国際協力推進会議(第3回) 議事録

1.日時

平成23年9月27日(火曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省3F1特別会議室

3.議題

  1. 東南アジア教育大臣機構(SEAMEO)における取組について -東南アジア教育大臣機構
  2. アセアン工学系高等教育ネットワーク(AUN/SEED-Net)について -独立行政法人国際協力機構

4.出席者

委員

木村座長、井上副座長、内田委員、大野委員、草野委員、讃井委員、清水委員、中西委員、平井委員、松岡委員

文部科学省

清水事務次官、金森文部科学審議官、森口文部科学審議官、藤嶋国際統括官、池原国際課長 外

オブザーバー

(東南アジア教育大臣機構) Tinsiri事務局次長
(独立行政法人国際協力機構) 小西人間開発部高等・技術教育課長

5.議事録

○今回の議論に先立って、浅井国際協力政策室長より、去る7月20日に開催した国際協力推進会議(第2回)の議論のポイントについて説明を行った。 続いて、今回の会議の論点について、資料3及び4に基づき説明を行った後、東南アジア教育大臣機構(SEAMEO)と文部科学省の関わりについて説明があった。

○続いて、「東南アジア教育大臣機構(SEAMEO)における取組」について東南アジア教育大機構事務局 Tinsiri次長より発表。引き続いて質疑応答を行った。詳細は以下のとおり。

【Tinsiri次長】おはようございます。ただ今より、日本とSEAMEOの間の43年間に及ぶ協力関係について御説明いたします。まず始めに、本日お集まりの皆さまに、東南アジア教育大臣機構(SEAMEO)の御紹介をさせていただきます。SEAMEOは、東南アジアにおける教育・科学・文化の協力を推進することを目的に、1965年に設立されました。私どもは、東南アジアのよりよいクオリティー・オブ・ライフの実現に向け、教育・科学・文化の各方面での、地域レベルでの理解の向上をリードする組織を目指しています。我々の使命は、ネットワーク及び政策立案者・専門家間の協力関係の構築、更には持続的な人材育成の促進を通じて、よりよいクオリティー・オブ・ライフの実現に向けて、地域レベルでの理解や協力の促進、そして統合(Unity)を図ることです。
 SEAMEOには、11の加盟国と7つの準加盟国があります。準加盟国は、事業実施、共催活動への資金援助、技術支援の提供を通じて、SEAMEOに貢献しています。さらに、SEAMEOには、3つの準会員団体があります。このうち日本からは筑波大学が、2009年に準会員団体となっています。準会員団体も、準加盟国同様、事業実施、共催活動への資金援助、技術支援の提供を通じて、SEAMEOに貢献しています。
 SEAMEOは東南アジア全域に19の研修センターを持ち合わせています。19のセンターは、大別すると、教育開発、文化・歴史、健康・科学の3分野に分類されます。各センターは、教育・科学・文化の様々な分野における研修と研究プログラムを引き受けています。また各センターは、SEAMEO加盟国の高級教育行政官からなる運営委員会を設けています。運営委員会は、センターの運営と予算執行を監督し、その方針とプログラムの設定を行います。 SEAMEO事務局本部は、タイ・バンコクに所在しており、事務局長はWitaya Jeeradechakul氏です。我々は、19のセンターとSEAMEO事務局本部を合わせ、概(おおむ)ね1,000人の職員が在籍しています。SEAMEOの予算については、加盟国からの拠出により成り立っています。その割合は、各国のGDPと人口に応じて決められています。
 SEAMEOの主な役割は、(1)加盟国間の教育省を通じた協力の促進 (2)政策対話の促進 (3)東南アジアにおける教育人材と教員に対する研修の提供 (4)開発のための研究の実施 の4点です。これらの活動は主にセンターレベルで行われており、事務局はそれらの調整機能を担っています。SEAMEOは、加盟国間の「共有」の精神を尊重しています。以降はそれを体現する、各国の高級実務者及び大臣が一堂に会し毎年開催される会議の様子です。私たちはASEAN事務局のパートナーでもあり、ASEAN教育5か年計画の計画・立案に関わっています。
 続いて、日本が過去43年間にわたる日本とSEAMEOとの協力の歴史について、御紹介させていただきます。日本からSEAMEOへの支援については、大変感謝しております。1968年、SEAMEO TROPMED(熱帯生物センター)のChamlong事務局長が、日本政府の支援により東京で会議を開催したときから、日本とSEAMEOの協力は始まっています。更に1978年、生物多様性の研究を行うインドネシア・ボゴールのSEAMEOセンターの建設に際し、日本政府はその半額を支援しました。1980年、日本政府はSEAMEOに対し、更なる財政支援を行いました。写真に写っているのは、SEAMEO事務局長と小木曽本雄在タイ特命全権大使のお二人です。現在、日本とSEAMEOの間では、次に紹介する活動を行っています。私たちは、日本の多くのパートナーと事業を行ってまいりました。具体的には、以下のような協力があります。

