医学・歯学教育の在り方に関する調査研究協力者会議 (第8回)議事要旨 |
日 時 | 平成12年12月11日(月) 15:00 〜 18:00 |
場 所 | 霞山会館 「さくら」 |
出席者 | 協力者:高久座長、鈴木副座長、赤津、岡島、柿田、神津、佐川、佐治、佐藤、谷口、藤枝、矢崎 の各協力者 説明者:江藤、後藤、吉田 の各説明者 厚生省:松谷医事課長 ほか関係官 文部省:布村医学教育課長、浅野課長補佐、宮田専門官 ほか関係官 |
議事等
1 開会
(1)座長から、出席者の紹介があった。
(2)前回の議事要旨(案)について、意見等があれば今週中に事務局まで連絡することとされ、特段の意見がない場合は、そのまま公開することとされた。
(3)事務局から配付資料の確認があった。
2 卒後臨床研修の必修化について、厚生省医事課長から説明があった後、質疑応答。(○:協力者、●:厚生省)
○ 大学院に行った人は大学院を終えてから臨床研修に入ることになるのか。
● 法律上の規定ではないので、大学院が先になってもかまわないが、基本的には研修を先にしたほうが良いのではないか。
○ 附帯決議の「労働条件」の中には報酬等が含まれるのか。また、8時間勤務の規定など具体的な内容はどうなっているのか。
● 附帯決議の用語は若干あいまいだが、ここでいう「身分」は、労働条件に近い意味で使われていると思う。8時間労働、最低賃金法等今まで医師の世界ではあまり問題になっていなかったが、次第に医師も普通の労働者的としての要素が強くなってきている。
○ 「身分の安定及び労働条件の向上」というのは極めてあいまいな言葉だが、これで例えば「身分」が医師としての身分を指し、「労働条件」は8時間勤務、週40時間労働というようなことを指すとすると、生活の保障はどこに示されているのか。
● 労働条件がきちんとしていれば生活ができる。最低賃金法の最低賃金は、都道府県ごとに基準に決められていると思うが、医師の臨床研修としては、平成6年の調査で月平均20万円程度。私立大学では非常に低いところもあるし、病院によっては30万円、40万円のところもあるが、その水準を上げてほしいという要望は、国立大学からも私立大学からも関係者からも承っているので、厚生省としては努力をしていきたい。
○ 臨床研修を本当に充実したものにするためには、指導医がきちんとしていること、プログラムがきちんとしていること、生活の保障があることの三つが揃わなければならない。さもなければ、以前のインターンと同じでいくらやってもあまり意味が無いという意見が多かった。また、「医療法等の一部を改正する法律案要綱」にも「医師は臨床研修に専念し」とあるが、生活の保障がされていない状態で臨床研修に専念することができるかという問題がある。
● インターン制度のときは、医師でも学生でもないという極めてあいまいな身分であったし、給料については、一部に例外的な病院があったにせよ、全くのただ働きであったが、今は医師として平均で20万円は貰っており、当時とは状況が異なる。20万円が生活費として妥当か、大学6年間を終えた人にとって妥当な給与水準はいくらで、それが病院の経営上出せるかどうかといった議論がこれから詰められることになると思う。
○ 具体的な条件については年次別に解決すると聞いているが、いつの段階でフィックスするのか。
● 医師については平成16年、歯科医師については18年までには決めなければならない。
○ 学生には、給与額、身分保障等については、今はまだ決まっていないと説明しているが、いつになったらはっきりわかるのか。
● 時期は明確ではないが、少なくとも、給与額については国立大学では現在の20万円より下がることはないと言ってかまわないと思う。
○ 研修医が8時間で帰るようになると病院が機能しづらくなるが、時間外手当てを出すことになるのか。
● 週の労働時間の範囲内で、病院が出すことになると思う。時間外労働にはその対価を払わなければ労働法規上の問題になる。
3 臨床実習の充実方策について、吉田先生から説明があった後、自由討議。(○:協力者、 △:文部省)
○ アンケートの結果では、診療参加型を導入している大学が8割となっているが、その内容はばらばらである。研究班で判断してこれなら一応診療参加型であると考えられるのは、そのうちの何割くらいか。
○ クリニカル・クラークシップやチュートリアルの導入状況についての調査の際にいつも問題になるのは、大学側が正確に理解しているか否かである。今回、診療参加型臨床実習の調査で提出された実習指針を見る限り、詳細にわたり規定している大学は少ない。実際にどのような実習が行われているのかを把握することは容易ではない。
