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(3)教育方法

   意見書は、法科大学院の教育方法について、少人数教育を基本とし、双方向的・多方向的で密度の濃いものとし、厳格な成績評価及び修了認定の実効性を担保する仕組みを具体的に講じるべきであるとし、授業内容・方法や教材の選定・策定等における実務家教員との共同作業による連携協力、少人数の演習方式、調査・レポート作成・口頭報告、教育補助教員による個別的学習指導等の活用などを指摘している。
   これらの提言内容のうち、基準レベルで規定する必要のある事項について具体的な内容を確定しなければならないが、基準化が難しい内容もある。基準化の全体的な構造をはじめ、厳格な成績評価や実務基礎教育の方法の具体的な在り方等は、重要事項ではあるが、今後の課題として残し、カリキュラム全体の編成や教員配置の前提として不可欠な事項について、検討を先行させた。これまでの検討結果の主な内容は、以下のようなものである。
   法科大学院の教育方法については、意見書の提言に沿って充実した教育を行うためには、従来の学部法学教育において常態化しているような大教室での講義中心の授業方法の転換が不可欠の前提である。したがって、法科大学院のカリキュラムの中心となる法律基本科目群の授業は、50〜60名を標準とするのが適切であるが、入学者選抜等との関連である程度の幅をもたせざるを得ないであろう。
   実務基礎科目群の授業方法は、各科目の性質に応じて、学生の積極的参加を促進し十分な教育効果を収めうる方式で行うことを義務づける必要があり、その多くについては、法律基本科目群の授業規模よりも少人数で行わないと、十分な教育効果が期待できないと考えられる。また、実務家教員の任用形態、学生のクリニック、エクスターンシップへの関与の制度的手当等が現状のままでは、実施が極めて困難な教育内容も多い。したがって、各科目の教員対学生比率や実務家教員の関与形態等については、人的・制度的条件の整備状況を見定めながら、現実的に可能な方式を検討する必要がある。
   クリニックやエクスターンシップを実施する場合は、法科大学院の外で行われたり、通常の授業時間や学期の期間外に行われたりすることを認めるべきであるが、単位認定要件等を、その特殊性を考慮して、ABA基準等を参考に別途規定する必要がある。
   学生の文書作成・討議能力を養うために、修了認定に必要な所定の単位のなかに、小論文(レポート)作成とそれについての討議を伴う授業1科目(2〜4単位)を含むことを義務づけることが検討に値する。具体的には、従来の大学院修士課程で提出を要求されている論文やそれに代わるリサーチペーパーとは異なり、開講されているいずれかの演習方式の授業に出席し、一定のテーマについて小論文を作成して、それについて討議することに対して、授業に対する単位に付加して2単位程度を与えるという制度が考えられる。
   法科大学院の教育水準の維持・向上にとっては、教材の作成や教育方法の改革が極めて重要であることに鑑み、個々の法科大学院だけでなく、法科大学院全体について、充実した教育を可能とする教材の作成や教育方法の開発等の絶えざる改善を促進・支援する何らかの方策が講じられる必要がある。

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