学士を対象とする医学・歯学教育の在り方に関する調査研究協力者会議
2000/07/10 議事録学士を対象とする医学・歯学教育の在り方に関する調査研究協力者会議(第6回)議事要旨 |
日 時 | 平成12年7月10日(木) 10:30 〜 13:00 |
場 所 | 霞山会館 「さくら」 |
出席者 | 協力者:鈴木主査、池田、遠藤、岡島、越智、加藤、桐野、久保、黒川、小宮山、猿田、下山、鈴木、武田、谷口、村上、森本 の各協力者 説明者:小宮 文部省:布村医学教育課長、浅野課長補佐、宮田専門官ほか関係官 |
議事等
1 開会
(1)主査から、新たに参画いただく協力者の紹介があった。
(2)前回議事要旨(案)については、意見等があれば1週間以内に事務局まで連絡することとされ、特段の意見がない場合は、そのまま公開することとされた。
(3)事務局から、配付資料の確認があった。
2 大阪大学医学部、東海大学医学部、群馬大学医学部、島根医科大学、千葉大学医学部、神戸大学医学部、大阪大学歯学部における学士編入学生に対するカリキュラムの現状について、説明があった後、自由討議。(○:協力者、△:文部省)
○ カリキュラムに基礎医学をどのように取り入れていくか。編入時に一定の条件を課し、単位は半分で良いとする大学もあるが、一般に基礎医学は多過ぎるのではないか。
○ 3年次に編入して、基本的には3年次のコースを3年生と一緒に受けるが、2年生と一緒に受ける科目については、カリキュラム上、逆転現象が生じるのが問題。今までのところ、それによる影響は4年次では見事に回復しているが、今後も今のカリキュラムのままならば、学士編入学の人を採るときには、矛盾したカリキュラムでも最終的には回復できる能力のある人を採らないと、頭の中が整理されないまま最終学年を迎えることになりかねない。この問題を解決するためには、現在検討中のコア・カリキュラム等について、完全に両方を包含するような形にしなければならない。
○ 例えば病理学に関する各論については、1人1人が臨床の現場で遭遇したケースを基に病理学のレポートを書き、それを一定の場所にファイルしておく。それが何例以上必要ということをきちんと規定したいと考えている。医学倫理学についても同様
○ 医学倫理学などは、臨床に行った時、1例1例教える方がよく身に付くのではないか。1年生のときに医学倫理学をやってもあまりぴんとこないと思うが、どうか。また、文系から編入する人が増える傾向にあるなら、アメリカのMCATのように、入学前に生物学的、理学的な知識を試すことも必要かもしれない。
○ 一般入学者は入試に理科があると言っても、生物を受験科目に取らなければ、生物のレベルは高1程度で終わっているはずで、理科系でも文系でも違いはない。また、いくらカリキュラムを作っても、教える側の独りよがりでは意味がない。きちんと学生に伝達され、学生が勉強するような格好になっているかどうかが問題。
○ 一般学生は生物を取っていなくても、耳学問等で生物に関する知識を数年のうちに持ってくる。したがって、3年次から4年次へのチェックなしで2年間でゆっくりやれるようにすれば、文系を出た学士編入学者でも十分対応できると思う。もっとも、実際には、編入学試験で総合自然科学系の総合問題を課しているので、文系の出身であっても、副科目でたくさん理系科目を取っていて試験に対応できるような学生が来ているので、それほど問題ではないと思う。
○ 学士編入学の方がみんな成績が良いのは何故か。勉強している分、知識が多いということなのか、それとも、普通の学生よりも授業に一生懸命出てくるということなのか。
○ 編入学生は、1回の講義をさぼると非常に損した感じになるから夢中になって授業を聞いており、それが非常に良い影響をクラス全体にも与え、教官側にも良い影響がある。
○ 一般入学の学生の中にもいわゆる学士が20%ぐらいいるが、他の大学でも、一般入学で入った学士と学士編入学の人との差はあるか。もしあるとすれば、どうしてそんなに差が出るのか。
○ 学士編入学生の解剖の時間は一般学生に比べて3分の1程度にし、学生の中からチューターを選んで、解剖の指導、講義を教官と一緒にやらせているが、そうすると、教官の負担が減る上、学生自身が教える側に立つことによって学生の意識が全然違ってくる。また、実習時間が非常に少ないため、余分なことを教えないコア・カリキュラムになっているが、試験の結果は、やはり一般学生よりもコンパクトに教えた方が圧倒的に成績が良い。教官側の教える能力の問題もあるが、カリキュラムが膨大化していることがフォーカスをぼけさせている原因の一つかもしれない。
○ 学生のモチベーションを高めるには、コンパクトにカリキュラムを組むことが大切かもしれない。
○ 学士編入学の試験問題は、生物科学系の短い英文の文章をまとめさせる問題や、きちんと生物科学系の英文のエッセーが理解できなければ答えられないような問題になっており、それが、一般学生と学士入学者の違いの要因の一つかと考えている。
○ 教官がどういう授業をしているかが問題。今年からMD-PhDコースの学生を対象に、一定期間木曜日の午後は英語で授業をすることにしたら出席者が増えたので、学士編入学者に対する英語の授業を一般学生にもオープンにすることを考えている。
○ 学士編入学者のカリキュラムの編成においては、4年間で必要なことを全部入れて、6年コースはそれ以外のオプションで何を入れるかという考え方で、つまり、専門の教育は効果的に4年間でやってしまい、あとの2年間を有効に使って、例えば修士課程的なことあるいは教養をやるという考え方はどうか。
