医師の卒後臨床研修に関する協議会 (第8回)議事要旨 |
医師の卒後臨床研修に関する協議会(第8回)議事要旨 日 時 平成11年1月28日(木)10:00〜12:00 場 所 東京ガーデンパレス「羽衣の間」 出席者 協力者:磯野座長、開原副座長、阿曽、石井、入交、楠川、坂上、高橋、塚原(勇)、細田、本田、前川、真栄城、森岡、矢崎、和田 文部省:木谷医学教育課長、厚生省:松谷医事課長ほか関係官 議事等 1 事務局より協力者の出欠状況の報告があった。 2 前回の議事要旨(案)について、御意見があれば数日中に事務局に連絡することとし、特段なければこの議事要旨(案)を公表することとされた。 3 事務局より配付資料の説明があり、質疑があった。 (1)これまでの議論の整理 ○ ここで協議した問題は、どういう形で反映されるのか。 ○ ある時まとめて、医療関係者審議会に対して意見書を出すということか。我々はいろんなところで意見を出しているが、その意見が反映されていない。 △ この会での議論の内容は、医療関係者審議会では反映されている。実質的にこの会議の議論は有効だと考えている。協力者の先生から反映するような御発言をいただくという形でいくのか、報告書あるいは意見書という形で御提言をいただくのか、いずれにしても、この協議会での意見は相応に反映させていきたい。 ○ 医療関係者審議会では、例えば、基準の在り方、あるいは目標の在り方などについて、我が国の基準のようなものを設けて検討をしていくと伺っているが、実際にその臨床研修 を実施する機関が参加する形で進んでいくのが望ましい。 ○ この会議の議論を果たしてどういう形で持っていくか。一つは、議論の結果一つの方向付けができたもの、あるいは未解決の問題、少数意見等、一つ一つの項目において4者協議会で議論されたことがある程度まとまって、広く実際に研修を行う者、研修を受けようとする学生に周知するために出していくことも必要。第二点は、厚生省で行っている審議会へ持っていって意見を述べ、いろんな方向付けをこちらから出す。逆に審議会の方で問題になったものをこちらに持ち帰って議論をするという、二つの方向付けが必要。昨年、公表するのが必要ではないかと事務局に相談したことがあるが、まだ結論が出ていなかった。今年度どうするか。こういう協議会で何が議論されているか全く分からない人もかなりいるので、メディアを通してではなく、協議会の内容を伝えることも必要。 ○ この会は、問題が起こったときそれぞれ考え方を出し合って医療関係者審議会に反映させるという形なので、どういう形でこの協議会が意見を出したか証拠が残らなくて、どういう形で反映したかを後で説明するのが難しいという問題点は残るかもしれない。逆に良い点は、諮問委員会であれば答申を出せば解散ということになるが、この会はこの制度が続く限りは研修制度についての意見を常に出していけるような永続する形の委員会だと捉えている。 △ 最終的には、何らかの報告かまとめというものが必要になってくるが、今までそうしてこなかったのは、そもそも必修化の問題がどうなるのか、時期がいつなのかという正式決定がないので、全体でそれを前提として中身をつめる議論はできない状況だったため。 ○ 問題なのは、様々な意見が出されているが、かなり歪んだ考え方で理解されているところが多い。協議会の性質をまず、実際に研修をしようとする人たちや施設などに知らせていくことが重要。 ○ ここにいる先生方が当然だと思っていることが、そういうところで理解されていないので、進んでいるどころかかえって歪んだ方向に行っているんじゃないかと危機感を持っている。研修医や施設に対して、我々がより良い方向で議論して、そこに向かって進んでいるということを理解していただいて協力を得る方がよい。 ○ いつ、どういうふうに実現するかは、結局、財源の問題。出たときから予算措置をどうするかという議論になった。必修化に対する研究の始まりは、必修化に対する大学サイドの体制が整っていないので、それにどういうふうに対応していくかということだが、これは文部省関係だけで議論していては進まないので、厚生省、関係の方々も交えて、本当に良い卒後臨床研修を作り出そうということで始まった。条件として何が必要かという議論があったが、法改正はもちろん、まず予算措置が前提だということを厚生省、文部省両省に認識していただくだけで、この会議の使命が十分達せられる。