飛び入学制度を導入している取組の評価について、一定の評価ができることに異論はないが、その恵まれた指導体制を他の大学においても整備しうるかは疑問が残る。
飛び入学制度の評価に関しては拙速にはできないが、将来的には確実に行うべきという姿勢を明確にする必要がある。
「特に優れた資質を有する」という以上、そうした者には入学後については「特別な配慮」(特にハード面)は必要なく、通常年齢よりも1年早く大学に入学できるメリットを提供するだけで、または若干のカリキュラムの工夫を凝らすだけで、そこから資質伸長の可能性をそもそも学生本人が引き出すことができるのではないか。
本来、大学は専門分野について学生自身の主体的な問題意識と取組によって学びを進めていくところであり、そうした資質と意欲、適応力のある者こそが大学への早期入学に値する人材と言える。
大学の高度で創造的な学問研究に主体的に取り組むことができる資質があるか否かを見極める主な責任は大学にある。高等学校長にこれを委ねることには無理がある。そもそも高校は幅広い教養と、専門分野への基礎を培うところであり、特定の分野への興味関心をある程度呼び起こすことはできても、それをさらに深めていく環境を継続的に確保することは難しい。
早期入学に値するか否かを判断する客観的なものさしのひとつとして国際的な分野別コンテストを活用することが挙げられているが、これをもとに高校が推薦をすることは可能である。
大学は飛び入学に相応しい人材を発掘するためにも、積極的に高大連携の取り組みを進め、継続的な指導のかかわりの中で、これはという人材を見出す工夫をすべきである。
学習に関して指導助言のできる教官1名と、学習・生活両面でのサポーターとして大学院生1名を指定する程度で、あとは他の学生と同様に扱うとともに、本人の学習プランに基づいて専門分野を中心に取り組ませていけば良い。飛び入学に値する人材であれば自分にとって必要だと感じる教養は自らの努力により身に付けていくことが期待される。一定の必要最小限のサポート体制の下で一大学生として学習に取り組ませれば良いのではないか。
十分に履修できなかった科目を高校の通信制や定時制を活用した補充することを明示することは負担感を感じさせることにならないか。
特に優れた資質を対象とした試みとは異なると考えられるが、一部私立の高大一貫教育で取り組まれているような高校生のうちに系列の大学の科目を組織的に履修するような取組についても言及した方が良いのではないか。
現行の教育制度の下で、総合的に優れた生徒を飛び入学で大学に進ませることについては社会的な合意形成がなされていない。従って、飛び入学の対象者は、これまで通り「特定の分野において特に優れた資質」を有する生徒とすることを前提として議論をする必要があるのではないか。
高大連携の一つの工夫として、例えば、高校生・大学生、高校教員や大学教員、企業関係者等が参加する地域の科学サークルを作るといったことも考えられる。
高大連携の取組みの全てを土日や長期休業中に行うことは難しい。高大連携授業を学校外における学修に位置付けるなど、より高校が柔軟な対応ができるような工夫が必要である。
継続的な高大連携は、大学にとっても、参加する高校生にとっても大きな負担を強いるものであり、国や県による財政的な支援が不可欠である。
SSH等の該当校も指定期間が終わればその資金は限られており、継続的な取組は大学の好意に依存するしかない。
いわゆるトップ校だけでなく、優れた資質を有する者はそれらの学校以外にも多く存在するはずで、それらの生徒に対しても高大連携の機会を与えられるように支援することが必要である。
(以上)
高等教育局大学振興課大学改革推進室
-- 登録:平成21年以前 --