資料5 |
文部科学省より出された 「看護学教育の在り方に関する検討会」報告書に基づき、大学間で協力して学生の看護実践能力の質を保証する仕組みづくりの検討として、国公私立の看護系大学教員有志により、学生の看護実践能力の到達度評価方法の試案を作成する。 |
正木治恵(千葉大学),井上智子(東京医科歯科大学),亀井智子(聖路加看護大学),唐澤由美子(長野県看護大学),北山三津子(岐阜県立看護大学),高田早苗(神戸市立看護大学),牧本清子(大阪大学),村本淳子(三重県立看護大学),吉田千文(千葉大学医学部附属病院),石井邦子(文部科学省) |
アカウンタビリティーのための評価: | 標準化が先決で、ペーパーテストかパフォーマンス評価となる。信頼性や妥当性が高く、効率的に実施でき、評価者は中立的な観察者としてテストに臨む。 |
学習を支援する評価: | 本質的に標準化されておらず、広い範囲の学習活動を対象とする。教師は評価の実施者かつ使用者、結果を解釈する者という両義的な役割を持つ。テストの内容は限定された学習範囲における、多様な達成目標について詳しく評価する。 |
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看護学教育ならではの評価方法の開発を目指すため、従来から看護学教育が大切にし、力を入れてきた教育方法を継承するものとして位置付ける。具体的には、”演習”、”実習”、ならびに”自己評価”を発展させ、それらを大学間共通の評価としていくために、評価の一貫性や妥当性を確保する。 |
・ | 評価だけで求める水準に到達させることはできないため、評価のあり方と教科の内容の指導方法との相関関係も考慮する必要がある。そのためには、求める看護実践能力の水準に向けた学習指導を振興させるための要素が盛り込まれる必要がある(例えばカリキュラムや学習指導に関する教師の研修等)。 |
・ | 求める看護実践能力との齟齬がないような評価方法とする(対応する評価方法が質的に劣る学習活動を促進してしまうミスマッチが起こらないように)。 |
・ | 評価方法の内容やレベルが、それまでの既習内容とギャップがあったり、国家試験の準備につながらない場合、学生にとっては多大の負担になる。 |
・ | 卒業前に評価する場合、不合格となった学生のフォローは教育側の責任となるため、試験結果は教育的に活用する。 |
・ | 従来の学内演習を、総合的な評価として発展させる。 |
・ | 評価者は教員。 |
・ | 看護実践能力の牽引が期待できる。 |
・ | 評価の手順はこれまでと異なり比較的に自在な状況で実施され、そのための厳密に統制された条件下ではなく、ベストを尽くした場合に注目する(テスト実施者と学生が共同して最もすぐれたパフォーマンスを生み出そうとするのであり、支援することを可能にする)。 |
・ | 従来の臨地実習を、統一した評価として発展させる。 |
・ | 評価者は大学教員と臨地指導者。 |
・ | 現実の状況下での多面的な認知状況や臨床判断能力、応用能力、並びに技能を評価できる。 |
・ | 将来卒業生を受け入れる臨地側に後継者育成の意識を醸成させることにつながる。 |
・ | 大学における看護学教育で大切にしている自己評価を、統一した評価として発展させる。 |
・ | 評価者は、学生自身と教員。 |
・ | 学生が学習過程で一定の成果をあげたら、そのことを示す事例や記録をポートフォリオに入れて、看護専門職として個人の成長の記録として扱い、評価に用いる。 |
・ | 共通の学習課題の達成状況を、自己評価を通して明確にできる。 |
・ | 事例を収集蓄積して、学習ならびに試験等に用いるためのシステム。 |
・ | 学生の自己学習の促進。 |
・ | 看護事例から臨床判断を問い、確認することができる。 |
【共通の評価方法としていくための今後の課題】
1. 大学間の共通事項と大学独自事項の区分
2. 共通の到達目標の達成度を評価するにふさわしい評価方法の選択
3. 評価方法としての一貫性や妥当性を確保する方法の開発