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今後の国立の教員養成系大学学部の在り方について(報告)

2001/11/22
今後の国立の教員養成系大学学部の在り方について(報告)


平成13年11月22日
高等教育局専門教育課

今後の国立の教員養成系大学学部の在り方について
−国立の教員養成系大学学部の在り方に関する懇談会−


    

-U 今後の教員養成学部の果たすべき役割-

2   大学院の在り方

  (1) 修士課程の在り方

   @ 修士課程で養成すべき能力
教員の資質の向上を図るため、専修免許状を保持した教員の割合を高めていくことが求められている。現職の教員が専修免許状を取得する方法として大きな役割を担うのは大学院の修士課程による学修である。教員養成学部の修士課程においては、現職教員等の学修や研修のニーズに応えるため、一層の組織的・体系的な履修指導の充実が必要である。

修士課程においては、学部段階での内容を更に深め、教員にとって必要な深い知識を学び、各学校で中核的な役割を担いつつ若手教員を指導できる能力や、新たな課題に対して自らその問題の所在を突きとめ、対応策を見い出し、あるいは従来の方法を修正する能力を育成することが求められる。また、特に「学校現場で生じている今日的課題」への取組も期待されている。

   A 教員養成学部の修士課程で授与する学位とその内容
教員養成学部の修士課程では、学部にもまして教員養成学部として独自性のある教育研究に取り組むことが求められる。しかし、その実態をみると、例えば内容が明らかに理学や文学の修士論文と変わらないような論文等をもとに「修士(教育学)」を授与しているという例が見られる。

教員養成学部の大学院では、他の専門学部と同じような内容の学問を追究するのではなく、教員養成の立場からの専門的要素を取り入れた、名実ともに「修士(教育学)」にふさわしい内容の教育研究を展開していくことが求められる。そのためには、教科教育専攻(専修)の場合は、教育に関する研究の副論文を義務付けることも一つの方法である。ただし、その際には、副論文の添付が形式化し、実質が伴わないものにならないよう、運用に十分留意する必要がある。

   B 現職教員の再教育のための体制整備
教員は、学校現場で様々な実践経験を積んでから大学院教育を受けることが効果的であると言われている。現実に他の学部に比べ、社会人(現職教員)の占める割合は格段に高い(平成12年5月1日現在、国公私立の大学の修士課程9.8%、国立の教員養成学部の修士課程29.6%)。

実践的な教育研究を目的とする教員養成学部の修士課程にとって、具体的な問題意識と高い学習意欲を持った現職教員を受け入れることは、大学の教員や学部を卒業してすぐ入学してきた学生が学校現場の現状に触れるよい機会となり、教員養成学部全体の活性化につながる効果もある。各大学院においては、積極的な取組が求められる。

現職教員の再教育の必要性やその拡充の方策については、教育職員養成審議会の第2次答申「修士課程を積極的に活用した教員養成の在り方について」(平成10年10月)において詳しく述べられている。本答申自体は、教員養成を行っている一般学部の大学院をも対象とした提言であるが、教員養成学部は教員養成の専門学部として積極的に現職教員を受け入れるための体制を整備していくことが求められる。

特に、これからは教員が職務に従事しつつ修士課程の教育が受けられるよう、同答申等でも述べられているように、例えば次のような形態の教育指導体制の充実を図っていくことが必要である。
・ 夜間、週末、長期休業期間等を活用した授業の実施
・ 衛星通信、インターネット等を活用した遠隔教育の実施
・ サテライト教室を利用した教育の実施
・ 長期在学コースの設定


また、教育公務員特例法が改正され、平成13年度から「大学院修学休業制度」が導入された。平成13年度現在、この制度を利用して入学してきた現職教員(公立学校)は155名である。地方公共団体の派遣制度に基づく研修定数の増加を図っていくことが困難な状況であることにかんがみ、今後、この制度に積極的に対応する方策として、各大学において教育の質の確保に留意しつつ、1年制コースの導入も検討されるべきである。

