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国際的な大学の質保証に関する調査研究協力者会議

2003年11月28日 議事録
国際的な質保証に関する調査研究協力者会議(第3回)議事要旨


国際的な質保証に関する調査研究協力者会議(第3回)議事要旨


1. 日   時:平成15年11月28日(金)10:00〜12:30

2. 場   所:学術総合センター101,102,103

3.
出席者:
〔委員〕   坂元昂(座長代理)、相澤益男、馬越徹、大中逸雄、モンテ   カセム、ウィリアム   カリー、木村孟、清成忠男、舘昭、二宮皓、宮田清蔵、吉田文
 
〔オブザーバー〕   塚原修一
〔文部科学省〕 高塩高等教育局担当審議官、村田大臣官房国際課長、合田高等教育企画課長、大森高等教育局視学官   その他関係官

4. 議事概要(○:委員   ●:事務局)
   事務局から配布資料の説明があり、その後、座長から前回議事要旨(案)の確認があり、訂正等については12月4日(木)までに事務局に連絡いただきたい旨の発言があった。

   作業部会の各ワーキング・グループ主査から、各々のワーキング・グループの進捗状況について報告があった後、「Eラーニングによる高等教育の提供に係る質保証」「ディプロマ・ミル」「外国大学の日本分校や日本の大学の海外展開に関する質保証」について以下のとおり議論があった

   質問ですが、1大学が関与しないもので正規の学習として認定されるようなものはあるのか。その場合にEラーニングで提供されるプログラムを履修し取得した単位はどのような取扱いがなされているのか。2ディプロマ・ミルに関して、日本で実際に問題になったことや被害にあったケースがあるのかどうか。

   Eラーニングについて、外国の大学等がインターネット等通信教育により提供する授業科目を我が国において履修した場合、その単位を大学の判断により認定できるということ。そして、16年間の過程を修了した者については、インターネット等通信教育によるものであっても大学院入学資格が認められること。つまり法制度上はEラーニングについて単位認定はおろか学位についても可能な形になっている。しかしながら、問題は、その大学がきちんとしたものなのか、或いはきちんとしたプログラムなのかということである。

   ディプロマ・ミルは実際は教育をあまり、ほとんど、或いは全くせず、既に学習したことを認めたとして学位を出すのが一般的である。学習歴を認めるに当たって、本当に評価する能力を持っているということが疑われることもあり、そういったことから問題が発生している。

   日本の大学の多くは、単位互換を提携校と行っているが、アメリカ等の大学のシステムに対して認識がなく、教員採用などの際、判別がついていないとディプロマ・ミルと疑われるケースがなかにはあるだろう。日本ではそれに対する制度的な対応がなされていないので、潜在的にはかなり該当するケースがあるのではないか。

   ディプロマ・ミルに関する公式のデータなどは無い。問題を感じて個人的に取り組んでいるものはあっても、組織的なものにはなっていない。

   日本ではディプロマ・ミルへの問題意識が希薄なため、現在は問題が表面化しないが、国際化していく社会の中で、例えば、教員が国際的な場で履歴書交換した際に「ディプロマ・ミル」の学位だということが判明して問題になるケースが考えられる。そういうことが原因で日本の大学制度の信用が失墜する可能性なども考えられる。

   組織的にまたは体系的にディプロマ・ミルを把握する仕組みはできていないが、消費者センターや、一般の方から文部科学省に問い合わせがこれまでも何度かあった。そのように表面化した問題は氷山の一角であると思われる。

   Eラーニングはこれからも急速に発展するので、ある程度の先を見て、規制にならないような質保証を考えなければならない。

   ワシントンアコードが国際的な質保証を出しているが、遠隔教育については、まだ検討中である。インプット的な評価はできるがアウトカムズの評価は難しい。現地にいかないとわからない。

   工学・医学といったような実態に触れることが重要とされる教育(実験等)を遠隔教育でできるのか。そういう面をどう評価するのか。

   非対面教育は対面教育に劣るという風評はあるが、実際にそのような調査はない。むしろ非対面教育の方が良いという調査も出てきている。

   大学で基礎教育が中心になると、産業界で必要な専門教育を行うことはなかなかできない。大企業は社内教育ができるが中小企業は無理なので、生涯学習の観点から遠隔教育が重要になってくる。

   MITがシンガポールにおいて実施しているような、既にアクレディテーションされている授業をそのまま配信するようなケースは調査対象外なのか。

   MITのシンガポールへの提供は学位授与がなく、正式には高等教育とは認められていない。今回の主な焦点はEラーニングにより新たに高等教育に参入してきたものを取りまとめた。

   東京工業大学では、タイに分室をおき授業を衛星中継し、そこからインターネットで配信している。その単位認定は、先方の大学が各々正規のコースの一環としている。単独では学位につながらないが、正規の教育として認められている。

   MITがシンガポールに実際に教員を派遣し、対面+Eラーニングで単位を出す形も取っている。そういう場合、アクレディテーションは問題にならない。色々なプロバイダーが出てきた時にどうするかが問題である。

