学士を対象とする医学・歯学教育の在り方に関する調査研究協力者会議
2000/11/20 議事録
学士を対象とする医学・歯学教育の在り方に関する調査研究協力者会議(第8回)議事要旨
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学士を対象とする医学・歯学教育の在り方に関する調査研究協力者会議(第8回)議事要旨
日 時 |
平成12年11月20日(月) 10:30 〜 13:00 |
場 所 |
霞山会館 「さくら」 |
出席者 |
協力者:鈴木主査、池田、江藤、遠藤、岡島、岡村、越智、加藤、桐野、久保、黒川、小宮山、猿田、下山、鈴木、武田、谷口、森本 の各協力者
文部省:布村医学教育課長、浅野課長補佐、宮田専門官 ほか関係官
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議事等
1 開会
(1)前回議事要旨(案)については、意見等があれば1週間以内に事務局まで連絡することとされ、特段の意見がない場合は、そのまま公開することとされた。
(2)事務局から、配付資料の確認があった。
2 事務局から、コア・カリキュラムの検討状況について説明があった後、質疑応答。 (○:協力者、△:文部省)
○ 学士編入学生は3年次に編入し、2年次で学ぶべき科目と3年次で学ぶべき基礎医学を一緒にやるから負担が大きくなっているのであり、現在でも決して内容的に負担が大きいわけではないと思う。
○ コア・カリキュラムでは、この項目を満たせば医学生も診療参加型の実習ができるといえるよう、説明もしくは資料を一緒に送付した方が一般的に理解しやすいと思うがどうか。
△ この試案はまだ完全なものではなく、各大学から提出された意見を踏まえて、最終的には3月までに取りまとめる予定である。
○ 学士編入学生にも対応できるようなカリキュラムが一番望ましい。
○ 「臨床講義」がどこにもないが、Cで行うのか。
△ 講義にするか、チュートリアル方式にするかは各大学の自由だが、従来の臨床の内容については、C、D、E及びFの内容に含まれている。
○ いくら良いカリキュラムを作っても、教える側の利用の仕方によって効果が異なるので、このコア・カリキュラムの効果を上げるためには、先生方の意識改革が一番重要であり、その点も含めて検討していただきたい。
△ 「医学・歯学教育の在り方に関する調査研究協力者会議」において、カリキュラムの在り方だけではなく、FDの在り方、臨床実習の医行為の水準、実施体制の問題等も含めて御検討いただいている。
○ FDですべての問題が解決するとは思えない。各大学に本当に熱心に取り組む先生が何人かいないと効果が上がらないので、先生方にも御協力いただくようお願いしたい。
○ 今までの医学教育には医師国家試験がかなり影響を与えており、今後、国家試験がどう変わるかも非常に大きな問題だと思う。国家試験との関係を整理する必要があるのではないか。
○ 文部省のコア・カリキュラムが実効性のあるものとなるよう、その点も十分配慮しなければならない。
○ 編入学にも影響を与えると思うが、6年間の時間配分については検討しているのか。
△ 時間的な提示をすべきだという意見もあったが、各大学でカリキュラムの編成の仕方が異なるため、一律に、専門教育をいつから始めるかを明示すべきではないということとなった。基本的には、プレクリニカルとクリニカルの部分は分けるが、プレクリニカルの内容をどういう形で編成し、いつからクリニカルを始めるかは各大学に任せるべきだという意見が多かった。
○ 臨床実習開始前の共用試験が、何年生のいつ頃行われるのかが決まれば、それが事実上の基準となるのではないか。
△ カリキュラムの内容自体がプレクリニカルのことを非常に意識し、共用試験の範囲に気を使いながらまとめられている。ただ、本試案で4年次終了までに学ぶべきものとして印を付けた項目について、本当にすべてできるのか、再度各大学で検討していただく必要があると思う。現段階では、アメリカのステップ1よりもかなり臨床を多く含む試験内容になりそうな印象を受けている。
○ ステップ1のような統一試験の受験資格については、各大学で設定することになるのか。コア・カリキュラムに挙げられている項目を学習する時期は大学ごとに異なるため、統一試験の受験資格の関係で、カリキュラムをどのように設定するかという問題が出てくると思う。
△ 研究班では、受験する時期は一律に決めずに、2年生、3年生でも内容が理解できていれば受験できることとすべきであるとの意見があった。アメリカのステップ1は、コンピュータ・ベースド・テスティング(CBT)を使っているので、学生が受けたい時に受けて、合格時点がいつであっても臨床実習開始の条件を満たし、卒業できることになっている。日本で実施する場合、CBTを導入できず、ペーパーで試験を行うことになれば、試験時期が限定されてくると思うが、その点については、今後、研究班で具体的に検討していただけると思う。
