資料2 平成24年度中間報告書のイメージ

1.日本と南米諸国間の教育交流・協力
 (1) 南米諸国の概要
 (2) 日本と南米諸国間の教育交流の重要性
 (3) 産学官連携等による教育交流・協力
2.現状と課題
 (1) 初等中等教育 (別紙1-1)
 (2) 高等教育 (別紙1-2)
 (3)その他 (別紙1-3)
3.進むべき方向性
 (1)初等中等教育 (別紙2-1)
 (2)高等教育 (別紙2-2)
 (3)その他 (別紙2-3)
4.おわりに

 

(別紙1-1)現状と課題【初等中等教育関連】(案)

○国内外国人について、2008年に30万人とピークに達した在日ブラジル人の数は、その直後の日本の経済後退やブラジル本国の経済成長により、約三分の一がブラジルに帰国し、現在は21万人にまで減少してはいるものの、ブラジル本国以外に居住するブラジル人の数としては、日本はアメリカに次いで2番目に多い国。また、日本に居住する外国人数では、韓国、中国に次いで3番目に多い国であり、21万人のうち4万5千人が初等中等教育対象年齢。将来ブラジルへの帰国を考えている者への支援として、日本企業による研修制度や、ブラジル人学校の学費を払うことが困難で日本の公立学校に入りたいと考える者等への就学支援のための日本政府による日本語教育「虹の架け橋教室」プロジェクトを実施。
○ブラジルでは、基礎教育8年間の義務教育課程での進級率が82%と、欧米の先進諸国と比較して低いことが大きな問題であり、魅力あるカリキュラムの構築、教員の教授能力の向上及び教育指導体制の充実等が必要不可欠である。これまでの経験・実績を活かして、効果的・効率的な教育協力の方法を検討することが必要。

【参考】「学校教育の質向上プロジェクト」(2003~2010、ボリビア)
○ピーク時には我が国に100校ほどあった国内のブラジル人学校は、現在では70校に減っており、そのうち各種学校として認可を受けている学校は13校。
○日系ブラジル人コミュニティから要望のある、特定公益増進法人制度及び指定寄附金制度のブラジル人学校への適用については、所得税の免除及び当該学校への寄附金に対する免税措置がなされることで、ブラジル人学校へ寄附をしたり支援をしたいと考える民
間のイニシアティブを奨励するもの。一方、当該制度は対日投資促進の観点から導入されており、短期滞在の外国人子弟を対象としている。
○JICA の教育分野に係る技術協力の一環で世界各国に行った派遣教員のレポートによると、中南米については、学習指導要領の有様は様々で、また統一した教科書も存在しないなど、教育課程の面での支援のニーズが非常に高いことが伺える。
○チリは、OECD やAPEC の場において、教員養成・確保、教員の評価や待遇に関して、先進国はどのように行っているかについて非常に関心を持っていることがわかる。
○JICA が行う教育協力の手法のうち、南米の場合はこれまでに最も実績があるのが「技術協力」であり、初等中等教育関連は次の二つ。
a)基礎教育プロジェクト
主として学校運営の改善や、理数科、算数等の科目に係る教員研修による教員の質の向上を目的として、専門家をペルー、コロンビア、ボリビア、パラグアイ、チリなどに派遣。
b)海外移住事業における人材育成
南米諸国に住む12~15歳の日系子弟を日本の中学校等に招聘する「日系社会次世代育成」、短期間の研修プログラム「日系研修員受入」、ブラジルの日系社会にある日系関係団体に日本から2年間ボランティアを派遣する「日系ボランティア」(そのほか、日系人の日本の大学院への留学支援「日系社会リーダー育成」)がある。特に「日系ボランティア」では、最近、日本でブラジル人を多く受入れている愛知県等の公立学校の現職教員をブラジルの日系社会の学校等に派遣し、そこで日本語教育等に携わりながらブラジルの学校教育を経験した後、出身県に戻って在日ブラジル人の支援に貢献するという制度を4年前から導入。
○ブラジルでビジネスを展開している日系企業の中には、a)在日ブラジル人の子弟向け奨学金制度、b)NPO、ボランティア団体に対する支援活動、c)ブラジルに帰国した子弟の現地学校、社会等への適応支援、d)自閉症児自立支援など、ブラジル人支援に係る社会貢
献に力を入れているところもあり。

(別紙1-2)現状と課題【高等教育関連】(案)


