法学教育の在り方等に関する調査研究協力者会議 (第7回)議事要旨 |
法学教育の在り方等に関する調査研究協力者会議(第7回)議事要旨 1 日時 平成11年10月21日(木) 2 場所 文部省5B会議室 3 出席者 (委員) 池田辰夫、伊藤進、柏木昇、北川俊光、小島武司、小林秀之、椎橋隆幸、芹沢英明、田中成明、田山輝明、永田眞三郎、浜田道代、安永正昭、霞信彦(藤原委員の代理出席)の各委員 (意見発表者等) ニコラス・M・オリー英国カレッジ・オブ・ロー国際部長、ジェンキンズブリティッシュ・カウンシル社会科学部門代表、紙谷雅子学習院大学教授(通訳) (文部省) 合田大学課長、馬場大学改革推進室長補佐 (オブザーバー) 房村法務大臣官房司法法制調査部長、小津法務大臣官房人事課長、太田法務大臣官房司法法制課長、團藤法務大臣官房司法法制調査部付吉村最高裁判所事務総局総務局参事官 4 議事 事務局より配付資料の説明に続き、ニコラス・M・オリーカレッジ・オブ・ロー国際部長より説明があった後、意見交換が行われた。 【オリー国際部長の説明の概要】 英国のバリスターは特別の法廷弁論者であり、基本的に法廷に常駐するか、あるいはそのための準備を行っているという形になっている。ソリシターは、法廷において口頭弁論者として活躍する一部のソリシターを除いて、かなりの数が全く法廷とは無関係に仕事をしている。多くのソリシターは通常交渉的な仕事(経済活動に関する取引、土地・不動産に関する取引、遺言など)に従事している。 まず、ソリシター、バリスターという法曹資格を取得するまでの過程について説明し、同時にソリシターのロー・ソサエティー、バリスターのバー・カウンシルの役割、特にその認定の役割についてお話ししたい。 バリスター、ソリシターになるためには、 ![]() ![]() ![]() イギリスの通常の法曹教育の課程では、学生はまず法学士(通常3年)を取得するが、その内容の中心は、例えば法制度、契約、あるいはヨーロッパ連合法である。このような中核となる法律科目のほか、学生は選択的に自分の興味・関心に応じて必要な科目を履修することができる。この段階ではまさにアカデミックな教育がなされ、学生の中には卒業後法曹にならない者もいるが、法曹を志望する学生はこの段階で、ソリシターになるかバリスターになるかを選択しなければならない。 バリスターを志望する者は、バー・ボケーショナル・コース(1年間の専門課程)で学ぶことになり、その修了試験に合格した後徒弟段階に入る。これは1年コースでバリスターのチェンバー(それぞれのバリスターが個別に、しかし物理的には一緒に開設している事務所)で、実際的な実務を学ぶという形になっている。この1年間は実際には2つに分かれており、最初の6カ月を修了した段階で仮の許可を得ることができ、1年が修了した段階で完全なバリスターとしての活動ができるようになる。少しつけ加えると、バー・カウンシルはこの徒弟段階の最初の6カ月間をバー・ボケーショナル・コースと合体させてはどうかという提案をしている。これはまだ決まっていないが、関係者で議論されている。ソリシター志望者は法学士取得後、1年間のリーガル・プラクティス・コース(法実務課程)に入る。この1年間のコースを終えると法律事務所と契約し、実際には徒弟だが、2年間の訓練を受けることとなる。法学士を取得しなかった者に対しては、共通の法学中心科目を提供する教育を受けるという道がある。 次に、ロー・ソサエティとバー・カウンシルの役割について説明する。ロー・ソサエティはソリシターの、バー・カウンシルはバリスターの事柄を管轄しており、ロー・ソサエティはリーガル・プラクティス・コースについて、そしてバー・カウンシルはバー・ボケーショナル・コースについてそれぞれ責任を有している。また、共通専門職試験(CPE)については共同で責任を有している。 リーガル・プラクティス・コースについては、かつてはロー・ソサエティは中央での共通試験をすべてのソリシター志望者に課していたが、数年前からこのような中央の統一試験は行われなくなっており、現在はそれぞれのコースの教育内容、試験内容等について監督し、有効であるかどうかをチェックするという形になっている。このリーガル・プラクティス・コースの設置を希望する機関はまずロー・ソサエティに申請し、認定を得る。その課程において、施設の視察も含め、提供されているコースが予め定められているガイドラインその他の基準に適合しているかどうかかなり徹底した調査を行う。