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国立の教員養成系大学・学部の在り方に関する懇談会

2001/04/19 議事録

国立の教員養成系大学・学部の在り方に関する懇談会(第9回)議事要旨

国立の教員養成系大学・学部の在り方に関する懇談会(第9回)
議事要旨

1  日時

  平成13年4月19日(木) 13:30〜16:00

2  場所

  文部科学省分館2階「特別会議室」

3  出席者

(委員)

高倉翔[主査]、赤岩英夫、阿部充夫、市川正、大澤健郎、小笠原道雄、岡本靖正、兼重護、川口千代、木岡一明、金藤泰伸、小島宏、椎貝博美、渋川祥子、谷合明雄、中津井泉、渡辺三枝子の各委員

(文部科学省)

工藤高等教育局長、西阪専門教育課長、前川教職員課長、石井教育大学室長 他

4  議事

(1) 開会

(2) 主査から、資料2の第8回議事要旨(案)について、意見があれば後日事務局へ連絡するものとし、調整・確定は主査及び事務局に一任願いたいとの提案がなされ、了承された。また、確定後の議事要旨は、文部科学省ホームページに公開することとなった。

(3) 附属学校の果たすべき役割について

  資料3、4「附属学校の果たすべき役割」について事務局から説明があり、その後以下のような意見交換が行われた。

【委員】

  公立学校では色々な形で教員の加配があって教育条件の改善が進んでいるが、附属学校の場合は必要数ギリギリである。そういう意味では公立学校と比べて教育条件が劣化しているはずであり、そこをどう改善していくかという視点もまとめの中に入れていただきたい。

【委員】

  学部の研究との協力がなかなか進まない背景として、附属学校の先生方は大変忙しく、学部の教員が一緒に研究できるような状況にないと考えていることがある。また、学部の研究への協力ではないが、私どもの附属学校では県の教育センターでの研修に協力することとなっており、そのような試みもなされている。

【委員】

  教員養成学部の卒業生は多くが公立学校に就職していくわけであり、附属学校が役割を果たしていくために、基本的にはできるだけ公立学校に近い状態の学校にしていくことが必要である。そういう意味では学級規模も一律40人とするのではなく、附属学校の自主的な判断によって色々な規模の学級編成ができるような弾力的な運用を認めるという仕組みが必要ではないか。
  また、「大学、学部の教員と附属学校の教員の共同研究にとどまっている」と書かれているが、学部の教員と附属の教員とが本当に問題意識を一致して行っているか疑問を感じている。問題意識の一致があれば、その研究には必ず附属の子どもたちが協力という形で巻き込まれているはずであるが、それはなされていない。このままでは教員同士の共同研究は問題なく実施されている、と誤解される恐れがあるので表現を工夫してほしい。

【委員】

  公立学校に近い条件整備と弾力的な学級編成については賛成である。また、子どもたちを巻き込んだ形での研究が行われるためには、特定の教員が個人的に研究をするのではなく、大学・学部と附属学校が充分吟味して研究計画を立てた上で行われるという仕組みを作っていかなければならない。

【事務局】

  もともと国立の附属学校は、公立学校の標準法に準じて教員を配置してきたが、公立学校では近年の少子化傾向を活用し、本来であれば減らすべき教員を減らさずにいろいろなことに対応できるようにしているため、附属学校の実態と乖離してしまっている。また、公立学校の学級規模の平均は、小学校がおよそ27人、中学校が32人となっている。附属学校の学級規模も公立学校並にすべきとの意見があったが、その場合は子どもたちの質も公立学校並にすべきではないかという問題を避けては通れない。

【委員】

  入学者選抜の基本的な考え方は、附属学校の研究なり教育実習なりが頻繁に行われるため、子どもたちの回復力を考慮して、素質・能力の関係でそれが難しい子どもたちだけを除き、あとは多様な子ども達で編成するような方法をとることとなっているが、現実はエリートが集まり易い入学者選抜となっている。公立学校は学級編成や子どもたちの質に関係なく、教育実習生がくればそのクラスに受け入れているのだから、附属学校でも除くべき対象は必要最小限のところに設定すべきである。

