4階   401会議室

3.出席者  
(協   力   者) 大橋英五、片山覚、齋藤勉、齊藤秀樹、佐野慶子、清水至、西村昭、長谷川昭、松本香、森公高、森本晴生の各委員
(文部科学省) 加茂川私学部長、栗山私学助成課長、浅田参事官、岡参事官付学校法人調査官   他

4. 議   事
(1)    事務局から資料について説明があり、その後、学校法人会計基準の在り方についての自由討議を行った。

○:委員      ●:事務局

:「学校法人制度の改善方策について」の最終報告は、現行の会計制度の中での公開を想定している。われわれの基本的な議論は、そもそもの会計制度改善の方向性を考えるということである。提言されている課題の中で、公開していく場合、例えばプライバシーに関わるような一般に公開することが適当でない情報がどういう位置付けになるのか。

:補足させていただきたい。小委員会での議論は、個人の退職金が分かるということは、特に地域性のある学校にあっては、個人的な中傷誹謗にもつながりかねないということであったと記憶している。

:最終報告の中の「財務書類の公開を前提とした場合において見直すべき点はないか。」のところに関して意見がある。第一に、公開を義務付けられている計算書類そのものが、あくまで補助金の要請により作られた計算書類であり、その最たるものである内訳表を公開する時に、例えば小規模法人についてそれぞれの学校を対比させてそれで競争させるのであればメリットはあるが、学校側は国の要請で公開するが、実際の中味について、第三者が判断すべきものではないということを主張しなければならないような矛盾が生じると考えている。第二に、病院と医学部との関係の問題がある。全ての教員は医学部の発令であり、病院部門には人件費が計上されず、医学部部門に人件費が計上され、補助金も医学部に対し交付されている。収支内訳表について、管理会計の問題であるとすれば、学校法人の判断に任せるべきである。また、アカウンタビリティのことをよく議論しているが、アカウンタビリティの本当の姿とは、計画があって、それに予算がついて、それをどう実行したのかを説明しなければならないものではないか。第三に、私立学校振興助成法では計算書類の届出は6月末までであるが、私立学校法上では5月末までの評議員会で報告するという形になっており、監事がそこで得られる会計情報は、決算を監査した結果、大体それでよろしいという程度のものに過ぎないのが現状である。最近、民間では計算書類が出てくるのが早くなっている。学校法人の計算書類についても、私立学校振興助成法を見直すことによって、早く持ち込むことがある程度可能かと思われる。

:情報公開については内訳表まで開示すべきと考える。学校の場合には部門のところに集めたお金を、部門に使っていくという考え方をセグメントとして出していかない限り、もともと情報公開の基本としているアカウンタビリティの根幹のところが外れると考える。ただし、公開の方法については、今の学校法人会計が持っている内訳表の考え方、特に人件費を割り切った学校法人会計の考え方では、部門の実績が反映されていないと思う。もし、内訳表をベースにして開示するのならば、企業会計で行われているような部門別の計算を正確に取り入れるべきと考える。

:内訳表が世の中に出れば、それを見る人は、いわゆる有価証券報告書で部門別、事業別の内訳表が出ているから、それと同列に見ると思う。同列に見てもいいような作り方をすべきである。

:学校の形態にもよるが、どこが成り立って、どこが成り立っていないのか、でも学校法人としてどうなっているのかは、基本的な中味の問題である。

:本当に小規模でプライバシーの全部があからさまになるようなら別の手当を考えてもよいのではないか。計算構造の作り方と個別手当をすることとは分けて考えるべきである。

:小規模法人については別途手当するということが、この問題に限らず全般に言われている。決して、おしなべて大規模法人から小規模法人まで同じ土俵に上げようというのではなくて、一つの網を掛けた上で、個別対応をすべきものはしていこう、制度は制度として作ろうという整理である。

:義務付けの対象となる学校法人については、公共性を鑑みて小規模法人も含めすべての学校法人としているが、一方、公開を義務付ける財務書類については、プライバシー保護の観点から、公開することが適当でない情報については、公開しないことができるという配慮が打ち出されている。