留学生交流の推進
○ブラジルは1億人以上の人口を抱え、この20年間経済的にも非常に安定している国であり、海底油田が次々に発見されるなど、これからの経済成長も見込まれている。さらに、2014年にサッカーのW 杯、2016年にはリオデジャネイロで夏季オリンピックの開催が予
定されており、インフラ整備のために日本企業からの投資も増えている中で、専門的知識を有した人材育成が急務となっている。その必要性からブラジルでは、今後10万人の理系分野における学部学生及び大学院生をブラジル政府奨学金で海外の先進国へ留学さ
せる「国境無き科学」プロジェクトを2011年に策定、2012年7月、IJAS という協定を日本(JASSO)と締結し、我が国でも2013年より3年間で4000人の留学生を受入れる予定。
○アルゼンチンでは、米州開発銀行から留学生派遣のための資金を得て、科学技術分野における日本への留学生派遣を希望しており、現在受入れ方法等について検討中。
○ブラジルの「国境無き科学」プロジェクト等南米諸国において海外に自国学生を派遣する取り組みが進んでいる。「国境無き科学」プロジェクトにおける日本での受入れに関しては、文部科学省でも積極的にその受入れ可能性を調査する等の対応が行われている。
プロジェクトは開始されたばかりであり、引き続き、派遣国を確認しつつ、日本側の大学に適切な情報を提供する等して、これらの国からの政府派遣留学生等の積極的な受入れに努める必要がある。
○「国境無き科学」プロジェクトでのブラジルからの留学生がインターンを行うに当たり、受入れ大学の状況や企業とのマッチング等を行うことが必要。どこの大学で受入れるのか、受入れる大学でインターンの課程を組み込んでいるのか、どこの学区になるのか等の情報について把握し、マッチングを進めることが必要。
○日本人学生、外国人留学生の現地日系企業でのインターン実施は、グローバル人材育成のために効果的であると考えられるとともに、企業にとっても優秀な人材を確保することにつながる可能性がある。南米の場合、距離的遠さ、コスト、ビザ問題、治安等による難しさはあるが、知見のあるNPO とも連携するなどして、現地企業や現地NGO 等への学生のインターン参加の推進を図れないか。
○南米出身で、日本の大学等高等教育機関に留学している者、または出稼ぎに来ている日系ブラジル人等定住外国人の本邦企業への就職は、出身国側・日本側がともに目標とすることの一つ。(とりわけ、グローバル化が進展する現在、中小企業を含む日本の多くの企業が、新興国に進出。優秀な現地人材を確保することは日本の企業にとって課題。)そのため、企業側の人材ニーズをいかに大学等の教育・人材育成プログラムと連携を図れるか。
○JICA が行う教育協力の手法のうち、南米の場合はこれまでに最も実績があるのが「技術協力」であり、高等教育関連は次の二つ。
a)基礎教育プロジェクト
課題別研修として南米諸国から日本の大学等の研修プログラムに参加し、さらにそこで策定されたアクションプランを研修員が母国に持ち帰り、自分たちのアクションを事業化していくフォローアップ協力による支援。本研修で途上国から受入れている研修員数は年間6000~7000名程度と、各国ごとの受入れ数はさほど多くはないが、国に固有の重点分野や、その国を対象とした大きな目的に合致する形で、抱き合わせで実施する支援の一つ。
b)地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)
JST(科学技術振興機構)とJICAが共同で開発途上国と我が国の国際共同研究を通じて、地球規模課題の解決と人材育成を目指すもの。中南米では、ブラジルが最も案件数が多い。プロジェクトの例として、「アマゾンの森林における炭素動態の広域評価(ブラジル)」、「津波に強い地域づくりの技術の向上に関する研究(チリ)」などがある。

人材育成
○ASEAN におけるSEED-Net はODA を利用したものであり、ODA 卒業間近のブラジル等の新興国においては、中東のE-JUST のように基本的にはエジプト政府の資金で賄い、教育のソフト面について協力するという形態が参考になると思われる。いずれにしても、例えば、工学系人材の養成等について相手国政府から日本政府への協力要請を踏まえ、相手国側との詳細かつ具体的な協議が必要。

(別紙1-3)現状と課題【その他】(案)


