国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議
2001/03/30 議事録
平成13年3月30日(金)10:30〜13:00
東海大学校友会館「望星の間」霞ヶ関ビル33階
石 弘光(副主査)、江口吾朗、大崎 仁、樫谷隆夫、勝方信一、桐村晋次、菅原寛孝、鈴木章夫(主査)、本間正明(副主査)、宮島 洋、宮脇淳、山田家正、若松澄夫 の各委員
小川浩平、上野一彦、細谷昌志、道上正規 の各関係者
工藤智規高等教育局長、清水潔高等教育局審議官、坂田東一研究振興局審議官、森口泰孝会計課長、合田隆史大学課長、永山賀久大臣官房企画官、杉野剛大学改革推進室長、舌津一良整備計画室長 他
【委員及び関係者】
施設整備について、国がその費用を全て負担するというのは、独立行政法人通則法で規定している基本型であり、この基本型を如何に補正するか、つまり全体調整機能や特別会計が果たしている機能を保全するか否か、保全するとすればその方法は何かという形で論点整理すべきではないか。
もう一つ出資財産に関する表現について、現に教育又は研究の用に供している施設及びそれに対応する土地という書き方は、出資対象が狭く受け取られこととなり、かなり問題である。更に言えば、現に使用している財産でも出資するものと出資しないものがあって、出資されないが使用する財産は借料を払って使用するということはおよそあり得ない。つまり大学は将来の発展計画も含め、キャンパスにゆとりがあることが必要条件であり、次期科学技術基本計画においても国立大学施設の老朽狭隘化の解消は、最重点事項の一つになっている。したがって、国立大学が管理している土地建物、すなわち行政財産は出資するということを明確にした上で、全体調整の観点も踏まえ、出資する必要のないものがあるとすれば何なのか明確にして、出資、非出資の整理をすべきである。
次に借入金の償還について、借入金は国立大学が借りたのではなく、国立学校特別会計が施設整備促進のための財源として借りたのであって、各大学にその債務を負わせるというのは少々無理があるのではないか。仮に各大学が償還するにしても、そもそも営利を目的としておらず、黒字経営しているわけではないので、償還財源をどのように措置するのか、そのあたりが明確にならなければ、既存借入金の償還先は議論できないのではないか。
【委員及び関係者】
各大学に既存借入金を負わせることについて、国立大学協会はかなり強く反対しているが、一方で全然返さないというわけにもいかず、大変難しい問題と認識している。附属病院収入をもって償還するとしても、仮に人件費を加味すると附属病院は全て赤字であり、附属病院に期待することは難しいのではないか。ただし、設備、人員を十分手当し、附属病院がフル回転できるようになれば、国際競争力も高まり、かつ、収入も上がって償還財源の措置ができることとなり建設的ではないか。
【委員及び関係者】
文化系の大学、附属病院のない大学は直接的には借金をしていないと思っているが、病院借入金が結果として附属病院を置かない大学の施設整備も可能にしたと言われれば、そうかなという気もする。そこでセンター設置にも絡むが、国鉄精算事業団のような仕組みを設け、まとめて借入金を承継させ、各大学は責任も含めどのように当該センターに関与していくかということではないかと思う。
全ての国立大学が独立行政法人化して各々勝手にやれと言われれば、非常に不安を覚える大学は多いと思う。財源調整も含め経営手段、経営方法のようなマネージメントのノウハウも兼ね備えたセンターのようなものは必要ではないか。ただし、当該センターがすべからく財源を集め配分するような強大な権限を与えることは、各大学がかなり制約されることとなり好ましくないので、施設整備費はセンターを通さず、国から直接大学に措置する方法が良いのではないか。
また、初期の財産配分がイーブンでなく、持てる大学と持てない大学との差が歴然とあり、そこの調整をどのように図るかをきちんと整理しなければならない。つまり財産を沢山持っている大学が勝手に処分できないような仕組みが必要と考える。
【事務局】
独立行政法人通則法上、重要財産の処分には、主務大臣の認可が必要であり、各法人が勝手に処分することはできないこととなっている。
【委員及び関係者】
勝手に処分できないとしても、処分が認められた場合、その処分収入が個別の大学に入るのであれば、結局、財政面での大学間格差は生じるのではないか。
【事務局】
処分収入の帰属先は財源調整機能の問題の一部でもあり、そういったことも含めてご議論いただきたい。
【委員及び関係者】
センターの発想は、施設整備費が足りないためか、あるいは本質的な問題としてセンターが必要なのか。また、施設整備費が更新分と新規分に区別されず、一体のものと整理されているが、更新も新規もその時点で国が一括して予算措置するのか、施設については減価償却のようなものを行うのだから、将来に備えて更新分については、運営費交付金をもって引当するということも考えられるのか。
【事務局】
センターを発想した理由として一点目は、毎年5〜6百億の借入を行いつつ、施設整備を行っている現状を踏まえ、そもそも借入金に頼らず円滑な施設整備が行えるのかという問題があり、一方で個々の法人で借りるよりもセンターで一括する方が借入が容易なのではないかということ。二点目として、中・長期的に見れば財源調整機能、例えば、現状においては、ある大学の土地を一括処分した際に、処分収入をプールしてそれを複数年度で施設整備に充てる、更に当該大学以外の施設整備にも充てるという仕組みがあるが、同様の再配分機能を確保するということがある。