:前回までは基本金の議論をしてきた。今回はその続きで1号基本金について議論をした後、基本金全体の改善方向を探っていきたいと考える。

:資料2について、前回の議論を受けて2つの項目を追加していただいている。1点目は、作成した財務諸表はそのまま公開するべきであろうということ、2点目は、学校は何を重視するかということで、従来の記述は基本財産を厳格に守っていくということや収支のバランスをとっていく必要があるということであったが、やはりそれだけでなくて、もっと基本的に教育、研究の中味を存続していくためにそれにふさわしい財産や収支を守っていく必要があるということを前回の議論を踏まえて追加した。

:資料4−1でいう自己資金とは何を指しているのか。

:実際に学校法人が持っている自分のお金、土地、建物等の正味財産を表しており、資産から負債を除いたものである。

:資料4−2で例にあげているA法人、B法人の財政状態は両方とも悪いのか。消費収支計算の中で、帰属収支差額を見ていくと悪い状態にある法人ということか。これだけだと、良い状態なのか悪い状態なのかは分かりにくい。

:資料4−1の基本金構成割合を見ると全体に占める2号基本金の割合が減っているが、他が増えているのか、2号基本金自体減っているのか。

:両方だと思う。実感として、大学の3割が定員割れしているということとある程度関係があるのではないかと思う。

:A法人の場合は、基本金と自己資金の差額である消費支出超過額が大きいので財政が悪いということが分かるが、B法人の場合は、基本金に比べて正味財産である自己資金が大きいのに財政状況が悪いというのはどう理解すればよいのか。

:基本金対象外の土地をたくさん持っているが売却できず、流動性がないので資金化できないということではないか。

:基本金になっていない土地が、実際には売れなくて、ある意味では時価会計をしっかりやれば実際の価額がはっきりするので現実的な判断ができるのかなと思う。現行の決算書では分からないことである。

:基本金には、原則的に今までは経済が右肩上がりであったが、例えば土地を10億円で取得して現在の価値が3億円に下がったとしても取得価額でそのままにしているという状況がある。いわゆる取崩しを考える場合、デフレということは今まで考えられなかった。時価評価を取り入れてもよいのではないかと思う。

:A法人の例は割と多いのではないか。A法人の例はよい例で出されたのかと思っていた。多くの学校法人の貸借対照表はこのような状態が多いが、財政状態がよい学校法人もあると思う。いわゆる繰越消費収支差額がマイナスであるような状況でも、基本金と繰越消費収支差額との関係がどういう意味を持っているのかを検討しないと本来の意味での貸借対照表が何を示すのかが見えないと思う。

:現行の学校法人会計基準の貸借対照表の様式では、いわゆる正味財産に当たる部分が基本金の部と消費収支差額の部の2本立てになっている。基本金の部と消費収支差額の部の相互の関係はどこで得られるのか。それらを総括する概念が何かということがはっきりしない。

:元金を維持してそれが拘束されているものを資本の部と考え、元本を運用して獲得した利益を消費収支差額の部として考えれば分かりやすいが、基本金がそういう構成になっていないから、どう基本金を定義付け、消費収支差額をどう考えるかというのが問題になっていると思う。

:A法人については、総資産と基本金要組入額との差である減価償却累計額を超えた額の繰越消費支出超過があり経営が悪化しているということが読み取れる。しかしながらB法人の例は、どう判断してよいか、すぐには分からない。現金が土地に代わっているだけであるから、それで正味財産が悪化ということなるのかはよく検討する必要がある。減価償却累計額を超えるような繰越消費支出超過を持つような構造のところはキャッシュアウトが生じている可能性もあるので確かに厳しいと思う。

:総資産の中から償却減額されただけではなくて、除却して修正減額ではカバーできない穴が空いた基本金がある可能性もあるが、そこまでは読み切れない。

:財務書類を公開するとなると、減価償却費との関係を説明するのが難しい。消費収支差額をこういうふうにしていくという説明の理論構成がきちんとできれば今の基準体系でもよいと考える。

