資料3 議論していただきたい論点例

平成23年6月20日
国際協力推進会議決定

1.背景

○ 南米は地理的に我が国からみて地球の真裏に位置するが、19世紀後半にペルーやアルゼンチンへ日本人が移り住んで以降、現在では、世界で最も多くの日系人を有する地域として親日派も多い。
○ また、南米諸国はODA対象国ではあるが、例えば、ブラジルは経済成長著しい新興国の中でもとりわけ驚異的な発展を遂げている国であり、特に我が国にとって資源確保、食糧供給の観点から国際社会の中で日本を支援してくれる国として重要であるなど、我が国にとって南米諸国の存在意義は大きい。
○ しかしながら、例えば、かつての日伯農業開発セラード・プロジェクト等による同国発展への貢献後10年以上に渡る空白期間を経て、南米諸国での日本の影は薄くなっている。
○ 他方、南米諸国の進展する産業界では、産業育成・人材育成が各国の課題となっており、教育強化のため、不足している人材育成への取り組みや自国の予算を投じて先進諸国への留学生派遣などを進めようとしており、我が国がそれらの要請に応え、戦略的に国際教育協力を進めることによって、日本のプレゼンスを再び示すことができると考える。

2.初等中等教育に係る協力について

(1)義務教育段階での進級率の改善
 ブラジルでは、基礎教育8年間の義務教育課程での進級率が82%と、欧米の先進諸国と比較して著しく低いことが大きな問題であり、魅力あるカリキュラムの構築、教員の教授能力の向上及び教育指導体制の充実等が必要不可欠である。そのための具体的な戦略及び協力の枠組みをいかにすべきか。
【参考】
・「学校教育の質向上プロジェクト」(2003~2010、ボリビア)

 

(2)日本から南米諸国へ帰国した子弟に対する教育協力
 日系ブラジル人等定住外国人の子弟が本国へ帰国した際、現地学校や社会への適応支援を目的として、子どもたちを心理面、学習面及び環境面からケアし、日本語・ポルトガル語、及び/又は日伯文化を学ぶことができるような環境支援など、将来両国の架け橋となる人材育成への取り組みを支援できないか。

3.高等教育及び研究開発に係る協力について

(1) 人材育成への協力
イ)進展するブラジル産業界において不足が指摘されているエンジニア等人材の育成について、我が国が得意とし評価も高い工学高等教育の分野においてどのような形で協力していくことができるか。
【参考】
 ・マレーシア日本国際工科院(MJIIT)
 ・エジプト日本科学技術大学(E-JUSTE)
 ・インド工科大学ハイデラバード校(IITH)

ロ)人材養成事業の一つの形態として、南米にある地域ネットワーク(南米諸国連合:UNASUR等)を活用し、同ネットワーク内における各国・各大学間の新たな人的・組織的ネットワークの構築による効果的・効率的な人材育成ができないか。
【参考】
 ・アセアン工学系高等教育ネットワーク(AUN/SEED-Net)
 ・東南アジア教育大臣機構(SEAMEO)

 

(2)留学生交流の推進
イ)2011年の東日本大震災後、大幅に減少した南米諸国から日本への留学生が再び日本に目を向けてくれるように、また「留学生受入れ30万人計画」の達成を目指してそれまで以上の増加を図るため、例えば、ブラジル政府奨学金による「国境無き科学」プロジェクトを活用するなど、各国における先進諸国への留学生派遣プログラム等といかに効果的にコラボレーションし、留学生数増につなげていくことができるか。


【参考】
・「国境無き科学」プロジェクト(ブラジル)
2012年7月、当該プロジェクト実施に関し、日本側(日本学生支援機構:JASSO)とブラジル側(ブラジル高等教育支援・評価機構:CAPES、国家科学技術発展審議会:CNPq)とで双方の役割を定めた覚書を締結。
・米州開発銀行から留学生派遣のための資金を得て、科学技術分野において日本への留学生派遣(修士レベルの短期留学を想定)を検討中(アルゼンチン)。

 

ロ)一定期間、南米諸国側学生を本邦で受け入れるとともに、本邦学生を現地に派遣することができないか。日本人学生にとっては、短期間であっても現地で多様かつ優秀な人材と交流する機会が得られ、国際協力や海外への意識が高まることが期待出来る。

 

4.産学官連携による協力について

(1)日本滞在経験者の本邦企業等での活用
南米出身で、日本の大学等高等教育機関に留学している者、または出稼ぎに来ている日系ブラジル人等定住外国人の本邦企業への就職は、現地国側・日本側がともに目標とすることの一つである。(とりわけ、グローバル化が進展する現在、中小企業を含む日本の多くの企業が新興国に進出している。優秀な現地人材を確保することは日本の企業にとって課題。)そのため、企業側の人材ニーズをいかに大学等の教育・人材育成プログラムに組み込むか、またそれら人材育成において企業と連携できることは何か。その枠組みはいかにあるべきか。

(2)インターンシップ・ボランティア推進
 日本人学生、外国人留学生の、現地日系企業でのインターン実施は、グローバル人材育成のために効果的であると考えられるとともに、企業にとっても優秀な人材を確保することにつながる可能性がある。現地企業や現地NGO等への学生のインターン参加を推進出来ないか。その手段はいかにあるべきか。

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大臣官房国際課国際協力企画室

(大臣官房国際課国際協力企画室)