また、独立行政法人通則法等、現行の独立行政法人の仕組みにおいては、法人が減価償却に対応した引当を行う必要はなく、更新、改築、改修、新増築に係る全ての経費を国が措置する仕組みになっている。
【委員及び関係者】
附属病院を置く大学のみに借入金債務を承継すると、附属病院があるために債務を負ったとして他学部から附属病院が非難される恐れもあり、学内に混乱を持たせるような手法は極力避けるべきと考える。
【委員及び関係者】
科学技術基本計画はまさに国立学校の施設整備を重点課題としている。もちろん同時に施設の有効整備、有効活用も求められており、両面で行わなければならないが、施設整備を縮小するという発想は全く採るべきではないと考える。また、財産格差のようなものが固定化されるのは適当でないということはよく分かるが、それぞれの大学がその歴史の中で努力し集積した結果現在の財産があるのだから、それ自体は尊重しなければならず、財産格差は認めつつ、一種の再配分機能を制度設計に採り入れることで全体調整を図っていくということではないか。
【委員及び関係者】
国立大学が法人化するに当たり、過去の負債を負わず身軽に出発したいという気持ちは非常に良く分かるが、将来的にはそのような制度設計が逆に国立大学の財政面に制約を加え得るということも考えておく必要がある。例えば今後も附属病院施設を借入金で整備するとして、財投機関債が原則ということは自己調達が基本であるから、そのような状況で過去の借入金は棒引きだとか、債務を国立大学に帰属させるなという論理は恐らく通用しないと思う。特に国立大学が借入主体足り得ると主張できる部分は、背景に資産を有しているという点であるので、その正当性を担保するためにも資産と債務をきちんと関連させ整理すべきと考える。
なお、各国立大学が個別に借入を行う場合、資産、負債等を基にした大学の格付けが行われる恐れもあり、更に言えば借入できない大学が生じることも考えられるので、一括して借入を行うセンターのようなものを設置することは必要と考える。
もう一つ大学自身が財産処分することを想定しながら、一方で国が大学から出資財産の使用料を取らないのかという問題があり、無償使用させて不用になったら大学が処分して自己収入に入れるということが良いのかきちんと整理する必要があるし、資産格差の解消策として所有資産に応じて使用料を取るという考え方もある。
【委員及び関係者】
国立大学が提供する高度な教育研究サービスは、国家の責任において提供するのだという基本的性格は独立行政法人になっても変わらないと考えられ、そのための財源はやはり国家が責任を持ち、その一方で大学は経営の工夫や剰余財源の確保を極力図るべきと考えるが、この考え方にたつと現に国立大学が管理使用している財産の使用料を払うという考えはいかがなものかと思う。ただ潜在的なコストが発生しているということは言えるので、そういったものは行政サービス実施コスト計算書で明らかにしていくのだと思う。
なお、参考だがフランスの大学は法人格を持っているが、土地・建物の所有権は国にある。これらを大学に渡すべきとの議論が度々出るが、マネジメントの自信が無いという大学側の躊躇と大学に渡すと減価償却を行うことになるが、その費用の手当が困難という国側の理由によりその都度先送りとなっているということがある。
【委員及び関係者】
センターを設置し一括借入させる場合、当該センターがどのような信用力を持つのかということが根本的な問題になると考える。国の内部機関であれば国家信用という形になるのかもしれないが、法人格が別途構成されるのであれば、借入金に見合う担保を資産形成させなければならないと思う。したがってセンターの法人格をどのように考えるかということと資産形成の問題は極めて密接に関係していると考える。
なお、行政サービス実施コスト計算書は、予算編成や資源配分に影響を与えると考えられ、コスト全体が明らかになることは国立大学に大きな変化を与えると言えるのではないか。
【委員及び関係者】
減価償却費を積み立てておけば大学の自己努力も必要になるが施設費は賄えるわけである。何故、そのような制度設計がされていないのか。
【事務局】
現実的な話として運営費交付金から減価償却費相当額を節約することが可能かどうか。また、仮に減価償却費相当額を積み立てるならば、将来国による施設整備費の交付は不要という判断に通じることにもなる。
【委員及び関係者】
減価償却自体は行い、行政サービス実施コスト計算書に計上もするが、独立行政法人の性格上、減価償却費相当額に対応する収益が各期間に存在するものでなく、また、独立行政法人は実施機関であり、その運営責任という観点からも、施設整備は法人の意志の範囲外とされていることから、法人が自ら減価償却費相当額を積み立てるということにはなっていない。
【委員及び関係者】
特に更新時の施設整備費をどのように各大学に配分するか考える場合、既存の建物面積だけで考えるのではなく、建設年次も配分ルールに加味しなければフェアな配分はできない。つまり法人移行時の財産評価、減価償却の問題が少なくとも更新時の施設整備費にきちんと反映されるような制度上の取扱いをすることが、会計上も合理的だし、国立大学の競争という観点からも重要なポイントと考える。
