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資料4−2

国際的な大学の質保証システムの構築に向けて
<これまでの審議における主な論点の整理>
(案)



1.検討の背景について

   《国境を越えて展開される高等教育の国際情勢》
   今日、世界の高等教育の情勢を見ると、経済・社会・文化のグローバル化の急速な進展に伴い、学生や教員が各国間を移動するのみならず、大学自体が海外分校、外国の教育機関との提携、eラーニング等を通じて国境を越えて教育を提供するなど、国際的な大学間の競争と協働が進展。
(例)
   ・    国境を越えた高等教育サービスの提供形態は、海外分校、外国の教育機関等との提携、eラーニング、さらにはこれらの組合せなど、極めて多様化。
   我が国近隣の東アジア・東南アジア地域が、米国、英国、豪州等の大学の主要な進出先となっており、いわば高等教育のグローバル市場の中心的位置を占める情勢。
   これらのアジア諸国の中には、アジアの教育拠点(ハブ)を目指して、戦略的に外国の大学を受け入れつつ、自らも高等教育の海外展開を図る動きもあり。
   また、これらの国境を越えて提供される高等教育の受入国(アジア諸国)及び提供国(英国・豪州等)の双方において、こうした教育に係る質保証の取組が見られる。

   《国際機関による交渉・検討の開始》
   世界貿易機関(WTO)等に置いて高等教育サービスが貿易自由化交渉の対象となるとともに、国境を越えて提供される高等教育に係る学習者等の保護の在り方など、高等教育の質保証を国際的な観点から検討することが世界的な重要課題。
   国境を越えて提供される高等教育が多くの国々にとって有益なものとなるために、国ごとに異なる教育制度を前提とした相互理解と協力の精神に基づき、国境を越えて提供される高等教育の質保証に関する指針となる諸原則等を国際的に探求する取組が求められているところ。
   そのため、ユネスコや経済協力開発機構(OECD)等において、我が国の提案等も踏まえ、このような指針策定の検討を開始するところ。

   《大学の質保証にかかわる国際的な情報提供の枠組み作り》
国ごとの高等教育制度の差異等により、
   ・ 提供される教育の質を判断したり、学位等の国際的通用性を確保することが困難であること、
米国やオーストラリアでも既に問題として指摘されている、いわゆるディプロマ・ミル又はディグリー・ミルなど高等教育機関として認められていない質保証の不十分な教育提供者から学習者等を保護する必要があること、
等から、各国間の協力による大学の質保証に係る国際的な情報提供の枠組みづくりが重要課題。我が国は、ユネスコ及びOECDにおいて国際的な情報ネットワークの構築の必要性を提唱したところ。

   《我が国における国境を越えた高等教育の質保証体制の検討の必要性》
   国境を越えた高等教育の提供は、世界的に拡大する教育需要に対応した選択肢の拡大、グローバルな知的ネットワークの強化等の意義を持ち、我が国にとっても、国際化による教育研究水準の更なる向上を図るとともに、知的国際貢献を果たしていく重要な機会となり得るもの。
   一方、現状においては、我が国において、留学生交流以外の形態での高等教育の国際展開はあまり進んでいない。
   我が国の大学が、高等教育のグローバル化の趨勢に取り残されることなく、教育研究の一層の水準向上を図っていくためには、我が国の大学が海外拠点、eラーニング、諸外国の大学との提携等により、国内外に開かれた高等教育機関として活性化し、国際的な大学間の競争を通じて、国際的に通用する教育研究を推進し、戦略的な国際展開を図れるようその条件整備が必要。その一つとして、国境を越えて提供される高等教育の質保証等の検討が急務ではないか。
   我が国の大学の質保証に関しては、従来からの大学の設置認可等に加え、学校教育法の改正により平成16年度から導入される第三者評価制度等によって、継続的な質保証のための新たなシステムの整備がすすむこととなるが、我が国の大学が、国際的な大学間競争と協働に参画するなど高等教育の国際的展開に対応するためには、我が国の大学の質保証システムとの関係について検討することが重要ではないか。
   また、日本の大学制度や各大学に関する情報を含め、広く質保証に係る情報を海外へ発信していくことも必要ではないか。また、諸外国の大学の評価、質保証制度及び学位等に関する情報を収集・提供していくとともに、世界の各地において政府間あるいは評価機関等で進められつつある高等教育の質保証に関する国際的協力の検討や試行など、海外の最新動向に関する情報を的確に把握することも肝要ではないか。
   さらに、大学の質保証に関する国際的なシステムの構築に参加・貢献していくことが重要ではないか。



