審議会情報へ

医学・歯学教育の在り方に関する調査研究協力者会議

2000/11/07 議事録 
医学・歯学教育の在り方に関する調査研究協力者会議 (第7回)議事要旨

医学・歯学教育の在り方に関する調査研究協力者会議(第7回)議事要旨

日 時 平成12年11月7日(火) 15:30 〜 18:00
場 所 霞山会館 「さくら」
出席者 協力者:高久座長、鈴木副座長、赤津、大山、岡島、柿田、神津、佐川、佐治、佐藤、猿田、西野、福井、藤枝、矢崎 の各協力者
説明者:江藤、福田、後藤 の各説明者
文部省:布村医学教育課長、浅野課長補佐 ほか関係官

議事等

1 開会
(1)座長から、歯学教育コア・カリキュラム及び医学教育コア・カリキュラムの検討状況の説明のために御出席いただいた説明者の紹介があった。
(2)前回の議事要旨(案)について、意見等があれば今週中に事務局まで連絡することとされ、特段の意見がない場合は、そのまま公開することとされた。
(3)事務局から配付資料の確認があった。

2 カリキュラムの在り方について、事務局から資料4に基づき説明があった後、自由討議。(○;協力者)
○ 「素養教育」という言葉はこれまであまり使われていないが、ここでは意図的に使っている。専門教育でない部分を教養教育とすると、その中には医師たるべき者として準備しなければならない素養がある。具体的には、医学・医療の世界で専門人として活動するために必要な素養を「準備教育」という言葉で表現し、アカデミアに身を置く大学人としての素養、人間としての素養を「素養教育」という言葉で表現している。
○ アカデミアの素養教育はいつ行うのか。
○ 入学時から卒業までの6年間を通じて行う。哲学でも倫理学でも何であっても良い。
○ 期間をあえて定めないことが大事な点である。コア・カリキュラムは、考え方と枠だけを示すことにより、時間的な位置付けに捕らわれることなく、カリキュラム全体を活かしきれるよう配慮している。

3 歯学教育コア・カリキュラム(案)について、江藤歯学部長から資料3に基づいて説明 があった後、自由討議(○:協力者)。
○ 現在、29大学それぞれでカリキュラムの組み方が異なっており、各校かなりの差がある。6年一貫教育を行っている大学がこれに合わせることについては、大きな問題がある。