   規制的な観点からの質保証の議論だけでなく、Eラーニングはどうあるべきか、ということの良い方向を指し示すのも重要なことである。国際的なレベルでEラーニングが確立されるためのガイドラインの方向性を示すのも重要だ。

   アウトカムズとして学生にどのくらい能力が着いたのかという証明は受入先の国に行かないとわからない。提供する出自国で認定する場合は、審査する人が受入先の国に行かないとわからない。

   日本がきちんと質保証のメカニズムを持っていないと相手にされなくなる。国立大学だから大丈夫というのでは外国からは信用されない。

   外国大学の日本校とは、当該大学全体の中でどういう位置付けになっているのかというのが重要になる。かつての日本校ブームの際の多くは本校の名前を使うことを認められているだけというケースが多かった。本校そのものが進出して分校を設立しているのか、それとも業務提携をして、本校の名前の使用だけを認めるだけ等、その機関の本校との関係をパターン化し整理して議論する必要がある。

   外国大学の分校もEラーニングも同様のことだと思うが、日本で勉強して、学位要件が本校と同じ学位を出すような場合は、学位だけを見ただけでは本校か分校か判断できず、良くも悪くも大学が教育の質を保証していることになる。
   「分校の学位」として出すなら、教育に関する規定権限が独立国にないはずはないので、その国(日本)の法制に従うべきだと思う。
   また、本国の大学が、本校・分校の区別なしに学位を出している場合は、現地の評価機関で評価できるのか。この問題はEラーニングにおける場合でもまだ未整理の問題であるが、現地における質保証という観点から検討が必要であろう。

   自分の大学でEラーニングの実験をやっている。5つの領域を見ないと質保証ができない。
1    発信システムと受信システムが確立しているか。教材のバックアップシステムを考えなければならない。
2    ラーニング環境の保証。アクレディテーションして採点するとなると同一環境を保証しなければならない。自宅からアクセスできないなどの問題に対処するため、大学にアクセスできる場所を用意している。これは国内でも国外でも同様に保証しなければならない。
3    コンテンツ開発の問題。対面教育の代替と考えていたが、大きな可能性があることがわかり、これを創造的にやる必要がある。リソースは大学だけでなく、出版社など色々な所にある。
4    テスティングが大事。クレーム処理をできるような透明度が必要。
5    これを質保証すればアクレディテーションする。

   日本の大学が海外展開するにあたり、国内で法的に定められている質保証に関する事項を、海外の大学やプログラムまで広げていくことまで考えているのか。また、大学間協定では今後、国際的な質保証の観点からすると問題があるということから、日本全体として何かを作るための議論とするのか。

   日本の現行制度では解釈上、我が国の大学が海外で教育を提供し、日本の大学としての学位を出すということを想定していないことが欧米諸国と比べ我が国の大学の海外展開の支障になっている。従って、我が国の大学の国際展開、国際化を促すということ。
   もう一つとして、我が国の大学が海外展開をする際に、その教育の質も日本の質保証システムの中で担保しないと国際的に日本の教育の質が評価されないという問題意識もある。
   以上のことがポイントとして考えられるのではないか。

   諸外国の教育を享受したいというニーズは多いが、外国からの教育を輸入する場合のセーフガードをどうするかということに関して、我が国は経験が浅いということがわかった。

   日本の大学は「協定」を充分活用できていないのではないか。協定を結ぶということは日本の大学を信頼してもらい、どういう教育形態であれ、教育プログラムを購入して、国内において質の高い教育を提供することができる。大学が責任を持って外国の教育プログラムを買って提供するという発想が少ない。そういう経験を積むことで、良いものと悪いものを判断でき、社会に質の高い情報を提供できるのではないか。

   まず、日本の大学の質的保証がされていなければ、始まらない。さらに、機関評価だけでなく、欧米等のように分野別評価が必要になるだろう。
   また、もう一点、国際的な教育を行う場合、例えば海外の学生とプロジェクト・ベース・ラーニングを実施する時、大学間の協定だけでなく当該大学の所在する政府も関与することが想定される。そうなると政府間としての質保証が必要なのではないか。

   1つの方向として、消費者保護の立場がある。教育の受け手が何を期待しているかをリサーチをし、いい面を日本の大学が取り入れることによって、結果、消費者がいい加減な教育で被害を受けることが無くなる。ニーズと質の問題を絡めて考えると、大学がどうしなければいけないという指針がでてくる。

   国際的な議論の中には、世界的なスタンダードを作って質保証をやるという意見もあるが、国際機関では、もっと緻密な議論をしようという流れになっている。ユネスコで、世界の高等教育機関のリストを作ろうという動きがある。WTOでの議論がとん挫しており、今後は国対国のネゴシエーションがでてくる。そうすると、色々なプロバイダが入ってくるので、何らかの形でクオリティ・アシュランスのメカニズムを作らないと深刻な事態になる。来年度から日本で行う認証評価を世界的に認めてもらうのが最優先の事項だろう。プログラム別評価は重要だが、日本はまず、機関評価をしっかり立ち上げるのが肝要だろう。

   次回の国際的な大学の質保証に関する調査研究協力者会議は12月16日(火)に開催することとなった。


以   上


(高等教育局高等教育企画課高等教育政策室)

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