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インターシップ推進のための産学懇談会

1997/06/30 議事録

インターンシップ推進のための産学懇談会 (第1回)議事要旨


 インタ−ンシップ推進のための産学懇談会(第1回)議事要旨

I    日  時    平成9年6月30日(月)14:30〜16:30

II   場  所    東海大学校友会館「霞の間」(霞が関ビル33階)

III  出席者
  (協    力    者)安生協力者、池上協力者、大野協力者、小川協力者、金子協力者、木村協力者(座長)、黒田協力者、小林協力者、斉藤協力者、桜木協力者、舘協力者、田中協力者、新津協力者、森脇協力者、山ノ川協力者
  (文    部    省)高等教育局長、専門教育課長、学生課長、リフレッシュ教育企画官
  (オブザーバー)通産省産業政策課長、労働省業務調整課長


IV  配布資料
(1)インタ−ンシップの推進のための産学懇談の実施について(高等教育局長裁定)
(2)審議会等の透明化、見直し等について(平成7年9月29日  閣議決定)
(3)「教育改革プログラム」(抄)(平成9年1月24日  文部省)
(4)「経済構造の変革と創造のための行動計画抄) ( 平成9年5月16日  閣議決定)
(5)インタ−ンシップ推進のための三省(文部省・通産省・労働省)連絡会の設置について
(6)インタ−ンシップに取り組む大学・企業の例
(7)平成8年度インタ−ンシップの実施状況調査結果について(中間集計)
(8)「インタ−ンシップの推進について」
(9)インタ−ンシップ推進のための産学懇談会審議日程(案)

  以下、参考資料
(1)インタ−ンシップ等学生の就業体験のあり方に関する研究会開催要綱(労働省)
(2)インタ−ンシップ導入研究会  運営要綱(中部通商産業局)

V  議事概要
(1)高等教育局長より、開会にあたって挨拶があった。
(2)事務局より、協力者および文部省・通産省・労働省の出席者の紹介があった。
(3)事務局より座長の指名があり、木村協力者が座長に指名された。
(4)本懇談会の公開について検討され、あらかじめ登録した報道機関に対する会議の公開と議事要旨の公開が決定された。
(5)事務局より資料確認と配布資料について説明があった。
(6)各大学・企業におけるインタ−ンシップに対する取組の事例紹介が行われた。
  事例紹介の概要は以下のとおり。

〇  経済同友会は、伝統的に教育に関心をもっており、サマ−ジョブ、ジョブインタ−ン等を提言してきたが、なかなか実現されていない。この背景には学歴社会があり、まず社会の意識を変えていかなければならない。
  96年6月にまとめた「学働遊合のすすめ」では、社会の意識を変えていくためには、企業が変わってきていることを社会に伝えていくことが必要であることから、企業の実態をまとめている。その中で、インタ−ンシップに関する企業の関心について調査したが、関心のある企業は、文系で63%、理系で約7割であった。また、インタ−ンシップに関心のある企業の名称を掲載しており、何らかの参考にしていただきたい。

〇  フェリス女学院大学においては、昨年より、「社会研修」として実施している。
  対象は学部2年生、期間は春休みに最低10日であり、就職課と関係のあった11の受入先(新聞・出版、旅行会社、保険、外資系、地方公共団体等の外郭団体)に2名ずつ派遣した。
  プログラムは、現場実習と企業説明の両方であり、大学と受入先の企業が協議の上決定している。
  学生に対しては、事前研修を実施し、終了後はレポ−トを提出させるとともに、成果を他の学生に還元するために報告会を開催している。
  本学におけるインタ−ンシップのねらいは、学生の社会意識の涵養と大学の学習の動機付けであるがにおいているが、十分な成果があった。
  現在、2年目を迎えてプログラムの練り直しを行っており、共通教育においてカリキュラムに選択科目として位置付けることを検討中である。