この調査は、カリキュラムや教授方法、評価手続、学生の福祉、施設などすべてが対象となっており、一旦認定を受けても、常にロー・ソサエティによる監察を受けることとなっている。これは定期的に行われており、さらに、その機関とは無関係な外部審査員を任命し、コースの状況、特に評価段階についてどのようになされているのかということについて調査することとなっている。また、その機関自身もロー・ソサエティに対する報告義務がある。 1993年以降は新しい種類のコースなどを導入したが、この変化が教授方法や評価に決定的な変化をもたらし、特に技能、スキルに関する新しい教授方法が導入された。新しく変わったことについては、様々な問題や疑問もあり議論はまだ続いているが、個人的な見解としては、とてもよかったのではないかと思っている。 【質疑応答】(意見発表者:□、委員:○) ○ イギリスの法曹の特徴としてバリスターとソリシターの二元制があり、最近の動向としては、バリスターの法廷弁論権の独占をある程度制限するとともに、ソリシターがある程度口頭弁論などに参加するようになってきているが、将来的に、そのバリスターとソリシターの二元制が維持される可能性が高いのか、あるいはやはりバリスターの法廷弁論権の独占に対する批判がサッチャー政権以来強く、さらに制限する方向に向かう可能性があるのかという点について教えていただきたい。 □ バリスターの法廷弁論権の独占が徐々に崩れており、サッチャー元首相だけではなく、ブレア首相も専門職の独占については反対している。よって、いずれはソリシターもすべての裁判所で法廷弁論権を獲得することになるのではないかと思う。現在でも、わずかではあるがソリシターがかなりの程度弁論権を有しているがそれが広がるのではないだろうか。しかし、だからといってバリスターが必要なくなるということではない。どのような司法制度においても法廷弁論の専門家は必要であり、バリスターはまさにそういった弁論の専門家としての機能を果たしている。 ○ イギリスのプロフェッショナルの二元制は、形では相当オーバーラップしても、実際の専門領域としては存続し続けるであろうという意味であったと思うが、日本における法曹一元化との関係で、イギリスのバリスター制度の存在が重要な要素だと考えている方もいる。イギリスにおいては、そのバリスターの存在が法曹一元とどの程度密接に関係があるのか。また、法曹一元化のメリットについてお話をいただきたい。 □ 裁判官の任用制度はキャリア制度をとっている国や実務家から裁判官が選出される国など様々であり大変興味深い。必ずしも日本のことではないが、裁判官のキャリアシステムを採用している国では、ずっと裁判官をやっている者には実務家のことがわかるわけがないといった反応があったりするなど実務家が裁判官に対してあまり敬意を払っていないように思われる。逆に、英国のようなシステムでは、実務家と裁判官の間に大きな信頼関係はあるが、一般的には必ずしも良いこととして捉えられているわけではない。法律家が象牙の塔に閉じこもり、裁判官が自分たちの運命を決めているにも関わらず、自分たちのことをわかっていない、理解していないという反応がある。 多分皆さんの関心はバリスターが減少していくことと、主として上位裁判所においてはバリスターから裁判官が選出されているということとの関係にあると思われるが、事実として上位裁判所の裁判官のほとんどはバリスターから選ばれている。私の記憶では、現在、日本の地裁に該当する一般管轄権を持った裁判所では、ソリシター出身の裁判官は1人しかいない。 先ほどバリスターの役割は今後も残ると申し上げたが、その中には、バリスターに求められる資質が裁判官に求められる資質に重なる部分が多いことから、裁判官の供給源として果たす役割も含まれていると思う。しかしながら、今後さらにソリシターが上位裁判所の法廷弁論権を得て、法廷における経験を積むことによって、裁判官供給源として認められるようにもなると思う。 ○ 法曹志望者は、バリスターのコースとソリシターのコースを大学卒業時に選択することとなるが、バリスターのコースを選択する動機として、例えば、将来判事になることを志望するからということが動機のひとつになることがありうるのか伺いたい。 □ 一般的には裁判官になりたいと思ってバリスターを選ぶというのではなく、話し好きである、人を説得するのが好きである、オープンに話をしたい、聴衆に話をしたい、外向的であるといった視点から選択しているということが重要な要素なのではないか。