大学における学生生活の充実に関する調査研究会 (第8回)議事要旨 |
大学における学生生活の充実に関する調査研究会(第8回)議事要旨 1.日 時 平成12年5月10日(水)10:00〜13:00 2.場 所 文部省3A会議室(3階) 3.出席者 (協力者)廣中平祐座長,内田伸子,加藤雅治,加藤美智子,喜多信雄,佐々木大輔,濱名陽子,平野敏政,保坂亨,森茜,茂里一紘の各協力者 (文部省)高塩学生課長,関課長補佐,西井課長補佐,齋藤就職指導専門官 他 4.議 事 (1)前回議事要旨(案)について,修正意見等があれば,1週間以内に事務局に連絡いただき,座長の責任において確定することとされた。 (2)事務局から,資料に基づいてこれまでの意見の概要についての説明が行われた後,自由討議が行われた。その概要は次のとおりである。 ○ 「2 現代の学生の実態」の1つ目の○にある「一般学生」は,「専門学生」に比べてマイナスイメージのように捉えられているが,必ずしもそうではないのではないか。私立大学連盟では,学生を, ![]() ![]() ![]() ![]() ○ 専攻分野によって異なるのではないか。工学・技術系の学生は専門技能を修得している。 ○ 従来の18歳までの人間形成過程というものが,22歳までに引き延ばされた中での18歳段階ということを考慮して議論しなければならない。その背景には,高齢化,高学歴化がある。 ○ 大学の学部教育を専門教育の準備段階と捉え,学部では「自分さがし」をしている学生を積極的に受け入れ,指導を行い,大学院で専門教育を受けるといった教育のあり方も考えられるのではないか。 ○ 「自分さがし」ということを学生のキーワ−ドとすると,学生が流動化していることを考える必要があるのではないか。 ○ 近年の就職難も含め,大学の出口である就職そのものが非常に多様化しており,その変化の激しさ に学生も戸惑っている。わが大学では,教養・専門に系統だてて分けたトゥリーの中から,自分の能 力・適性や興味・関心に合わせて,科目の難易度も含め,適切に履修科目を選択できるようにするこ とを考えている。 ○ 学生を3つの型に分類できるという意見もあったが,「領域によって」といった制約をつけるべきではないか。領域によっては,大学側がシステマティックなカリキュラムコースを準備して,階段を上るような形で,一定の方法論を身につけないと大学院で研究をスタートできない分野がある。 ○ 転学・転学部などを希望する学生も多いが,なかなか希望通りにはいかず,それが不登校につながることもある。文系学部から理系学部への転学部等が柔軟に移動できる制度を整えればいいのではないか。 ○ 高校の進学率は高いが,中退者は11万人もいる。短大でも中退が増えており,大学への編入学という形で中退する者もいて,状況は多様化している。また,学生に接していると,近年は消極的なモラトリアム学生が多いように感じる。 ○ 例えば留学をする場合のように,積極的に休学や中退をする者もおり,その理由をよく検討する必要があるのではないか。 ○ 「自分さがし」の中で,スペシャリストよりもゼネラリストが時代の要請だと考える学生もいる。例えば,ある京都大学の学生は,理工系でありながら経済を学んでいる。全体を見る必要性を感じているからである。また,大阪大学では,120冊の読書を工学部の学生に課しているが,その120冊の中に経済の本も含まれていることから,「自分は経済に向いているのではないか」と感じ始めた学生もいた。必読書を与えることなど学生に宿題を課すことが重要ではないか。 ○ わが大学では,医学部を卒業して理学部の数学科に入学し直した学生もいる。中退や不登校には,積極的な場合と消極的な場合とがある。ビル・ゲイツも,ハーバード大学の数学科の学生時代に学校にあまり行かずに会社を興して,最終的に放校になっているが,これは積極的な不登校の例である。 ○ 学生を3つに分類するのは,危険ではないか。積極型モラトリアム学生の「自分さがし」は高く評価すべきだが,消極型モラトリアム学生とされた層にも自分なりに「自分さがし」を行っている場合もあり,マイナスイメージを学生に固定化するのはどうか。 ○ 「I 3 今後の大学のあり方−視点の転換」の最後の「大学院拡充政策」についてだが,留学生も増えているが,留学生を指導するには3倍の手間がかかり,その対応も考えるべきではないか。また,留学生に対する福利厚生も課題ではないか。 ○ 福利厚生の面は,まず日本の学生の方から改善していかなければならないのではないか。特に寮については,改善が急務である。留学生に関しては,学位取得のメニューを広げていくことが不可欠であるが,単位認定を簡単にすればいいというものでもない。 ○ 「I 2 現代の学生の実態」の9つ目の「いじめの問題」という表現についてだが,「人間関係の問題」などの語にしてはどうか。 ○ 「II 3 今後の大学のあり方−視点の転換」の1つ目の「高い付加価値を身につけさせた上で」という表現はあまりふさわしくないのではないか。商品ではないので,「人間形成」という考え方に変えるのがよいのではないか。また,厚生補導の表現も古いのではないか。 ○ 大学には社会的責任があり,社会の要請は,学生に付加価値をつけて社会に送り出してほしいということであるので,「付加価値」の語がわかりやすい。 ○ 「1 人的資源の活用」の「(2)学生の活用」についてだが,学生は何かきっかけを与えて交流を図ろうとすると意外と積極的である。学生が自主的に活動できる環境を整えることが重要ではないか。 ○ 学生は未熟であるという風潮があるが,だからこそ「(2)学生の活用」の3つ目の「学生に責任を持たせて」とあるように,責任を与えて行動させるといった責任教育は重要である。 ○ 就職相談において,わが大学では学生総合センターという大きな組織をつくり,その中に学生相談室を設置しているが,専門家と教職員とをどう連携させていくかは大きな課題である。その点は各大学も模索中ではないか。 ○ わが大学では,学生相談室において事務職員が窓口業務だけでなく,対人関係でも重要な役割を担っており,事務職員も重要であると思っている。 ○ 学生の人間形成に関わることは全教職員の責務としながら,学生相談における専門家の配置の充実を求めるのは矛盾しているのではないか。専門家に任せきりにするのではなく,全教職員体制で取り組むべきではないか。 ○ 学生からの相談について,一般の教職員が常に心がけることは必要だが,領域によっては専門家の役割が重要なのではないか。 ○ 学生相談をした学生と相談を受けた専門家が,キャンパスの中で孤立するようなことにならないように,専門家に任せて終わりということにならないように留意する必要がある。 ○ 今,各大学は方針を模索中であり,現段階では学生相談の方針の事例を示すのがよいのではないか。 ○ 組織の事例も示してはどうか。また,学生の様々なな悩みを一括して引き受ける窓口があってもよいのではないか。 ○ 「学生の活用」に関して,教員が忙しいから学生を活用しようというのは消極的理由である。一番身近である学生同士が,互いに助け合う場を作る等の積極的理由があるとよいのではないか。 ○ 以前は,学生は,サークル活動などを通じて先輩にいろいろな情報を教えてもらっていたが,現在このような状況はなくなってきており,大学側が積極的に多種多様な情報を提供していくべきではないか。 ○ 「II 2 (1)学生相談」の2つ目で「常勤カウンセラーを置く大学は21.3%」となっている理由は,最近,大学で,専任カウンセラーを常勤化することに消極的な場合もあるからではないか。常勤カウンセラーの場合,相談にきた学生と合わなかったり,学生を抱え込んでしまい,身動きがとれなくなってしまうことがあるからである。常勤化することで,どのようなメリットが考えられるのか。 ○ カウンセラーは常勤であるほうが,連絡が取りやすく,緊急事態の迅速な対応ができる。また,その大学の専任ということで,学生や教員からも信頼感がある。 ○ わが大学では,学生からの相談に応じる窓口に心理カウンセラーの資格を取得した人を常勤のインテーカーとして置き,相談内容に応じて最も適した担当部署に振り分けている。 ○ 本来,休学は学生の権利として保障されるべきではないか。厳格な条件を満たした上で教授会で認められなければ休学できない,というのはあまり望ましくないのではないか。 ○ 近年の就職状況をみると,企業の内定状況はどんどん早まっている。