【委員及び関係者】
独立行政法人通則法においては、法人に企画立案機能はなく、実施のみ行うという制度設計になっている。国立大学が法人化に当たり、どこまでの自主・自律性を有するのか、運営の部分のみか、施設整備や企画立案の一部にも及ぶのかということが財務制度に限らず全ての制度設計のポイントになると考える。
【委員及び関係者】
特定の施設整備費がセンターに入り、センターが施設整備の一部を担うというのは国立大学の自主・自律性を考えると疑問であり、直接国立大学に交付するというのが原則的な考え方ではないか。
【委員及び関係者】
地域社会と国立大学法人が協力して一定のプログラムなり事業を実施することは、自主・自律の観点から大いに奨励すべきと考えるが、現在、地方公共団体からの寄附が法律上制限されている。一方、個別法で規定すれば地方公共団体や企業から出資を受けることはでき、その際、出資者に発言権等の何らかの権利を与えることも考えられるが、どこまで与えるのか、自治体から寄附を受ける際も同様と思われるので、寄附制限の撤廃と併せて一度議論してはどうか。
【委員及び関係者】
諸外国に照らして我が国は、高等教育に対する投資が極めて低く、かつ、7割の学生を私立大学が担っているという特殊な状況にあって、国立大学を将来どうするかは非常に難しい問題だが、やはり一定量の若者については、国の将来を担う、あるいは国際的に活躍する人材として、国が責任を持って育成すべきと考える。
【委員及び関係者】
科学技術あるいは教育研究の実があがるような形で国立大学をどのように組織改革していくのかという部分を積極的に提示していくことが重要と考える。そこで国立大学におけるインプットとアウトプットの観点からみると、アウトプットは国際的に見て非常に低いという意見もあり、そこをどう高めていくのかということが、まさに我々が議論している問題なので、ぜひその部分についての前向きのメッセージを出さないと、24兆円規模の次期科学技術基本計画自体が信憑性を疑われかねず、基本的な制度設計をしっかりとしておくことは重要と考える。
【委員及び関係者】
国立大学の独立行政法人化が検討される理由の一つに、国立大学に期待される役目が変わってきている中で、99大学全てがこれからも必要なのかということがあげられるのではないかと思う。借入金残額を将来的に減らす必要があるにもかかわらず、99大学を全て残してその財源を確保することは、借入金を更に増やすこととなる恐れもあり、構造上無理があると考えられ、地域間での連携を積極的に図るなど再編統合を含め、今こそドラスティックな改革が必要と考える。
【委員及び関係者】
内在する問題が異なるため、国立大学の法人化問題と国立大学の再編統合の問題を一つのものとして議論することは難しく、段階をおって検討すべきではないか。この会議は法人化の制度設計を考える場なので、まずはそこをきちんと整理し、各国立大学が法人として運営できるようにした上で、再編統合なり連携の在り方を模索しなければ、現場に無用の混乱を招く恐れがあると考える。
【委員及び関係者】
現在の国立大学数を必ずしも維持する必要が無いという指摘は否定できないが、特に心配なのは、日本の大学が国内で見切りを付けられて、優秀な学生が国外の大学へ流出するのではないかということで、これを防ぐためにも限られた資源で如何に魅力ある大学を形成するかが最も重要なのではないか。
【委員及び関係者】
現在の国立大学の意識としては、99の大学を守ろうということは無いと考える。現に合併を表明している大学も幾つか出ているし、今後学生が集まらない大学も多くなり、いわゆる自然淘汰ということは十分起こり得ると思う。
【委員及び関係者】
センターとは国立学校財務センターのような国の機関なのか、それとも国立大学法人と同様の法人となるのか、性格をはっきりさせる必要がある。
【事務局】
財政融資資金からの借入をセンターが行い、かつ、国立学校特別会計が存続しないという前提にたてば、国、即ち一般会計は同資金からの借入はできないので、センターは例えば独立行政法人という位置づけになるのではないか。
【委員及び関係者】
次期科学技術基本計画における施設整備の可能性は、どの程度と考えられるか。
【委員及び関係者】
国立大学の施設整備が次期科学技術基本計画の重点項目になっていることは追い風になると思うが、自動的にプラスになるかどうかは、これから行われる国の歳出の見直しの際にどのように位置づけられてくるかが重要なポイントと考える。実態論から言うと、国立大学に対する評価が必ずしも高くないという現状において、そこのギャップを如何に埋めるかが重要で、国立大学に対して資金を重点的に投入できるような材料を提示していかなければならない。
【事務局】
前回の科学技術基本計画では、1200万平米の整備必要面積に対して過去5年間で300万平米強が実施された。次期基本計画においては、1100万平米の整備が必要とされているが、計画には5年間で緊急に整備する必要があるものの整備計画を具体に出せとも書かれてあり、文部科学省としては現在それを詰めているところである。
【委員及び関係者】
施設整備に関しては、なかなか進まないので、我々としても相当訴えていく必要がある。
次回は、4月19日(木)に開催することとなった。
(高等教育局大学課)