2.国際的な大学の質保証に関する我が国の検討の方向性

   そのため、以上のような国際的な情勢及び我が国の状況を踏まえ、国際的な大学の質保証システムの構築に向けた主要課題として、
   1 我が国の大学の国際展開及び外国の大学の日本校等に係る質保証の在り方、
2 大学のeラーニングによる国際展開に係る質保証の在り方、
3 大学の質保証に係る国際的な情報ネットワークの構築等
につき、まずは論点の整理が必要ではないか。


3.主要課題への取組の考え方

1. 我が国の大学の国際展開及び外国の大学の日本校等に係る質保証の在り方
(基本的考え方)
   大学設置基準は、我が国において大学として設置され、教育研究等の活動を行うに当たり、最低限必要とされる基準。我が国において大学として設置される場合、当該基準における要件を満たして設置認可を受ける必要があり、設置後も、その教育研究等に関する自己評価及び第三者評価による継続的な質保証がなされることが、我が国における大学の質保証制度の基本。

   我が国の大学の国際展開及び外国の大学の日本校等に係る取扱いについて検討する場合も、この点を基本として検討を進める必要があるのではないか。

   他方、海外においては、大学が設置された当該国以外の地においても当該国の大学として学位授与等につながる教育の提供を行っている実情にかんがみ、我が国の大学が国際的に通用する教育研究によって戦略的な国際展開を図れるよう、また、国際展開が却って我が国の大学制度への信頼性を損なうことのないよう、質保証の在り方について検討するとともに、外国の大学が我が国において提供する教育については、多様な教育の選択肢として位置付けることを検討し、上述の質保証制度の基本を踏まえた上で、必要に応じ、現行制度又はその運用を一部見直すべきではないか。


(1) 我が国の大学の国際展開に係る質保証の在り方
利   点
大学の国際化の拠点となり、教育研究の質・水準の向上を促す
諸外国の人材育成に資する知的国際貢献
海外での学生確保や留学希望者の開拓
課   題
我が国の大学の国際展開によって、却って我が国の大学制度への信頼性を損なうことのないよう、質保証の在り方について検討することが必要
他方、当該国における通用性の確保が必要であり、実情に対応できる柔軟性も必要
進出に係るリスク及びコストが伴う

(検討事項)
   我が国の大学が外国において学位授与等につながる教育の提供を行うことを可能とすべきではないか。その場合、我が国の大学の国内における教育活動と照らして、どのような点に留意すべきか。
(例)当該外国における教育提供の範囲、形態等

   その際には、外国において提供する教育及びその質について、国際的な信頼性・通用性の確保、及び我が国の大学が国内において提供する教育の質について、政府、大学、評価機関等において、どのような質保証の対応が可能であるか。
(例)学校教育法上の位置づけ、大学自身の自己点検・評価や、第三者評価機関による評価活動等の観点


(2) 外国大学日本校等と我が国の大学の質保証との関係
利   点
我が国の学習者にとって多様な教育の選択肢の提供
高等教育の一層の国際化に貢献し得る
課   題
我が国の制度上は、専門学校、各種学校等と法的位置付けが様々である
外国大学日本校等の実態は一様ではない

(検討課題)
   外国大学日本校等に係る我が国の教育制度上の取扱いを明らかにする必要があるのではないか。

   外国大学日本校等の関係者が我が国の学校教育法に基づく大学としての設置を目指す場合、大学設置基準等に基づく設置認可の道が大学設置を目指す他の者と同様に開かれており(内外無差別)、大学設置を目指す他の者と同一の取扱いをするほかないのではないか。

