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医学・歯学教育の在り方に関する調査研究協力者会議

2000/04/24 議事録

医学・歯学教育の在り方に関する調査研究協力者会議 (第2回)議事要旨


 医学・歯学教育の在り方に関する調査研究協力者会議(第2回)議事要旨


日時     平成12年4月24日(月)15:00〜17:00
場所     国立教育会館503会議室
出席者  協力者:高久座長、鈴木副座長、赤津、大山、岡島、柿田、神津、佐川、佐治、佐藤、猿田、谷口、西野、福井、藤枝、矢崎、福田の各協力者
            文部省:布村医学教育課長、浅野課長補佐、宮田専門官ほか関係官

議事等
1  開会
(1)事務局から配付資料の確認があった。
(2)主査から前回欠席した協力者及び基礎医学系のコア・カリキュラムの検討を担当していただいている福田教授の紹介があった。
(3)事務局から事務局の人事異動の紹介があった。
(4)前回の議事要旨(案)については、意見等があれば今週中に事務局まで連絡することとされ、特段の意見がない場合は、そのまま公開することとされた。

2  各医科大学・歯科大学のファカルティ・ディベロップメントの実施状況について事務局から報告、続いて神津委員から問題提起をいただいた後、質疑応答。
(○:協力者、△:文部省)
○  私自身、かつて参加したことがあるが、富士教育研究所(以下「富士研」という。)のワークショップは何回目になるのか。
△  昨年が26回目。
○  もともと富士研のワークショップは、オーストラリアにあるWHOのティーチャートレーニングセンターが主催するワークショップに参加した人が日本にも広めようと始めたもの。参加した人が自分の大学に戻って、ファカルティ・ディベロップメントのためのティーチャートレーニングを広めるのが目的だったが、平成10年度にはまだティーチャートレーニングをしていない大学が多かった。富士研については、大学の中で教育について重要な役割を果たしている人が参加していないことが問題。また、現在ではテーマが古すぎるため、もっと新しい現場の先生方の要望に応じたカリキュラム、ワークショップの内容にした方が良い。
○  各大学におけるファカルティ・ディベロップメントの参加者はどういう人か。
△  大学ごとにまちまちで、助手まで含めたところと講師までのところ、大学院生や医員、看護職員も含めているところもあるなど様々。
○  富士に行っても、参加者はそれで終わり、各大学で根を張っていかないところに問題があった。また、行われていることが毎年同じなのも問題。
  一つのパターンはあるだろうが、大学個々でいろいろな工夫をしながら、いくつかの個性を持ったやり方があっても良い。そういう方向に進んだ方が日本の医学教育のためには良いと思う。
○  医学教育振興財団では、夏に医学教育の指導者のためのフォーラムを開いており、医学部長と教務委員長に出席していただいている。富士研のワークショップについては、医学教育学会マターになるが、ワークショップの参加者、カリキュラムを変更するよう運営委員会で提案してみたいと思う。
○  臨床研修については、昭和42年の医療審の臨床研修部会で我が国における医学教育の臨床研修の目標やプログラムに基づいて必修化の法制化が平成7年に提案された。その時はすぐ臨時の学部長会議を開いて、厚生省と文部省に「趣旨は良いが、環境を整えてやって欲しい」と抗議文を出したが、まだ交渉が延々と続いている。最近になって、皆さんの意識が変わり、研修病院や大学も変わってきたが。
  ファカルティ・ディベロップメントについても、問題点は昔から指摘されているが、教育指導者の研修に参加した人にリーダーシップを発揮して欲しいといっても、評価されず、結果が反映されていないのではないか。理論は良いがどう反映するかが問題。
○  20数回も毎年やっていて、そろそろ見直しても良いのではないか。文部省が大学の中、医学部の中でやらなくてはならない教育内容として盛り込み、それを視学委員会などでチェックするようにした方がよいのではないか。
○  富士研は医学部長、病院長が出席するには期間が長すぎる。
