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4   刑事法基礎科目

 

   以下では、「基礎科目」としての「刑法」及び「刑事訴訟法」のカリキュラムと授業モデル案を示す。

【刑事法I(刑法)】(6単位)

(1)授業の目標と内容

   基礎科目としての刑法は、従来の刑法総論と刑法各論を学ばせることを核としながらも、従来の法学部における刑法の講義とは異なり、まず第1に、犯罪学や刑事政策の基礎的な知識も与えることを狙いとしており(たとえば、[2]〜[6]がそのようなユニットとして想定されている)、また第2に、実務における特別刑法のもつ重要性にかんがみ、特別刑法の諸規定にも配慮する内容の授業とすることが予定されている。授業の構成例としては以下のようなものが考えられる。

[授業構成の例]

[1] 刑事法の概観
[2] 犯罪原因論
[3] 犯罪現象論(統計からみた犯罪現象)
[4] 犯罪対策論の基礎(刑法の存在理由)
[5] 刑罰理論、刑事制裁論
[6] 現行法上の刑罰
[7] 日本刑法の歴史、比較法
[8] 刑法とその解釈
[9] 犯罪論の基礎
[10] 犯罪論(1)
[11] 犯罪論(2)
[13] 犯罪論(3)
[14] 犯罪論(4)
[15] 犯罪論(5)
[16] 罪数、刑の適用
[17] 刑法における生命・身体の保護(1)
[18] 刑法における生命・身体の保護(2)
[19] 自由に対する罪、個人の私的領域を侵す罪
[20] 名誉・信用・業務に対する罪
[21] 財産犯(1)
[22] 財産犯(2)
[23] 財産犯(3)
[24] 財産犯(4)
[25] 公共危険犯
[26] 偽造罪(1)
[27] 偽造罪(2)
[28] 薬物犯罪
[29] 国家的法益に対する罪(1)
[30] 国家的法益に対する罪(2)

[授業内容のイメージ]

<授業モデルA>

[ユニット8]刑法とその解釈

1    あらかじめ、テキストとして、町野朔『犯罪各論の現在』(1996年)1頁ー16頁、判例として、最決昭63・2・29刑集42巻2号314頁を読むことを義務づけ、次の3つの設例について一応の解答を考えてこさせる。
  ケース1:    「学生のXは、アパートの隣室に住む女子大生Aを映画に誘ったが断られたことに腹を立て、Aの買う小鳥をわざと逃がしてしまった。」
  ケース2:    「Xは、女性のわいせつな音声を、録音再生機にデジタル信号としていったん記憶させ、NTTの有料電話サービス「ダイヤルQ2」の回線を使用し、録音再生機と電話機とを連動させる方法により、電話をかけてきた不特定多数の聴取者に、この音声を電話回線を通じて聞かせていた。」
  ケース3:    「Xらは、塩化メチル水銀を含む工場排水を排出して、付近の海域に生息する魚介類を汚染した。汚染された魚介類を摂取した妊婦の体内において胎児が胎児性水俣病にかかり、後にその母親から障害を負った状態で出生したAは病変が悪化して死亡するに至った。」
2    次の点を取り上げて講義を行うが、随時、設例に対する解答を求める。
     法解釈の種類と基準
     罪刑法定主義と類推解釈の禁止
     目的論的解釈における実質的基準と限界
     刑法による法益保護
     刑法の謙抑性・補充性・断片性と「処罰のバランス」論
    この時間において参加者に理解させたいことは次の点である。
     刑罰法規は法益保護のために存在しており、したがって、刑法の解釈とは、保護法益を基準とする目的論的解釈でなければならないこと。
     しかし、解釈には「枠」があり、それは、第1に、文言上の制約であり、拡張解釈は許される場合があるが、類推は許されないこと。第2に、刑法による法益保護の原則(刑法の謙抑性・補充性・断片性)から生じる制約があること。第3に、刑法の解釈が場当たり的であってはならず、一般化が可能でなければならないことから生じる制約があることである。すなわち、解釈の当否を判断するにあたっては、1その結論がどのような論理で導き出されたか、2その論理は理由のあるものであるかどうか、そして、3そのように解釈したとき、問題となっている事案以外に、どのような事案までその解釈のなかに含まれるか、それは妥当であるかの検討が重要となる。このような検討をパスしないかぎり、目的論的解釈は妥当な解釈とは認められないことが理解される必要がある。
     わが国の裁判所は、刑罰法規を柔軟に解釈し、場合によっては類推的な方法をとることもためらわずに犯罪の成立を認める傾向にあること。わが国では、刑罰法規のそれぞれが簡潔かつ包括的に規定されているという事情とあいまって、犯罪の具体的内容を明らかにするにあたり判例のもつはたらきがきわめて大きいこと。
3    宿題として、とくにケース3における解釈のあり方に関する簡単なレポートを書かせる。