【委員】

  「附属学校は大学、学部の下部組織ではなく」という表現があるが、大学内のいろいろな組織は所詮大学の下部組織ではないか。この表現は誤解されないか。

【事務局】

  下部組織という表現を使わず、学部と附属学校が一体となって運営されるべきという趣旨が生かされる適当な表現を考えてみたい。

【委員】

  「教育実習生を附属学校に預け放しにしている」というところに関連して、実習先に頻繁に足を運んで綿密な指導をしている大学があることも承知しているが、一方ではこのような実態もある。ただ、「預け放し」という表現については何かよい表現があれば改めてほしい。

【委員】

  大学の組織をみると、研究所やセンターの長は学長との会議を持つことが多い。附属学校長も大学の教員なので、会議を持つことはそうむずかしくないはずだが、本学では附属学校長と学長の会議というのはシステム的に存在しない。他大学の状況はどうなっているのか。

【委員】

  本学は単科大学なのでそのような機会は度々ある。それは運営委員会であったり、学校長、副校長との懇談であったりするが年に何度か行っている。また、学内の正式な会議の場で附属学校の問題について検討もしている。

【委員】

  本学では附属の校園長会議があり、そこには学部長も出席するが、学長を交えての会議はない。

【委員】

  本学は総合大学であるが、昨年は学長と附属学校長による懇談会を月に1回実施した。今年から正式な会議とし、月に1度意見交換を行うこととしている。

【委員】

  だいぶ前の話だが、大学の年次計画の中に附属学校についての事柄が一言も書きこまれていなかったため当時の学長に抗議した結果、だんだんしっかりした文章になっていった。目標がきちんと提示されないと自己点検評価といってもやりようがない。そういう意味で、大学、学部が責任をもってその在り方を考えるということを単なる言葉ではなく実行に移さなければならないし、それと同時に大学と附属学校が協力し合って責任体制を全うできるよう、組織やシステムを整備しなければならない。

【委員】

  先日附属中学校で講話を行ったが、生徒達がとても静かに話を聞くこと、そして生徒と同じくらいの数の父兄が来ていたことに驚いた。ここには公立の学校と全く違った生徒がおり、違った形の教育が行われているのではないか、そんな気さえした。

【委員】

  入学者選抜の在り方ということで問題提起されており、これ自体はもちろん大事だと思うが、これは大都会の現象ではないか。例えば本学の附属小学校では応募者が定員ぎりぎりという状況で、その結果資料に例示されたような問題は起きていない。また、現状では学力試験を課さず、ほとんど全員入学という附属学校がかなり増えているのではないか。地方都市では子どもの数が減っており、公立学校も苦労している。附属学校の状況というのは地域差がある。

【委員】

  少子化の進んだところでは、子どもたちのレベルはほとんど公立と変わらないのに、教員配置はままならず、教育条件が劣化している附属学校も多いのではないか。これは附属学校にとって危機的状況といえるのではないか。

【委員】

  国立の附属学校はエリート校化の問題がマスコミ等でも取り上げられ、問題視されているが、特色を出した教育をおこなっている附属学校もたくさんあり、むしろそちらのほうを重点的にクローズアップしていくべきではないか。
  地域の子どもの数はほとんど変わっていないのに、入学者が増えている公立学校がある。それは、公立学校がいろいろ特色を出してきているため、私立へ行っていた子どもが公立へ戻ってきたための増加である。このような競争原理は必要なことであり、公立学校、私立学校、国立の附属学校の教育の特色を入学者側が比較検討し、進学先を自由に選んでいけばよいのではないか。

【委員】

  教育実習の頻度をみると、附属学校は公立学校に比べて比較にならない程多くの実習生を長い期間受け入れており、子どもに対する影響力が大きいという特色がある。入学者選抜については、例えば、ある地区では配慮を要する子どもが入学した場合には介助員がつくことになっているが、附属学校もそのような教育条件の整備を行ったうえであれば、完全抽選制でもよいのではないか。