○ 実習指針を学生用、指導医用、その他用と別々に作っている大学もあるのか。
○ あるが、誰を対象とするものが一番多いかは判然としない。
○ 日本で医学教育を受けた学生が、アメリカの医師免許の資格要件において定められている実習時間に満たない場合があるらしいが、実践型の実習であるか否かを国際的にどのような基準で判断するのか。
○ 歯科の場合、卒前の臨床実習の実習内容が大きく異なっており、卒後の臨床実習をやる場合の大きな問題となっている。例えばアメリカへ行った場合に、日本のある大学で卒前の臨床実習を受けたことをどのように評価するかということは非常に難しい問題である。
○ やるとすれば、大学間で情報交換をしなければならないのではないか。
○ 今日の配布資料も非常に参考になると思う。これから指針を作る大学に対して、こういうものを示しても良いのではないか。
○ この資料は各大学から送られてきた臨床実習指針から引用したもの。
○ 指導医の指示に基づく医行為について、何か起きると指導医個人の責任を問われる可能性がある。このことが指導医に不安を抱かせ、学生の診療参加に対して消極的になる原因の一つとなっているが、そういう人を指導医にすること自体が問題なのではないか。
日本においては、一般的に責任の所在が明らかでは無い。例えば、患者が訴訟を起こす場合、国立大学であれば国を訴えるが、そもそも、指導医が実際にグループで診療していた担当医師なのか、その科の教授あるいは助教授なのかが明瞭では無いことが問題。また、指導医の責任が問われる可能性があると言うが、欧米では指導医が責任を問われることは当然のことであり、日本もその点については改めなければならないのではないか。
○ 指導医の責任についてはっきりしないと診療参加型臨床実習への移行が進まないというのであれば、なんらかの基準を決めておいた方が良いと思う。
○ 現状では、大学ごとに異なっており、指導医が責任をとるべきだと教授会で一致している大学もあるし、現場の指導医から「自分は責任はとりたくない、医学部で保険に入るべきだ。」と言われている大学もある。
○ 学生が行える医行為の範囲については、厚生省の指針で、水準1、2という形で例示されており、その水準1の実習をすれば良いのではないか。日本でこの水準1の実習をしている大学は何校くらいあるのか。
○ そのような調査は行っていないが、自大学で学生にどんなことを経験したのか調査したところ、水準1の全部ではないが、かなりの医行為を行っている学生が多いようだ。
○ アメリカの場合、学生の書く病歴が最も詳しい。学生に技術を教えるだけではなく、その病歴を完全にとるとか、症状を観察し、それを詳細に書けるよう指導することが必要ではないか。それだけでも今の教育より随分良くなると思う。
○ 学生が病歴を記入することが教育上は良いとしても、健康保険上は病歴に書かれたことが請求の原点になるため、保険の請求の際には監査してきちんと校正し、指導医がサインをするとしても、問題は生じないのか。ちなみに、自大学では、学生の実習の際、カルテと全く同じ印刷物に病歴等を記入させ、それを指導医がチェックしている。
○ 健康保険上で問題があるかないかは確認しなければならない。
○ 保険請求の際には、例えば、レントゲン写真のみならず、そこに所見の記載が無ければ正確には架空請求になる。普通の医者ですら、カルテに所見の記載が無いもの、記載があっても診た人のサインが無いものはだめだと言われるのに、医師免許を持たない学生が書いたとあっては、仮に指導医のサインがあっても認められにくいのではないか。
○ 行った処置や検査については必ず書くように学生に指導した方が、そういう保険上の医療行動を指導することにもなるのではないか。
○ 教育と健康保険上の問題とで、カルテへの記載の仕方に関する考え方が異なるのか。
○ 保険の指導監査の場合、医学的に正しいかどうかではなく、保険の範囲内で診療しているかどうかを審査するため、学生が記入すべきではないのではないかということ。
○ 自大学では、所見やデータの読み方については訴訟に関わってくる場合があり得るし、レントゲン診断でも診る人が違うと点数が違ってくるため、学生には一切記入させない。