臨床研修をベストにするにはどうしたらいいかを世の中に知らしめ、内容を理解していただくのがこれからのステップ。ある程度のコンセンサスで、みんなが臨床研修良かれと思って議論しているということを分かってもらうという意味では、ある程度のまとめを出すのがよい。 △ 今まで協議会で行われたことについてはある程度まとめ、広く世間に知らせるということが一つ、また審議会に対して配慮する、あるいは審議会の配慮をこちらで生かすという二方向性のものを考えていく。 (2)臨床研修の必修化について △ 臨床研修の必修化については、具体的な議論が平成6年から始まり、平成8年7月に臨床研修検討小委員会の中間意見書が出された。この協議会も、国公私立の大学あるいは臨床研修病院、そして文部省、厚生省ら関係者が集まって意見交換し始めた。 その後、平成9年に健康保険法の改正があり、その時の国会での議論で、実績を踏まえた医療保険全体の制度の改革をきちんと検討して、これを2000年を目途に行うべきではないかと言われた。平成9年夏、厚生省からも案が出されたが、当時の与党3党の医療保険制度改革協議会においてその改革の新方針が出された。その中で医療提供体制の改革も一つの柱。全体としては老人保健制度の改革、診療報酬、薬価基準制度をどうするか、医療提供体制をどのように直していくか、がこの改革の大きな四つの柱。そのうち、老人保健制度、診療報酬、薬価という三つの点については、医療保険の改正であり、平成9年の健康保険法改正のときに設けられた医療保険福祉審議会という新しい審議会の制度企画部会で現在議論されている。 医療提供体制の改革の一つの柱は、入院医療の適正化で、一般病床を急性期、慢性期の患者さんに対応して、機能分化していこうとするもの。二つ目が医療における情報提供の推進。情報提供の中の一つは広告。今は医療法で広告の制限がなされているが、これを緩和する。もう一つがこれらの医療情報を開示すべきであるということ。病院病床と情報提供については、それぞれ検討会が設けられ、昨年夏に報告がなされた。それらを受けて、今医療審議会で議論がなされている。医療提供の三つ目の柱が、医師歯科医師の資質の向上というテーマ。これが具体的には臨床研修の必修化という中身になっている。かねてより、審議会で議論されてきて、関係者の間でも議論をされた結果としての必修化の議論を踏まえて、改めて医療保険全体の見直しの中でも位置付けられているというのが、一昨年の方向であった。 研修の必修化の件については、審議会は医療関係者審議会で議論されており、部会構成になっているが、医師については医師臨床研修部会、歯科医師はつい最近、議員立法で歯科医師法が改正になり、期間は1年であるが研修規定が設けられ、歯科医師臨床研修部会が設置されており、歯科医師の臨床研修の必修化についてはそちらで議論されている。医師臨床研修部会については、昨年10月から臨床研修の必修化についての議論が始まった。 まず、臨床研修の実施の方法については2年間、一定の研修体制を有する大学病院あるいは臨床研修指定病院で行う。その場は、大学病院あるいは臨床研修病院に限るのではなく、病院群あるいは研修施設群による研修を含んだ多様な研修を行う方向で行く。研修の到達目標については、平成元年に定められた卒後臨床研修目標に基本的に沿うが、それぞれの目標については今の医学、医療に求められているインフォームドコンセントや医薬品の適正使用等の観点から見直しを加えていく。 二つ目の柱が質の確保。現行の臨床研修病院の指定基準は臨床研修目標の達成という観点で再整理をして指導体制も含む新しい基準を示す。研修のプログラムについては、2年間を通した一貫したものを作成する。研修病院としての指定に際しては、地域性など、病院ごとの自主性を尊重しながら行う。研修医の選択に資するよう研修プログラムは一般に公開する。最後に、内科系、外科系双方を含む複数の診療科で研修を行う。あわせて救急医療の研修機会についてもプログラムの中に盛り込む。 修了の認定もきちんとしなければならない。それについては、まず研修医による自己評価、その上に指導医による客観的評価が第一。これらを踏まえて各施設ごとに研修委員会を設けているが、そこにおける評価を踏まえて最終的には研修責任者である病院長が修了を証明するというプロセス。