〇  東京工業大学では、40年以上「現業実習」として実施してきたので、あらためてではなく、今までの取組をいかに広げるかが今後の課題である。
  対象は学部3年生、期間は夏休みに3週間から1か月であり、主として工場の現場に派遣し、レポ−トを提出させて、1〜2単位を付与している。
  以前は8割の学生がほぼ全国的に行っていたが、最近は学生が嫌って、全学年1000名中60名しか選択していない。
  最近では、1年間休学してヨ−ロッパの企業を体験する学生も年間5〜6名いる。
  本校では8割以上大学院に進学することから、教室で学んだことと現場が以下に違うかを体験するという純粋な教育の目的でインタ−ンシップを実施している。最近企業から採用を目的としたインタ−ンシップ受け入れの申し入れがあるが、このような企業と大学の意識格差の調整を図ることが必要。

〇  ソニ−においては、国内は技術系がほとんどであるが、実務訓練生(長岡・豊橋の両技術科学大学について年間7〜8名を受け入れ、特に採用は意識していないが約半分が就職している。)、夏休み実習生(5大学、学科では15、二十数名)、春休み実習生(大学と非技術系の短期大学の30名)として受け入れている。
  期間は最短で10日であるが、1か月以上の場合は明確なテ−マを設定することが可能であり、学生にも評判がいい。
  海外については、技術系を中心に年間30名を受け入れている。
  今後の受入れについては、従来の受け身の姿勢から制度化等積極的に取り組みたい。
  技術系は従来の取組みの発展となるが、文化系についてはどのよう取り組んでいくか。
  また、大学の申し出に対してどのように選抜していくかが問題となる。

〇  慶應義塾大学においては、理工系では従来からインタ−ンシップを実施していたが、文系においては制度化していない。
  商学部においては、今年の初めにプロジェクトチ−ムを結成し、現在検討中であって、今年秋に報告書をとりまとめる予定である。検討の際に念頭に置いているのは、狭い意味におけるインタ−ンシップよりも、大学が社会的ニ−ズに応じた人材育成をしているかである。
  今後、インタ−ンシップをカリキュラムの一環として位置付けるとともに、金融コ−スを作って実習もやらせたい。インタ−ンシップには就職がついて回るが、就職の斡旋ではなく、アカデミズムを取り入れることが必要である。
  経済団体や企業にヒアリングしているが、本音として就職との結びつきがみられるが、時間かけてインタ−ンシップの意義を社会に定着させることが必要である。

〇  豊橋技術科学大学では、20年近く「実務訓練」を実施してきたが、一番重要なのは安全であって、傷害保険も強制的にかけさせている。
  本学は、実学である工学系の大学であって、インタ−ンシップを実施しやすい。また、高専卒業者が8割であってマスタ−まで進学が原則の4年一貫教育であることから、時間的に余裕がある。
  3学期制を取っているため、期間は4年生の卒業研究後の1、2月である。学生には2回報告書を提出させ、企業には評定書を提出してもらっている(必修6単位)。また、教官が最低一回は見回りしているが、これが共同研究の芽ともなる。
  現在、8つの学系から1名ずつ教授を出して、実務訓練委員会を年5回開催し、インタ−ンシップ先の希望の調整等を行っている。
  企業には、文部省の補助により、2万数千円の謝金を出している。
  学生に対する給料は、一日あたり0〜1万円までさまざま。
  研修のテ−マは卒業検定を発展させた場合が多いが、基本的には企業に任せている。
  学内に卒業研究や基礎的な学習がおろそかになるといった見直し論もあるが、教官の8割は賛成しており、重要な意義があると考えている。
  バブルの崩壊以後受入を拒否する企業が増加しており、受け入れ先を確保することが困難となっているように、景気動向に左右されることが大きな問題である。

〇  高専は、実践的な教育を実施していることから、校外実習が重要と考えており、創立以来、原則全員を対象に実施している。
  対象は学部4年生、期間は2週間である。年間120社〜130社において受け入れてもらっており、指導・評価・実習証明書の発行を依頼している。
  期間中、担任が実習先を訪問することで連携を図っており、学生の報告書・発表、企業の評価書によって単位認定している。
  バブルの崩壊以後受入企業が減っているが、高専は38年に産業界の強い要請に基づいて設立された経緯もあり、高専の教育についても企業・産業界の協力をお願いしたい。