また,女子で総合職に内定するのは,特定大学の学生に偏っている。早期採用は大学教育を無視するものであり,企業は大学教育を尊重するべきである。改めて教育現場と企業社会との関わりを考えるべきではないか。企業は採用に年齢制限を設けているので,学生は「自分さがし」ができない状況にある。企業の人事担当者には,依然として「素材で採用し,社内教育をすればよい」と言う者もおり,企業は,人材に注目して採用すべきである。 ○ 企業は大学教育に期待をもっていないのではないか。その表れが,銘柄大学出身者に偏った採用である。就職問題は,大学間の議論に終わるのではなく,企業との対話が重要なのではないか。また,就職問題以外にも企業は大学に対する意識を変えてもらう必要がある。 ○ 地方では中小企業が多いが,即戦力を求めており,出身大学名は問題にはしないことが多い。企業も変わってきており,経団連を構成するような企業ばかりではない。 ○ 現在の学生の就職は,企業に就職するのが主体であるが,不況により就職も多様化している。女子には,就職が困難なために資格職を志向する傾向が強まっている。大学はどのように対応するべきかを考える必要がある。 ○ 軸としては,キャリア教育があげられるのではないか。キャリア教育には,就職指導,インターンシップ,キャンパスライフなど,学生生活全般を通じて行っていくことが必要ではないか。そのためには,正課外教育だけではなく,正課教育も考慮にいれる必要がある。 ○ 現状としては,キャリア教育があまり行われていないため,学生は出口で迷ってしまう。学部教育と専門教育の両方を包括的に考えるべきである。キャリア教育を正課教育の単位に組み込むのはなかなか困難であり,正課外教育で行うこともよいのではないか。キャリア教育を通じて,学生のキャリアアップや適職のマッチングにつながるのではないか。また,その過程には学生に対するカウンセリングがあり,そのための組織として,キャリアセンター,学生総合センターといったものを各大学は模索している。 ○ ハーバード大学では,学部卒ですぐに就職をする者はあまりいない。テストや宿題などが多く,学生時代に就職活動ができないようなカリキュラムを組んでいる。企業が学生を選ぶというよりは,学生が企業を選んでいる。 ○ 現実問題として,目標を持たない学生に対して現場がどのように対応していくかを考えるべきではないか。 ○ ガイダンスでは,専門的な企業情報を学生に分かりやすく説明しなければならないので,なかなか難しい。そのため,様々な形の情報提供を利用する必要があるのではないか。例えば,インターネットを利用した企業・他大学との情報交換などが挙げられる。 ○ 就職指導の人的体制の充実についても考える必要があるのではないか。 ○ ある国立大学の学生は,就職関係の情報を得るために,近隣の私立大学まで出かけていた。これでは,学生が気の毒である。 ○ 大学の事務組織の変革についても考える必要があるのではないか。キャリアカウンセリング,マッチメイキングなどは幅広く情報を収集して,学生に指導する必要があるが,国立大学の組織は細分化しすぎているのではないか。 ○ 国立大学に限らず,事務職員は依頼された仕事をやることしか訓練をされていないため,相手の要求を認識する能力に欠けているのではないか。 また,キャリア教育の入口として,学生が何でも相談できる体制をつくる必要があるのではないか。 ○ ベンチャービジネスの位置付けを産学連携の一環として捉えるのか,学生の生活を充実させるために活動しやすい環境作りとして捉えるのかが難しいのではないか。学生の自主的なサークル活動の中にベンチャービジネスを含めて考えることができるのか。 ○ 学生のベンチャービジネスを積極的に奨励するべきだ。取り組む者には休学を認め,成功したら,学位を付与するというのはどうか。 ○ ベンチャービジネスはキャリア教育の1つとして,学生が入学した時から,インターンシップとリンクして考えるべきではないか。ビジネスインターンシップを経験することで,起業家精神が生まれる可能性がある。そのための学生への情報提供は,大学教育における学生支援の一環と考えられるのではないか。 (3)次回の会議日程について,事務局から5月26日(金)10:00からを予定している旨の説明があった。 |