○ |
:基本金の問題に入る前に、資料2の基本的考え方について意見を伺いたい。何のために計算書類を作成するかということについて、公開を前提とすべきという考え方は、前回の議論で集約されたと思われる。また、外部は何を求めているかについて、あくまでも作成した財務諸表をそのまま公開するというのが前提で、中味を別にするということではないと思われる。
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○ |
:存続可能性というのは単に財政状態がよいか悪いかということだけなのか、基本金に関連して必要な財産を保持しているかということまで会計情報に要求するのか、要求するのであれば基本金の制度をどういうふうに組み入れていくのかということになる。
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○ |
:学校は何を重視するのかというテーマについて、基本財産を守るということだけではなくて、存続可能性、つまり教育の中味や研究の中味が存続しているという可能性を含めると、そのまま校地や校舎を守るということだけではなくて、形が変わってもいいのではないか。そういう会計でないと、役割を果たしていかないのではないか。何も、学部や学科を廃止することだけでなくとも、基本財産(基本金)を取り崩してもいいのではないか。その時々の教育研究の条件に合った財産を考えてもよいのではないか。
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○ |
:基本金を維持することで存続可能性を示すという議論があったと認識している。しかし、それは財政面が安定しているという面で重視すべきことの一つにすぎないのではないか。例えば、借りた土地に学校を作ってもよいという方向転換があった場合には、もっと財政を厳しく見つめていく必要があると考える。収支のバランスがとれていない場合に、内容として何が原因なのかをしっかり説明していかなくてはならない。根本的な解決のために、もっといろいろな観点から見ていかないと財政が安定しているかどうかは分からない。
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○ |
:財務諸表が存続可能性を示すようにするためには、基本金さえ維持すればよいのかというと必ずしもそうではないと思われる。貸借対照表を見ると基本金に見合う資産がなく、消費収支差額がマイナスになっている場合がある。消費収支差額がどういう意味を持つのかということを併せて考える必要がある。基本金と消費収支差額の両方の定義をはっきりさせないと学校法人の財務内容は分からないのではないか。
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○ |
:会計のデータを踏まえた理事者の財政政策の問題である。基本的には意思決定の基礎となる経営の実態が分かるような会計情報が求められるべきであり、そこには政策的な配慮は入らない。企業会計的に言えば、フローの側面で損益計算書、ストックの側面で貸借対照表、さらに資金繰りの面での収支計算書の3つの側面からの情報が揃って経営の実態が分かる会計基準とすべきではないか。学校法人の議論で、計算構造の問題と財務的な政策の問題がいっしょになってしまうケースが多い。
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○ |
:企業出身者からは、資金収支計算書は資金繰り表なのだろうと簡単に言われる。学校法人の特色として学校会計が企業会計と違うところは資産内容が比較的安全に書かれているところである。貸借対照表の経過を見れば、フローの現状もある程度は把握できるので、それほど疑わしい点はなく、分かりにくいものはないのではないかと思う。
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○ |
:基本金について議論をしていきたい。まず4号基本金についてはどうか。
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○ |
:4号基本金の趣旨について、将来の不測の事態に備えてと言われるが、学校法人を運営していくためには常時これくらいの資金が必要ということであり、1月分では不測の事態に備えたということにはならないと思われる。
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○ |
:4号基本金としてなぜ運転資金を基本金として制度化したのか。
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:不測の事態を想定してというよりも、運転資金をこれくらいは持っておくべきという観点から安定性を求めたということである。
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○ |
:設置基準との関係で、運用財産を持っているということを示さなければならなかったので、それを4号基本金という形で整理したものではないか。経営者であればこの程度の運転資金を確保することは当然考えることであるから、わざわざ財務諸表に記載することではないのではないかと思われる。
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○ |
:仮に4号基本金をなくすことを考えると、各学校法人に影響はないのか。
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○ |
:影響はほとんどないと思われる。4号基本金については、本来なら、少なくとも半年から1年分ぐらい保有しておく必要があると思う。
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○ |
:4号基本金の縮小について、基本金の取崩しで行うのか、減額修正で行うのか議論したことがある。しかしながら、学校経営者にとってはあまり意味がなく、4号基本金をなくすのは簡単であるが、修正には技術的に難しい問題があるのではないか。
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○ |
:基本金を考える時、その裏側に消費収支差額の問題が出てくるのだからセットで検討すべきである。理解が難しいのは、消費収支差額がマイナスにもかかわらず、学校法人としては存続可能性に全く問題がないという状態が起こり得ることである。例えば、消費収支計算書も個々の収入から直接基本金を控除する、収入を使っていいものとそうでないものに分け、使ってはいけないものを基本金として維持する、ということは言えても、ところが授業料は何の支出のための収入なのかはっきりしない。
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○ |
:1号基本金があった方が財政的に安定していると一般的には言えるが、そうではないとしても、実態が会計としてきちんと報告されることの方がむしろ大事だと思われる。
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○ |