〇  東京商工会議所では、教育問題委員会を設置して、企業に勤めている者の研修をどのようにすべきかを検討中である。その中で今後は自己責任に基づく研修が必要との議論があるが、その手始めとして、学生時代から職業観を身につけてもらいたい。
  東京商工会議所の会員は、中小企業がほとんどであって、自社の研修体制が整っていないところがほとんどである。このため、インタ−ンシップの受け入れ計画を立てることは難しい。ただ、ベンチャ−企業や社長が自ら研修を担当するような企業の特色を活用したり、1社だけではなく数社あるいは地域で受け入れるといった広い体制で取り組む方向は可能性としてある。
  アルバイトについても、流通産業では戦力の一部であって、経営感覚に優れた者は管理職的な地位についている者もおり、その経験に関するレポ−トについても、単位認定できればインタ−ンシップは広がりを見せるのではないかと考える。

〇  日経連の今までの取り組みとしては、「時代へ挑戦する大学教育と企業の対応」(H7・3)において、企業実習をカリキュラムへの取り入れを提言するとともに、「グロ−バル社会に貢献する人材の育成を」(H9・2)において、高等教育のあり方として、学生の職業観・就労観を養うためのインタ−ンシップの拡大を提言した。また、就職協定協議会特別協力者会における「中長期の就職採用のあり方検討委員会」においてアメリカの実態を調査し、「アメリカにおける就職・採用事情」として取りまとめている。
  今後は、教育特別委員会の「21世紀の就職採用問題研究会」において、インタ−ンシップをめぐる問題について、幅広く検討をしていきたい。また、日経連の傘下にある関西経営者協会において、インタ−ンシップの受け入れ態勢について研究している。
  私見としては、学生の個の確立を支援し、就労観を身につけさせることで、労働や就職のミスマッチのない社会を形成することが必要である。ただ、インタ−ンシップを実際に行うために、地域ごとの小さな協議体においてインタ−ンシップをめぐる倫理の問題等について討議をすることが必要であって、ひいては、NACE(全米大学就職協議会)のような組織となればと考えている。

〇  2〜3年前から就職採用について現在の状況は好ましくないと考えており、就職協定協議会特別委員会の「中長期の就職採用のあり方検討小委員会」において検討している。昨年11月に米国の大学・企業の実態について調査したが、アメリカの大学・企業は一体となって学生の資質の向上に努めている。
  日本においても、学生の就労観の育成や個の確立を手助けするために、国状にあったインタ−ンシップを探るとともに、大学・企業が組織的に取組む必要がある

〇  産能短大においては、来年度から、「ビジネスインタ−ンシップ」という科目をカリキュラムに位置づけて開始する予定。
  対象は1年次、期間は春休みである。原則、無給であるが、交通費程度は支給してほしいと考えている。受入先は、企業・ボランティア団体を考えており、就職からは切り離して実施したい。
  短期大学の場合の問題点としては、i)就職に関するメリットが少ないため企業・NGO等の受入先の確保が難しいこと、ii)大学の専用スタッフの確立が必要であること、iii)プログラム開発の必要がある。

〇  日立製作所におけるインタ−ンシップの取組には、i)夏期実習(21大学、15高専から95人)、ii)実務訓練(長岡・豊橋の両技術科学大学から20名弱、期間は、平均2週間。)、iii)外国の大学からの受け入れ(10〜20名、日本学生国際研修協会等を通じて受け入れ。)があるが、受け入れに当たっては、就職採用を結びつけておらず、実際の採用者も少ない。
  大学における人材育成は、長い目で見れば企業のためになることから、講師の派遣や寄付講座の設置等大学に対する支援策・連携の一環と考えている。
  インタ−ンシップの推進にあたっては、理念のみ先行しないように現状を踏まえて検討するべきである。また、すべての大学を受け入れるのは無理であって、どのように受入の判断をするのか、文系をどのように考えるのか、が今後の問題。

