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高等教育

(資料)高等教育におけるマルチメディアの活用の事例  

(資料)高等教育におけるマルチメディアの活用の事例 


1  諸外国の事例
  1. アメリカ

    1. スタンフォード大学(工学教育のための問題解決型学習の実践)
        マルチメディアとネットワーク技術を用いて、工学教育のための研究開発や授業での活用を率先して行っている。
        各科目の授業において用いられる教材と、個々の学生の学習プロセスは、すべてコンピュータ・ネットワーク上に登録・公開されており、学生はネットワークを活用しながら学習を進めている。
        例えば、設計工学の分野では、ビデオ会議とインターネットを用いたヴァーチャル・クラスによる学習が行われており、「グループはボーイング社の社員であり、所有する飛行機の性能を高めるために、設計変更を行わなければならない」という課題のもとに学習を進めている。このコースは、学内の学生だけでなく、スウェーデン在住の学生も、インターネットにより履修している。 

    2. ボストン大学
        「教材センター」では、マルチメディア機器類をコンピュータにより統合化している。また、学内の教員に「双方向コミュニケーション」「マルチメディア利用」「ファカルティの啓蒙」の研修を行っている。  コミュニケーション学部では、「Interactive Communication」の授業において、学習者自身がメディア機器を活用し、課題に関するメディア素材の開発と、問題解決型の実践的な教育を行っている。 

    3. ハーバード大学
        伝統的教育を重んじ、研究を主体とした大学としての意識が強いが、「サイエンスセンター」で行われる授業はビデオに収録し、学生は1コースあたり15回分のレクチャを再視聴することができるなど、メディアの活用が行われている。
      「サイセンスセンター」のショーケース室では、一般の教員が、技官の補助を得て、インターネットのホームページやビデオ教材の制作ができるようになっている。 

    4. ノースウェスタン大学
        新しいマルチメディア・テクノロジーを、高等教育の方法の改善や、ビジネス分野への実用的な移植を目的とした学際的センターとして「学習科学研究所」を設置している。ここでは、人工知能に関する技術を、どのように教育やカリキュラム開発に役立たせるか(例えば、学習者の学習プロセスや学習成果を参照して、アドバイスを行い、ゴールに導いていく方法)、について研究を進めており、多くの優れた教育ソフトを開発している。
        この研究所には、コンテクストアナリストと呼ばれる、教員・学生・エンジニアの間をコーディネートする職種があり、マルチメディアを活用した教育プログラムの開発と実践に貢献している。また、研修機能として、本職種の養成講座も設けられている。 

  2. カナダ

    • ブリティッシュ・コロンビア大学
        学部を越えた学際研究やサービスを行う機関として、「教育工学センター」が設置されており、大学改革のプランの開発と導入に当たり、コーディネーターとしての中心的な役割を果たしている。
        この大学改革プランにおいては、大学教育の質を向上させるため、マルチメディアや新しい情報技術の活用を全学的に促進することとしており、「マルチメディア技術に関する研究成果は、学生の教育に導入されなければならない。さらに、その評価を行う。」との姿勢に立ち、教育研究活動を進めている。
        また、これらの活動を推進するため、このセンターでは教職員に対して「インターネット」「オンライン・コースのための教授設計」「教育と新技術」「マルチメディア」等のファカルティ・ディベロップメント・セミナーを実施している。
        さらに、ネットワーク上のオンライン・クラスの試行も行われており、対面式による教育と教育効果が変わらないという結果も示された。 

  3. シンガポール
      国家が推進しているコンピュータ・ネットワーク(インフォメーションテクノロジー2000:IT2000事業)整備のため、「国立コンピュータ委員会(NCB:NationalComputer Board)」が設置され、ここにネットワーク整備のための権限がすべて一元化されている。
      この事業は、シンガポールをインテリジェントアイランドに変革するための、教育のみならず社会・経済を含めた国家総合プロジェクトである。
      教育研究面での活用については、産業界の協力のもと、「情報技術の教育分野への応用に関する研究開発」(STW:Student'sand Teacher's Workbench)が、初等中等教育及び高等教育の各段階において、モデル校を選定して進められている。 