もちろん、ロンドンの法曹院というかインスタンスコートでのバリスターであることの格好よさというものもやはり魅力の1つだと思われる。 ○ 検事はどのような教育を受け、どういう経歴を持った者がなるのか。 □ 特別な分け方はなく、同じシステムで同じ教育を受けている。伝統的にバリスターはある週は訴追側の依頼を受け、次の週には被告人側の依頼を受けることができるといったことがひとつの誇りになっており、同じ人が役割を交換することができるということである。この背景にある考え方は、常に同じ役割、つまり訴追側の弁護士であるということには危険が伴うという考え方である。つまり、勝ちたいということだけが優先し、正義のためにはならないということも起こりうるため、様々な立場をとることによって、より広いバランスのとれた観点から物事を見ることをできるようにしているのである。 もちろん、これを変えるべきであるという議論もあり、かなり専門化した訴追側の法律家も誕生していることも事実だが、まだそんなに多くはない。 ○ 日本の制度との関係で考えるとき、いわゆる教職の専門家がこのシステムの中でどのように育って来るのかというのをお伺いしたい。 □ どの段階の法学教育を念頭に置くかということによってかなり異なると思われる。大学の法学教育を考える場合、そこで教鞭をとっている教授陣は他の分野の教授陣と同様アカデミックな側面が非常に重視されている。研究成果の出版が非常に重要視されており、訓練、養成といった意識は少ない。多くの人たちは大変優秀だが、正式な法律実務に就いている、あるいは、就いた経験がある者は少なく、教授方法やプレゼンテーションに関する訓練もほとんど受けてないということも普通である。 その次の専門法曹教育の段階の教育では、ほぼ間違いなく実務経験のある教員による教育が行われており、それが非常に重要視されている。これはバー・ボケーショナル・コース、リーガル・プラクティス・コースいずれについても同様である。リーガル・プラクティス・コースの教員についてロー・ソサエティが要求している要件は、中心的な科目について十分な経験を有しており、かつフルタイムの資格による最近の実務経験のある者ということである。そして教員に対しては、教育方法の変化等も踏まえつつ、継続的に訓練、教育がなされることとなっているが、実際にスタッフにそのような訓練を受けるよう説得することは困難である。特に長い経験がある者ほど受けたがらない傾向があるが、実際にはそういう教員こそもっとも訓練を必要としている。しかし、今では全員がそのような訓練を受けることは当然の規範となっており、内部の訓練だけではなく、外部の者による訓練も当然のものとして受けるようになっている。 共通専門職試験に関しては、少なくとも、教員と同じレベルの候補者の中から選んでおり、非常に高い学問的な背景を要求している。 ○ 大学を設置している機関あるいは母体とバー・ボケーショナル・コースやリーガル・プラクティス・コースを設置している機関は完全に分離されているのか。また、先ほど大学の教員と実務教育の教員は全然別だという印象で伺ったが、双方でともに教えるということがあるのかどうかということをお伺いしたい。 □ 明らかに大学と専門法曹教育段階の設立根拠は違う。大学の設立は設置認可に基づいているが、専門法曹教育に関しては、それぞれの法曹団体、つまりバー・カウンシルロー・ソサエティがそれぞれ自律した団体としてその権限のもとにコースを提供しており、教育に関してはまさに自立した団体の権限として行われている。 ○ 大学が、例えば同じ敷地の中にバー・ボケーショナル・コースを認可を得て設置あるいは併設していることはないか。 □ 大学がその一部として専門法曹教育を運営することはあり得る。実際、幾つかの大学はそのような選択をしている。このようなコースを提供しているのは、かつて、ポリテクと言われていた高等教育機関が大半である。それは恐らくかつてポリテクが、大学と比較して実際的な教育を志向していたということに強く由来すると思われる。ほとんどの場合、別々なコースとして提供されているが、例外としてノーサンブリア大学がある。ここでは、大学の通常の法学部の課程とその後1年間の法曹教育を一緒に行っているが、他の大学ではそのようなシステムをとっていない。おそらく学生の費用負担の問題が大きいのではないかと思われる。