○経済産業省における対南米人材協力は、研修生の受入れと、現地専門家派遣の2つ。
a)研修生の受入れ
途上国の産業人材を対象に、日本企業においてOJT方式で研修を行う「技術研修」、同窓会組織AOTS(海外技術者研修協会)を通じて募集した現地のマネージャークラスに対する研修を行う「管理研修」をそれぞれ実施。
b)現地専門家派遣
企業からの負担を得つつ、実際に事業を行う現場において、企業の経営・技術向上支援に必要な助言・指導を実施するための専門家を派遣。
c)今年度(H24年度)より、我が国の学生・若手社会人の途上国の政府系機関・現地企業への海外インターンシップの支援を開始。また、H21~23に実施し評価を得た産業人材裾野拡大支援事業の後継事業として、「海外における中小企業の大卒、高専等の現地高度人材確保の支援」を新規要求。
○ブラジル進出日系企業の雇用に関し、1 高い知識を持ったエンジニアの確保が難しいこと、2 教育水準の地域格差があること、3 日本に比べて高い離職率、などが課題。
○南米に対する協力は、経済成長が著しい地域であることから、選択と集中を基本として、インフラ分野での整備の遅れに対する協力、同じ地震頻発地域として我が国の知見を活用した防災分野での協力、森林・熱帯雨林等の自然保護の観点からの協力、地方の貧困地域の小学校建設の協力を実施。
○日系企業に現地の人材ニーズを聴取するに当たり、たとえ同一国内の同分野の企業であっても、それぞれ人材のニーズが異なり、また一つの断面で調査してもそれが将来的に続くかは不透明である等難しい面も否めない。
○一昔前、日本は「日本株式会社(Japan Inc.)」として、官民挙げての協力が行われていたが、日本経済が停滞している今こそ、文部科学省が教育協力分野において、官の縦割り行政を超え、産学官が協力して国際教育協力に係るリーダーシップを発揮すべき。
○日本では、ODA 対象国から外れると国際協力の財源の確保が困難になるが、中国や韓国はそうではなく、資源や戦略的重要性の観点からどの国が重要かという発想をしている。日本でもBeyond ODA による戦略的重要国特別支援制度など、ODA とは別のメカニズムの構築について検討を行うことも一考。
○ブラジルでの日本語教育については、日系人に対する継承語教育としてはJICA が、それ以外は国際交流基金がそれぞれ行っているが、日本文化も含めてプロモーションする際、日系人からさらにその先に広がっていかなければいけないことを考えると、両方の良いところを活かした取り組みやプログラムがあるとよい。

(別紙2-1)進むべき方向性【初等中等教育関連】(案)


●「虹の架け橋教室」等で日本語を習得した在日日系ブラジル人等が、母国へ帰国した後に日本語を広める上で大きな役割を果たしてくれるものと期待。
●特に理数科教育について、中米の教育協力という形でホンジュラスのもとにある組織とJICA が長期間協力して学習指導要領や教科書を整備する等して算数教育のレベルを高めたという実績に鑑み、日本の当該ノウハウを輸出することにより中南米諸国の教育ニーズにマッチした教育協力に貢献できるものと思料。
●ブラジルなど、教育へのアクセスが一定水準以上実現できている南米諸国にあっては、それに加えて地球市民教育や教育の質の向上を図る上で不可欠となる持続発展教育(ESD)の視点を盛り込んだ教育協力を行うことが必要。
【参考】「国連・持続可能な発展のための教育の10年(DESD)」について、2002年の国連総会で採択されて以降、ユネスコを主導機関として指名
●南米では人材育成を基盤とした国づくりが課題となっており、伝統的に大きい貧困格差をなくすことにもつながる教育課程等の支援を目指すべき。
●日本企業が従来から行っている海外での社会的責任(CSR)活動については、今後ともより活発に取り組むことにより、定住外国人子弟の本国への帰国に際して、現地学校や社会への適応支援が行われることを期待。

(別紙2-2)進むべき方向性【高等教育関連】(案)