:資本の部というのは資本金プラス繰越利益だが、学校法人会計でも基本金と消費収支差額を併せたものを正味財産の部として位置付けた方がよいのではないか。基本金については貸借対照表の借方科目ともできるだけ一致させた方が概念がより分かりやすいと考える。
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○ |
:設備投資を大いにやればやるほど消費収支差額のマイナスが増えてくる。基本財産と併せたものを一つの単位として考えた方がよい。
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○ |
:一般的に資本金は資金源泉を意味していると思うが、借方に引っ張られる基本金ということになると、その基本金は何を意味してくるのか。
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○ |
:正味財産の部という概念の方が、少なくとも資産、負債、資本、収益、費用という5大要素に分けるということになって、分かりやすくなると思う。
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○ |
:貸借対照表の貸方を負債の部と正味財産の部に変えれば、借入金をして設備投資をする場合は負債の増、減価償却については正味財産の減になる。
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○ |
:基本金明細表については、当該年度に組み入れた内容が分かればそれほど大きな問題にはならないのではないか。
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○ |
:フローの概念から基本金を規定しようとすれば、その年度の収入のうちその年度に使ってはいけないものに限定して基本金を構成するという考え方に客観性を見い出し、だれが見ても明確なものしか基本金に入れないというようにすると基本金が分かりやすくなるのではないか。
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○ |
:教育事業を継続的に行うために、設置基準が変わる前は、全部自分で持っていなければならないという前提があって、資産は必ず維持しなければならず、資産と基本金がリンクする形であった。しかし、規制緩和の中で経営の弾力化が認められていく中で、リースや借用財産でもいいということになると、必ずしも借方資産と貸方の基本金とが一致しなくなってくる。そのような変化を前提に置きながら、基本金というのはどうあるべきかを検討する必要がある。
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○ |
:教育財産が自己資産でなければならないというのは、どういう考え方によるものなのか。
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○ |
:政策的な問題である。本来会計の問題ではないのに、政策的な問題を会計に取り込もうとしたところに無理がある。学校というのはそこでどういう教育をするのかというのが第一であって、そのための資産を自己所有しているというのは確かに理想的ではあるが、校舎を造るために寄附がすぐに集まってくるということは日本では考えにくいことであり、借金をするというのは当たり前のことであるのだから、必要な資産を継続的に維持すること自体がそもそも無理であり、教育活動の永続性を保持するということが資産を保持するということに話がすり替わったところがあるのではないか。
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● |
:学校の永続性は否定できないが、本当にそれが基本金によって担保されているのだろうか。本当に担保しようとするのであれば、減価償却費を別途積み立てて、別の口座で管理して手を付けられないようにしておけばよい。しかしそういうやり方は一般の経済活動にはなじまないやり方ではある。基本金というのはそういうものだという理解でいくのか、あるいは完全な防波堤にするのか、違う考え方でいくのかという整理なのかと思う。
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○ |
:基本金の制度を担保したために、日本の私立学校は健全財政で来られたと思う。現在の状況の悪化は、フローが悪くなったことが原因である。今は、ストックだけあっても銀行は金を貸さない。
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○ |
:かつて私大連盟で、基本金は分かりにくいから、なくそうという議論をしたことがあるが、実は、基本金が私立大学の財政を支えてきたので、なくせないということになった。今は、微妙な転換期の中での議論である。
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○ |
:3号基本金こそはひも付きで対象資産が分かっているから、基本金ありきの議論をするのであれば説明しやすい。
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○ |
:3号基本金は必要だと思う。本来は基金を積んでその果実で運用するものであるから、しっかり確保しておく必要がある。
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○ |
:3号基本金についても取崩しができる仕組みはあってよいと思う。必要になれば、また集めればいいのではないかと思う。
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○ |
:運転資金が十分にある場合に、支払資金から3号基本金に振り替えるということもあり得るのか。
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○ |
:3号基本金の場合、自己資金で留保したものを積んでいく場合と、ひも付きで外部から特定の基金を得た場合があるが、同様に取崩しをしてよいかということについてはそれぞれ別の問題である。
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○ |
:戦前から戦後にかけて偉い人の名前のついた基金がたくさんあったが、インフレのため廃止にしたことがある。今の低金利時代にもその時と同じことが起こっている。3号基本金が引当特定資産化されていればそれ以上の拘束は必要ないのではないか。
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:3号基本金については取崩しができないので、基本金への組入れをせずに、別に引当預金を持っている法人が最近多くなっている。
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○ |
:今の3号基本金は取り崩さないという意思によるもののみが組み入れられ、元本も事業に充てるという意思決定をしたものについては3号基本金にはならないし、特定資産化しておいてそれを利用すればよい。それを基本金に組み入れなければならないという押しつけには無理があるのではないか。あくまでも学校の意思決定もしくは寄附者の意思決定でやるべきである。