(7)事務局の資料や事例紹介等を踏まえて自由討議が行われた。
  意見の概要は以下のとおり。

〇  全体を伺って個人的には、企業がためらっていることを強く感じる。

〇  大学審議会の委員をしていることもあり、大学教育全体の立場から意見を述べたい。
  ひとつには、アメリカのインタ−ンシップの受入先は、企業だけではなくNGO・政党・公共団体もある。大学全体を見ると、企業を目指す学生だけではないのだから、広がりをもって考えるべき。
  また、現在拡大してきている大学院の文系について、アメリカ的なプロフェッショナルスク−ルになるためには、企業・社会の協力が必要であり、大学院とインタ−ンシップの関わりについても考えるべき。
  高専の専攻科についても企業は受け入れているように、いろいろな学生像あることを念頭に置くことが必要。
  単位として出す以上、学習成果の評価の問題があることを考慮すべき。

〇  産学は、これまで研究面で協力してきたが、今後は学生の教育面で協力すべき局面にある。その際には、今というよりも、21世紀の日本のイメ−ジ・その活力の確保を根本において継続的に検討を進めるべきであり、そのためには、大学・企業に先端を置く必要がある。
  大学においては、学生を客とみなして、それに対する魅力を考えてほしい。学生のライフ・パタ−ンを考えないシステムは、うまく機能しない。
  専門的知識を磨くインタ−ンシップと社会を体験するインタ−ンシップを区別して具体的に考えることが混乱を避けるためには必要である。

〇  日本が21世紀においていかにして活力を保つかという視点が重要であって、企業・大学の双方から検討していく必要がある。ただ、経済団体はともかく企業には安全や賃金の面でためらいもあり、その点についてガイドラインを作成していきたい。

〇  安全についてはある意味で確立しているのではないか。

〇  それでも、もめる場合がある。

〇  アンケ−トの結果によると、企業には2か月でも短い、最低3か月が必要とするものがかなり多い。本来の(米国の)インタ−ンシップは、2〜3週間で企業見学を行うものであって、それ以上の実務訓練は、「コ−ポレイト・エデュケイション」(以下C−E)である。きっちりと時間をかけて実施するのか、2〜3週間程度でとりあえず行える範囲で対応するのか、各大学の事情に合わせて選択できるようにすべき。

〇  英国では、2年間の「サンドイッチ・プログラム」(?)をシティ・ユニバ−シティで実施していたが、大学に戻った場合マッチングしないことが多いことから最近やめた。
  この期間の問題は、米国・カナダも同様であって、大学側の共通意見としては、せいぜい4〜8か月まで。その意味では、長岡の5か月はあてはまる

〇  5か月とすると、卒業研究をしないこととなって、大学改革の放棄になる。人間工学的な見地等から、学生が企業で緊張を保っていられることや安全から考慮して、2か月が適当という先生もいることから、豊橋では2か月としている。

〇  米国のインタ−ンシップは、カリキュラムの総仕上げの意味が強い。いわゆるC−Eが日本で言うインタ−ンシップに該当しており、概念を整理すべき。

〇  米国において大企業の管理職を対象に実施したアンケ−トによると、日本と同様に青年層を信頼していないという結果になった。米国におけるインタ−ンシップも日本と同様社会意識をつけさせることを目的としているのだろう。

〇  企業がためらっているのではないかとの意見があったが、まだ、企業が実情を知らないためもある。あるインタ−ンシップに関する調査では、インタ−ンシップの内容と名前の両方を知っているのは34%のみ(名前だけは64%)であり、まだまだインタ−ンシップは名前だけ先行している。
  また、適切な期限は1か月が多く、文科系の学生を1週間程度受け入れるのは足手まといとの声がある。インタ−ンシップのメリットを企業に知らせる必要がある。

〇  文系と理系は、状況が違っており、我々のいう「実学」の精神は、すぐ役に立つ技能ではなく、プロフェッショナルとしてビジネスを科学として考えることである。しかしながら、文系の場合、プロとしてインタ−ンシップの場において活動するのは非常に困難である。このため、インタ−ンシップに単位を与える以前に、大学のカリキュラムにプロとしての素地を入れなければいけない。
  アルバイトによる社会意識以上の意味を与えるべきではないか。

(8)次回日程について調整が行われ、後日協力者に連絡することとなった。

(高等教育局専門教育課)

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