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資料2−4
国際的な大学の質保証作業部会
EラーニングWG報告

Eラーニングよる高等教育の提供にかかる質保証の
在り方を検討するに当たっての議論のポイント(案)

   今日、インターネットを始めとする情報通信技術が急速に進展し、国境を越えた情報サービスが飛躍的に増加している。
   高等教育もその例外ではなく、アメリカを始めとする諸外国においては、インターネット等による教育プログラムの提供等により、非対面で授業を行い単位(又は学位)を与えるという現状がある。我が国においても、今後、同様のケースが増加することが予想される。
   このような、インターネット等を利用し、我が国の大学が海外へ向け発信する教育サービス及び外国の大学が日本を含めた世界に向けて展開している教育サービスについて、その特性を分析し「非対面における高等教育」の質の保証や向上に貢献する方策の検討に当たり、まずは整理すべき主な論点例は以下のとおり。

(1) 我が国の大学等のEラーニングによる海外展開に係る質保証の在り方について

   我が国の大学等が、主に海外(外国在住者)を対象としたEラーニングによる教育活動を行うことをどのように捉えるべきか。(※1参照)

【海外分校設置等の「物理的な展開」との比較の観点】
   
(具体的論点)
   1 Eラーニングによる海外展開の利点は何か。
多様な学生の受入れによるマーケット(教育市場)の拡大
→    制度や学費などの点で留学生の受入れよりも容易   等
比較的廉価で教育を提供できる可能性
→    初期投資、ランニングコストの点で、分校の設置等より廉価になりうる(ただし、条件により異なる)
国際競争力の向上に資する
→    教育研究の国際水準への対応の促進
我が国の大学等の国際的認知度の向上   等

2 Eラーニングによる海外展開の課題は何か。
情報通信インフラの問題
   途上国の場合は、ネットワークの整備が不十分
   先進国でも、インターネット以外を利用すると接続が困難
組織(大学)間の連携の問題
→    連携する場合   =相手大学との綿密な調整が必要
→    連携しない場合=学生の獲得の点でも、学習の支援の点でも調整すべき点が多い。
教授法・学習過程の問題
   言語、教材のモジュール化、事前の学習内容等の明示、教育内容の適否、単位取得までの学習支援など対面教育と異なる視点で構成することが必要
日本の大学の教育(学位等)の国際通用性の問題
   我が国の大学等の国際的な認知度の観点から、アメリカ、イギリスの大学と比較して学位の通用性は低い。

3 質の保証をどう考えるか。
「対面教育」における質保証との相違点、「対面教育」では見過ごされてきた部分をどのように考えるか。
遠隔教育の「質」は誰(どの機関)が保証すべきか。

   ・ 教育の提供に係る事項
→    学習環境、システムの保証
→    コンテンツ自体の質保証:教材のデザイン(コンテンツのピアレビュー   等)
→    組織体制(インストラクショナル・デザイナーや技術専門家の配置)
→    学生支援(学生への情報提供、財政支援、履修上のフォロー   等)
卒業生の学力レベルの確保
→    学習プロセスの把握をどう考えるか
→    テスティングの重要性
→    提供国(日本)が(他国で受講した)卒業生の質を保証できるか。

我が国の政府・大学評価機関等の関与の在り方、及び果たすべき役割はどのようなものが想定されるか。
→    Eラーニングの推進にも資するためのガイドラインの作成
→    実施者がEラーニングを実施する際に注意すべき点についてのチェックリストなどの作成
→    インストラクショナル・デザイナーの養成支援
→    「ラーニング・オブジェクト」としてのコンテンツの再利用の促進
→    第三者評価体制の確立

(2) 外国の大学がEラーニングにより提供している教育サービスに係る質保証の在り方について

   外国の大学がEラーニングにより提供している教育サービスについて、どのように捉えるべきか。(※2参照)

   (具体的論点)
   外国の大学がEラーニングにより提供する教育に関して、どのような質の保証の取組が可能か。

→  大学に関する制度的側面からの論点
   * Eラーニングによる学習の単位換算
Eラーニングのみによる学位取得の内実の把握
(対面教育と同等の内容を学習して学位取得に至ったか。
      →   学習プロセスの把握は可能か。
アクレディテーションの範囲の限定
(海外のアクレディテーションは多様であり、受入側として、全てのアクレディテーションを同等に扱うか否か)

学習者保護の観点
   * 言語の問題(とくに同期型の場合)
デグリー・ミル、アクレディテーション・ミルの排除
(日本では、あまり問題意識がなされていないのではないか。)
学習者自身の自己防衛のための方策

   非伝統的教育機関(営利企業、Eラーニングのみを実施している大学等)による教育提供をどのように取り扱うか。

→    各(提供)国における質保証の制度から、各受益者(機関)が判断

   以上を踏まえ、我が国の政府・大学評価機関の関与の在り方及び果たすべき役割はどのようなものが想定されるか。

→    第三者機関による情報収集および提供
各国の質保証制度の状況、当該国でのアクレディテーションの有無、必要な語学力やシステムを利用するためのスキル   等)
→    外国大学が提供するEラーニングの利用に当たってのガイドラインの作成


※1    我が国の大学がEラーニングによって海外へ高等教育を提供する場合

1) 大学は、メディアを利用して行う授業を含め、授業を外国において履修させることができることとされており、インターネット等を活用して海外に教育を提供することが可能である。
(大学設置基準第25条第3項、大学通信教育設置基準第3条第3項)

2) 通信制の大学については、卒業に必要な単位すべてをメディアを利用して行う授業により修得することができるので、海外にいながら我が国の通信制の大学を卒業することが可能である。
(大学通信教育設置基準第6条第2項)



※2    外国の大学がEラーニングによって我が国に高等教育を提供する場合

1) 外国の大学がインターネット等通信教育により提供する授業科目を我が国において履修した場合、その単位を大学の判断により認定できる。
(大学設置基準第28条第2項)

2) 外国の大学がインターネット等通信教育により提供する教育を我が国において履修することにより、学校教育の16年間の課程を修了した者については、大学院入学資格が認められる。
(学校教育法施行規則第70条第1項第3号)





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