もどる


資料3−1

平成15年7月7日
医  学  教  育  課

看護学教育の現状と課題



1.    看護学教育の現状
看護職養成制度は、大学、短期大学、専修・各種学校、高等学校専攻科における保健師、助産師、看護師養成、及び高等学校、専修・各種学校における准看護師の養成となっている。
少子高齢化、医療の高度化や在宅医療の進展、介護・福祉分野の充実等、医療をとりまく社会情勢が変化している。人々の意識は、思いやりと倫理感のあふれる医療、リスクマネジメントを求めるようになってきている。医療従事者の養成に対する社会の期待は大きく、確かな専門性に加え、豊かな人間性や高い倫理観を備えた人材の養成が求められている。
看護職者の養成については、「看護師等の人材確保の促進に関する法律(平成4年6月)」ならびに「看護婦等の確保を促進するための措置に関する基本的な指針(平成4年12月)」に基づき、大学における養成が増加している。
看護系大学では、学士課程において、社会の要請に対応しうる資質の高い看護職者、すなわち、専門的知識・技術とともに、幅広い教養と豊かな人間性、高い倫理観、的確な判断力を有し、医療の場で専門性を発揮しながら他職種と緊密に連携し合ってチーム医療やチームケアを推進できる看護職者の養成をめざしている。また、看護学の基本的な知識と技術を体得させるとともに、看護学に関する思考力や応用力、創造性を養い、将来看護学を発展させるための基礎的能力を有する人材の育成をめざしている。
大学院では、看護学の推進と高度な専門的知識及び技術を有する研究者、教育者及び指導者の育成をめざし、看護学の理論及び応用を教授研究している。修士課程では、専攻分野における基礎的な研究、教育能力または高度な専門性を有する実践家の育成をめざしている。博士課程では、専攻分野において自立して研究活動を行い、教育研究の高度化、多様化を推進できる研究者の育成をめざしている。
各看護系大学は、それぞれの理念に基づく教育目標と教育課程を策定し、独自の教育活動を展開している。また、自己評価や外部評価を行い、その結果を反映させた教育改革に取り組んでいる。

2.    看護学教育が直面している主な課題
1 看護学教育改革の推進
   看護職者に対する社会の要請に応えるためには、個々の大学の教育改革に加え、看護系大学全体の教育の質を向上させる必要がある。学士課程では、どのような専門性を持った人材の育成をめざしているのか、そのためにどのような教育を行っているのかを、各大学の連携の元に明示することで、各大学の教育改革を推進することができる。
      →   学士課程の到達目標の提示とそれに基づいた大学毎の教育改革の推進

2 看護実践能力の向上
   看護系大学卒業生は、医療現場において良好な評価を得る一方で、新卒時の看護実践能力の不足が指摘されたことから、看護学教育の在り方に関する検討会において検討が行われ、平成14年3月に「大学における看護実践能力の育成の充実に向けて」の報告書が出された。現在各大学では、報告書を参考にして改善が進んでおり、特に臨地実習での学生の体験を充実させるための改善が重要視されている。引き続き、看護実践能力育成を充実させていくために、報告書に示されたコアとなる教育内容(技術学習項目)の到達レベルがより明確になり、大学間で合意が得られるとよいとの意見が、看護系大学教育者より出されている。
      →   看護実践能力の育成における技術学習項目の到達レベルの提示

3 社会に対する説明責任の遂行
   看護系大学設置の趣旨や、大学数が増加している事実は認知されつつある。しかし、看護系大学が実際にどのような教育を行い社会の要請に応えようとしているのか、専修学校や短大での教育と比較しどんな特徴があるのか、卒業生はどのような特徴を持っているのか等、学士課程における教育の実態はほとんど知られていない。中でも、保健師、助産師、看護師の教育を統合して行うという学士課程独自の教育課程について、そのねらいや内容が十分に説明されていない。
      →   社会に対する看護系大学での教育の提示、社会的評価の活用による教育の見直し

4 看護職者に対する継続教育の提供
   看護系大学は、看護職者に対する継続教育、リカレント教育を提供する役割を持つ。
   編入学制度は、短大・専修学校を卒業した有資格者がより専門性を高めるための教育を受ける制度である。しかし、短大・専修学校卒業者の減少や大学院受験資格の拡大により、編入学制度に対するニーズは変化しつつあり、制度の在り方について再検討が必要である。
   また、十分な実務経験を持つ看護職に対して、リーダーシップや指導力を備えた実践家となるための教育が求められている。大学院修士課程で行っている看護学の基盤に基づいた高度な専門性を有する看護職者育成のための教育を、さらに充実、拡充していく必要がある。
   さらに、実務についている看護職者が実務を継続しながら教育を受け、高度な専門性を有する看護職者として活躍できるような、実務についている看護職者を受け入れられる大学院入試制度や修学制度の拡充及び充実が求められる。
      →   看護職者を対象とした編入学制度及び大学院教育の拡充

5 多様な人材に対する教育の整備・拡充
   人間的な成熟が看護職者に求められる資質であることから、種種の社会人経験を積んだ人材や他分野を学んだ人材が看護学教育を受けることのメリットが着目されている。多様な人材が入学し、それまでの経験を生かして看護学を学ぶことができるような体制の整備が求められる。
   →   多様な学生を受け入れるための入学制度の見直し、多様な学生に対応できる柔軟な教育体制の整備

6 看護学研究の充実
   看護学が実践の科学としての特徴を反映させた研究を蓄積することは、研究成果に基づいた学士課程の教育や現場の看護実践の改善を可能にする。そのためには、看護系大学が看護学研究の中核としての機能を発揮し、大学教員が自らの研究活動を発展させることができる体制の整備、そして大学院における研究指導を充実させていかなければならない。
   →   大学教員の研究活動体制の整備及び大学院教育の充実による看護学研究の発展


ページの先頭へ