戻る

21世紀医学・医療懇談会

さらに検討すべき課題  

○教育部会報告


さらに検討すべき課題


3.さらに検討すべき課題

  本項においては,期待される医療人の育成方策のうち,引き続きさらに検討すべき方策について下記のとおりとりまとめた。

1. 医療関係学部の制度の見直し

(1)現在,大学の医療関係学部は,基本的に高等学校卒業段階,すなわち18歳時点で進学する制度になっている。しかしながら,1.18歳時点で明確な目的意識をもって医療関係学部に進学することは難しいのではないか,2.医療人には人間的な成熟が必要であり,学部卒業後に医療関係学部に進学するような制度を考える必要があるのではないか,3.多様な学習経験や社会経験を経た者が混ざって相互に切磋琢磨する環境を作ることが必要ではないか,4.臨床に従事する医療人を目指す者と医学・医療に関する研究者を目指す者とは異なる育成コースがあってもいいのではないか,などの指摘がある。
  これらの指摘に対する対応策の一つとしては,前述のように,大学の学部4年を修了した後に進学する4年制のメディカル・スクールのような制度を設けることが考えられる。また,医師資格を持ちつつ基礎医学分野等の研究者の道を歩む者を育成するために,MD・PhDコースの創設も考えられる。
  一方で,我が国の現状では,リベラルアーツ型の学部教育が十分に実施されている大学や学部が少ないなど,米国とは異なる状況にあるのも事実である。
  しかしながら,医療人育成のあるべき姿を念頭におきつつ,近年,大学・短期大学進学率が高まり,平成7年度においては45. 2%になっている状況も踏まえると,上記のような新しい制度の創設も含め,医療関係学部及び大学院の在り方について引き続き検討を行う必要があると考える。

(2)現在,多くの学会において専門医・認定医の認定を行っており,医師の専門研修の充実の上で重要な役割を果たしている。専門医・認定医制は,臨床系大学院や卒後臨床研修と密接な関連があり,今後その関係を検討する必要がある。

(3)医師と歯科医師との間における口腔外科や麻酔科の例にみられるような医療関係職種間の境界領域については,このような境界領域を専門とする医療人の育成方策を検討する必要がある。

2. コ・メディカルスタッフの育成方策

(1)医学・医療を取り巻く環境の変化に伴い,医療の場におけるコ・メディカルスタッフの役割はますます重要になるとともに,ソーシャル・ワーカーなど医療の場に求められるコ・メディカルスタッフの職種が拡大する傾向にある。今後,新しい分野も見据え,コ・メディカルスタッフの育成方策を検討することは重要な課題である。

(2)近年,資質の高い看護婦(士)等の育成のために急速に大学・短期大学の設置が進められてきている。平成8年度現在,看護系大学でみると,国立21校,公立10校,私立16校となっている。看護婦(士)等医療技術者の育成は,地域医療のニーズに応じて進めることが必要であると考えられるが,今後どのような方針で育成を進めていくかについて検討する必要があると考える。

3.「臨床教授」(仮称)と医療行為

  上記において,臨床教育の充実を図るために新たに「臨床教授」(仮称)制度を設けることを提言した。大学における臨床教育の指導者として「臨床教授」(仮称)の活用を図ることが期待されるが,さらに大学病院において医療行為まで行うかどうかについては,大学病院の診療体制や責任体制の問題も含め,今後さらに検討する必要があると考える。


 (高等教育局  医学教育課) 




ページの先頭へ