戻る

21世紀医学・医療懇談会

21世紀における医療人育成の姿  

○全体報告


 21世紀における医療人育成の姿


3. 21世紀における医療人育成の姿

1. 新しい学校制度の創設
  21世紀におけるあるべき医療人育成の姿を考えた場合,高等学校卒業後に直接大学の医療関係学部に進学し,そのまま医療人になるという現在の育成制度を見直すことが必要である。
  例えば医師の例で言えば,米国のように,異なる大学の学部4年において幅広い教養教育の学習を修了した者が,4年制のメディカル・スクールに進学し医療に関する専門的な学習を集中的に行う制度を設けることが考えられる。
  この制度によれば,幅広い教養教育を修得し人間的にもある程度成熟した段階で進路を決定できること,多様な学習経験を有する者が混じり合う中で医療人を育成できることなどのメリットが考えられる。しかしながら他方,我が国ではリベラルアーツ型の学部教育が十分に実施されている大学や学部が少ないこと,医療人の育成年限が現行制度よりも2年間長くなり経済的負担も増すこと,18歳人口の減少や高等教育の大衆化の流れなどを踏まえた慎重論もあり,制度を変革するにあたっては,さらに幅広い議論が必要である。
  また,現行制度においても,社会人等を対象とした特別選抜の実施,医療関係学部の編入学枠の拡大,2年次修了時点等での進級のための選抜の実施などにより,実質的な改善を行うことが考えられる。

 2. 患者に学ぶ実習の充実
  医療人育成において,実習は,患者の疾病の状況や家族的・社会的背景,疾病の治療などの実態,患者やその家族と医療人との関係,医療チームの構成員間の関係などを理解する上で極めて有益であり,その中で医療人に求められる態度・技能・知識や価値観などが修得されていくものである。すなわち,医療人は実習の中で患者に学びつつ成長していくと考えられる。
  我が国における医療人育成において,最も改善を要するのは,実習であり,医師及び歯科医師育成における臨床実習,薬剤師育成における実務実習,看護婦(士)育成における実習など,それぞれ飛躍的に充実させる必要がある。
  例えば医師の例で言えば,クリニカル・クラークシップ(医学生が病棟に所属し,医療チームの一員として患者の医療に携わる臨床実習の形態を言う。)を積極的に導入する必要があり,そのためには学部教育の改革と教育病院である大学病院の整備を図ることが求められる。

 3. 地域の中で育つ医療人
  大学及び大学病院という閉じた環境の中だけで医療人を育成する体制を転換する必要がある。地域の医療現場において,診断や手術が上手な医師,へき地医療に精通した医師,高齢者の歯科治療が得意な歯科医師,服薬指導の経験豊富な薬剤師,末期患者のケアに優れた看護婦(士),など多彩な医療人が活躍している。また先端医療だけでなく,老人保健施設や福祉施設,さらには在宅医療など,医療人が求められている場が多様化している。
  21世紀において国民から信頼される医療人を育成するにあたっては,まず第一に大学人自身がその責務を果たすことが必要であるが,特に実習の充実を図るために,大学は,大学以外の多彩な医療人や医療機関等との連携を図り,地域の中で医療人を育てていくことが求められる。
  このため,大学の教員とともに医療の現状に練達した優れた医療人が、医療現場での豊かな経験を踏まえ医療人育成に参加・協力できるよう,新たに「臨床教授(仮称)」制度を設けることを提案する。


 (高等教育局  医学教育課) 




ページの先頭へ