   他方、我が国の学校教育法に基づく大学としての設置を目指さず、外国の大学として我が国において教育を提供することを求める場合についても対応が求められているところ。異なる教育制度に基づき、一度他国において設立された大学が、我が国において教育活動を展開する場合、どのような対応が可能か。
(例)・ 諸外国の教育制度における、外国の大学の自国への展開に関する対応方法を参考。
現行の我が国の教育制度上、外国の大学に留学する場合や外国の大学が行う通信教育を我が国において履修する場合の学修成果の取り扱い方法を参考。


2. 大学のeラーニングによる国際展開に係る質保証の在り方
(基本的考え方)
   インターネット等を利用した教育(eラーニング)の国際展開に関し、我が国の大学は、現状ではまだその潜在力を生かしていない。

   また、海外のeラーニングによる教育提供者については、いわゆるディプロマ・ミル又はディグリー・ミルなど高等教育機関として認められていない教育提供者の問題を含め、我が国の学習者等がその質を判断することは容易ではない。

   したがって、我が国の大学がeラーニングによる海外展開に取り組む条件整備を図るとともに、海外から提供されるeラーニングの学習者等の保護を図るため、適切な質保証の仕組みを確立する必要があるのではないか。


(1) 我が国の大学のeラーニングによる海外展開に係る質保証の在り方
利   点
我が国の科学技術力を生かした形で教育の国際市場に参入することが可能
条件次第で初期投資や運営経費の面で効率的に教育を提供できる可能性も内包
制度上の手続き、生活費等の所要経費等の面で、学生負担が軽減される場合がある

課   題
我が国の大学がeラーニングによる海外への教育提供に着手する萌芽的動きは見られるものの、本格的な海外展開はこれからの課題
受信側の情報通信インフラの整備状況等が障害になる
学習過程、成績評価、学習支援等に関し、対面教育と異なる視点や配慮が必要
国内において提供している教育と同等の質を保証するとともに、国際的な通用性を確保することも重要な課題

(検討課題)
   我が国の大学が海外の在住者を対象としたeラーニングによる教育活動に積極的に取り組めるよう、日本における教育と同等以上の質、適切な学生支援、国際的通用性等を確保する観点から、質保証の推進を図る必要があるのではないか。

   我が国の大学がeラーニングによって教育を海外に提供する際、一義的には、当該大学自身がその教育の質に責任を持てるよう、学内における質保証の仕組み等の整備を奨励する必要があるのではないか。

   また、各大学のeラーニングによる教育活動の積極的な展開と教育の質の改善を支援し、学内の質保証の取組を検証できるようにするためにどのような方策が考えられるか。
(例)eラーニングに関するグッド・プラクティスを促進するような各大学の自己点検及び第三者評価


(2) 外国の大学等のeラーニングによる教育に係る質保証の在り方
利   点
我が国の学習者にとって多様な教育の選択肢の一つとなり得る
高等教育の一層の国際化・情報化に貢献し得る
課   題
我が国の評価機関等による評価は困難であり、当該外国による質保証の状況が重要
外国の質保証制度、教育提供者の制度的位置付け、教育の評価結果等について、我が国の学習者や大学等が参照できる情報の提供が必要
外国の教育制度に基づくeラーニングによる学修の単位の換算の問題

(検討課題)
   まず、各国の質保証制度、認可やアクレディテーション等の状況、評価結果、教育課程等に関する情報を、我が国の学習者や大学等が利用できるよう、情報の収集及び提供の体制整備を図ることが必要ではないか。

   さらに、学習過程、成績評価、学習支援等に関する情報の収集・提供についても、学習者や大学等のニーズに応じて行われるようにするためには、どのような情報収集及び提供機能・体制が必要か。

   また、その他、我が国の学習者、大学等が、外国の大学がeラーニングにより提供する教育の質について判断する際に資するものとして、どのような方策が考えうるか。
(例)我が国の大学の提供するeラーニングに関する点検・評価項目が作成されれば、それを基準の一つとして活用しうる。