  4. オーストラリア
      オーストラリアでは、広い国土における教育を実現する必要性から、遠隔教育の伝統が築かれている。また、最近では、オフ・キャンパスにおける学習ニーズにこたえる遠隔教育として、オープン&フレキシブル・ラーニングが展開されており、国や州の支援のもとで、大学や、第3セクターの形態による学習支援機関が、教育活動や情報提供等を行っている。
      オープン&フレキシブル・ラーニングの特徴は、教育テクノロジーや通信システムを活用する点にあり、「何を・いつ・どこで・どのように学ぶかは学習者のニーズによって決められる」という考えから、フレキシブルに編成された学習コースが用意されている。
      各大学においては、オープン&フレキシブル・ラーニングのための教材開発が行われ、その実施状況や評価項目等に基づいて、大学のランキングがなされている。また、遠隔教育のノウハウを有するオーストラリアでは、アジア地域に教育活動を展開し、国外の学生を求めていくことを目指している。 

  5. フランス

    • フランス国立視聴覚研究所(INA)
        この機関の主な事業は、映像資料の修復・保存、映像・音響作品の保存、研修、メディアに関する文献資料の収集・提供、マルチメディアを活用した作品の制作、文化事業である。
        フランスの主要ラジオ・テレビ番組はすべてINAに寄託され、INAは、これを管理・保管している。
        作品はコンピュータで検索可能で、教育研究機関には無償で提供している。また、双方向オーディオ・ビジュアルサーバによる配布も行っている。さらに、商業利用やオリジナル作品の改編を希望するユーザに対しては、著作権者との交渉の仲介も行っている。
        この研究所では、映像・音響等を制作する技術や活用に関する研修事業等を行っており、全ヨーロッパから受講者が訪れている。また技術雑誌の発行等を行い、メディアに携わる人材の育成に力を注いでいる。
        この研究所では、コーディネーターと呼ばれるスタッフが、映像・音響等の制作技術、コンピュータ・グラフィックスの制作、演出効果、マネージメント等のあらゆる分野にわたって、指導を行っており、受講者のニーズにこたえている。 

II  国内の事例
  1. 信州大学
      マイクロウェーブ回線を利用し、「信州大学画像情報ネットワークシステム(SUNS)」を構築し、松本・長野・上伊那・上田の5つのキャンパス間を、延べ200数十キロメートルにわたって結び、遠隔授業を実施している。また、大学の教育研究・管理運営上の情報を交換する場として、ニューメディアを用いた同システムにより、キャンパス間の連携を図り、総合大学としての発展を目指している。 

  2. 電気通信大学
      「大学院情報システム学研究科」において、「社会人リフレッシュ教育のためのマルチメディア・ネットワーク環境のもとでのグループウェアシステムの導入による合理的な教育方法」や、以下について研究開発が進められている。 
    • マルチメディア・ネットワーク
        並列マシンを大学間の高速ネットワークでつなぎ、マルチメディア情報だけでなく、情報処理の高速化を行うこと。 
    • 科学技術情報の提供
        高等教育だけではなく、初等中等教育へ質の高い最新科学技術情報を提供すること。 
      電気通信大学・一橋大学・東京農工大学・東京学芸大学・東京外国語大学の5大学の各学部・大学院研究科をネットワーク化し、ヴァーチャルな総合大学として、単位互換や共同活動を行うことを検討している。 

