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1−2新司法試験との関係
   
       以上のようなカリキュラムの考え方が法科大学院の実際の教育において十分生かされるかどうかは、新しい司法試験がどのように行われるかによって左右されるところが大きいと考えられる。新しい司法試験は、学生が各法科大学院のそれぞれのカリキュラムの趣旨に即した科目履修を通じて将来の法曹としての能力を身につけていくという本来のあり方を阻害するものであってはならず、むしろ、そのような法科大学院の本来のあり方をバックアップするような形のものとすることが必要である。
     そのためには、たとえば、法科大学院のカリキュラムに即した学生の科目履修の結果がバランスよく評価されるような試験であること、難易度としては、法科大学院のカリキュラムをきちんと履修した者であればおおむね合格できる程度のものであること(もちろん、各法科大学院について適切な評価にもとづく適格認定がされ、また、各法科大学院において厳格な成績評価や修了認定がされることが前提である)、ある程度の基本的な知識のチェックは必要であるにせよ、重点としてはむしろ、与えられた問題状況のなかから法的なポイントを抽出し、その解決のための方向や手順を適切に思い浮かべることのできる能力ないし技能についてテストするものであること、などが求められよう。その反面、法科大学院の教育の標準的水準を超えて広い範囲の学習を要求するような出題、暗記知識のみを問うものや細部の知識にこだわるもの、などは避けるべきである。
     試験科目に関しては、一方で、それを多くしすぎると受験者の負担感(したがってまた、法科大学院の教育への負荷)を増すこととなり、他方、それを絞りすぎると法科大学院における学生の科目履修に歪みを与えることともなりうるので、いずれにせよ慎重な考慮を要する。
     なお、試験結果(得点・順位等)の取扱いについては、それが受験者間の点取り競争を招来することのないように配慮が必要である。
     以上の諸点をふまえつつ、新司法試験の適切なあり方を検討する必要がある。法科大学院の公法系教育に対応する部分に関して言えば、憲法および行政法から出題され、実務法曹に求められる問題分析・問題処理の能力およびその前提としての実定法の基本的な理解の程度を見る、というようなものであることが望まれる。
   
   
   
   
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