3. 大学の質保証に係る国際的な情報ネットワークの構築等
(基本的考え方)
   国境を越えた高等教育の提供の進展に伴い、各国の大学等の位置付けやその学位等の国際的通用性が課題になっており、大学、学習者、雇用主等社会一般が活用できる信頼性の高い情報の収集・提供のための国際的なネットワークを整備することが必要ではないか。

   また、このような国際的な情報ネットワークの整備により、いわゆるディプロマ・ミル又はディグリー・ミルなど高等教育機関として認められていない質保証の不十分な教育提供者に対する学習者等の自己防衛を支援することも可能となるのではないか。

   また、我が国は、ユネスコやOECDにおいてこうした国際的な情報ネットワークの構築の必要性を提唱したところであるが、引き続きこの面での国際的イニシアチブを発揮するとともに、我が国の大学及びその質保証に係る情報の発信並びに海外の情報の収集及びその国内への提供のための体制を整備していく必要があるのではないか。その際、欧米等における質保証・学位等に関する情報提供機関等の取組をも参考にすべきではないか。


(1) 国際的な情報提供等に係る我が国の取組体制の整備
(検討課題)
   国際的な取組の推進に貢献するとともに、我が国自身の取組体制を整えるため、まず、大学評価機関等を含む関係者間の連絡協議や情報交換等を強化する必要があるのではないか。

   その上で、我が国内においても、政府、大学、評価機関等関係機関のホームページをリンクするとともに、我が国の大学の質保証に関する総合的な情報窓口の機能を果たせるようなポータル・サイトが必要ではないか。

   また、その際、我が国の政府、評価機関、大学等の各情報提供機関においては、国内のみならず海外に対しても、大学における教育活動等に関する積極的な情報提供に努めることが肝要ではないか。その際、どのような点に留意すべきか。
(例)
   ・ 大学の質保証という観点から、例えば索引を工夫するなど、利用者が情報を入手・活用しやすいような情報提供の在り方を奨励
情報提供対象をどこにするかを意識。(例:世界全体か、特定地域か、特定国)
情報の内容、使用言語等についての工夫。当面、英語による情報提供の充実が急務ではないか。

   さらに、将来的には、国内の大学や大学評価に関する情報の海外への発信、諸外国の大学や評価・学位等に関する情報の収集・提供など、我が国においても、大学評価等に関する国際的な情報を集約するセンター的機能を整備する必要があるのではないか。

   大学の質保証に関する国際的協議に積極的に参加・貢献するとともに、我が国の大学の国際競争力及び学位等の国際的通用性を確保するためにも、政府、評価機関、大学等を含む関係者間の連携協力の強化が必要ではないか。
(例)・ ユネスコ及びOECDにおける検討への対応
世界6地域の学位認定条約の枠組み等における各国の動向把握
高等教育の質保証機関の国際ネットワーク(INQAAHE)等における大学評価機関間の国際的取組の展開等を的確に把握


(2) 大学の質保証に係る国際的な情報ネットワークの構築に向けて
(検討課題)
   世界各国の大学等の設置認可やアクレディテーション等に関する情報、評価機関等が提供する情報、各大学が提供する情報等を組み合わせることによって、大学関係者、学習者、雇用主等社会一般を含む情報利用者が、大学等の制度的位置付け、その学位等の通用性、教育の質等について判断できる国際的な情報ネットワークを各国間の協力によって構築することが必要ではないか。

   このような国際的情報ネットワークの中核的機能として、各国の政府、大学、評価機関等関係機関のホームページをリンクするとともに、大学の質保証に関する総合的な情報窓口の機能を果たせるような国際的ポータル・サイトが、例えば、ユネスコのような国際機関において作成されることが必要ではないか。その場合、提言するのに当たり、どのような点を留意すべきか。
(例)・ 当面、既存の情報をできるだけ活用、
徐々にフォーマット等の調整を図る等





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