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1   第三者評価基準と設置基準についての基本的な考え方

   司法制度改革審議会意見書(以下「意見書」という。)は、新たに設置される法科大学院について、その法曹養成の中核的機関としての水準の維持・向上をはかるために、第三者評価(適格認定)を継続的に実施することとし、このような第三者評価の基準が、法科大学院の大学院としての設置認可に関する基準と、それぞれ独立した意義と機能を有しつつも、相互に有機的な連携を確保して、法科大学院の入学者選抜、教育水準、成績評価・修了認定等に関する全国共通の統一的な基準となることを提言している。法科大学院の教育内容・方法等に関する第三者評価基準と設置基準は、法科大学院が法曹養成制度の中核的機関としての使命を適正に果たし、その水準の維持・向上をはかる上で極めて重要な位置を占めている。また、これらの基準の策定と運用は、各法科大学院関係者の自発的創意を基本とし、法科大学院の独自性・多様性を促進するようなものでなければならない。
   法科大学院の第三者評価基準は、基本的にアメリカ法曹協会(ABA)ロー・スクール認定基準の仕組みのように、「基準」と「指針」の二段階構成とするのが適切である。
   「基準」は、意見書における法科大学院の理念・目的や基本的な制度設計に関する提言内容を基礎に、ABA基準等を参考に策定することとし、原則として抽象的な規定にとどめるべきであろう。また、「指針」は、ABA基準の「解釈」に当たるものであり、具体的な数値等、基準の具体的運用に関わる内容をかなり詳しく定め、適宜改訂することを予定すべきであろう。したがって、第三者評価基準の実質的内容は、指針として規定されるものが中心となると考えられる。
   他方、法科大学院の設置基準は、大学院設置に関する各種基準の現行の内容、および、大綱化という最近の策定方針との整合性を確保しつつ、専門大学院に関する基準をも参考に規定されることになる。その際、設置基準と第三者評価基準の実質的内容が重なり合う事項については、規定内容が矛盾せず、相互補完的になるように配慮されなければならないことは言うまでもない。
   以上のような第三者評価基準と設置基準に関する考え方に基づいて、本研究会における調査研究は、第三者評価基準の指針として規定されるべき事項に焦点を合わせて行うことになるが、法科大学院の教育内容・方法の具体的な在り方の検討に必要な限りにおいて、設置基準に関する事項も適宜取り上げることにする。
   以下においては、基準という言葉は、基本的に、第三者評価の基準と指針および設置基準を含めた、広い意味で用いている。

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