4 医学教育コア・カリキュラム(案)について、佐藤委員、福田医学部長、後藤助教授か ら説明があった後、自由討議(○:協力者、△:文部省)。
○ 従来生物を学んでいない人には、「個体の反応」のところで、生物の基本的なことを教えるのか。また、理系の教養をここで教えるということは、教養課程では、人文系が中心になるということか。
○ 大学ごとに違うと思う。特に、単科大学と総合大学ではかなり違う。単科大学の場合は、目的に沿った教養教育をしやすいのではないか。なお、国立大学の総合大学では、教養課程で素養としての生物を学習しているということだが、それに関しては、ほとんど医学部の先生はノータッチのまま、生物学を学んだことにしている。
○ 現在、物理、化学あるいは数学についてのコア・カリキュラムの内容は示していないが、M-CATを参考にして、それらが連携したカリキュラムを作るべきという印象は持った。
○ 資料にはGまで項目が載っているだけだが、本来は、その後にHとして準備教育のうち医学教育に連結するものが入る。現段階では、HとBの「医学一般」とAの「基本事項」との間でかなり重複があり、その区分けが必要なこと及び準備教育全般については、作業途中であるため今回は掲載していない。
○ 目次のA〜GまでのAは6年間通して行うもの、B〜Fまでは前臨床で行う項目、Gは臨床で行うものということだが、例えば、F3「基本的診療技能」の中の「正しく採血出来る」というのは、臨床に入る前の段階で実際の患者相手に実習をするということか。
○ プレ・クリニカル段階では、患者相手の実習は難しいので学生同士でやることを考えている。
○ 前臨床では、許可を得た患者に協力していただいて問診をすることもせず、模擬患者なりロールプレーに留めるということか。
○ 全く患者に接しないのか、それとも見学型で病棟に行って見せてもらうというレベルまでは想定しているのかという細かいところまでは、委員の間ではまだ詰めていない。
○ 「診療の基本」のところで、実際に日本の病院でどのような症候が一番多いかという統計を作ると、学生にとって非常に説得力があるのではないか。また、症候にもよるが、すぐ命取りになるものか否かの見極めを一番大事な項目として学ぶことも必要ではないか。
○ 手技については、例えば、静脈採血をする場合でも深く刺すと視神経にも刺さること、注射によって筋肉神経も麻痺させてしまうことなど、単なる注射の手技だけでなく、その背景についてはBのところでしっかり教えるべきだと考えている。
○ 項目ごとにそれぞれ到達目標があるが、その中に「生死に関わる問題」を生かした項目を作るべきか。
○ 生死に関わる鑑別診断があるものは、まずそれを思い浮かべる、さらに、問診の最初の5分程度で命取りになるものかどうかを見極めることは、大事な具体的目標ではないか。
○ その点については、外科系の先生と内科系の先生に温度差があるようだが、もう一度吟味してみたい。
○ 緊急ではないもの、例えば全身倦怠感のようなものも、実際の外来患者には多いので、そのような場合には、主素が患者の生活にどのような影響を与えているのかを詰めることが教育目的の一つとして大事ではないか。
○ 学生がコア・カリキュラムには入ってないことも勉強したいという場合には、各大学でメニューを用意することになる。ここで議論をしているのは、必須のコアのカリキュラムで、学生が好むと好まざると関わらず、マスターしなければならないというもの。
○ どのような教育に主体を置くかは大学によって違っており、やはり研究者を育てることを考えている大学と100%臨床医にするという大学ではカリキュラムの内容も少しずつ違うと思うので、それは、コア以外の50%あるいは40%の部分で各大学が工夫することになる。
○ 本来ならば、総論部分の6番目あたりにいわゆる選択制のカリキュラムの例を挙げるべきだが、今回は間に合わなくて抜けている。したがって、これが全てではなく、各大学の判断でどのようなメニューを作るかを決められる部分がある。
○ 共用認定試験というのは、Fまでの範囲で行うということか。それともEに関しては、実習が始まっても行う部分が残るということか。
○ Eについては、4年までに学ぶべき項目、つまり臨床前までに必須のものには丸を、6年を通じてやれば良いというものには三角をつける作業をしている。
○ Bの「医学一般」の中で、薬理が全部臨床薬理になってしまっていいのか。
○ その点については、非常に議論があったが、薬剤治療の基本原理だけはきちんと薬理学の人たちにやってもらい、残りの部分、例えば病理あるいは薬理の各論は、臓器器官別あるいは機能別のところで協力をいただきながらやってもらえば十分だと判断した。
○ 医療を行う時のよりどころ、例えば、Evidence-Based Medicineがあるが、その根拠がどのようなものであるかを示すことが必要ではないか。また、臨床試験についてもコア・カリキュラムである程度教える必要があるのではないか。
○ 医療の評価については、例えば、臨床所見が良くなったとか身体所見が良くなったという医師側からの評価だけでなく、患者側から見た評価が必要ではないか。
○ アメリカの医学教育では、その発症率等について「データ・ベースド」の教育をするが、そのようなデータが日本には無いことが問題。
○ 「臨床判断」のところに、Evidence-Based Medicineの手順、研究デザイン、診療ガイドライン等の基本的な考え方は、検査などの医療情報の一つとして入れるつもりである。
○ コア・カリキュラムは、時間的な順序や基礎と臨床を分けて教えろということを示すものではないとされているが、「病気」として、Eの「器官系別の病態、診断、治療」があると以前と同じになってしまうのではないかという議論があったので、その点について、本会議の意見をいただきたい。
○ 「医学一般」で医学史について触れる必要はないのか。
○ 素養教育であるから追加すべき。それも、「医学史」ではなく、医の歴史ということで「医史」として追加したい。
○ 基本的にはこの器官別のところで正常と病理を履修した後で病気を含めて教育するのが統合カリキュラムの基本的なスタンスだと思うが、もしこのコア・カリキュラムが統合を考えるなら、Eに含めるべきではないか。
○ 緊急度、重要度あるいは頻度を含めたその疾患の各論部分を、順序として、どこで教えることになるのか。自大学では、器官系別に一応の知識を教えおいて、最後に治療学を含めて各臨床科を再度教育し直すプログラムにしてある。
○ Eの各疾患系のところで緊急度、重要度、頻度というものを取り上げているが、順序についてはこれから考える。また、いつまでに学ぶかを示す丸や三角については、例えば食道の疾患でも食道癌とか食道静脈瘤は4年までのコアには入れるが、食道炎は入れるか入れないか等という議論をしている。
