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調査研究協力者会議

2002/01/24   議事録
看護学教育の在り方に関する検討会(第4回)議事要旨

看護学教育の在り方に関する検討会(第4回)議事要旨

日   時       平成14年1月24日(木)   14:00〜16:30   
          
場   所       霞山会館   9階「まつ」   
          
出席者       委員: 平山座長、新道副座長、飯田、隈本、佐治、佐藤(美)、佐藤(禮)田島、辻本、鶴田、廣川、見藤、南、山本の各委員
        オブザーバー: 厚生労働省医政局看護課長
        文部科学省: 村田医学教育課長、倉田課長補佐、島課長補佐、正木看護教育専門官、桑原大学病院指導室専門官
          
議事等    
1   開会
   (1) 座長から事務局関係者の紹介があった。
   (2) 前回の議事要旨(案)について、各委員の確認後、了承された。なお、了承された議事要旨については、文部科学省ホームページ及び大学病院医療情報ネットワーク上で公開する旨の説明があった。
   (3) 事務局から配付資料の確認があった。
なお、主な資料は、資料1:看護学教育の在り方に関する検討会(第3回)議事要旨(案)、資料2:報告書作成に向けた素案、資料3:「報告書作成に向けた素案」に関する検討会委員の事前意見整理表、資料4:看護学教育の在り方に関する検討会の今後の進め方(案)。
         
第3回検討会の資料に関しての各委員からの意見及び平成13年11月に全国の看護系大学の教育関係者、大学56校、病院35施設から92名の参加を得て開催された看護学教育ワークショップからの意見を踏まえて作成された資料2及び3について新道委員から、「1検討の基本的考え方」「2カリキュラムのあり方」「3看護実践に直結した技術学習の項目別の到達度」「4臨地実習の指導体制と新卒者の支援」「5教育能力の向上と質の保証」の説明があった後、資料3を中心に意見交換を行った。
  (○:委員、△:文部科学省、□:厚生労働省)   
          
(1) 「1検討の基本的考え方」及び「2カリキュラムのあり方」について
   ○   3頁では、検討内容を技術学習項目に絞ったので、学習項目のうち、看護専門職としての機能や看護職の責務、法制度、看護行政などは除外していると規定しているが、この検討会の狙いとして今の看護学教育に足らざるところを補うということであれば、各大学で最低限身につけておいてほしいものの中に、看護専門職としての機能や、患者権利擁護者としての看護職の役割なども入れて欲しい。つまり、看護婦とは一体誰のために働いているのかといった非常に基本的なことを、例えば実践的なケーススタディーやロールプレイングで対応したり、現実に病院や一般社会を調査活動することで、看護職の社会的な役割みたいなものを教えるカリキュラムを作ってほしい。
   ○   検討内容を技術学習項目に限定すると、看護学教育に関する検討会ではなく、看護技術に関する検討会という感じがする。
   ○   看護職の役割などを教えることは非常に重要なことであるということをきちんと入れておくことは必要だと思うが、各大学では教え方が色々とあるので、項目としてあげにくく、実際にやっている大学は非常に多い。
   ○   項目や具体的な教育方法について明示すると各大学の自主性を損ねるということであれば、最低限当然身につけておいてほしいこととして、単純にインフォームドコンセントという非常に雑駁な言葉だけではなく、実際にインフォームドコンセントを理解するために必要な他のたくさんのキーワードを明示する必要がある。
   ○   全体を通して地域看護の視点が弱いと思う。学生が在宅看護実習で訪問看護ステーションを利用する際、在宅看護論で教えられている内容がバラバラで、ステーションに求められていることもバラバラである。
   ○   看護の概念や定義などを除外するか、しないかという問題ではなく、それがなければ看護技術はできないものであるから、どのような表現で置くかということ。
   ○   看護大学では、看護婦(士)と保健婦(士)と助産婦の受験資格を取って卒業できるが、国民がより高い実践医療を望んでいるのであれば、看護婦にポイントをおかないといけないのではないか。
   ○   看護大学によっては、助産婦を選択コースで取っていない大学もあるので、保健婦と看護婦について、つまり地域を基盤に活躍する看護職種も看護大学の中で育成している。
   ○   検討会の方向としては、保健婦(士)、助産婦、看護婦(士)に共通のミニマムエッセンシャルズを示し、その残りを各大学がどう考え、どう上積みするかということにしている。
   ○   看護系大学というのは、看護学部看護学科を論じているのか、保健学部看護学科を論じているのか。それとも、保健学科看護学専攻なのか。看護学専攻も全部入れてとにかく看護婦を育成している看護系大学は全部含むのか、スタンスをどこに置いているのかをどこかに明記する必要がある。
   ○   大学における看護学教育に関する在り方の検討で、ずっと看護学教育として一貫してきており、看護学の学士課程というところで統一してこの検討会の報告書を出すと整理してきている。
   ○   まだ練れていなくて誤解を与える表現がいくつかあるので、修正して欲しい。
   ○   資料3では、現在の看護学教育に何か課題があるからそれに取り組まざるを得なかったと言うニュアンスに読みとれるが、看護大学が来年100校程になり半分以上が卒業生を出し、後半分がまだこれからで、こういう時期にこういう事を考える必要があるというニュアンスの表現に直すべきである。
   ○   4頁のA群とB群に書かれていることの性質が非常に違うので、A群というような分け方ではなく項目を別に立てて、2つに分けてはどうか。また、B群の中には既に使っていない技術や使ってはいけない技術、議論がある技術がある。例えば膀胱洗浄という技術は感染を促して危ない、しないほうが良いのではないかという意見もある。妥当な技術項目をこの検討会で挙げるとなれば、専門家の教員たちに聞かないと適切であるとはなかなか言えない。
   ○   技術項目に関しては、具体的に実践している者に確認して、もう一度、修正し直したものを次回検討会に提示してスクリーニングするつもりである。
   ○   もう一度、言いたいが、報告書に本検討会は看護実践能力に限ってしかも技術的側面に限って検討するものであるということを書き込んでしまったら、検討会の方向性を限定することになる。本検討会はこれからの看護婦を育てるにあたり大学教育で教えて欲しい事を検討する会議だと思う。4頁のA群の中には法律やその看護職の目的などを理解しないと実践できるはずも無いことが書いてある。
   ○   除外項目のキーワードは、それらが身についた結果何ができなければならないかという観点からA群の看護ケア基盤技術の中に表現されている。
   ○   臨床で卒業生に期待していることは、各技術項目が単にできればいいということではなく、A群とB群を統合した形で、一つの技術の文脈として実践できるということ。
   ○   キーワードにさえ入っていない知識体系というものがこの他にもたくさんある。例えば成人看護学や母性看護学など。キーワードだけ見ると、これだけなのかという気がするが、本当はもっと違った知識体系があるので、そのことを付加して欲しい。
         