【委員】

  公立学校での教育実習を経験しておくことが重要であるとのことだが、公立学校ではどこの学校でも受け入れているわけではなく問題のある学校では受け入れる余裕がない。仮に附属学校を縮少・廃止した場合、教育実習の場がなくなってしまう可能性がある。また逆に附属学校で開放制の大学の実習生を受け入れることがあってもいいのではないか。

【委員】

  本学の附属学校では現在1学級平均8〜9名の実習生を引き受けており、十分な実習ができているとはいえない実状にある。少子化に伴っての規模の見直しはあって然るべきだが、その際は教育実習の基本的なあり方を議論し、そのうえで見直しを図っていくべきである。また、公立学校に近い形にするのであれば、学級編成の弾力化や教員の加配など公立並の教育条件が必要である。

【委員】

  非教員養成系大学・学部の附属学校というのは大きくいって2種類に分かれている。1つは筑波、東京、お茶の水、名古屋といった類の大学で、学部のほうに教育学、あるいはそれに類する分野を専門的に研究するファカルティがあり、そのための必要性から附属学校というものが必要となっているもの。もう一つは東工大の工業高校、愛媛大学の農業高校、東京芸大の音楽高校のように教育に関するファカルティが学部に存在しないもの。前者については必要性は説明できるが、後者についてはその必要性が説明できるのだろうか。大学側はこれらの附属学校の必要性を説明できるしっかりとした体制を作らなければならない。

【委員】

  非教員養成系大学の附属学校はそれぞれ歴史的経緯をもって設置されている。いわれていることはいちいちもっともなことであるが、それでは具体的にどうしたらよいかとなると、非常に難しい。

【委員】

  ここで述べられていることは過去に何回も指摘され、実現しなかったことばかりである。今現在もう一度それを指摘することはよいことであるが、仮に今回の指摘を受けても改善できなかった場合のその先のあり方について、例えば附属学校から別の形態に移行するなど何らかの示唆をしてもよいのではないか。

【委員】

  附属学校の学校評議員に関して、地域住民という範囲は公立学校の場合、当該学区ということになるのだろうが、附属学校の場合はどう考えるべきなのか。地域住民に対し、附属学校の学校評議員としてそれなりの役割を果たしてくれることを期待することはいかがなものか。

【委員】

  例えば専門高校の場合は学区という概念がないが、かえってその学校が存在する地域の住民の方々の意見を学校運営に反映させていくことが必要だと考える。附属学校も同様に考えてよいのではないか。

【委員】

  附属学校の目的というものが法令に書かれているが、法令にあるからといって必要なのだという考え方は社会的には通用しない。附属学校の現状や問題点をみると、今までもそうであったように、いずれも改善が極めてむずかしいことばかりである。これでは附属学校の必要性そのものについて誰でも疑問をもつのではないか。

【委員】

  私自身は附属学校に教育実習校としての役割を求めることはもはや無理であろうと考えている。どんなに条件を整備したところで公立の実態とは離れてしまい、実習校としての役割は非常に弱い。だとするならば実習校ではなく、研究開発校として考えていくべきではないか。

【委員】

  附属学校のあり方として実験校としての役割をもっと強めていくということが重要ではないか。教育実習についても実習方法そのものの見直しにより、附属学校の負担を軽減するような方法が模索できるのではないか。

【委員】

  情報公開というものは実際にやってみると大変な部分もあるが、結局は特殊な事柄に関心のある者が、継続反復して公開を求めてくるというケースが多い。つまり、情報公開をしたから何かが改善されたということは一般的な話ではないのかもしれないが、だからといって公開しなくて良いということにはならない。公開したほうがよっぽど話がわかり易いという部分もあり、このようなことは積極的に対応すべきである。