○ 大学ごとに多少のずれはあると思うが、4年次が終わって臨床に入る前に試験を実施することとなるだろう。ただ、時期的なずれがあっても問題ないようなシステムが作成されるのではないか。
○ 教官の意識変革が重要であり、特に、基礎系の教官やMDではない教官の意識改革が必要である。FDを行うだけではなく、ある程度知識の幅を広げ、順応していくことが必要だと思うが、その点について、提案があれば伺いたい。
○ アメリカのPhDは、臨床のことを臨床科の先生以上に良く知っており、それを大学院で教えている。日本のPhDの欠点は、細かい研究はしても、医学全般を大学院で教えないことではないか。現在諸外国の基礎系の教授はPhDの人が多いくらいである。
○ 臨床実習で、学生が触れる症例数の評価も有用であると考えられるため、コア・カリキュラムに記載すべきではないか。
△ コア・カリキュラムの研究班では、到達目標だけを整理し、チュートリアル教育にするか、講義にするか、実習にするかという具体的な方法、評価の仕方については大学に任せることとしている。なお、御指摘いただいた点については、「効果的な臨床実習の在り方に関する研究班」で臨床実習のモデル指針を作成しているので、その中で評価方法についても示していただければと考えている。
○ チュートリアルを導入するという方向性を示すこともしないで、完全に各大学に任せるのか。
△ 全体の方向性については、「21世紀医学・医療懇談会」の報告書でも問題解決型の授業を推進するように書かれている。コア・カリキュラム作成に当たっては、チュートリアル等方法を記述することについて賛否の両意見があり、結局、チュートリアル方式などの設定も一つの方策である、と記述した。また、問題発見・解決能力の到達目標を掲げているため、必然的にチュートリアル方式のような問題解決の能力を養う学習方法を採るだろうと考えている。到達目標が達成されることが重要であり、そのための方法まで明記して欲しくないという意見もあるのではないか。
○ 医学情報が爆発的に増えているため、コア・カリキュラムの確立という方向に進まざるを得ないし、チュートリアル方式も重要であるが、ある程度自由を認めないと各大学に採用されなくなるのではないか。
○ 医師、歯科医師は問題提起解決型の能力を養わなければ21世紀には対応できなくなるため、チュートリアル教育は必要であり、それをどのように提言するかについて論議する必要がある。
○ このカリキュラムが6年間のプログラムだとすると、数学、物理、化学などの準備教育はどこに入っているのか。
△ 準備教育の部分については、検討が間に合わず、一緒に示すことができなかったので、早急に検討した上で各大学に示すと聞いている。
○ アメリカのカレッジでは複数の専攻をとる。必ずしも全部の医学部でそうする必要性はないかもしれないが、この会議で論じる必要があるのではないか。
○ 日本の医学の将来を考えると、コア・カリキュラムにおいても、遺伝をもっと大きく取り上げるべきではないか。
○ 事故防止重視のカリキュラムと報道されたが、それを強調したのか。
△ 安全管理教育については、医学教育全体として明確に位置付けられたため前進したものと解釈している。
○ 試案では、学習すべき項目だけが示されているが、時間数等は示さないのか。
△ コア・カリキュラムの作成に当たっては、まず内容を議論した上で量的な提示を検討する予定。ただし、量的な提示については賛否があり、その点についても「医学・歯学教育の在り方に関する調査研究協力者会議」でも御検討いただく。
なお、モデル・コア・カリキュラムとしては、従来の6割程度の時間で履修させることが妥当とし、その6割の配分については、今後検討されることになる。
各大学のシラバス等を見ると、卒業時の学生のあるべき姿を明確に示している大学が多いとはいえない状況である。このモデル・コア・カリキュラムの到達目標を踏まえた上で、各大学で学生の到達目標を検討し、シラバスに明記すべきである。
また、このカリキュラム案の作成に当たっては、従来の縦割りの検討ではなく、それぞれ他の分野の先生にも加わっていただき、内容の要、不要について十分に議論してきたと聞いている。各大学において検討する際も、専門分野にとらわれずに十分な議論をし、御意見をいただきたい。
3 学士編入学の状況について事務局から説明があった後、質疑応答。(○:協力者、△: 文部省)
○ 学士編入学生に職歴がないというのは、編入学のための浪人が出ているということか。