<授業モデルB>

[ユニット17]刑法における生命・身体の保護

1    あらかじめ、テキストとして、西田典之『刑法各論』(1999年)1頁ー38頁、判例として、最判昭33・11・21刑集12巻15号3519頁および最決昭63・1・19刑集42巻1号1頁を読むことを義務づけ、次の5つの設例について一応の解答を考えてこさせる。
  ケース1:    「20歳のXと16歳のY女とは恋人同士であったが、周囲が2人の交際を許さないことに悲観し、Y女の発案で心中することを決意した。2人は、Xの自動車内に排気管からホースで排気ガスを引き入れ、Xが運転席でアクセルを踏み続けることにより、ガス中毒死することを計画した。助手席のYのみが死亡し、Xのみが助かったというとき、Xの行為はどのような罪を構成するか。」
  ケース2:    「Xの父親Aは、脳溢血で倒れ、2年前から全身不随であった。これを看護していたXは、Aの容態が悪化し激痛を訴え、しゃくりの発作で息も絶えんばかりにもだえ苦しむのを見かねて、「最後の親孝行」と考えて牛乳に有機燐殺虫剤を混ぜてAに飲ませ死亡させた。Xはどのような刑事責任を負うか。」
  ケース3:    「Xは、恋人A女と別れるため、「周囲の人がどうしても僕らの結婚を認めないので、別れるしかない」と嘘をいって説得したが、A女はこれに同意せず、「別れるぐらいなら一緒に死んだほうがマシ」というので、いっそ心中を装ってA女を殺すことを決意した。そこで、Xは、車で海に飛び込むことを提案し、A女はこれに同意した。Xは、A女が運転する乗用車の助手席に座り、A女が車を加速させて海に飛び込もうとする直前に車から脱出した。A女がそのまま溺死したとき、Xはどのような刑事責任を負うか。」
  ケース4:    「Xは、生後3カ月の子Aの育児と世話に疲れ、捨子することにした。Xは、Aをベビーカーに乗せたまま路傍に置き、物陰にかくれてこっそりうかがっていたが、通りかかった主婦Bが気づきベビーカーを押して交番の方向に進みはじめたのを確認した後に、その場を立ち去った。Xの刑事責任はどうなるか。」
  ケース5:    「医師Xは、妊娠26週に入った妊婦Yの依頼を受け、Yに対し中絶手術を行ったが、母体外に排出された子Aは、別の医師Bの手により救命の措置を施され、そのまま生き続けた。ただし、中絶手術の際に母体内で受けた傷害がもとになってAには身体の障害が後遺症として残った。XとYの罪責を検討せよ。」
2    次の点を取り上げて講義を行うが、随時、設例に対する解答を求める。
  人の始期と終期
  自殺の不可罰根拠と202条の罪の処罰根拠
  自殺関与・同意殺人罪と殺人罪の関係
  遺棄罪と危険犯の意義
  遺棄の概念
  保護責任の要件と根拠
  ひき逃げと刑事責任
3

   宿題として、ケース5における解決のあり方に関し簡単なレポートを書かせる。

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(2)授業の方法

   効率的に知識を与えるために、基本的には講義方式が採られるが、随時、出席者に質問をする(質問の素材となる設例のサンプルは、上に示した)。セメスター制(ないしトリメスター制)を前提として、週に数回の講義を入れ、頻繁に小テストを実施し、また、頻繁にレポートの提出を義務づけ、添削して返却するといった工夫が凝らされなければならない。時折、学生に口頭の報告をさせ、これをめぐって討論を展開するという演習形式(ゼミ形式)を併用することも有効であろう。
   なお、科目によっては、1つのテーマ、または1まとまりの問題について、まず講義、そして、レポート作成、それにもとづいて討論の順序を1セットとして授業を進めることが効果的であることもあろう(すべての科目について、また学習の全段階でそうでなければならないものとはいえない)。

