医師の卒後臨床研修に関する協議会における意見の概要

2000年03月
医師の卒後臨床研修に関する協議会


はじめに
 


 
  

  国民に良質な医療を安定的に提供するためには、それを担う医師が臨床の能力を身につける適切な研修を受けることが不可欠であり、このため医師免許取得後に臨床研修を受けることを必修化することは極めて重要な課題である。 

  しかしながら、卒後臨床研修を単に必修化するだけで、その趣旨が十分に生かされなければ、よい医療を提供することにはならないことは明らかである。そこで、真に我が国の医療をよりよいものにするためには、如何に研修の質の充実を図るかということについても真摯に検討が行われなければならない。こうした認識の下に、本協議会においては、研修内容の充実や研修体制の環境整備等について、幅広いコンセンサスを得るため、政府関係者及び研修施設関係者などが一堂に会して11回にわたる会議を開いて検討を行い、その結果を以下のようにとりまとめた。 

  

  

  



 

1 研修内容・プログラム
 


 
  

 ・ 研修の到達目標については、「卒後臨床研修目標」(平成元年厚生省医療関係者審議会)や「国立大学附属病院卒後臨床研修共通カリキュラム(平成10年)」などを参考とすること。 

 ・ 上記目標の中でミニマム・リクワイアメントを定め、臨床研修が一定水準以上保たれる必要があること。 

 ・ これに加えて、各施設の特色を活かした多様な研修内容を組むことができるよう配慮すること。 

 ・ 研修はプライマリーケアを重視するとともに、複数の診療科を回るローテーション方式とすること。 

  

  

  



 

2 研修修了時の評価
 


 
  

 ・ 研修修了時には,研修医の人間性と能力の社会的な保証、本人の進路等に関する指導等のため、評価を行うことが必要。 

 ・ 研修修了の認定は、研修実施機関が実施すること。(現行の卒業時における国家試験と同様の統一試験の実施は適当ではない。) 

 ・ 研修実施機関の行う研修修了の認定については、公正かつ透明性を確保する上で、結果的には第三者からの評価を受けることが望まれること。 

 ・ 具体的な評価に当たっては、本人、指導医、看護婦や臨床検査技師、患者等による多角的な評価方法も検討すること。 

 ・ 評価において問題のある研修医について、研修期間の延長や進路変更の指導等の対応が必要。 

  

  

  



 

3 研修医について
 


 
  

 ・ 医学部卒業後医師国家試験に合格した研修医には、医師免許及び保険医資格が与えられる。ただし、独立して医業を行うためには臨床研修病院で臨床研修を修了することが必要。 

 ・ 研修中は、研修に専念できるように処遇の改善、指導体制及び設備の充実を図ること。 

 ・ 研修医の給与については、司法修習生の給与なども考慮して適正な額が支給されるよう配慮すること。 

  

  

  



 

4 指導医について
 


 
  

 ・ 指導医は各科・各部局の責任者が主たる指導者となり、実際の指導にはいわゆる屋根瓦式に全員が共同して当たること。主たる指導者は認定医であることが必要。 

 ・ 指導医の手当て等の研修に要する経費の補助の充実が必要。 

 ・ 大学教員の評価に当たっては、研究の論文数などの研究実績だけでなく、臨床、教育、研修の指導のような活動を評価するシステムを作ることが必要。このことがひいては、研修の質の改善につながると考える。 

  

  

  



 

5 研修の実施体制
 


 
  

 ・ 一病院にとどまることなく、複数の研修施設を含めた幅広い研修を行う体制の整備が必要。また、研修施設間の連携が不可欠であること。 

 ・ 病院群で行う場合、「従たる病院が2以下」という現行基準を見直し、必要とする数の教育連携病院において研修が行えるようにすべき。 

 ・ 研修医の数は、病床数だけでなく、指導医の数、年間の患者数(外来及び入院)や症例数などを考慮して決めるべき。 

  

  

  



 

6 研修施設の基準
 


 
  

 ・ 数値的基準のほかに,評価できるプログラムが確立していることが重要。 

 ・ 当直に配慮して、研修医のルーム・アンド・ボードを備えるなどの施設基準の見直しが必要。 

 ・ 剖検については、年間の剖検例20体以上かつ剖検率30%以上という現行基準を見直す等、現在の臨床研修病院指定基準の再検討が必要。 

 ・ 研修施設として指定を受けた後も、基準を満たしているか適切にフォローアップを行うことが必要。 

 ・ 大学附属病院の制度上の位置づけについては、従来通りとすべき。 

  

  

  



 

最後に
 


 
  

  卒後臨床研修の必修化に当たっては、以上の点を踏まえて検討されることが、研修の質の充実のためには必要不可欠であるとともに、これからの検討過程においても、臨床研修病院関係者や大学関係者など研修の実施機関の意見を十分に踏まえて進めていくことが必要。 

  

  

  

  

医師の卒後臨床研修に関する協議会委員 
  

                           

        阿曽 佳郎    藤枝市立病院長 

  

        石井 昌三    学校法人順天堂理事長 

  

  座 長  磯野 可一    千葉大学長 

    

        入交昭一郎    前川崎市立川崎病院長 

  

  副座長  開原 成允    国立大蔵病院長 

  

         楠川 禮造    セントヒル西岐波病院長 

  

         小泉  明    社団法人日本医師会副会長 

  

        坂上 正道    北里大学名誉教授 

  

        猿田 享男    慶應義塾大学医学部長 

  

        高橋 隆一    国立東京第二病院名誉院長 

  

        塚原  勇    学校法人関西医科大学理事長 

  

        塚原 重雄    山梨医科大学附属病院長 

  

        細田 瑳一    財団法人日本心臓血圧研究振興会常務理事 

  

         本田 孔士    京都大学医学部附属病院長 

  

        前川  正    前国立学校財務センター所長 

  

        真栄城優夫    ハワイ大学卒後臨床研修プログラムディレクター 

  

        矢崎 義雄    国立国際医療センター病院長 

  

        和田 義郎    名古屋市立大学医学部長 

  

        布村 幸彦    文部省高等教育局医学教育課長 

  

        松谷有希雄    厚生省健康政策局医事課長 

-- 登録:平成21年以前 --