公の方としては、その証明に基づいて大臣がその旨を医籍に登録するというプロセスになる。施行の時期については、研修医の適切な処遇ということが前提で、費用負担方法について関係者の合意を得た上で実施する。最後に準備その他の体制の整備ということになると、法律が成立して公布されたら直ちにというのではなく、2ないし3年程度の準備期間が必要である。 以上の内容については、基本的には平成8年7月の審議会報告を踏まえたもので変わっていないが、2ないし3年程度の準備期間をおく、その他のところが新しく加わった。 具体的に昨年の審議会で論点として議論されたのは、大きく法律制定までに検討しなければならない事項と、法律施行までに、すなわち2〜3年後までに結論を得ておくべき事項と大きく二つに別れている。まず、制定に当たって検討しなければならない事項が二つあり、一つは身分関係で、免許制度等をどうするか。医師の免許制度については、研修というのは医師の資質の向上の一環という考え方から医学部卒業後に免許を与えた上で、その後の研修を義務づける。医学部を卒業後直ちに国家試験を行って医師免許を付与し、医師となった後に受ける研修である。そういう意見が多かった。二つ目に研修期間中は、保険医として登録をする。そして、処遇については、研修に専念できるよう適切な措置を講じる必要がある。この二つが法律施行までに検討しなければならない。次に、目標については、医療を受ける者に対して適切な説明、いわゆるインフォームドコンセントや臨床医学の客観的あるいは科学的なデータに基づく治療計画の策定、そのような内容から現行の臨床研修目標に加え、今の時点で必要な見直しをしていく。二つ目の実施方法の内容については、当面のカリキュラムを硬直的にやるのではなく、施設の特色、多様性を尊重して目標に添った研修をしていただたく。方式については、期間が2年間と限られているのでその範囲内で研修医が将来希望する進路との関係を配慮した上での研修プログラムが必要。三つ目の研修指定病院の指定基準については、大学医学部附属病院は現在は自動的に研修病院となっており、その他については厚生大臣が指定することになっているが、全ての病院、大学病院を含めて一定の水準以上の施設かの確認がなされる必要がある。 また、研修医の受入人数についても、目標の達成という観点から見直しを行う必要がある。指導医の指導体制については、研修医に対する指導が持つ重要性ということでも議論される必要があるが、具体的には国立大学附属病院等においては指導医1人の他にいわゆる屋根瓦方式での指導体制で行うのも妥当な方式ではないか。評価の基準仕組みということでは、修了に当たって国家試験という形を取るのではなく、自己評価と客観評価を踏まえて各施設で行う。各施設で、その評価を行う際の具体的な基準や仕組みについては検討する必要があるのではないか。 ○ これからの研修は、多数の施設を利用したものが重要になってくるが、そうなると、自治体病院と大学病院が組んでやる場合に、自治体病院では回ってる人が学会に行くのが規則で禁じられていたり、金のことなど細かい問題がある。例えば、30万円がその研修医について回るとすると、研修医の責任者、自治体病院なら自治体病院の院長、大学病院なら大学病院の院長の責任ということになり、金は研修医についてくるが、責任者はその場所、場所で変わるというのは、実際には大変難しい問題だが、そこをどう考えるか。 △ 今の医療関係者審議会での議論によると、2年間一貫したプログラムということで、一人の責任者がプログラム全体を管理して、その人が最終的な研修修了の認定もするという構想を考えているようだ。それぞれが行った先の病院群、施設群での診療については、当該施設の長あるいは指導医が行うということになるが、プログラム全体の責任者は曖昧にしないで決める、という構成になる。 ○ これまでの議論では、卒後直ちに国家試験を受験させ、医師の資格を与えてから臨床研修、そして研修終了は自己評価等でやるという発言があったが、この協議会で出た意見は必ずしもそういう意味ではなかったと思う。 △ この協議会でも議論があったが、審議会での議論は、まず医師免許を付与した上で研修を行う方が妥当という意見の方が大勢を占めていた。