(2) 「3看護実践に直結した技術学習の項目別の到達度」について
   ○   到達度について、ワーキンググループなどで議論された結果、5頁のように落ち着いた。出来るということは、1つの看護行為単位で考えていくと膨大になり詳細に成りすぎる。大学教育を受けた看護の人達ができるレベルというのは、看護行為をする時に色々な事で判断過程を踏まえながら出来るということを意味する。それを1つの例として示すかまたは全てその奥行きのところで考えて表現していかなくてはならないのかの意見が欲しい。
   ○   4頁の一番下であるが、ここには清拭の体を拭くということとその次にある入浴介助という2つの概念があれば良いのではないか。洗髪は若干違う手法で行い、口腔のケアも幅広いので、残した方が良い。洗面や整容を残すかは論議だと思うが、寝衣交換を清拭の範囲の中に統合する方法が1つあるのではないか。また、7頁の一番上の項目では、例えば、清潔保持の必要性を判断し、という条件が1つ付いて、本人の状態や要望を考慮した方法を選んでというもう1つの条件がついて、そして次の方法を自立して実践できる、つまり全身清拭ができるという事に対してこれだけの条件を課している。全身清拭を実践するには、これらの条件が必ずなくてはならないので、あえて表現する必要はないのではないか。
   ○   報告書を一般の方に公表するという前提に立つと、B群の事柄がどのような条件の中で看護婦がやっているのかということを見せるためにはあった方が良い。ただ、非常に重症の人に対してもこれができるのかというと出来ないので、身体侵襲の具合や病状の重さなどを一言どこかに記載する必要がある
   ○   実際の医療事故の半分近くが機器の使い間違いやスイッチの入れ間違いによると思われることから、7頁のiに、救急時に必要なME機器の説明ができる、理解できるを追加して欲しい。
   ○   4頁の3について、人間の基本的欲求と基本的人権の尊重は削除し、次に、擁護者として何を擁護するのか分からないので、患者の権利擁護者としての理念・行動と直して欲しい。これに関連して5頁の3の、対象者の立場に立つ、意思決定の擁護(助け護る)というのは別に括弧をつける必要は無い。また、インフォームドコンセントの到達目標が書かれていないので、あらゆる医療行為に関する患者の意思決定についてインフォームドコンセントの実践を出来る、あるいはインフォームドコンセントの実践に補助できるというような内容の到達目標を入れるべきである。4頁のA群の8の自己決定権というのは終末期医療に関する決定権の限定の話だと思うので、終末期医療における自己決定権とするか削除するかのどちらかになると思う。
   ○   到達度のところのf:診断に伴うとg:治療に伴う技術の書き方を別の表現にした方が良い。
         