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【刑事法II(刑事訴訟法)】(4単位)

(1)授業の目標と内容

   基幹科目を履修する前提として、また刑事法実務を行うための基本ツールとして、刑事手続の全体に関する基礎的法律知識を体系的に修得させる。
   刑罰法令を実現する手続の流れ、個々の制度の仕組みとその趣旨、基本的な解釈論上の問題と判例あるいは学説による問題解決を取り上げ、法律実務家として最低限要求される深さの理解にまで至らせる。
   刑事訴訟法の法体系とその実際の運用を理解することに主眼が置かれる。もとより、考え方が分かれる問題において、一つの考え方を深く理解するには、これとは別の考え方を視野に置くことが有益である。従って、解釈論上の問題や実務の前提となっている判例法理を扱うにあたっては、対立する考え方に立ち入ることを退けるものではない。しかし、刑事手続法を学ぶ出発点であり、刑事法実務を行うための基本ツールの修得を目指す基礎科目では、現にある刑事手続が何であるかを見失わせないよう留意する必要がある。
   満遍のない基礎知識の修得が目指されるが、時間が限られた授業では、知識の総花的な羅列に陥ることは避け、適切な学習用の教科書あるいは参考書の指定とその自習を前提に、刑事手続の体系的理解にとって不可欠な骨格部分を重点的に取り上げる。
   手続の流れを理解するうえでは、モデル事例を設定し、その処理を手続の流れにそってたどっていくことも有効である。とりわけ、事例に即して作成されたモデル書式やビデオ等の教材と組み合わせるならば、学習効果を大いに高めることが期待される。

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(2)授業の方法

   我が国は完備された制定法規とこれに関する体系的解釈論の蓄積を有しており、この点は、アメリカ法の強い影響を受けた刑事手続の分野も例外ではない。このようなアングロ・アメリカ法との差異に鑑みれば、授業方法として、アメリカのロー・スクールに見られるようなケース・メソッドのみが常に最善の教育方法であるとはいえない。むしろ、初学者を対象に、相当量にわたる基礎的知識を効率的にしかも応用が効く体系的な形で修得させなければならない基礎科目においては、講義を加味することも十分な合理性を有していると考えられる。もとより、その場合にも、講義は、教材の予習を前提にポイントを絞って重点的に行い、そこで説明された内容を設例に即して具体的に適用したり、発展的問題に応用したりする場面では、教師と学生との間の対話を中心に授業を進めることも、比較的小人数のクラス編成を前提にすれば十分に可能であり、そのような方法が、学生の姿勢を能動的なものとするうえでも、また理解度を確認しつつ授業を進める上でも望ましい。
   学習用の教科書あるいは参考書を定め、各授業ユニットでは、対応部分の自習を前提に、重点的な講義と設例に基づく双方向的教育を行う。
   短期間に広範な基礎的法知識を十分に体得させるには、授業後にその内容に則した復習的問題演習を実施したりレポート提出を課したりし、能動的作業を通じ授業内容の十分な体得を図るとともに、併せて文章作成の訓練を行うことが有効である。
   予習、復習と有機的に連関させることを前提にすれば、各回の授業は、各々一応の完結性をもったものであることが望ましい。例えば、次のようなユニットによる授業構成が考えられる。

[授業構成の例]

[1] 刑事手続概観
[2] 捜査1―捜査法の基本問題
[3] 捜査2―捜査の端緒
[4] 捜査3―被疑者の逮捕
[5] 捜査4―被疑者の勾留
[6] 捜査5―逮捕勾留の諸問題
[7] 捜査6―被疑者の取調べ
[8] 捜査7―捜索・差押え・検証(1)
[9] 捜査8―捜索・差押え・検証(2)―身体からの採証
[10] 捜査9―新しい捜査手法
[11] 捜査10―被疑者の防禦(1)
[12] 捜査11―被疑者の防禦(2)―弁護人の援助
[13] 公訴1―公訴権とその抑制
[14] 公訴2―公訴提起の手続
[15] 公訴3―審判の対象
[16] 公判1―被告人・弁護人
[17] 公判2―裁判所と公判手続
[18] 公判3―証拠開示・迅速な裁判
[19] 証拠1―基本原則
[20] 証拠2―自白
[21] 証拠3―伝聞法則
[22] 証拠4―違法収集証拠
[23] 裁判1―公判の裁判
[24] 裁判2―裁判の効力
[25] 上訴
[26] 非常救済・特別手続