:構造的にはおそらく、長期で消費収支差額をバランスさせればよいのではないか。学生納付金を全部使ったとなれば二重負担であるが、しかし、それだけではなくて、構造の中には寄附金のような資本取引と認識すべきものも収入に上げてから控除している。もとにある収入構造をどのように整理していくかを検討しないと基本金のところだけでは議論できない問題がある。

:資本の充実の部分と学費との関連を明解に説明することは難しい問題である。

:取替更新が相当程度行われていて、インフレ傾向でもなければ1号基本金は増えないと考えていたが、実際には1号基本金は相当増えている。取替更新の機能を知らないで、除却をどうしていいか分からないでやっているところもあるのではないか。現状は、1号基本金の組入れがその年度に支出した金額とぴったり合うということにはなっていないので、分かりにくい。

:資金源泉を分けてきちんと説明したものが1号基本金であれば、それはそれでよいのではないかと考えている。企業会計の考え方で一からやり直すということになったら、少なくとも利益が上がるところでなければ学校経営はやっていけないということになり、今の学校会計制度を維持して、なおかつ、分かりやすいものに落ち着かせなければならないと考える。

:確かに、基本金が大きな柱になって学校法人会計基準は構成されていてそれなりの役割を果たしてきたと考えるが、一方、それと違う次元で、何も利益を上げるということを前提としなくても収支差額を企業会計との比較できちっと示さないと理解してもらえないという状況も生じている。企業会計のような構成にして、学校の収支は企業とは違うということを説明すればよいのではないかと考えている。

:帰属収入から基本金を控除するというメカニックそのものは学校法人会計だけにしかない。もう一方で、多大に資本勘定を繰り入れておきながら支出超過を出している。外部から理解されないのはこの2点だと思う。それが開示となった場合に、それでいいのかということである。

:基本金を組み入れる前の帰属収入に対する消費支出の割合を見るということもよく行われているが、それも一つの見方なのではないかと思う。

:帰属収支差額を取り上げて議論するようになったのは最近5年から10年ぐらいのことである。中小の大学で帰属収支差額の段階で危なくなっているところは増えている。長年携わってきた経験からすれば、1号基本金の大部分は、好むと好まざるとにかかわらず、資本的支出とは違い、企業会計における経費に充ててはいけない部分だけではないと考える。やむを得ず資本的支出に追いやられているものがたくさんある。

:今の意見は学校法人会計の基本的なところをついていると思う。従来は学校法人の運営の仕方については手法が限られていたと思う。教育研究活動を継続するために固定資産を取得するには、お金を借りてきたり、寄附などで資金を集めたり、自己資金で取得するといった手法しかなかった。ところが規制緩和もあって、運営を工夫していかなければならない中で、リースもあれば、借用財産も認められ運営手法が広がっている。そういうものを生かしていくためには、基本金の考え方は従来の経営手法の範囲では非常に機能を発揮していたが、これからはもっと工夫していかなければならない。いわゆる資産と基本金との組み合わせをそろそろ断たないと経営が弾力的にできないという状況になっているように思われる。

:資産と基本金を切り離すことによって、過渡的にはいろいろな問題も出てくるかと思われるが、長期的に財産を保全し、収支財産のバランスを確保しながら、資産と基本金をそろそろ切り離すとどういう問題が出てくるだろうか。

:単純にそういう方向に行くのではなくて、今は資本取引を控除という形で整理しているが、それを元の発生ベースで整理しなければならない。取引そのものを資本と認識するのかしないのか、今は一括して資本取引を取り外す方法でやっているが、企業会計と同じように発生ベースの時にこれが資本取引なんだという定義をしていかなければ議論が先に進まないと思う。

:発生ベースで定義していく時に、どういう定義とするのか、例えば企業会計の資本金と資本準備金の考え方を取り入れて学校を最初に作った時に拠出した財産をまず基本金として、その後は一定の目的をもった寄附金だけを資本準備金とすれば、すっきりはする。

:基本的には同じだと思っている。今の1号基本金を対象とするようなものを資本取引として認識するから学校の意思表示によってやるべきだと考えている。そういうやり方でやるから、テクニカルには発生ベースで資本取引を認識するか、収入から控除するかという分け方はあるが、結果は一緒である思っている。ただし、今の構造の方が慣れているという点でメリットがあると考えている。