  3. 東京大学(医学部及び医学部附属病院)
      「病院情報システム」が構築され、診療予約・患者呼出・検査・処方等の診療支援業務をはじめ、院内の会議記録やお知らせの参照・院内外との電子メール交換・大学内外の図書館の文献検索・データベースやインターネットによる情報資源の活用等が、病院内に配置されたワークステーションにより行われている。さらに、このシステムは、同大学内の3つの病院間と、高速デジタル回線で接続されている。
      また、国立大学病院のネットワークとして、東京大学が中心となり「大学医療情報ネットワーク(UMIN)」を整備しており、平成7年度には、すべての国立大学病院との接続を完了し、医療関係者全体のネットワークへ発展している。このネットワークは、学術情報ネットワークを利用し、現在では医学関係の学会員であれば、一般病院の医療関係者から開業医まで広く利用されている。
      同大学では、所属する教職員、学部学生、大学院生、研究生の誰もが、「教育用計算機センター(ECC)」の設備利用資格が与えられ、学生には、入学時に、計算機を使用するためのユーザー名とパスワードが配布される。例えば、医学部では、「医療情報学実習」として、診療や臨床研究のために必要な診療録のデータの集計解析に関する実地経験、さらに、研究に必要な知識の習得等を目的とした実習の機会が提供されている。 

  4. 東京工業大学
      平成8年度から、「衛星通信遠隔教育システム」をスタートしている。このシステムは、大口径アンテナによる衛星通信地球局と、衛星講義室(テレビスタジオ機能と学生レスポンス収集機能を持ち、大岡山地区と長津田地区に1カ所ずつ設置)から構成されている。これによって、リフレッシュ教育プログラムを全国に配信するとともに、東京工業大学と一橋大学との間で、授業交換を行うことができる。
      また、同大学では「総合情報伝達システム」を構築しており、大岡山地区と長津田地区のキャンパス間を光ファイバーで結び、テレビ講義室、テレビ会議室、研究指導室等において、遠隔授業や遠隔会議等を実施している。
      さらに、平成8年度から、2つのキャンパスを融合した「ATMマルチメディア・ネットワーク」をスタートし、ヴァーチャル・キャンパスシステムや遠隔カウンセルシステム等によって、映像を中心とした双方向コミュニケーションを可能にしている。またこのネットワークは、学内LAN(Titanet)、「衛星通信遠隔教育システム」、「総合情報伝達システム」とも接続しており、学内の情報コミュニケーションを円滑にしている。 

  5. 東北大学(医学部)
      コンピュータの導入により、高度先端技術による診療画像、画像医学を医学教育に取り込んだ「画像医学教育システム」を構築し、従来のスライドやOHP等を利用しての「教員が学生に教える」という観点から、「学生が自ら学ぶ」というコンセプトへの教育改革を行っている。 

  6. 奈良先端科学技術大学院大学
      先端的な教育研究に必要な学術情報を迅速かつ正確に提供するため、冊子型の図書・雑誌を閲覧する従来型の図書館から、資料を電子化して蓄積し、ネットワークを介して学内外の利用者に提供する「電子図書館」を構築し、平成8年度からサービスを開始している。
      また、ビデオ等の動画像データを含むマルチメディア情報を統合したデータベースを構築し、図書、雑誌、マイクロフィルム、CD-ROM、ビデオ資料等のメディアの種類を意識しない情報の検索、閲覧が可能なメディアセンターを目指している。
    マルチメディア情報転送の実験設備として、「ATM広域コンピュータ・ネットワーク」を構築し、主に研究用に利用している。これまでに、BBCC(新世代通信網実験協議会)の専用回線を用いて大阪大学との修士論文の発表中継や、マルチメディア実験として情報科学センター見学会の実況中継等が行われた。また、今後、同ネットワークの遠隔授業等への活用について検討が予定されている。 

