大学における学生生活の充実に関する調査研究会 (第1回)議事要旨 |
大学における学生生活の充実に関する調査研究会(第1回)議事要旨 1.日 時 平成11年7月29日(木)10:00〜13:00 2.場 所 東海大学校友会館「富士の間」 3.出席者 (協力者)廣中平祐,内田伸子,大谷毅,加藤美智子,喜多信雄,小谷部育子,佐々木大輔,西野哲朗,濱名陽子,平野敏政,森茜,吉本圭一の各協力者 (文部省)佐々木高等教育局長,遠藤審議官,高塩学生課長,亀井課長補佐 他 4.議 事 (1)開会にあたり,文部省佐々木高等教育局長からあいさつがあった。 (2)事務局から各協力者及び文部省の出席者の紹介が行われた後,座長の選任が行われ,山口大学長の廣中平祐氏が選出された。 (3)事務局から本調査研究会の公開についての説明が行われ,会議及び議事要旨の公開が決定された。 (4)配布資料の確認後,事務局から資料に基づいて本調査研究の趣旨及び今後の進め方並びに学生生活 の現状についての資料説明が行われた。 (5)各協力者から大学における学生生活の現状や,考え方等について概ね以下のような意見が出された。 ○ 教員側としては,近年学生の質が変化してきていることに対応して,例えば,ゴミをポイと捨てないなどこれまで大学生には言う必要のなかったことについても指導を行わざるをえなくなっている。 最近,心身症,拒食症など心の問題を持った学生がでているが,メンタルヘルスの問題についての対応は十分ではない。10年程前から1年生の学生全員に自分のライフヒストリーについて作文を書かせ,生育歴を把握するように努めている。 ○ 学生のニーズというが,具体的にはどういうものなのか。職業に役立つカリキュラムやサークル活動施設の充実といってもどういうことをやれば学生が喜ぶのかはっきりしていない。ただ,ここ30〜40年間やっていたものとは違ったものが求められているということがあると思う。 ○ 学生相談室で学生と面接していて感じているが,最近の学生は,人とのふれあいを求めているのに,実際はシャイなためそれができない。相談室は特別な場所としてではなく,日常性の中の場所として置かれる必要がある。そのためには,1対1の面談の技能の向上も重要だが,相談室という場をいかに充実させ,心和む居場所として充実させていくことも必要である。 ○ 就職状況は景気に大きく左右され,今年のように非常に厳しい状況の中でどう学生を指導していくのかが大きな課題である。就職については,ミスマッチの問題も大きく,労働省の調査によれば大卒3年以内での離職者が32%にも達している。その原因としては,大学における学生へのキャリアを前提にした教育や就職支援が行き届いていないということもあるのではないかと思う。 情報化が進み,学生への情報の発信源はインターネットであるが,大学においてはソフト面の整備は不十分である。また,職員が情報化の速度についていけず,学生に適切な情報を提供できていない。 今後秋期卒業や3年次卒業が増えていくと予測される中で,現在のような就職採用のやり方でいいのか,また,既卒者や外国人留学生の就職の問題にどのようにたいおうしていくかなどが今後の課題である。 ○ 大学生の学生生活の充実の問題を国レベルで検討する必要があるのかとも思うが,最近の学生を見ていると,質が変化しており,また,この2〜3年心の問題を抱えた学生が増えている。その背景には家庭の問題があり,家庭内に精神的な居場所がない学生が目に付く。家庭に踏み込んだ生活指導の必要性が増している。 ○ 4年前から「メンタルヘルス研究協議会」でメンタルヘルスに関する研究・協議を行っている。心の問題を抱えた学生のうち本当に病的な学生は3〜5%で,このような学生については専門家に任せるべきである。残りの学生にどう対処するかが重要であり,一般の学生の悩みは大部分は,大学の教官が人生経験を生かし相談に応じることで解決が可能である。したがって,大学教官全体が教育研究のみならず,学生の厚生補導やメンタルヘルスについて取り組んでいく体制を作ることが必要である。 戦後,SPS(Student Personnel Services)の概念が日本へ入ってきたが,今や日本の現状に合わなくなっており,これから日本独自のものを作りあげていくことが必要ではないか。 カウンセリングに関しては,最近入学してきた学生は,気軽にカウンセリングを受けるようになっている。中学,高校のスクールカウンセラーによるカウンセリングの効果が出ているのではないかと思う。 ○ わが大学では新入生の部員が集まらないため,毎年サークルが2,3ずつつぶれている状況にある。