現職教員は、学校現場での多くの経験の中から具体的な問題意識を持ち、修士課程においてそれらを踏まえた実践的な教育研究を希望しており、学部を卒業してすぐ入学した学生とは違った指導方法が求められる。現職教員の再教育に当たっては受入れ体制の整備とともに、現職教員のニーズに応じたカリキュラムの開発と指導体制の確立が必要である。

現職教員の再教育の場として修士課程を活用していくためには、地域の教育委員会等との連携協力が不可欠である。教育委員会が大学に対して何を望んでいるか、あるいは大学として何をなし得るかなど、緊密な連携をとって効果的な大学院教育を実施できるような協議の体制を整備していくことが必要である。

現職教員の指導に当たって重要なことは、修士課程の修了をもって指導が終わるのではなく、その後もいつでも大学教員の指導が受けられるよう、様々な形で関係が保たれることである。このようなことは、現在多くの大学院においてなされているが、今後は教員個人のレベルではなく、組織として対応していくことが求められる。それがまた、教員養成学部と学校現場のつながりを深めていくことにもつながると考えられる。

   C 専修免許状の在り方の見直し
現在、中央教育審議会初等中等教育分科会教員養成部会において、専修免許状について、修士課程で学んだ専門分野を適切に表示できるように改めることなどについて検討が行われている。このような動きも踏まえ、教員養成学部の大学院としてふさわしい専門性の確立に努めるべきである。

  (2) 教員養成学部における専門大学院の基本的な考え方

   平成11年度に、大学院設置基準が改正され、高度の専門性を要する職業等に必要な高度の能力を専ら養うことを目的として、特に必要と認められる専攻分野について教育を行う修士課程(専門大学院)を設置することができることとなった。

   専門大学院はその目的にかんがみ、専任教員のうち相当数は専攻分野における実務の経験を有する者とすることや、実践的な教育を行うため専攻分野に応じ事例研究、討論、現地調査その他適切な方法により授業を行うなどの適切な配慮が必要とされている。
専門大学院については、現在、いくつかの大学で教員養成以外の分野において、高度専門職業人として必要とされる資質能力等に応じたコース・カリキュラムや授業方法等を工夫しつつ、その設置が図られている。また、職業資格との関連も視野に入れた新しい形態の大学院や学位の在り方などについて、現在中央教育審議会大学分科会において検討が行われている。

   教員養成学部における専門大学院の在り方については、これらの審議状況や免許制度との関連あるいは学校現場等からの需要の動向等様々な面を勘案しつつ、今後、別途検討していく必要がある。


  (3) 博士課程の在り方

   平成8年度に設置された東京学芸大学及び兵庫教育大学を基幹大学とする連合大学院方式の博士課程は、特に教科専門や教科教育の分野の教員の養成を目的として設置されたものである。これらの分野の後継者を他学部に頼るのではなく、教員養成学部自らが養成し、教員養成学部が独自の専門性を確立していくために、重要な役割を持つものである。

   この博士課程の在り方については、教員養成に深く関わる教育学や教職専門科目担当教員の育成に当たっている非教員養成系の教育学部の博士課程の在り方との関連においても検討されるべきものであるが、「教員養成学部にふさわしい教員の確保」のため、日本教育大学協会等関係者において現状のレビューを行うなど、改善のための取組が必要である。

   なお、この博士課程の修了者の就職状況は必ずしも順調ではない。その理由としては、一般的に大学の教員は博士課程を修了してすぐ採用されるものでもないこと、修了者が出て間もない状態であり、この博士課程で養成した人材の評価が定まっていないこと、教員養成課程の5千人削減等により、大学の教員の採用数が減少する時期と重なったことなどが考えられるほか、その教育研究内容や指導体制等が必ずしも設置の趣旨に沿ったものになっていないのではないかとの指摘もある。今後、修了者の中から教員養成学部の教員として就職する者が増えていくことが望まれるとともに、その需給動向等によっては博士課程の増設についても検討されることが適当である。
また、博士課程の指導体制の強化や特色の発揮のため、必要に応じ参加大学を拡大していくことも考えられる。





    
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(高等教育局専門教育課)

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