:学校法人の意思がどの程度客観性を持つかということが問題になると思う。

:学校法人の意思には何段階かのステップがあると思う。例えば設置基準が要求するような部分は当然対象になる。そのほかに挙げるとすると、自らがこれだけの施設を維持した状態で教育的なサービスを提供したいというのは意思以外の何物でもない。それは構造上、内部で理事会、教授会等が教育資産として必要であると決定したものを企業会計で言うところの資本取引と認識せざるを得ない。

:教育研究をするためには何らかの資産を取得して維持していかなければならない面はあるが、完全に断ち切るとはいっても、要は取得した資産の全てが基本金になるということではなくて、教育のためにはこういった正味財産を維持しなければならないということを意思決定機関で決めていく必要はある。

:私立学校では施設整備費を取っているところがある。それを妥当な額にまで私学経営者が認定しきれれば、そのお金を全額基本金に組み入れるとか資本的支出に充てるということが可能になり、一番分かりやすい。

:今の基準では、資産に引っ張られるということを断ち切りたいということについて、広義説をとっていると思う。諸活動の計画に基づき必要な資産を継続的に保持するためのものであるというところに立ち返って、それを資金の収入から引っ張ってくれば、学校の意思で維持・継続するようなものについてはそこに引っかかってくるし、そうでもないがとりあえず買ったものは学校の意思で入れない、ということは解釈の範囲内でできることではないかと思う。何のために会計基準を改正しようとしているのか、いろいろな利害関係がある中で経営者は何を必要な情報として考えているのか、公開を前提とした時に何を見ようとしているのか、それらを一つの計算書類に盛り込むのは非常に難しいと思う。

:例えば、極めて修繕費に近い内容の支出が行われて、それを基本金組入れにはしなかったとして、それは企業会計でいうところの資本取引ではないから経費という処理でいいということになれば、学校法人関係者はみんな良しとするであろう。

:固定資産の追加的な支出があった場合に修繕費とすべきか資本的支出とすべきかずっと疑問に思っていたが、経費支出とすべきではないか。企業会計で取り入れている税法規範は経済規範だから学校が取り入れることは間違いだとは言わないが学校の経営にはそぐわない。もっと積極的に本来建物が持つ機能そのものを教育に位置付けて、それ以外のほとんどのものは修繕費として落とすのが健全だと思っている。資産をどういう括りで見るかという整理が学校では行われていないので、新たな固定資産会計を作れない。例えば電力会計では固定資産会計がある。

:各学校では、会計検査院の検査で、そこのところが区分上、補助金の対象外となる不当行為になる可能性があるので、安全な処理として基本金に組み入れる会計処理を行っているのが実態ではないか。

:次回は、仮に基本金ではなくて、企業会計のような構成にすると、どういう枠組みになっていくか少し考えていきたい。一方で、基本金そのものを維持してもう少し弾力的に構成していこうとすると、どういうことをしなくてはいけないかということも検討したい。

:それについては、日本公認会計士協会の審議の経過に基本金の検討項目が挙げられており参考になる。

:1号基本金の価額の変動に対する問題、例えば100億円で買ったものが時価で評価すると30億円になるようなケースの時に基本金としてはどうかという問題についてももう少し議論が必要ではないか。それは基本金の修正の対象に成り得るのか、成り得ないのか。

:今の基準の中で考えようとすれば資産の価値に引っ張られているから、資産の価値をどう評価するかというところに関連して、時価の問題を取り上げていただきたい。

:今の緩和された状態の設置基準に対して既存の学校法人がどういうふうに基本金に対応することが可能かということも議論していただきたい。

:併せて、リースへの対応も論点に上げていただきたい。公認会計士協会でも非常に簡便的な形でリース取引を出しているが、私学関係者の意見を踏まえると、どう取り込むかというのは大きく変わってくると思う。先ほどの議論ではリースなら経費だという意見が出ていたが、果たしてそうなるのかどうか。

     (2)    次回は、11月13日に開催することとした。

以   上



(高等教育局私学部参事官室)

ページの先頭へ