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まえがき
 
   平成13年6月に内閣に提出された司法制度改革審議会意見書(以下「意見書」という。)は、わが国司法の人的基盤の充実をはかるために、法学教育、司法試験、司法修習を有機的に連携させた「プロセス」としての法曹養成制度を整備して、法科大学院をこのような法曹養成制度の中核的機関として新たに設置し、平成16年4月から学生受入れ開始をめざすことを提言した。この提言をふまえて、各方面において法科大学院設置に向けた準備が進められてきているが、各法科大学院の具体的な設置準備を円滑に進めるためには、法科大学院の第三者評価(適格認定)と設置認可の基準ができるだけ早期に策定され、その内容が公表されることが不可欠である。
   本研究会は、意見書で示された法科大学院の目的・理念や基本的な制度設計を具体化し、多様な法科大学院の設置準備が円滑に推進されるための共通基盤の形成に寄与することをめざして、法科大学院の教育内容・方法等に関する全国共通の統一的基準の在り方について、これまでに公表された関係各方面の意見・構想等を参考にしつつ、第三者評価基準および設置基準を視野に入れて調査研究している。
   法科大学院の教育内容・方法等については、司法制度改革審議会からの協力依頼を受けて文部省(当時)に設けられた「法科大学院(仮称)構想に関する検討会議」や、「法科大学院における教育内容・方法に関する研究会」、法科大学院を設置しようとする各大学、弁護士会等が、それぞれモデル案、カリキュラム案等を提示し、それらをめぐって活発な議論が展開されてきている。研究会メンバーも、それぞれこれらの案の策定や議論に関与してきたが、所属大学内外で各自が関与した案を参考にしつつも、それらの立場にとらわれずに、各方面におけるその後の検討状況の進展をふまえ、全国共通の統一的な第三者評価基準ないし設置基準の実質的内容として適切と考えられる案を、大学で法学の教育研究に携わる個人の立場で調査研究している。
   調査研究にあたっては、意見書の趣旨を実現するにふさわしい法科大学院の教育内容・方法等の実質的内容に関する基準の検討を主眼としており、このような基準が最終的に第三者評価基準と設置基準とにどのように振り分けられ、具体的にどのような形式で規定されることになるかは、別途技術的に検討されるべき事柄であり、本研究会では立ち入らない。また、第三者評価基準ないし設置基準に盛り込まれるべき事項を網羅的に検討することをめざすものではなく、主として大学で法学の教育研究に携わる立場からみて、法科大学院の設置準備の前提として、法科大学院の教育内容・方法およびそれらと関連する事項のうち、第三者評価基準ないし設置基準としてできるだけ早期に公表される必要のある基本的事項の調査研究を先行させてきた。そのため、法科大学院において充実した教育を行う上で重要な事項であるにもかかわらず、今後の検討にゆだねられているものも少なくない。
   本研究会がこれまでの検討結果を整理した中間まとめを公表するのは、法科大学院の教育内容・方法等の在り方について関係各方面が合意を形成するために意見交換をする際の一つの資料を提供し、各方面の意見を参考にしつつ、さらに今後の調査研究を進めるためである。
   本研究会の調査研究を進める過程では、法科大学院の教育内容・方法等に関してこれまでに公表された数多くの意見・構想等を参照させていただき、また、平成13年11月12日の中央教育審議会大学分科会法科大学院部会(第5回)と同月17日の財団法人日本法律家協会・社団法人商事法務研究会共催シンポジウム「法科大学院のカリキュラム・教育方法を考える―第三者評価基準の観点から」において研究会の検討結果の中間まとめ骨子(案)を報告する機会を与えられた。法科大学院の教育内容・方法等に関してこれまでに公表された各方面の案やそれらをめぐる議論の蓄積がなければ、短期間にこのような中間まとめを公表することはおそらく不可能であっただろう。法科大学院設置に向けてそれぞれの立場からこれまでの議論の進展に寄与された多くの方々に心から敬意と謝意を表したい。
   なお、中間まとめ骨子(案)を報告した上記二つの機会における関係者との意見交換をふまえ、その後、法科大学院の修了要件としての必要修得単位数について再検討し、関連事項についての見解を修正したことをとくに付言しておきたい。
   最後に、本調査研究にご協力いただいた関係者各位に深く感謝申し上げるとともに、今後も引き続きご協力くださることをお願い申し上げたい。
   
      平成14年1月22日  
   
 
法科大学院の教育内容・方法等に関する研究会
   共同研究者
  (代表者) 田中成明 (京都大学大学院法学研究科)
    磯村   保 (神戸大学大学院法学研究科)
    井田   良 (慶應義塾大学法学部)
    加藤哲夫(早稲田大学法学部)
    酒巻   匡 (上智大学法学部)
    長谷部恭男(東京大学大学院法学政治学研究科)
  (幹   事) 笠井正俊 (京都大学大学院法学研究科)
   

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