○ 「人体各器官系の正常構造と機能」はEに含めるのか。
○ 全部がEには入らないと思う。現在、いくつかの方法を考えており、例えば大動脈の枝分かれのようなものは人体の正常構造のところで扱い、個々の臓器に入る血管については臓器の方につける等の住み分けをさせる方法、また、どちらかにまとめて、どちらかを見よという指示をすること等を考えている。そのようなところに自由度を持たせたい。
○ 日本では、生物学あるいは人体の生物学に関する基礎知識がほとんど無い状態で入学する場合もあるため、人体の正常システムを学び、ある程度の基本骨格を学んだ上で病態のエッセンスを取り入れながら学ぶという案もこの作業中に出てきたが、どのようにするかは今後の検討次第。
○ 病態をどこに入れるかが大きな問題になっており、今の段階では、一応Bにおいてある。Eにも同じ項目を記載して「Bを参照」という形でおくとか、いわゆる折衷案として、BのところからBとEと分けることも、EのところでBとEを一緒にやるということもあり得るという表現にする方法等も考えられるが、その場合、一度教えた項目についても臨床に入る時にまた臨床の先生が教えることになると、結局過密な学生のカリキュラムは緩和されないのではないかという危惧がある。
○ よく考えないと、結局コアにならなくなる可能性は高いと思うが、学生はBで学習したことは各論というかEのところでもう一度繰り返さなければ、ほとんど忘れている。したがって、どうしてもBを残すとすればミニマムにしなければならない。
○ Eの冒頭で、病態学習の基本事項としてBの一部あるいは総括したものを入れるという具体案も出たが、やはり、同じ内容のものが2カ所に出るという批判がある。
○ ここに示すものはコアであり、大学としてもっと詳しくやりたいところはやればよいのだから、コアとしては、Bのところは総論だけに限定してよいのではないか。
○ Fの症候については、その症状の時にどのような病気を考えたか、ヒントと病名を示すだけで十分であり、病気の説明は不要だと思う。もう一つ、症候からのアプローチとEで勉強する部分との重複が多いのも問題なので、コアとしては、やはりディプリケーションがない形にしておくべきではないか。エレクティブで繰り返すのは構わないと思う。
○ Dの「人の一生」の発生の初期に関わる部分と、Bの「人体の正常システム」の「個体の発生」とが重複していると思われる。人の一生も人体の正常という中で正常なプロセスを経るのだという観点から捕らえ、Bの中に入れてはどうか。
○ 病態が入るとやはり問題ではないか。
○ 「人体の正常システム」を膨らませて、Bの中の重要な部分とDの部分を入れてしまう考え方も残っているが、ただ、Eの区分けが器官別、機能別になっているため、これに対応するものがBの中にない場合もある。
○ 疫学的なものは、疾患のデータに興味を持たす上においても役立つと思うが、どこに含まれるのか。
○ Cの「医学・医療と社会」の「人口・保健統計および疫学」に入ると思うが、日本で疫学の教育をしている人、特に臨床疫学者は少ない。
○ 「医学一般」の「人体の正常システム」を膨らませて、人体各器官機能系の正常構造と機能及び人の一生もここに入れ、「医学一般」に従来の基礎医学で教えていたことをほとんど含めてはどうか。Cが従来の社会医学となる。
○ 社会医学は、ある意味では社会との接点ということで極めて重要。公衆衛生分野に進む者は接点を持つが、いわゆる臨床の方に進むと社会医学とほとんど接点がなくなってしまうので、学生の時に社会医学をきちんと教える必要がある。
○ BとEとが空間的に離れているので、これを近づけたい。DをBとEとに振り分けることで少しは埋まるが、その間にある「社会」を「医学一般」より前か、あるいはEその他よりも後ろに移動して、BとEとを出来るだけ近づけたい。
○ 臨床のかなりの知識がないと、社会医学はよく理解できない。その意味では、Eと平行して、あるいはEの後でもいいのではないか。
○ 「臨床実習」の中の「判断」のところに含まれているかもしれないが、やはり医療の評価というのは非常に重要な事項なので基本事項の中に加えていただきたい。
○ 「救急医療」については、最後の4だけでよいのか。国立の大学病院で救急を実際にやっているところはあまり多くないので、工夫が必要ではないか。
○ 国立大学に救命救急センターが増えればそこを利用出来る。私立大学では、かなり救命救急センターをやっているところがある。
○ 大学病院に来る患者はすでに診断がついているので、学生は、この病気にはこのように対処するのかと認識するだけだが、何かわからない状態の患者をどのように判断してどのように治療するかが、医者の一番重要なところ。学生がつけた診断が正しいかどうかを評価できるシステムを作る必要があるのではないか。
○ 院外実習については、各大学とも1ヶ月程度実施していると思うが、これはほとんど選択制で学生の自由に任せている。大学ごとの差が非常に大きいので、もし、コアに入れる部分があるとすれば1項目か2項目程度か。
○ 必ずしも院外ということをコアに入れる必要はなく、中か外か、どのようなカリキュラムで行うかは各大学の状況に応じてでよいと思う。
○ コアで定めて、従来の2週間ずつのローテーションを廃止すると、1診療科だけでの対応は不可能になるし、これだけコアの症例を挙げていれば、その症例を経験出来る場所を求めて、必然的に学外に実習の場を求めるようになるのではないか。その点については、「臨床実習」の中で決めるよりむしろ総論の部分で「そのような実習を活用、学外の施設を活用しながらこのような症例を積んでほしい」という内容を記載するとよいのではないか。
○ いわゆる小児のかなりの部分は、大人と違うのでコアとされるべき部分が多いと思うが、今後区分けをしてどこかに入るのか。
○ 区分けについては随分議論があり、Eのところは臓器器官別に5以下16までを一つのカテゴリにした方がよく、例えば感染症、免疫・アレルギー疾患、中毒、全身的なもの、あるいはロングスパンの一生の問題として、カテゴリの違うものはそこにまとめる、という案も一時は出た。もし、Dを分割するならば、その形でまとめるのが一番よいのではないか。
○ 症候の流れについては、この順番で記載されることに決まっているのか。
○ 順序については考慮する。
○ 命に関わるものについては、新たな項目立てとしてやった方がよいのか。

5 臨床実習開始前の学生の評価のための共用試験に関する研究について、事務局から説明があった。

6 次回は、引き続きコア・カリキュラム等について検討を進めることとし、12月11日に開催される旨、連絡された。


以上

(高等教育局医学教育課)

ページの先頭へ