【委員】

  附属学校の場合はむしろ研究の成果等を積極的に発信していくことがより重要なのではないか。

(4) 組織・体制の在り方について

  資料5〜11「組織・体制の在り方」について事務局から説明があり、その後以下のような意見交換が行われた。

【委員】

  現在、中教審において学校種を越えて教員免許制度を総合化、弾力化するという課題についての検討がはじまり、また、教育改革国民会議ではこれからの教員は大学院修士課程修了を基礎資格とすべきとの提言もあった。こういった課題の行方によっては、我々の議論との間に齟齬が生じてくるのではないかという不安がある。

【事務局】

  中教審への諮問の意図は例えば幼小、中高、盲聾養護学校のように学校種・学校段階をこえた連携が必要であるという基本的な認識の上で、連携を深める方策として免許制度の総合化、弾力化が考えられないかということである。また、現在の一種、二種免許状を存続させていくべきかという課題もある。中教審の部会においてこれから審議が進められていくが、本懇談会で最終的なまとめをするまでの間に関連する部分がでてきた場合には、齟齬が生じないよう両者の間で連携してやっていきたいと思う。

【事務局】

 この懇談会でのテーマは質的な話と量的な話であるが、今まで議論いただいた質的な話は中教審の議論がどうであったとしてもおそらく変わらないのではないか。問題は、これから議論していく組織体制の在り方に免許制度の改正がどう絡んでくるのかということだが、免許制度が総合化、弾力化されても、例えば免許の併取を禁ずるような大学の養成制度に関わることにならない限り、大きな軌道修正は生じないのではないか。

【委員】

  昭和47年の教養審の建議にもとづいて新教育大学を設置することになった。当時、これからの教員養成は初等教育と中等教育とを二分して考えていくのが一番適切だろうという考え方があり、設立当初は新教育大学は幼小の免許取得を基本とした仕組みを取っていた。しかし、その後就職への配慮からやむなく中学校の免許状も取得可能とし、初等、中等を分離するという考え方が崩れてしまったという経緯がある。小・中分離については従来からそのような非常に難しい経緯があるということを、念頭においていただきたい。

【委員】

  この懇談会の議論で附属学校を抜本的に改革するような案が出るのではないかと密かに期待をしていたが、あまり変わったものがみられない。例えば附属学校の目的のひとつである教育実習の実施について、今の教育実習でいいのか、これをどうするかということを抜本的に考えていくのだろうと思っていた。これからすすめる組織体制のあり方の議論でもこういう末梢的な議論になるのであれば、懇談会を設けた意味がないのではないか。教育はそう簡単には変えられないということは重々承知しているが、今、大学のあり方、学部のあり方というのは相当な勢いで変わってきているし、そうしないと組織がもう持たなくなってきているのではないか。

【委員】

  組織体制の問題については、教員養成系大学・学部だけで統合や再編を考えるのではなく、他の国立大学や公立大学との関係の中で、日本の高等教育がどう整備、配置されるべきかという発想から考えていくべきである。また教員養成は戦後、教育刷新委員会が指摘したように総合大学の中に専門学部・学科を置いて行うのが最も望ましい仕組みだと考えており、単科大学のあり様の見直しを含めて検討されていくべきではないか。

【委員】

  組織体制のあり方に関していえば、特に新課程についてその目的を改めてみる機会を得たわけだが、目的に沿った教育ができてきたのであろうか。教員養成学部の中で新課程を設置するのであれば、いじめ、不登校、LD児問題など現在の教育課題に応えるようなものになっていなければならないのではないか。新課程を作った理由とそれが今、どの程度実行に移されているのかというところも検討してみる必要があるのではないか。

【委員】

  現在、他の審議会等でも国立大学の在り方に関連する検討が行われている。一応、本懇談会のまとめは本年8月頃となっているが、これからの検討課題も難しいものであり、それまでに方向性を出すのは難しいという感じをもっている。

5  次回の日程等

  次回は、5月17日木曜日13時30分から文部科学省分館2階「特別会議室」で開催することとなった。

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