○ 日本の場合、EBMに基づく医療と保険上の医療とは少し違うが、診療参加型の実習においては、やはり学生が指導医の指導の下できちんと病歴に書き、それを指導医がチェックすべきだと思う。必ずしも学生用のカルテを作らなくても、記入前に指導医が見て、修正した上で病歴に記入して指導医がサインすれば良いのではないか。どこまで指導医がチェックできるかによって学生に書かせる範囲が決まるのではないか。
△ 各大学の分析や本会議の議論を踏まえて、今後、福井研究班でどういう事項を指針として整備する必要があるかについて、モデル的な指針を示していただきたい。
○ 臨床実習の充実のためには、コア・カリキュラムのように、例えば、言葉の定義をはじめ、指導体制をどう組むか、評価をどのようにするか等具体的なシステムについて、指針を作っていただきたい。また、この案は、総合診療内科としては非常に良く出来ているが、実際に各診療科でどのように対応できるかということも十分配慮して最終的な指針を作っていただきたい。
4 医学教育コアカリキュラム(案)について、佐藤委員、後藤助教授、神津委員から説明 があった後、自由討議。(○:協力者、△:文部省)
○ 学生の安全性についての項目、例えば、使用後の針の処理方法など学生の身を守るために、実際に病棟に出る前に学んでおくべき事項があっても良いのではないか。
疫学は、統計に基づいて疫学の現状、将来的な見通しまで含めたものなのか、それとも疫学の手法をだけを教えるものなのか。単に疫学をツールとして使う手法だけではなく、実際の内容も社会学の中で学生が学ぶ必要があるのではないか。
救命については一時救命処置の基本的な事項しか入っていないが、基本的に医学生の間は、気管切開などアドバンス・ライフ・サポートは教えないということか。実際に病棟に出たときに、それを知っている方が良いと思うがどうか。
痴呆症は今後多くなると思われるので、症候の中に入れてはどうか。
○ 痴呆に関しては、どこに入れるべきか迷った。再度検討する。
○ コア・カリキュラムと国家試験との整合性が取れるよう試験委員である大学の先生にイニシアティブを取っていただきたい。そうすれば、自然に国家試験もこのコア・カリキュラムと上手く統合すると思う。
○ 国家試験の出題基準は4年ごとに改定をするし、実際に問題を作るのは大学の先生だから、大学の先生にこのコア・カリキュラムをよく見ていただき、それに合った出題基準を作っていただきたい。そういう意味でもなるべく多くの方にこのコア・カリキュラムを理解していただき、これがベースだと宣伝をする必要がある。文部省も是非努力していただきたいし、本会議の先生方もそのような体制を作っていただきたい。
○ コア・カリキュラムと重複して、「選択臨床実習」の中にまた内科、外科、精神科、小児科、産科、婦人科が入っているが、これはコアをやった後もう一回やるということか。
○ 「コア」の意味が二通りあり、一つは内容を絞るという意味でのコアで、もう一つはアメリカのように「臨床実習におけるコア診療科」という意味でのコアである。従って、最後に書いてあるのは、このコア診療科での実習を終えた後で、ある程度自分で選択できるところ。
○ コア診療科というものを置いておきながら、また同じものの選択を診療科に入れるのはおかしいため、ここは削除すべきではないか。そうしなければ、一つか二つの診療科しか行けないのではないか。
○ コアは、全員が最低限やらなければならないもので、より広く、より深く学ぶのは自由だから、そこでまた同じ科を選択する人がいても良いのではないか。
○ 選択部分については、本当に自由なんだということが強調されれば良いのではないか。
○ コアでない診療科の先生からいろいろ意見が出るだろうが、ここには「アドバンスト」と書いているから、コアで学んだ上で更に勉強したい人はそこでも良いということで、理論的には入れるべきだと思う。
○ 実習で回るところとしては、各大学の診療科だけではなく、もう少し広く、例えば学外、海外での実習なども含めて考えており、内科は除くとか外科は除くとすると限定的になってしまうため好ましくない。
○ 「アドバンストカリキュラム」と書いてあるが、「選択」を改め、「アドバンストカリキュラムとして次の中から、各大学が選択するのは自由である」ということを書いた方が良いのではないか。
○ コア診療科のコアの部分以外はアドバンストになっていて、その他の部分が選択になっているから、結局この二つを入れざるを得ないと思う。
5 歯学教育コア・カリキュラム(案)について、江藤歯学部長から説明があった。
○ 次回は、引き続き、コア・カリキュラム等について検討することとし、日程等は事務局で調整することとされた。