学生会館の設置も要望には上がるが,学生自体が集まらなくなっており,どのようなものを希望しているのか把握できない。学生の気質が変化する中で学生の希望の具体的内容を知る必要がある。 最近の学生は理工系学生,大学院生も含めて大学で自分の専攻する学問についてプロ意識が希薄になってきている。就職に際しても,ある企業の研究所が研究内容の専門性を強調しすぎると,学生が気後れしてしまうという傾向がある。学生の学力やプロ意識の形成について大学がどう対応するかということも課題である。 また,学生のレベルは非常に多様化しており,どのレベルにあわせてカリキュラムを組むかということも大学として真剣に取り組んでいく必要がある。 ○ 大学審答申で提言されている厳格な成績評価と学生に対するサービスは表裏一体のものとして考える必要がある。わが大学ではGPA制度を導入しているが,成績が悪い学生の中には,「朝起きられない」とか,いじめの問題で悩んでいるといった者もおり,中学校段階の問題がそのまま大学,短大まで引きあげられてきている。入学の段階で高等学校との連携がより必要であると考えているが,実際にはなかなか難しい。 短期大学は2年間という短い期間であり,短期大学特有の問題についても考えていきたい。 ○ 就職活動のために4年生は授業が行えないいわば中抜きの状況となっており,学生にとって果たしてこれでいいのかという気がしている。 わが大学では,学生関係の関係部署を統合した学生総合センターを設置して学生の多様化するニーズに応えようとしている。センターには2つの方針がある。一つは,学生の側に立ち,就職相談や経済相談などセンター全体で相談業務を重視してやっている。もう一つは,学生をリードしていくことであり,米国の大学のStudent Development ProgramやStudent Successful Programのように正課外教育において大人として完成していない発展途上の学生の発達を積極的にリードする体系的なカリキュラムを作る必要がある。これらの仕事をやっていくためには,事務局のみでなく教員が積極的に参画していくことが必要であり,そのため意識改革も含めて,教員を学生総合センターの仕事にどう組み入れていくかが大きな課題であると考えているが,現状では正課外教育へ参画しても評価されないために,インセンティブが弱い状況にある。 ○ 学生のみでなく教官の質も変化し,教官,学生,学外の企業・地域すべてが個別化している状況の中で,各々をどのように体系化していくかが課題である。わが大学では教官の委員会に事務局が参加して発言できる体制を作っている。 また,情報化が進む中で大学が個別化してしまった学生にどう対応していくのについて考えていく必要がある。わが大学では担任制をとっており,学生が担任と電子メールで相談できるようにしている。また,学生専用のサーバーを用意し,学生が自身でホームページを開設できるようにしている。 ○ 学生をリードするという姿勢は重要である。相談業務は大学の専門家だけではなく,学外の地域社会も含めたパートナーシップ型で対応した方がよいと考える。 また,学生に対しては厳しくしつけるような視点も必要ではないか。 大学が大きく変わろうとしている中で,学生の経済生活,学習生活,社会生活を総合的に議論すべきである。 ○ 学生のメンタルヘルスに関する研修を一般の教官が日常的に受けられる機会が必要ではないか。 ○ 学生のメンタルヘルスに関する教官向けの研修は学内では一部にあるが,組織的なもなものはない状況にある。 摂食障害や鬱病など,病的な症例は専門家に任せるしかないけれど,残りの学生のメンタルヘルスの問題や学生相談などについては全教官が自らの問題として捉えていく必要があるが,そういう活動が評価がされないというのもまた事実である。 就職相談,課外活動相談といっても,実はそれが目的ではなく,その背後のメンタルヘルスの問題についての相談である場合があり,相談窓口はあればある程良い。 ○ 一般の教員に対するメンタルヘルスの研修について話が出たが,やはり専門家に任せるべきであり,他の分野の専門家が足を踏み入れるのはかえって危険ではないか。 学生の意識が高等学校の延長になっている。高等学校の教員が生徒指導論を学んでいるように,大学教官向けの学生指導方法論を開発すべきではないか。 ○ わが大学では昨年から民間の人から意見を聞く会議を開催しているが,そこで,大学改革の議論はほとんどがサプライサイドの論理で,カスタマーニーズを全く考えていないという厳しい指摘があった。 (6)次回の会議日程について,事務局から9月28日(火)14:00から予定している旨の説明があった。 |