留学生交流の推進
●ブラジルをはじめ南米諸国からの日本への留学生は、2011年度には前年度比△18.1%と大幅に減少しており、我が国の「留学生受入れ30万人計画」を踏まえ、ブラジルやアルゼンチン国等における日本への留学生派遣プロジェクトの活用等により、受入数の増を図ることが必要。また、これらの国で留学生フェア、セミナー等の定期的な実施が有効。
●ブラジルの「国境無き科学」プロジェクトによる留学先の優先学部としては、化学、生物学、ナノバイオテクノロジー、航空工学、石油・ガス採掘工学などで、相手国に固有の重点分野や、その国を対象とした大きな目的に応じ、相手国が真に必要とする分野に
協力することによって、将来的な人的ネットワークの形成につながるなど、両国の関係を強固なものにすることが可能。
●日本に住んで日本文化や日本語をある程度理解している在日ブラジル人の子弟がブラジルに帰国後、例えば、ブラジルで大学学部レベルまで在学し、このたびの新規プログラム「国境無き科学」の制度で日本の大学院に留学するために再び来日するなど、日本の大学に留学する流れができれば、両国の懸け橋となる人材養成が効果的に行えるものと思われる。
●チリ、ペルー、コロンビアなどは、日本との貿易投資関係が最近活発化しており、かつ日本への留学経験者が多いため、継続的な人的な交流が非常に重要。今後も良好な関係を続けていくためには受入れ留学生数の増が必要。
●日本とメキシコとの間の日墨交流計画で、40年以上にわたり毎年100人の両国の学生、研究者、企業の人々が交流し、現地に詳しく中南米諸国との橋渡しをしている者が多く育っている等、目に見えないところで大きな効果があったことは事実。これと同様の南米向けの重点的な留学プログラムができれば非常に効果的と思料。
●国費外国人留学生の教員研修留学生制度は、我が国の国立大学の教員養成系学部に海外の教員を招いて1年半程度トレーニングをするプログラムで30年近くの実績があり、ペルーやブラジル等南米からも多くの教員が採用されている。帰国した教員とのネットワークを作る等フォローアップを行うなど、南米諸国の教育協力の柱と位置付けて、両国で連携して実施していくことも一考。
●一定期間、南米諸国側学生を本邦で受け入れるとともに、本邦学生を現地に派遣することにより、日本人学生にとっては、短期間であっても現地で多様かつ優秀な人材と交流する機会が得られ、国際協力やグローバル人材としての意識が高まることを期待。
●「国境無き科学」等のプログラムでたくさんの留学生を受け入れる場合、アジアの窓口としての日本、つまり日本の大学に来ることによってアジアも含めていろいろな人と知り合い、人脈ができる等、アジアへのネットワークを広げることができるという魅力をアピールすることが重要。
●ブラジルの「国境無き科学」では、ブラジル側から留学期間中のインターンとしての受入れについて要望あり。将来的に、インターンを経験した学生が母国の日系企業等で、エンジニア等有益な人材として採用される可能性もあり。

人材育成
●高等教育分野での国際協力として、アジアの「SEED-Net」や中東の「E-JUST」等のプロジェクトが順調に進捗しており、南米でも不足が指摘されている工学系人材の育成に資する同様のモデルを検討していくべき。その場合、南米は日系人というバックグラウンドを持つ方もいることから、ある程度国・地域を絞った形でプログラムをつくり、必要に応じ南米にある地域ネットワーク等を活用するなどして、それを徐々に広げていく方法も考えられる。
●これまでの国際教育協力は、その国のファンである教員が非常に熱心にやっているケースがあり、当該教員が退職等で不在となるとその後は途絶えてしまうことが多い。国際教育協力を組織的に継続していくためには、組織として継承していくような工夫が必要である。

研究
●JST(科学技術振興機構)とJICA が行うSATREPS(地球規模課題対応国際科学技術協力)は大きなポテンシャルを持っており、科学技術分野におけるさらなる日本の南米への教育協力の重要なアプローチになるものと期待。

(別紙2-3)進むべき方向性【その他】(案)

●我が国の予算、マンパワーを効果的に活用するため、プロジェクトの「集中」を考える必要がある。すなわち、1 科学、バイオテクノロジー、ナノテクノロジー、航空工学、石油・ガス採掘工学、新素材、造船学、地震災害対策、天文学、鉄道、品質管理など、相手国に固有の重点分野や、その国を対象とした大きな目的に応じ、相手国が真に必要とする分野への「集中」、2 技術訓練所等をつくる場合、各国に作るのではなく、せいぜい2~3か国にひとつと「集中」、そこに近隣国から技術を教える指導者を招へい、3 研修等の対象を、一般学生等でなく、彼らを教える教員やリーダー等に「集中(限定)」、4 日本の先進の技術やシステムをそのまま伝えるのではなく、これまで日本が育てた先進発展途上国を通じた南南協力を促進することによる「集中」、などである。
●JICA は、ODA のサクセストーリーなどを、英語やその他の外国語、特にスペイン語やポルトガル語に翻訳して南米諸国に対し広く情報発信することも一考。
●日系企業は現地のニーズをある程度掴んでいると思われ、当該人材養成のニーズに日本の高等教育機関がどれだけ応えていくことができるかがキーポイント。そのためには、どの国でどのような人材養成のニーズがあるのかを把握している日系企業に対して、例
えばアンケート方式で聴取し、現地の人材ニーズ見極めた上で、我が国の具体的な教育協力を考えていくことが効果的。

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大臣官房国際課国際協力企画室

(大臣官房国際課国際協力企画室)