○  高等教育全体の問題点だが、教育に熱心な教師が評価されて次へのステップがあり得るか、というと学内では難しい。教育は推進する立場にならないとなかなか熱心にやらない。我々は参加すると参加賞を出したり、自己評価の時の項目に加えてみたり工夫しているが、なかなか難しい。
○  最後は教員が教育することを評価されるかに行き着く。アメリカでは別個の評価システムがあり、研究論文以外の評価を受けてテニュアを持ったプロフェッサーになっている人がいる。是非、本気で評価のシステムを作っていただきたい。
  医学部の教育を改革するには二つの方法がある。一つは力を持ったトップがリーダーシップをとってトップダウンで進めていく場合。もう一つはファカルティのメンバー全員がコンセンサスをもって改革を進めていく、というもの。日本の国立大学を見ていると、コンセンサスを作っていくのは難しいし、トップがそれだけの権限を持ちにくいという構造的な問題もあるので難しいと思う。
○  具体的な提案を2点申し上げたい。一つは、通常2年くらいで変わってしまうために弱い学部長のリーダーシップがもう少し強力になれば良いと思う。二つ目は、臨床教授を提案したのは私だが、日本の大学は非常にクローズドなのが問題。アメリカのクリニカル・プロフェッサーというのは外から大学の中に入って、診療したり教育をしたりするので競争原理が働く。そういうシステムを提案したが、日本では結局、必修化の促進要素として関連病院の病院長を臨床教授にしたりして、クローズドなままである。
  教育に熱心な方は研究面では評価しにくいので、臨床教授のように違った視点から評価すべき。そうした評価ができるスタンダードを盛り込んでいただきたい。
○  歯科は研修指導医の指導のための富士の研修について、医科の研修に倣ってやっていたが、今の話を伺って、内容については少し考えたい。
  また、研修に参加しても大学に定着しないのが問題だが、大阪歯科大学では臨床研修教育科を設け、研修から戻ってきた者はそこで教育をする。臨床教授という形でできるだけ教育に当たれるようリーダーシップを執れるような形にしてやっている。法制化の問題とも絡むが、今後も重点的にやっていきたいと考えている。
○  富士研も当初は非常に意義があった。根本的な思想、考え方やワークショップという形でやることについては今のままでも良いと思うが、参加者の問題やテーマなどは変えた方が良いと思う。
○  学部長のリーダーシップは非常に大切だが、その請負として実際に働いているのは、教務厚生委員長やカリキュラム委員長で、大体1年で替わってしまう。2年か3年やっていただければ継続性のあることがやれるのだろうが。
○  各医科大学はどういう学生を育てて世間に送り出すかという目標をはっきりさせる必要があると思う。全ての医科大学が全く同じ目標で良いのかという問題は文部省の問題かもしれないが、各大学も自分自身の問題として十分検討する必要がある。
○  自分の所属する教育機関を本当に向上させたいと願っているのは、教育に熱心な先生方と実際に学んでいる学生。ファカルティ・ディベロップメントに当たって、トップダウンで進めると同時に、カリキュラムやファカルティ・ディベロップメントに興味を持っている学生にも参加してもらい、下からも立ち上げてもらえば良いのではないか。
○  教官の評価をどうするかは、これからの任期制にも関わる大事なところであり、教官会議では「我々がどう評価を受けるのか」という質問が毎回出る。
  機構点検評価委員会が中心になって、評価項目について項目を拾い上げているが、限りなく評価項目はある。が、特に、歯学の臨床実習の場においては、学生と患者の間に入るのが臨床指導教官であり、人格が問題になるので、歯学部としては、能力と人格で評価したい。人格は全て共通フォームだが、研究、教育、臨床の中で、自分がどこをメインに評価して欲しいか申告させてはどうかと考えている。また、成績を甘くつける教官に学生は迎合するかと思いきや、そうでもないようなので、学生の教官に対する評価も参考になるのではないか。そうやって、モチベーションを高めてみたい。
  いずれにせよ、教育面、臨床でどう評価したら良いかの方法を早く示すべき。