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○ |
:例えば、受けた寄附金をアルゼンチン債で運用してしまったとして、なくなってしまっても寄附者の意思が働いていれば、少なくとも支払資金の中から充当して事業費だけでも確保しなければならない。
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:昭和62年の改正の時に、3号基本金という名前をつけたが、従前は特定基本金として他の基本金とは区別していた。奨学基金や教育研究基金という名称に左右されるのではなくあくまでも基金として持つかどうかという学校法人の意思決定の問題であり、元本に手をつけるのであればそれは基金ではないので、基本金には組み入れないという整理をした。
また、学校法人の帰属収入から組み入れるということについて、未組入れの理論を議論した際に、以前は未組入れは「帰属収入をもって充てることができなかった金額があるときは、組み入れないことができる。」という「できる」規定であったが、第29条に「帰属収入から組み入れる」という規定があるので、帰属収入をもって充てられなかった場合は、未組入れにすることで統一した。帰属収入というのは通常はフローの用語として使っているが、今まで通りストック的な帰属収入から組み入れるという概念でも構わない、という整理をした。
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:基本金の実態はどうなっているのか。
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○ |
:私学事業団の「今日の私学財政」で調べれば出ている。
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:3号基本金の性格付けをよく理解した上で、超低金利の時代となった今、どう対応したらよいかということを議論してほしい。
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:3号基本金の引当資産は、金融商品だろうから、時価評価や減損会計が必要である。
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○ |
:公認会計士協会で出しているQ&Aの中では3号基本金については元本額までは補填すべきという見解を出している。ただし、3号基本金についても減額修正はあり得るだろうということで、広い意味での計画修正減額の余地を残した提案をしている。
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:大学の3割、短大の5割が入学定員割れであり、30年前とは状況がだいぶ変わっている。そのような状況の中で一般会計から埋めるというのは酷である。
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○ |
:次に2号基本金について議論をしたい。任意性、恣意性という問題について、実態としては、計画はあるが基本金には入れられないというケースもあると思われる。どういうふうにして、任意性、恣意性をカバーするかということになるが、計画的ではないが戦略的な組入れもあり得るので、難しい問題である。
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○ |
:日本の私立大学で5年、10年先を見据えてきちんと計画を持ってやっているところはどれくらいあるのか。
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:多くの大学は計画性を持って経営していることを期待したいが、実態について全体を統計的に調べたものはない。
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○ |
:2号基本金を計画的に組み入れていくのは難しい。急激な規制緩和の流れの中で、例えば最近の法科大学院や専門職大学院などは、非常に無理をして計画しているというのが実態ではないかと思われる。2号基本金がないというのは困るので、当分は今のままでいくしかないのではないか。
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○ |
:2号基本金に客観性を持たせようとすると、計画と結びつけるのは無理があるから、例えば校舎を造るために3年計画で寄附金を集めた場合、1年目に集めた寄附金については基本金に組み入れないと経費に使われてしまうからそういうものは基本金に組み入れるとか、あるいは臨時的な固定資産の売却があった場合に、それをその年度の経費に使ってはおかしいというような時に基本金に組み入れるとか、次元を変えて運用すれば、非常にいい基本金になるのではないか。
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:今の2号基本金は、学校会計の理念として収支均衡予算を立てるところに意味があるのであって、収支の平準化が崩れるのであれば意味がないと考える。例えば建替更新の場合、2号基本金の額と必要資金の額はイコールではない。特別寄附金の資金の特定化と2号基本金は今リンクしていない。収支均衡、平準化という枠の中で2号基本金は生きてくると思われる。
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○ |
:例えば校舎を建てるために寄附を募ったとして、その寄附収入については経常支出に充ててはいけないものであり、基本金として組み入れる必要がある。使途が決められているものについては、基本金に入れないと返って学校の経営がゆがんで表されることになる。
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:建替更新の場合は、2号基本金から1号基本金への振り替えはできないのか。
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:今の基本金の仕組みの中では、建替更新の際は、2号基本金から充当することはできない。したがって、既存の増額分しか2号基本金からは振り替えられない。
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:減価償却引当特定預金があれば、それは1号基本金の繰延資産として残っていくということである。そのような繰延べの基本金もかなりあって、儲かっている学校法人もあるのではないか。
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:1号基本金についてであるが、基本金はお金ではなく概念的なものであるというところが分かりにくい。前回の議論で、企業会計が分かるレベルであれば理解できる学校法人会計基準とすべきとか、企業会計になじみすぎたために学校法人会計基準が分かりにくいとか、全く知識がない人が分かる会計基準があるのかなど様々な意見が出ていたので、それを踏まえて、資料には、『「物」を基本金という捉え方がわかりにくい。』という書き方をさせていただいた。
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:次回は1号基本金の論点のところから議論したい。 |