(1)日本政府によるSEAMEOセンターへの財政支援及び専門的助言
(2)早稲田大学や筑波大学との共催によるサマーコース、ワークショップ、セミナー等の開催
(3)SEAMEOと大学間の学生や職員の交流プログラムの実施
(4)筑波大学の支援によるSEAMEOセンター長の調査出張
(5)大学とSEAMEOセンター間の共同研究の実施
(6)SEAMEOセンターの会議開催・研究プロジェクトの実施に対するJICAによる財政支援
(7)日本人参加者や東京都職員を対象としたSEAMEO TROPMEDによる、短期トレーニングコースの開催この中でも 特に筑波大学は、研修実施に当たっての専門的知見の提供や、国際会議・ワークショップへのSEAMEO職員の招へい、更には大学への研修旅行の立案を通じて、SEAMEOに深く関わっています。
 
 ここまで御紹介した日本とSEAMEOの活動を踏まえると、現在の日本からSEAMEOへの協力の枠組みは以下のように整理することができます。

(1)資金援助 (2)専門的知見の提供 (3)調査出張の提供
(4)セミナー・会議・ワークショップ等の共催
(5)奨学金の提供 (6)共同事業の実施 (7)研究活動への支援
(8)学生を対象とした国際交流プログラムの実施
(9)SEAMEOへの準会員団体(Affiliate Member)としての参加

 最近の動きとしては、SEAMEOは文部科学省との協力により、「SEAMEO-Japan ESD Award」の創設に係る事業を実施しています。本事業の目的は、東南アジア諸国へのESDに対する意識の向上にあります。1年目のテーマは「防災教育」とする予定です。本アワードを通じて、ESDの好事例を共有し、一層の促進を図ることが求められています。本アワードの金賞受賞校については、日本の学校訪問が副賞として与えられます。
 最後に、将来的な日本との協力の可能性がある分野は以下のとおりです。

(1)職業訓練校の教員に対する産業・技術技能研修
(2)バイオ燃料等再生可能エネルギーの開発 (3)熱帯医薬
(4)食料及び栄養 (5)食品安全 (6)理数教育 (7)文化
(8)語学研修(日本語)(9)気候変動 (10)その他

 SEAMEOは日本の協力に期待しています。御静聴ありがとうございました。
 

【座長】それでは、いかがでございましょうか。ただいまの御発表について何かご質問、御意見ありますでしょうか。いろいな協力をされているようで、私も知らない話が随分ありました。