3  コア・カリキュラムの検討の方向性について、事務局から説明、佐藤委員から検討の途中経過について報告(なお、資料5については取扱注意)をいただいた後、自由討論。
(○:協力者)
○  社会医学系では、国家試験の出題基準を参考にしたそうだが、コア・カリキュラムを作る最終段階では、国家試験の出題基準との整合性はやはり問題になる。
○  この案は非常に系統化されているが、もう少し基礎と臨床を統合した部分が見えても良いのではないか。アメリカでは、1年生から臨床の入った教科書を使っているところも多い。
○  一部の大学では、生理、薬理の部分は内科の教官が教えている。このカリキュラムは基礎系と臨床系の内容がダブっているところが多いが、2度同じ教育受けるよりは、基礎の時間の中で臨床の病態を頭に入れた講義を受ける方が良いのではないか。
  コア・カリキュラムの捉え方については、選択制を大いに採り入れることにつきると思う。というのは、選択制を多くすれば、後継者をいかに作るかという問題が出てくるが、良い教育をしないと学生が集まってこないので競争原理が働く。従って、各大学の特徴を活かすカリキュラムを作らなければならない。そうすると、ファカルティ・ディベロップメントの教育能力の開発に直結する問題になってくる。
  コア・カリキュラムの内容が国試の基準より細かい部分があるが、カリキュラムの内容は各大学の特徴を出せるよう、コア・カリキュラムとしては本当に大きな枠組みだけきっちり決めるにとどめるべき。また、6年全部をコア・カリキュラムでやるのは問題ではないか。前期・後期に分けるなど工夫が必要。
○  最終的には基礎医学と臨床医学という既存の枠を越えた統合カリキュラムを考えている。完全に統合するのは結構だと思うが、これを基準にステップ1、ステップ2というわけにもいかない可能性もある。ただ、ある程度項目を切っておかなければ、大きな項目だけだと、指導教官によっては「これはコアだから」とたくさん盛り込まれてしまう可能性がある。
○  現在は、圧縮する前段階のもので、少し詳しくしている。
○  統合カリキュラムを作るには、最初にある程度の枠付が必要。次のステップとして、臨床から見て、基礎的なものとして何が必要かを要求する、逆に基礎側からは、臨床の段階でこう役に立つというものを示すことによって、お互いの接点を見つける必要がある。
○  今後、圧縮していくポイントをどこに置くかを決めるのが重要。大枠だけ決めた方が良いという意見があったが、中身の意識は各大学、各個人で大分違うので、このようなプロセスがあった方が良い。また、これがあれば各大学でどういう教育目標を置くかを検討する際にも役立つのではないか。

4  福井委員、大山委員からそれぞれの研究グループの活動状況について報告があった後、自由討論。
(○:協力者、△:文部省)
○  教育評価のまとめについては、いつごろどのようにやるのか。学位授与機構の評価もあるが、各大学でどういう形で、どういうものが理想で現実を踏まえた者は何かを示す必要があるのではないか。
△  基本的に大学評価機関、学位授与機構の評価は教官個人の評価ではなく、機関の評価。例えば、イギリスでは教員のファカルティ・ディベロップメントをやっているかどうか、システムがあるかどうか、学生の授業評価をやっているかどうか等も評価の対象にしている。日本もそういったことを参考にしながら検討を進めていくものと思われる。
○  教員の評価については、日本の現状について調査研究をしなければ、必ずしも外国のものをそのまま取り入れる訳にはいかないので少し時間がかかるだろう。皆さんの要望が強ければ、本協力者会議でも取り上げるよう文部省に検討していただく。
○  臨床実習の時の医療事故について、学生に対して求償権を行使できない以上、指導教官が求償権を行使されるのか。
○  コア・カリキュラムの中の解剖について、臨床実習が終わった後に入れた方が良いのではないか。
○  コアを決めているだけなので、実習を行う時期については、各大学で決めれば良いのではないか。
○  このコア・カリキュラム案は、内容面だけを書いているが、時期等についても決めておくべきという意見があれば、今後検討したい。
○  臨床実習に入る前にどこまで学ぶべきかは示しておくべきではないか。
△  このコア・カリキュラム案は、臨床実習の前と後とを分けていないもの。
○  コアだけ決めていても、内容や時期について大学ごとに差がある場合、臨床に入ったときにその差をどうならすのかという問題が出てくるのではないか。

5  次回は、引き続き、臨床医学系のコア・カリキュラムを中心に検討を進めることとし、5月23日(火)15時30分から文部省5A会議室で開催される旨、連絡された。

以上 


(高等教育局医学教育課)

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