[授業内容のイメージ]

<授業モデルA>

[ユニット4]被疑者の逮捕

   教科書の該当ページを指定するとともに、次の設例・設問を与えておく。
   【設例】(三井誠=酒巻匡『入門刑事手続法(第3版)』の書式例の事案)
   平成13年1月12日午前1時20分ころ、大阪市北区…所在のスナック「檸檬」店内において、客のYが果物ナイフで刺される事件が発生し、通報で駆けつけた救急隊により、大阪市城南区所在の大阪市立城南病院に搬送された。警ら中、「人が刃物で刺された。負傷者は救急隊が市立城南病院に搬送中。病院に急行し、事情聴取に当たれ。」との指令を無線で受けた警察官P、Qは、同日午前1時35分、城南病院に到着し、1階救急治療室に赴いたところ、年齢35歳くらいの男性が治療を受けており、救急隊員2名から事情聴取した結果は、「私たちがこの男性を搬送してきました。男性を刺したという女の人も一緒に来ており、今地下におります。私たちが現場のスナックに着いた時、店内には被害者の男性とその女性の2人だけしかいませんでした。」とのことであった。そこでPは、同病院地下診療室に赴き、同室に1人で座っていた30歳くらいの女性に「今治療を受けている男の人を刺したのはあなたですか。」と聞いたところ、同女は「はい、私が刺しました。一緒に救急車に乗ってきました。」と犯行を自供し、さらに人定事項を確認したところ、氏名等の人定事項を供述した。続いて、Pが同病院のA医師に被害者の状態を尋ねたところ、「搬送時既に脈拍停止、瞳孔散大、光反射なしの状態で、死亡を確認した。左胸の肋間に長さ2・2センチメートル、深さ不明の刺し傷がある。」とのことであり、同女が被害者を殺害した可能性が濃厚となった。そこで、P、Qは同女を警察署まで任意同行し、同日午前2時20分から同女を取り調べた結果「私が経営しているスナック『檸檬』で常連客のYさんと一緒に酒を飲んでいて口論となり、午前1時過きころ、カウンターの中においてある果物ナイフを持ち出したが、Yさんに「刺せるものなら刺してみい。」と言われたことから、「刺したるわ。」と言って、Yさんの左胸を1回刺しました。果物ナイフはカウンターの上に戻しました。」との犯行に関する具体的な供述を得た。そこで、スナック「檸檬」で実況見分中の捜査員に凶器の所在を確認をしたところ、店内カウンターの上に血こんの付着した果物ナイフ1本が遺留されているとのことであり、同女の供述と合致した。

【設問】

   警察官は、この女性を通常逮捕することができるか。その場合、いかなる手続を踏むことになるか。
   逮捕した場合、その後の手続はどのように進むか。
   警察官は、この女性を緊急逮捕することができるか。その場合、いかなる手続を踏むことになるか。
   スナックの客から、女性が果物ナイフで男性を刺したとの通報があり、警察官が現場に急行したところ、男性が床に血を流して倒れており、傍らの椅子に女性がナイフを手にもって自失状態で座っていたとする。この場合、警察官はどうすることが考えられるか。
   設例の場合、どの時点で逮捕が可能か。通常逮捕と緊急逮捕のどちらが望ましいか。

【授業の進め方】

講義形式で次の事項を確認。
     逮捕とは何か。
     逮捕に関する法の定め―憲法33条、
                 ―刑訴法―通常逮捕、現行犯逮捕、緊急逮捕
対話形式で次の事項を検討。
     設問1、2を素材に、通常逮捕の要件と手続
     設問3を素材に、緊急逮捕の要件と手続
     緊急逮捕の合憲性
     設例4を素材に、現行犯逮捕の要件と手続
   授業では、本件に即した逮捕状、弁解録取書、検察官への送致書のモデルを利用する(三井=酒巻・前掲に掲載の書式例参照)。
【授業後の課題】
   例えば設問5について、各自検討させ、簡単なレポートにまとめさせる。

