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  資料2   民事系のカリキュラム・モデル案
   
1   民事系科目の必修総単位数
   
   法律基本科目のうち、民事系科目(民法・商法・民事訴訟法)の必修総単位数は32単位とする。
   
2   民事系カリキュラムの考え方
   
   ・    民事系科目の必修総単位数を各科目にどのように配分するか、どの科目をどの学年に配当するか、民事系科目の編成をどのように行うか等については、各法科大学院がその教育方針にしたがって判断すべきである。
   ・    民事系科目に限らず、必修科目の履修の仕方については種々の考え方があり、とくに、法科大学院の1年次においては基礎的な法分野に関する基本的な体系的理解を主眼とし、2年次以降に応用的・先端的な問題や法分野を学ぶべきであるとする考え方と、このような、基礎と応用を区別するカリキュラムでは1年次における履修が受動的で知識偏重型となる危険が大きいとして、この区別を排して、1年次から相当程度深化した内容を理解させ、問題解決能力、事案分析能力を修得させるべきであるとする考え方が対立するが、第三者評価基準や設置基準を定めるにあたっては、いずれかの立場を是とするのではなく、各法科大学院が、それぞれの考え方と教育方針にしたがい、これらの基準の枠内で、創造的・批判的な法的思考力・分析力を備えた法曹を養成するにふさわしいと考えるカリキュラムを開発することが相当と考えられる。
   
3   民事系カリキュラム・モデルの一例
   
   2で述べた考え方の相違にしたがい、民事系カリキュラム・モデルも多様でありうるが、その一例として、以下のようなカリキュラム・モデルを考えることができる。
   このモデルは、1年次における基礎科目と2年次における応用科目とを段階的に区別する考え方にしたがったものであるが、このような区別を否定する考え方によれば、これとは大きく異なったカリキュラム・モデルとなりうることは、いうまでもない。
   
   
(1)民事系科目の単位配分
   
     民事系科目の必修総単位数32単位の内訳は、民法12単位、商法4単位、民事訴訟法4単位、民事法総合12単位とする。
     民事法総合科目をどのような編成とするかについては種々の考え方がありうる。民法を主たる対象とするもの、商法を主たる対象とするもの、民事訴訟法を主たる対象とするものというように分野を原則として区別することも可能であるが、民法・商法を一体的に取り扱う科目、実体法と手続法を統合する科目などの編成も考えられる。また、単位数の配分についても、2単位ごとに区分する、4単位で行うなど、多様でありうるが、本モデル案では、6つの2単位科目を想定している。
   
(2)1年次の科目
   
   ・    1年次においては、基本的な体系的理解を主眼とした法律基本科目を以下のように履修する。
   
     前期   民法8単位
     後期   民法4単位、商法4単位、民事訴訟法4単位
   
   ・    これらの科目における基本的な体系的理解は、各法分野全体に関わるような、あるいは各法分野を超えて相互に関連するような応用的・発展的な問題を理解するために不可欠であるのみならず、法律基本科目以外の展開科目・先端科目を履修する場合にも、その前提として必須のものである。
   
   ・    1年次の民事系科目においても、単に法的知識の受動的な修得が目的とされるのではなく、創造的・批判的な法的思考能力・分析能力の育成がめざされるべきであることは当然であり、少人数教育の利点を活かした教育方法を工夫することが肝要である。
   
   ・    民法の科目をどのように編成するかについては、これまで一般的であった、民法典の編別を科目編成にも反映させるべきであるとする考え方、対象となる法律関係の相違に着目して、たとえば、契約法、不法行為法(ないし法定債権関係法)、物権法、家族法といった編成をとるべきであるとする考え方など、種々の考え方がありうる。
     
     このモデル例では、前期の民法8単位で、契約法を中心とした取引法を、後期の4単位で、比較的独立性の高い分野と考えられる不法行為法を中心とした法定債権関係法(2単位)と家族法(2単位)を学修することが想定されている。また、従来、物権法は独立した科目とされることが通例であったが、その主要部分である物権変動の問題は、契約による権利変動の問題として、また、担保物権の問題は、人的担保とあわせて債権の履行確保の問題として位置付けられ、いずれも前期8単位の民法科目で取り上げられることになる。
     前期に契約法の基礎を修得することにより、後期配当の商法や民事訴訟法の理解がより容易になると期待される。
   
   ・    後期配当の商法(4単位)では主として会社法を、民事訴訟法(4単位)では主として判決手続を学修する。
   
(3)2年次の科目
   
   ・    2年次においては、1年次における法律基本科目の履修を前提として(法学既修者については、これにおおむね対応する法的思考能力・分析能力が備わっていることを前提として)、応用的・発展的な問題を取り扱い、創造的・批判的な法的思考力・分析能力をより高度なものとすることが主眼となる。
   
     前期   民事法総合(2単位)   ×   4
     後期   民事法総合(2単位)   ×   2
   
   ・    2年次の民事系科目では、各法分野を超えた制度相互間の関係を理解することが必要となる。たとえば、上掲の民事法総合科目を民法総合、商法総合、民事訴訟法総合というように、分野を区別した名称に変更したとしても、他分野に属する問題もその対象に含まれうることは当然である。
   




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