看護系大学の学士課程における教養教育について
1 教養教育と看護実践能力の育成との関係について
検討会報告では、学士課程卒業時の到達目標が論じられた。平成13年度の第一次の検討会報告では、技術学習項目の検討の範囲に留まったことから、学士課程の特質を反映した検討は十分ではなかった。そこで、今回は、その特質の一つに「教養教育が基盤に位置づけられる課程であること」をあげ、これを反映した卒業時到達目標が検討された。
各大学の教育課程は、大学独自の理念と目標に従って、系統性と論理性を持って編成されるものであるために、一律に考えていくことは出来ない。教養教育については、大学独自の方針にて運営されている面が強いのが現状である。特にこの議論では、一律の基準を提案しているかのごとき、誤解を招くことのないように留意して取り扱っている。
しかし、今後は、看護学教育の基本的在り方や方法について、大学間で共通の課題として教養教育のあり方を議論されることが望ましい。そこで、活発な議論を進める契機となるよう、あえて教育目標の例示をして、看護実践能力との関係などを議論した。以下に、その内容を紹介しておく。
1)教養教育のねらいについて
検討会報告にあるとおり、大学での教養教育については、新しい時代に求められる教養とは何かについての議論がなされており、看護学教育においても、あらためて同様の議論が必要である。しかし、少なくとも看護学を志す学生にとっては、看護という専門職業分野の中で、生涯に亘り自己の生き方を追究するために、自己を確立すること、自己の存在の原点をさぐることが大事である。とりわけ、自分の関係してくる人々との関係性を拓いていくことを学生時代に追究しておくことは欠くことが出来ない。
今回、19の看護実践能力の育成に向けて教養教育がどのようにかかわってくるのかを示すにあたり、教育目標の例示を次のようにあげて、これをもとに検討した。すなわち、 21世紀社会に生きる市民として生活を送るうえで、その基盤となる知議と技能(外国語・日本語、情報などのリテラシー)の修得をする、
現代社会にふさわしい人間形成の根幹となる主体的な自己の確立(自己の位置づけを知る、他者及び人間の周辺を知る、地域生活・世界への視野を持つ)をする、
看護学分野での指導層に求められる幅広い視野と複眼的な思考力・判断力の基礎を修得する、
看護学以外の他の学問分野の特徴と知識の修得をする、などを例示した。
(1) | 幅広い視野から人間と人間生活を理解し、確実な倫理観で行動する | |
(2) | 合理的な看護学の思考と看護実践方法を用いて行動する | |
(3) | 多様な人間活動の中に、看護の専門機能を位置づけ、職業人としての責任と役割を遂行する | |
(4) | 看護学と他の多様な学問との相異や共通点が理解でき看護実践の改革と看護学の発展に貢献する |
2 看護系大学の教養教育の現状と課題
平成14年度の本協議会が実施した調査(回答60大学)によると、表のとおり、教養教育の単位数は、20単位未満5%、20-29単位52%、30-34単位27%、35単位以上12%となっていて、約7割の大学が、卒業要件の20%、あるいはそれ以上の単位数を教養教育に当てている。また、各大学が教養教育の充実に向けた課題としてあげていることは、総合大学、単科大学により、さらには、国公私立等設置主体別により傾向が異なっていた。
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日本看護系大学協議会2002調べ |