2.2 各都道府県における各種学校設置・準学校法人設立の認可基準の状況と文部科学省の通知を踏まえた弾力化の状況

 国においては、学校教育法に基づき各種学校規程が定められており、修業期間、授業時数、生徒数、教員、施設・設備などについて概括的に規定している。

各種学校の設置認可は、都道府県において行われており、その審査基準は各都道府県が独自に制定している。

 文部科学省では、規制改革の動向等を踏まえて認可要件の弾力化を促している。平成16年6月には各種学校規程の改正により校舎面積基準に弾力化規定を設けるとともに、校地、校舎その他の施設について、一定の条件の下に他の学校等の施設を使用することができることとした*(専修学校設置基準の一部を改正する省令及び各種学校規定の一部を改正する省令の施行について(平成16年6月21日))。また、平成19年12月には、生涯学習政策局長通達により、各種学校を目的とする学校法人及び準学校法人の寄附行為の認可及び設置認可を行うに際し、特別の事情があり、かつ教育上支障のないことが確実と認められる場合としては、次のような事例を含むこととした(校地・校舎の自己所有を要しない専修学校等設置事業の全国展開について(平成19年12月25日)参照)。

 (1)長期にわたり校地校舎を使用できる担保がある借用であること。なお、国、地方公共団体等からの借用に限らず、民間からの借用であっても差し支えないこと

 (2)学校等が目指す教育内容を実現するために、校地及び校舎を短期借用しなければならないやむを得ない理由がある場合には長期にわたる使用保証が得られなくても差し支えないこと

 こうした動きも踏まえ、一部の県では、外国人学校を対象とする各種学校認可審査基準を定めるなど、基準を弾力化するところが出てきている。これらの県の審査基準では、長期間安定して使用できる、国または地方公共団体からの借用であるなど一定の条件のもと、校地・校舎の借用を認めている。また、設置認可申請時に要求される保有資金については、経常経費の6分の1年~2分の3年分となっており、経営悪化の場合に市町村が必要な措置を講じる場合には、さらに少ない保有資金でも設置が可能であるとしている。

 このような弾力的な基準を定めた7箇所の県に対し、外国人学校を対象とする各種学校認可審査基準を定めた狙いについて調査した。県からは、1:増加する外国人の子どもの就学機会が保障されていない現状を早期に改善するために財政事情が厳しい外国人学校の状況に応じた各種学校基準の制定が必要であったこと、2:総務省から多文化共生社会の推進に関して都道府県等に対し外国人学校の各種学校認可基準の緩和を求めた指針が出されたこと、3:県として国際交流大都市圏を目指すため在日外国人が安心して地域づくりに参加してもらうためにも、子弟の教育環境の整備は重要な課題であったこと、4:ブラジル人学校では労働者の雇用調整の影響により生徒数が大きく変動するため、安定した学校経営を行うことが難しいことなどが挙げられた。

 また、基準の弾力化により県が期待した効果としては、1:在住する外国人の子どもの就学機会の保障や教育条件の改善を進めること、2:学校法人化を促進すること、3:外国人の子どもの未就学の解消と就学の支援を図ること、4:各学校に税制上の優遇措置や公的支援を受けやすくして学校経営の安定や保護者の経済負担の軽減を図り、外国人子弟の教育環境が整備できること、5:多文化共生社会の実現に寄与することなどが挙げられた。

 各種学校設置・準学校法人設立の利点について学校に調査したところ、1:生徒数に応じ補助金がもらえること、2:JR等の学割定期券が利用できること、3:授業料への消費税が免除になったこと、4:地域の公共施設や公立の小中高校の見学・交流などがしやすくなったこと、5:多文化共生社会の実現の一翼を担うことができたこと、6:対外的信用度が増したこと、7:学校運営の継続に役立ったことなどが挙げられた。

 基準の弾力化後の状況については、調査した県からは、外国人学校の教育や経営には特段、支障は生じていないとの回答が得られた。

 以上のことから、基準の弾力化を図った県において、外国人の子どもの教育環境等の改善がなされる等の利点があった一方、外国人学校の教育や経営への問題が生じたという状況は確認されていないことが分かった。

*なお、各種学校は、運動場と体育館の両方を保有している必要はない。

 

 

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大臣官房国際課国際協力企画室

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