もちろん考え方として、研修を終了した後に普通免許を与えるという考え方、かつてのインターンのようなものだが研修を行った後に国家試験を受ける、あるいは国家試験は事前に行っておいて研修終了と合わせて免許を与えるという構成もあるし、その中間的な考え方もある。 ○ 厚生省も最初は保険医の資格は2年間終わってからということを言っていた。保険医の資格まで与えておいて、2年後になって「お前は開業できない」とは言いにくいので、保険医の資格を与えることについては慎重にやるべきだと考えている。 ○ 大勢の意見は、免許を与えるという形の中で新米の医師であることを自覚しながら研修をするというもの。 ○ この協議会においても、まず2年間というのが本当にいいのかどうかをはっきりと入れるわけにはいかないが、とにかくこういった制度を前に進めるためにはとりあえず2年ということで進んでいき、その後また問題が起こるならば再度議論をいただくというのが、この協議会の方向。 ○ 保険医であった方がいいという議論もあったが、本当の保険医ならアルバイトは可能。研修への専念は、どうやって担保するのか。 △ 保険医の制度の方は保険局の方で別途検討してもらっているが、基本的に臨床研修の場で行う研修医療については、何の制約も設けずに通常の報酬請求を認めるというところまでは考えている。これについては、また医療関係者審議会で別途検討が進められることになっている。保険医の制度そのものについては、これらを広く含んだ健康保険法の世界だが、これに沿って健康保険法の改正をしようという動きはない。 (3)卒後研修のプログラムについて ○ 国立大学附属病院の院長会議の中に卒後研修問題小委員会というのがあり、平成8年7月に医療関係審議会からスーパーローテートを受けて、これを行うとしたらどのようなことになるか平成8年12月5日に報告書をまとめたが、今回のスーパーローテートに対する基本的な問題をほとんど含んでいる。さらに、次のステップとして、このローテート、研修カリキュラムをある程度統一的なのを出す必要がある、こういうことをやったら2年間のローテートが必要であり、やはり国民に対して理解を得ることが必要ではないかという意見が出たので、この問題について、12大学から卒後研修専門の先生に出ていただき、半年の間に6回、濃厚に議論をし、この報告書が作られた。 この報告書は平成元年の厚生省の医療関係者審議会から出た研修カリキュラムを下地にしてスタートしたが、今回、一般目標の中に保険診療とか医療とかに関する法律を守ることや、生涯学習、自己学習の習慣をつけることを項目として新たに一般目標に加えた。また、厚生省では具体的目標というのをあげていたが、今回はもっと直接的に行動目標という言葉を使った。 これは2年間の卒後研修必修という前提の下で行われた作業だが、一応、2年間で18か月ローテート、6か月はエレック、すなわち1年半の実質的な研修という形でこの案を作った。この案については、標準的な能力の医学部卒業生であれば必ず実行できるものにしているが、各大学がこの研修カリキュラムの下でここが弱いと思えば、独自のプログラムを表示して補習をやればよい。これはあくまでも骨子であって、各大学が独自性を出すことは全く構わない。これに対して、各々の大学や施設がプログラムを公表して、研修生がこれを選ぶという意味では、プログラムの競合がよいのではないか。また、ローテートの必修としたのは、内科、外科、小児科、産婦人科、救急。評価については、4段階方式で達成できたかどうかを示す。 また、経費面で指導医について何らかの手当が望まれる。事務局をおいて、研修医をアレンジするコーディネーターがいる以上、事務的経費もかかるので、研修医に給料を払っただけですむ問題ではなく、ある程度の管理費が必要。教育指導医の強化もしなければならないし、指導歴、教育歴を正しく評価する社会的環境を整えようということもある。 この問題を専門医の学会にも投げかける必要がある。こういう18か月、6か月はエレックという骨子、共通カリキュラムにする場合に、専門医、認定医はどうするかを問いかけなければならない。 ○ ローテートの必要性が認められたのは大きな変化だと思うが、今、総合医、一般医を養成する必要ない。初期研修の段階でなぜスーパーローテートするかというのは、一番の点は即事的な能力を得るというところにあるのではないか。 ○ 次回は各協力者の日程を調整して開催したい。 |