英国の大学では基本的に3年の大学在学期間中は特定の例外を除きほとんどの学生が奨学金で学費をカバーしている。しかし、最後の1年間の法曹専門教育の段階は政府が資金を出すものではないと考えられており、その取扱いの問題が非常に大きな混乱をもたらしたと言われている。他の大学はそのような混乱を避けたため、ノーサンブリア以外では4年制課程は存在していない。 もう1つは、大学はアカデミックな教育を行う機関であり、職業教育を行うべきではないと広く考えられていることである。現在のところ18大学においてこのようなコースが提供されており、その中で最大のものはロー・ソサエティに直属するカレッジ・オブ・ローである。 □ 一般的な教育の段階でちょっと補足させていただく。4〜5年前まで大学の授業料は無料であり、その上で学生は奨学金を受給することができたが、現在では、そのような生活維持を目的とする奨学金は全廃され、それに代わって学生ローン制度が導入された。 また、授業料に関しても、もちろん実費をカバーするわけではないが、1,000ポンド(約20万円)程度は支払わなければならなくなっている。 それぞれの教育提供機関がそれぞれ自由に授業料を設定するということが認められており、カレッジ・オブ・ローの授業料が通常は基準額とされている。カレッジ・オブ・ローの授業料は相当な額になるが、非営利事業であっても政府からの援助を受けることができないため、いわば実費を授業料として徴収しているという状態である。 次の徒弟制度段階では、かつては徒弟はお金を払ってソリシター、バリスターの事務所に置いてもらうことになっていたが、現在では少なくとも訓練中のソリシターについてはある程度の給与を受けている。また、一部の非常に大きな法律事務所は優秀な学生に対して奨学金を支給することによって事実上授業料を払っている。 ○ 中央統一試験の廃止はよいことだったと評価していたが、何故よいのか、どうして評価されるのかということを教えていただきたい。 □ 中央統一試験を廃止した理由はまさに費用の問題であり、ロー・ソサエティーは非常に多額の資金を費やして試験を作成、実行、評価していたが、これがかなり負担になっていたと思われる。 何故それが良いことかというと、教員相互間の競争が生じ、様々な新しい改革・改善がなされたという意味で非常によかったと考えている。以前は試験があり、教員と生徒の関係は、学生がその試験に合格するよう援助しているというものであったが、今も確かに若干そういう側面も残るものの、うまくいかなければ教員に直接的な形で跳ね返ってくることとなり、それが教員に質の高い教育の実施を要求している。 ○ 教育内容であるが、具体的に例えば、税法、知的所有権、国際的なジョイント・ベンチャーに関するような法というのはどこで学ぶことができるのか、あるいは全く学ぶことなくバリスター、ソリシターになり得るのか。 □ 大学において税法、知的財産権法は教えられているが必修ではない。また、ソリシター養成課程のリーガル・プラクティス・コースでは税法が必修になっている。ジョイント・ベンチャーをマージャー・アンド・アクイジションと理解するならば選択できる。つまり、そのような知識を得たいと思えばチャンスはあるということである。どのような実務家になることを考えているのかによって選択科目はかなり異なってくるものである。例えばロンドンの大きな法律事務所に入所し、会社経済法をするつもりであれば当然そういう選択をするだろうし、普通の一般的な町の弁護士になるのであれば家族法などを中心に選択するだろう。 ○ 知的財産権法についてはほとんどのバリスター、ソリシターは基礎的な知識を持っているのか。 □ 知的財産権法について、一般的に常識以上のことを全員が知っているということは期待できない。専門にしていたり、大学や次の段階で学んでいれば知っているかもしれないが、その他の者にとっては常識程度にしか知らないと思われる。もちろん人気科目であり、選択する者は非常に多いが。 ○ 実務教育の段階で基本的な科目は必須的なものとして位置づけられているとともに、相当多くの選択科目が置かれている。その教育の中で学生たちは基本的なスキルを身につけると同時に、将来の自己の専門分野を念頭においた1つ2つの領域について専門家として出発できる基本的な能力を身につけると考えてよいか。この教育が2つの目的に相当程度有用に働いていると評価できるのだろうか。 □ どのような科目を選択したかということは、例えば自分がこれから入る法律事務所に対して、当該分野について意欲・関心があるということを示すにすぎない。