<授業モデルB>

[ユニット14]公訴提起の手続

教科書の該当ページを指定するとともに、次の設例を与えておく。
【設例】
モデル事例([ユニット4]と共通)についての起訴状のモデル書式
次の起訴状の公訴事実の記載に問題はないか。
  1    「被告人は、昭和27年4月頃より同33年6月下旬までの間に、有効な旅券に出国の証印を受けないで、本邦より本邦外の地域たる中国に出国したものである。」
  2    「被告人は、法定の除外事由がないのに、昭和54年9月26日ころから同年10月3日までの間、広島県高田郡吉田町内及びその周辺において、覚せい剤であるフェニルメチルアミノプロパン塩類を含有するもの若干量を自己の身体に注射又は服用し、もって覚せい罪を使用したものである。」
  3    「被告人は、かねてから恨みを抱いていたA、同B子夫婦らを脅迫しようと企て、平成六年一月二三日ころ、愛知県〈番地略〉所在の豊川郵便局ポストから前記A、同B子、及び長女C子あての『昭和四三年に甲野と言う家の財産に対し自らの欲のために三二〇万と言う民事裁判を起し二〇〇万円(当時の金で)支払いさせた男Aの行為は、他人の長年守って来た人達又家に対しての悪業でしかない。しかもC子はその金をもって生業し雲隠れして悪業の限りをして来た。A及ビ(B子、C子)の家は永遠に東栄町の三輪に存在する必要もないし(他人の財産をネラウ者の家は)必ず三輪の地から消える事になる。(悪業ばかりして来た者)他人をゴマかして来たさんざん迷惑をかけ、A及ビC子達が自らの家を自ら滅していく事を考えた事があるのか。要領ばかり使い他人の財産まで横取し他人を苦しめて来た者の家はこの地上にのこす必要はない。電話をかえようが何をしようが関係ない。自分達のして来た事の罪はC子自身が(B子も先祖から家とともに背負い三輪の地から悪業えの責任として消えていく。他人の財産(田、畑、山)に対して民事を起しデタラメな金額を請求した事。尚かつ金を奪い取った行為そして尚二五年の年月に渡り甲野と家に対し(しかも女一人)苦しめた行為は決して許さない。金を奪う行為よりも先祖からの財産に対して民事請求した事はC子の先祖の畑、山林をもって同様に三輪から消えてもらう。他人の財産をネラウ者が無事に自らの家を残す必要はない。Aの行為はB子及ビC子の行為でもある。必ず責任はとってもらう。』と記載した文書を同県〈番地略〉所在のA方に郵送し、同月二五日ころ、これを右A、同B子に受領させ、もって同人らの生命、身体、財産などに危害を加うべきことを通告して同人らを脅迫したものである。」
  4    「被告人は詐欺罪により既に2回処罰を受けたものであるが、一定の住居なく徒食放浪中満州からの引揚者であるかの如く装って金品を騙取することを企て、昭和24年6月下旬から7月下旬まで別表の通り47回に亘って…O外46名方で同人等に対し『満州から一人で引揚げてきたのだが魚屋を始める資本がなくて困っているのだ。金でも物でもよいから恵んでくれ。』と申欺いてその旨誤信させ精米合計4斗5升現金合計200円を交付させて騙取したものである。」

【授業の進め方】

講義形式で次の事項を確認。
     公訴提起の要式性
     訴因の特定
対話形式で次の事項を検討。
     起訴状モデル書式の記載事項。特に、公訴事実の日時、場所、方法の記載。
     設例2−12(最高裁判例の解決を確認)
講義形式で次の事項を確認。
    起訴状一本主義と予断排除
対話形式で次の事項を検討。
     設例2−34(最高裁判例の解決を確認)
     予断排除を目的とする他の刑事手続上の制度
【授業後の課題】
設例2−2について、レポートをまとめさせる。

 

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