(3) 「4臨地実習の指導体制と新卒者の支援」について
   ○   7頁では、「緊張関係の中で」と現状を踏まえて、「実習は極めて重要」と強調しているが、8頁では、「あらかじめ患者などの了解を得る必要がある」とだけ触れており、検討会そのものが今の患者さん側の不安を軽く見ているという印象がこの文章の中から感じられたので、もう少し深く受け止めた表現にして欲しい。
   ○   実習を計画する側そして実習を指導する側がきちんと患者側の状況を認識しておくべきだという表現を追加することを提案したい。
   ○   学生は学内である程度の技術をマスターした上で、学外実習を行うべきであるという思想をはっきりさせておいた方が良いと思うので、学内実習体制についてという項目をたてて欲しい。
   ○   大学教育の中では、実践能力を身につけなくてはならなく、能力の構成要素として色々な技術があるが、10頁の身体侵襲を伴う技術を大学教育の中でどの程度出来るレベルに到達させないといけないのかについては、ワーキングでも意見が分かれたところ。絶対に最小限しなければならないところだけを明示し、後は卒後ということで表現しても良いのではないか。
   ○   医学教育の臨床実習については、学生に許容される行為の範囲を明示しているが、今回の報告書では、その様な考え方を決めてしまうのではなく、大学教育の中でこういうものを作っていくという基を明示してはどうか。
   ○   医学教育でも看護学教育でも、臨床(地)実習を学生が行う際、患者さんの許可を取ることをどこかに表示するべきだと思う。
   ○   医学の実習において、大学病院では少なくとも入院される時も外来の時も学生が居ることを明記し、協力して欲しいということも明記している。また、医学部では、臨床実習前に共通試験をするので、一応のレベルに達している学生が実習を行い、尚かつ実習指導者が付かなければならないという規定を設けている。
   △   平成3年に、当時の厚生省の臨床実習検討委員会の最終報告の中で、医学生が医行為を行う場合に、医師法上の違法性はないといえる4つの条件を示したが、看護の世界でも同様の議論をする必要があると考えているが、今回は時間的に困難であろう。
   □   看護職の技術問題がかなり話題になってきていることを踏まえ、平成14年度予算案において、看護職員の臨床技能の向上に関する検討会を予算措置している。この検討会では、学生に許され得る実習行為について整理し、厚生労働省として示せればと考えている。
   ○   医学教育では、医学部に協力するということを実習先の看板に掲げて書いてあるが、看護教育はそれが出来ていないので、検討会の1つのアウトカムとしてやってもらいたい。
         
(4) 「5教育能力の向上と質の保証」について
   ○   報告の中に、多様な人材の登用による教育が、もり込まれていないので、追加して欲しい。看護学の専門教育は事実上医師と看護婦だけに限られているので、専門教育の中でも社会的な地位などを勉強するために法律学者あるいは民間の患者権利団体経験者などをきちんと教員として処遇していくことも必要だと思う。定員的な難しさはあると思うが、多様な人材を求めることは悪いことではないし、アメリカの医学部でもやっていることだ。
   ○   すでに看護系大学では、専門基礎分野などの関連領域でかなり法律学者などが教授しているが、技術教育の中でそういうことが教えられるかどうか、に関しては議論の余地がある。
   ○   看護系教員は非常にオ−バ−ワ−クで、もっと看護を教える人を増やしたいと思っているが、簡単にそうならない現実がある。
   ○   患者の権利や医師・患者関係、医療者と患者の役割分担やコミュニケ−ション等について教えてもらえれば良いが、それを教える人間が今は十分だとは言えないと思う。看護教育の中で1回講演して、終わりではなく、そういう人材を登用して、そういう人達にしっかり教えていただくということを重要視していると報告書に書いて欲しい。
   ○   12頁の「大学課程による人材育成が社会の投資に値するか否かの評価」について、例えば清潔・食事・排泄という場合に常に地域では介護と看護とどう違うのか、と問われるので、そのあたりの所が分かるような書き方にして欲しい。
   ○   12頁の検討会委員の事前意見について、担当教員の資格に「3年間以上の臨床経験を有すること」等は併記できないのか、という意見がでているが、臨床経験3年以上やそういう数字で書くのはやめ、臨床経験をきちんと積んでいる人が必要という書き方の方が良い。
   □   平成元年の指定規則改正の時に、看護教員になる人には3年の臨床経験を、と前提となっていたのを5年以上とし、当時の厚生省健康政策局長名で通知しているところである。これは、厚生大臣指定の養成所の教員に対しての指導事項となるので、大学の担当教員の資格については、大学教育の点から考えられるべき性質のものだと思う。
   ○   8頁の1番上の丸に書いてあることを12頁にも記載して欲しい。医学部だと当たり前なのに、看護は教授になればなるほど臨床から離れていって、20年前の経験をあたかも今の経験のように語っている人がいる。
   ○   12頁に「看護サ−ビス利用者からも広く評価を受けていく」と書いてあるが、具体的にどういうことを考えているのかを記載するべきである。
         
意見交換を踏まえて、座長から今回審議した資料を再整理し、次回再度審議する旨の説明があった。また、今後の進め方として、資料4に基づき、次回の検討会終了後、全国の看護系大学長及びWS参加者へ資料を送付し意見を求めるとともに、3月8日(金)に最終的な決定をする。その後、3月26日(火)に全国国公私立看護系大学教育担当責任者説明会を開催してはどうかとの提案があり、了承された。
         
次回は、今回議論した資料「報告書素案」を再整理した「報告書素案(修正案)」を基に意見交換等を行うこととし、平成14年2月7日(木)10時から霞山会館「さくら」にて開催される旨、連絡された。
         

 

以上
(高等教育局医学教育課)

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