△ 学部卒業見込み、大学院卒業見込みの段階で受けている人は職歴無しということになる。
〇 最近は、予備校で、面接方法等、学士編入学の情報を集め、学士編入学のためのクラスを開いているらしい。社会人が、会社を辞めて予備校へ入って勉強する場合もある。
○ 各大学の試験内容を詳細に調査して受験勉強をするといった人が次第に増えている。また、大学のロケーションと入試の内容によって倍率にだいぶ差が出てきた。さらに、薬学の出身者が増えてきた。
○ 自大学では、学士編入学の不合格者平均点は、500点満点中200点くらいであったが、学士編入学を導入する大学が増えるにつれ、150点くらいに下がってきた。合格者の最低得点は下がっていないが、不合格者の平均点が下がったということは受験生全体のレベルが落ちてきているということを示しているので、学士編入学をどこまで拡大するかについて、きちんと検討すべきではないか。
○ 学士編入学を導入する国立大学が増えると、私立大学が学士編入学を受け入れようとしても、授業料の関係で優秀な学生は国立大学に入ってしまうため、奨学金制度を作ってはいるが、学士編入学には踏み切れない。
○ 一般入学枠では学部卒業者や就職の経験がある人も何人か入学しているが、優秀な学生と優秀でない学生の両極端で、学士編入学に踏み切れるだけのデータが無い。
○ 6年制の1年次に入学する学士は、国立大学でも優秀な人とそうではない人とに別れる。ただ、アメリカでは授業料のみならず生活費も保証されるなど、奨学金制度がしっかりと出来ているから長い年限の学校に入る学生がいる。日本もそうなれば、国公私立に関係無く良い学校に良い学生が集まるのではないか。
○ 教養教育を充実させる自信がないため、既に4年制を卒業した人、学士が入学した場合にどうなるか期待したいと考えている。
○ 教養に割くことができる時間が足りないということか。
○ 学士編入学生も6年制の学生も同じコア・カリキュラムによるのであれば、その差2年間で、どの程度一般教養的を習得できるかを考えるべきではないか。
医・歯学部を学問と診療の両者を重視したものにするためには、従来の6年制では十分に機能しないのではないか。その打開策の一つとして、学士入学に期待する大学もある。
○ 新聞記事の「学問重視から患者重視に」という表現はおかしい。例えば、ハーバード大学の医学部でも以前は知識、技術、態度の順で重視していたが、現在は態度、技術、知識の順に変わった。そのような変化があっても有能な研究者が出ているのだから、学問重視か患者中心かが問題ではないと思う。
4 医学部長会議の教育制度に関する小委員会の報告について、鈴木委員から説明があった後、質疑応答。 (○:協力者、△:文部省)
○ 平成10年度から学士編入学を導入しているが、地理的な条件もあり、学生の質が落ちていることは確かである。平成15年には27校で185名ということだが、これ以上増やさない方が良いのではないか。
また、学士編入学生についての調査結果がメディカル・スクールに直結するわけではない。社会人が医学を志す場合、明確なモチベーションを持っている人が多いが、医学部に入れず、他学部卒業後に編入した場合などは、あまり成績が伸びないこともある。メディカル・スクールにすると、優秀な医学部志望者は最初からそのコースを取るために4年制の大学に入るだろうから、今の学士編入学の競争率と成績からメディカル・スクール移行後の結果を想定するのは無理だと思う。
○ 文部省としては、メディカル・スクールの定義をどのように考えているのか。
△ 「21世紀医学・医療懇談会」においては、4年制の大学を卒業した者を対象として、医療に関する専門的な学修を集中的に行うものを想定している。
○ 現行の学士編入学は、色々な人が医学部に入ることによって学生が啓蒙されたり刺激を受けるため、あるいは生物系を学んだ人を研究者に育てるようなバラエティーのある学部を作るために始められたもので、メディカル・スクールとは根本的に異なる。
○ カリフォルニアでは、医学を始めるには若い方が良いという意見が出てきており、実際、少し若い方にシフトする傾向があると聞いた。
○ 若い方が良いというのは、例えば、周辺機器の進歩により、専門医になるための卒後の研修に4年のトレーニングが必要ではなくなってきているということ。早い時期に学問・研究を始めた方が良いという意見もあるが、カレッジ等で自分の専攻した領域の論文を書いたことがある方がメディカル・スクールに入ってからも十分な教育を受けられるのだという意見もある。
○ 次回は、今回の議論を整理したものについて検討することとし、日程については、事務局で調整することとされた。
以上
(高等教育局医学教育課)
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