○ 昔の医学部は4年制だったのだから、整理すれば4年でできないことはない。
○ 過去5年間の学卒者の追跡データを見ると、一般的に、入学試験の成績は非常に良く、入学後は、平均点で比較すると一般学生とほとんど差がないが、実は、上位卒業者と下位卒業者にかなりきれいに分かれる。下位卒業者が学卒者である場合は非常に目立つので、学卒者は入ってからが良くないという印象を持っている先生方がかなり多く、学士編入学を導入するときに非常に根強い反対論があった。
○ 現在は学士にも1年生からやり直してもらっている。学士編入学の導入については、そのためにカリキュラムを全部変更して、どれだけ私立大学としてメリットが出てくるのかという問題があり、もう少し検討したい。横並びで学士編入学を導入するよりもそれぞれの私立大学としての特徴を出すべきだと考えている。
○ 日本の大学そのものが留年が多いが、そういう者はどんどん退学させて、自分の好きなところへ編入学することが普通にできるような制度にしてほしい。そうすることによってこそ優秀な人間が残っていくと思うが、どうか。
○ 編入学生の成績は大変良いという一方で、問題のある人もかなりいるという。その辺は何が問題なのか。また、実際に編入学をやってみて私立大学としてのメリットは何か。
○ 「医学・歯学教育の在り方に関する調査研究協力者会議」で検討している統一試験などは良いと思う。
○ 学士編入学の人は一般的に皆成績が良いが、学士でも1年生から入る人はあまり良くない。3年に編入学する人は、応募者も多く、試験の際に時間をかけて選択しているので、それが良いのではないかと思う。
○ 学士編入学者の成績が良いのは、補習教育という意味で補講をやるような特別扱いをすること、5人ぐらいに対して少人数教育をやっていること等が影響しているのではないか。
○ 今後、学生数が減り、一般入学でも少人数教育になってくると、若干違ってくるかもしれない。
○ 基礎の研究者になることを前提に学士編入学をさせることについて、現状では、卒業後、彼らが基礎医学の研究者として就職できる保証はないのではないか。にもかかわらず、そういう条件で採ることに問題はないのか。
○ 基礎医学の方では、医学部出身者でスタッフの数が足りない部分はある。
○ 学士入学者は卒業後、ほとんど臨床の方に行くのが現実だが、これは強制できない。そこで、基礎医学の方に進みたい人を選び出すために、修士課程を済ませた人に、医学部に入って最初の4年間医学部の勉強をさせた後、博士過程に関しては3年で取らせるMD-PhDコースを平成12年度から設置した。定員5名のところに206名応募があり、この人たちは基礎医学に進むだろうと思っているが、絶対的な保証はない。
○ 本当に自分が好きで基礎に行く人でないと、周りが強制してもあまり効果がないだろうから、MD-PhDコースの人たちが臨床の研究者になっても別に良いのではないか。
○ 基礎志望の方を育成したいということでMD-PhDを置いたが、強制はできないし、卒後は医学研究者になってほしいということであって、必ずしも基礎とは限らない。
○ アメリカを見ていると、むしろPhDで病気のことを我々よりよく知っている人は大勢いるし、基礎の研究はMDでなければならないというのは少し問題だという気もする。
○ PhDでなければできないこともあるが、事実として、MDとかPhDとかには関係なく実力で選考すると、PhDの方がどんどん増えていく傾向にある。ただ、やはり医学部からも人材を出していかなければいけないと思っており、4年次から5年次に移るところで一度大学院に入るMD-PhDコースを作ろうとしているが、それについては、4年間大学院で学んだ後で、もし復学したければできるし、そのまま基礎の研究室に行けば基礎の研究者になれるようなシステムを考えている。
○ 医学研究を医学部出身者がやらなければならないということはないが、理学部の研究者の中で医学領域に興味を持っている人の数は非常に少ないし、日本の生命科学研究を地で支え、世界をリードするような研究を発信しているのは医学部出身者が多いというのが現状である。4年を卒業したら大学院に行けるという制度ができたが、学士編入学で3年次に入る人は基本的には大学院に行ってもらうなど、医学の方でも研究者育成を目指すスタンスを失わず、そのための道を増やすことが非常に重要だと思う。
○ 医学の研究をPhDの人がやっても全然構わないが、考え方としてはやはり医学的、生物的なものをどこかでトレーニングする大学院とか学部とかのコースが必要ではないか。両方が一緒に共同してやればいいという話ではないと思う。
○ 次回は、引き続きカリキュラムの在り方について検討を行っていきたい。日程については、日程調査表に記入していただいた上で、事務局の方で調整する。
△ 今のカリキュラムをやっている限りは、一般の学生も何故学士編入学生がやっていないカリキュラムをやらされているのか、必要ないものをやらされているのではないかという議論にもなりかねない。
次回は、学部教育にしても学士編入生にしても、現状ではなく、5年後、10年後を考えたときに、きちんとしたカリキュラムの在り方とはどういうものなのかについて、今回先生方から御発表いただいた問題点を事務局の方で整理させていただいた上で、御議論いただきたいと思っている。
○ それが、今検討しているコア・カリキュラムの実現につながるのではないか。