  7. 会津大学
      「トップダウン」方式による教育(学生の現在持っている力と研究テーマとの間にあるギャップを、プログラムパッケージ化した教材(テキスト、ビデオ、演習用ソフトウエア)で補い、ワークステーションと教員の指導によって、最先端の研究に参加できるようにするシステム)を実践している。
      「語学研究センター」では、マルチメディア技術を活用した語学教育システム(LML)を活用した教育を実施している。
      これは、「学ぶ英語」から「使える英語」教育のために開発された教育システムであり、ワークステーション上に音声・映像・データをマルチメディア化している。学習者は、コンピュータの画面上にネイティブ・スピーカーの映像と発音を呼び出し、自分の発音を録音するとともに、画面上の声紋データにより、舌や唇の発音器官の正しい動かし方を学習できるようにしている。 

  8. 金沢工業大学
      パソコン、ワークステーション、ネットワーク等の各種メディアを活用した情報教育に重点をおいている。また、同大学のCAI室では、授業担当教員の協力により約20種にわたるCAI教材(音声付き語学学習教材等)を自主開発している。学生は、このCAI教材を授業のみならず、自学自習のために開放されたCAI室のコンピュータや各自のパソコンを用いて、学習事項の予習・復習等に活用している。
      学生には、「インターネット」の講習会を行い、申請によりIDを付与する等のサービスも実施している。 

  9. 慶応義塾大学
      「問題発見・問題解決型の能力育成」を「メディアセンター」の支援のもとに実施している。メディアセンターは、情報の収集・発信メディアに紙以外の音・映像を追加し、図書・ビデオ・オーディオテープを所蔵するとともに、インターネットにより情報収集を可能とするワークステーションを配備している。また、マルチメディア資料作成のためのパソコンが設置されており、必要に応じて、AV機器の貸出しや利用援助を行っている。また、シラバスデータベースも構築されている。
      パソコン、ワークステーション、ネットワークを活用した情報処理教育(電子メール、電子ニュースの習熟、LATEXによるレポート作成、プログラミング)を実施している。
      学内LANを利用した情報処理教育において、オンライン教育システムとそのコースウェアを開発し、活用している。
      学内LANを利用したマルチメディア多言語教育用システムとコースウェアを開発し、活用している。
      ワークステーション及び学内ネットワークが24時間利用可能な環境にある。 

  10. 日本大学(総合学術情報センター)
      全国21の各キャンパスを衛星通信回線で結び、「キャンパス内衛星通信ネットワーク」を独自に構築し、各キャンパス等への学術情報、学園情報等の伝達を目的とし、分散立地しているキャンパスの一体化が図られている。 

  11. 北海道情報大学
      通信衛星を利用した通信教育を実施している(専門学校教育と大学教育の併設)。通信衛星により、全国16カ所の教育センター・サブセンターに授業を配信し、ISDNにより受講生の質問を教員にフィードバックしている(双方向性の確保)。 

  12. 立命館大学
      「総合情報センター」を設置し、教育、研究、学習、管理運営を総合的に支援する体制を構築している。  総合情報センター及びサテライト教室では、教員が、海外を含めた7つの衛星チャンネル、インターネット、学内のビデオ・オン・デマンドのシステム等から、音声・映像情報を検索・収集し、リアルタイムで提示できる統合情報システムを実現している。また、他のキャンパスとの遠隔授業も実施している。
      音声・動画を同時に扱えるマルチメディア対応のCAIソフトによる語学教育を行っている。 

  13. 早稲田大学
      NTTから提供される超高速マルチメディア・ネットワーク回線を利用して、「ONLINE UNIVERSITY」を構築し、産・学・官の研究者が一体となって、1超高速ネットワーク、2超並列処理システム/ワークステーションクラスタシステム、3マルチメディア高度知識共用、4開放型知的情報ベース、などの先端的なネットワーク及びコンピュータ技術の研究を行っている。
      テレビ映像等の動画や、設計図面・電子図書等の詳細画像及び文書・音声等、世界中のデジタル情報を、超高速ATM通信網により、収集・編集加工・提供・利用の各流通段階において、円滑に活用できるシステムを構築するための研究開発を行っている。 

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