何を学んでいるのかと言えば、いわば法と手続について学んでいるのであり、ある種のスキル、技能を持てるような教育を受けているということである。これから法律家としての実地訓練を始める能力がようやくできたというのがこの段階であり、専門家であるというにはまだ早いと思われる。 このシステムをつくったときに様々な選択が可能になるように配慮したが、実際には特にビジネス関係の法律事務所ではそういうことを余り積極的に評価していない。彼らが必要とする人材は、何か特別この分野をしたい、この分野しかしたくない者ではなく、かなりしっかりとした知識を身に付け、幅広く対応できるような人材であり、特別専門分化したような訓練というものは余り評価されていないように思われる。 ○ バー・ボケーショナル・コースやリーガル・プラクティス・コースで教える側からすると大学のアカデミックな法学教育にどの程度のことを期待しているのか、あるいは全く期待していないのか。期待しているとして、その期待が満たされていると判断しているのか。 □ リーガルリサーチの分野、つまり必要な法律情報をどのように探してくるかという点について専門法曹教育機関は法律事務所から余りにもやり方を知らないという批判を受けている。我々は大学こそがそのようなリサーチ方法を教えるべきであると考えているが、同時に、実務教育の段階でもそのような訓練ができるようカリキュラム改革を実施している。もうひとつは、学ぶことの楽しさを教え、意欲・関心のある人材を育成していただきたいということである。 ○ 法学部以外の卒業者にも法律専門職への道が特別に開かれており、それが統計的には25%軽度になると伺っているが、それはどのように評価しているか。また、将来は積極的に拡大していくべきであると考えているのか。 □ 法学士以外の者の受入れについては積極的に捉えている。彼らはより幅広い知識を持っている上、年齢の分法律家になることについてよく考えて選択している者が多く、目的意識がはっきりしている。さらに、経営的な側面から見ると1年間だけではなく、2年間教育を受けてくれるありがたい存在でもある。もちろん大変評判がいいということがその基礎にあるのだが。 ○ 最近ではローファームの合併が続いており、例えばアメリカのローファームとイギリスのローファームの合併も出ている。国際的な流れの中で、アメリカのロースクールを修了すれば大学院レベルの学位を取得することとなるが、イギリスのシステムは専門職訓練であるため、学位はない。学位で比較することが適切かどうかは別としても、そのような意味で国際的な問題として学位の授与がなくても良いか。形式的な話ではあるが、そのような国際競争のレベルでこのシステムが続いていくのかお伺いしたい。 □ 大学院レベルの学位の授与がないことによって、イギリスの法曹が不利益を被っていると思ったことはない。1つの言い方として、アメリカでは大学院レベルの学位かもしれないが、それは学問的なものであり、イギリスにおける職業訓練とは異なるという言い方もできるかもしれない。それからもうひとつ付言したいのは、いわゆる専門職業訓練レベルと言っているが、それは教え方が非常に実際的・実務的であり、またいわゆる実務技能、スキルを修得するということを重視しているということであり、教えている内容はまさに学問的な法であり、中身として学問的ではないという意味ではない。 ○ アプレンティスシップというものがイギリスの法曹養成で非常に特徴があると思うが、その評価はどのようなものか。また、法曹倫理の問題で、そのようなアプレンティスシップの中で実務に即した形で法曹倫理教育などもなされるのかどうか、お伺いしたい。 □ 最低限の期間法律事務所で働くという経験を経ずに、実務に就くのは非常に危険であり、徒弟制度によりそのような経験を保障することは有意義であると思われる。逆に、アメリカでは試験さえ合格すれば法律家になることができ、それを市場が判断するというが、一番最初のクライアントはどうなるのか。この最初の人を保護するためには徒弟制度が非常に重要だと思われる。また、大学においても職業倫理は教えられているが、ボケーショナルな段階ではより重視され、必修とされている。 5 その他 座長より、通訳をお願いした紙谷雅子学習院大学教授、モリス・ジェンキンスブリティッシュ・カウンシル社会科学部門代表の紹介があった。 6 次回日程 次回日程について、事務局より後日連絡する旨報告があった。 |