【委員】大変包括的なお話をどうもありがとうございました。3点ほど質問させていただきます。
 まず1点目ですが、ユネスコバンコク事務所と同じビルにあるというお話がありまして、そことの連携がどのような形で行われているのかということを一つお聞きしたいと思います。
 2点目に、この国際協力推進会議のターゲットにしているエリアが高等教育だと思いますので、高等教育分野におけるSEAMEOの活動についてお聞きしたいのですが、最初の方のスライドで能力開発といいますか、キャパシティ・ディベロップメントが大きな柱として挙がっていましたが、現在において、SEAMEOが目指しているのは、高等教育のフォーマルなのか、それともノンフォーマル教育にもある程度力を入れようとしているのかというあたりを教えていただきたいと思います。といいますのは、教員教育のようなものというのが、恐らく両方にかかわる問題ではないかと思いますので、そのあたりを教えていただければと思います。
 それから、最後に、Possible Areasという、日本にどのような期待があるのかという1番目のところで、職業訓練校の教員に対する産業・技術技能研修というのがありました。これは、恐らくこの会議でこれからODAにおける産官の連携、あるいは産学官の連携をしていく際にも重要なポイントになるだろうと思いますが、現時点でこの研修は、SEAMEOにおける準加盟国として7つほど先進国が挙げられていましたが、そことの関連では、この研修事業は現在進行しているのかどうかというあたりを聞きたいと思います。もし何か行われているとするならば、そこで行われていることと日本に期待するものとの間に何か差があるのかどうかというあたりです。よろしくお願いします。

【Tinsiri次長】まずは、御質問ありがとうございました。
 まず1つ目に、ユネスコとの関係について御回答申し上げます。実は、ユネスコとSEAMEOの間では年に2回定期ミーティングということで、SEAMEOユネスコ会議というものを開いています。ちょうど昨日の朝、直近が開かれたところです。日本に出発する直前にその会議用の文書を用意したところでした。この会議の中では、東南アジア地域において行う活動やプログラムについて議論します。そして、このミーティングには、プロジェクトの運営を行うスタッフと、それから、局長が参加をして、それぞれ行っているプロジェクト、この地域でのプロジェクトを一つ一つ検討していきます。そして、同じ地域で行っているプロジェクトについて相乗効果がないかどうか、また、協力をし、リンク、つながりを持つことでメリットがないかを検討していきます。そして、東南アジア地域に利益、裨益(ひえき)をもたらすテーマが何かということを話し合います。この会議、非常に役立っておりまして、プロジェクトを行う際、重複を避けることができます。 もう一つ、ユネスコと協力するといい点としては、ユネスコというのは、地域レベルで様々なプロジェクトを行っておりますが、国別の実施ということになりますと、その段階でSEAMEOの方に連絡をとってきます。というのも、SEAMEOというのは、長年にわたり各国教育省と連結をしておりますので、このつながりというものを非常に高く買っています。  高等教育についての2つ目の御質問ですけれども、SEAMEOの中には、高等教育開発地域センターと呼ばれるリージョナルなレベルでのセンターを持っています。この高等教育開発地域センターの本部はバンコクにありまして、ライヘッドというふうに呼んでおりますけれども、このセンターの注力ポイントは3つあります。
 まず、1つ目ですけれども、私も参加している、私自身のチームが水曜日にミーティングを行う内容でして、こちらが高等教育における品質の保証というものです。
 それから、2つ目が東南アジア地域における学生の交流を意図した学生の移動の問題、これは特に東南アジア地域において単位、クレジットを交換できる、クレジットトランファーシステムを確立したいということで、これが2つ目のトピックとして挙がっています。また、3つ目が、この単位互換、単位の移動、クレジットトランファーを通じて、更にこの地域での学生の交流や移動を高められないかというトピックで検討を進めています。 また、フォーマルか、インフォーマルかというところの御質問がありましたけれども、インフォーマルの高等教育につきましては、ベトナム政府が生涯教育センターというものを設立しています。
 それから、3つ目の御質問の協力の可能性のある分野の1つ目のところ、職業訓練校の教員に対する産業・技術技能研修の分野ですけれども、これについては、実はブルネイ政府の方が既にテクニカル&ボケーショナルエデュケーションセンターというものを建てております。技術職業教育センターというものを建ておりまして、この東南アジア地域におきましては、産業と教育の連携を更に向上させていく、高めていくということが検討されております。したがいまして、職業教育ということがこの地域の人材開発に非常に重要な分野だというふうに考えられており、検討を進めているところです。そして、このブルネイのSEAMEOのセンター、テクニカル&ボケーショナルエデュケーションセンター、テクボというふうに呼んでいますけれども、こちらはユネスコの組織であるユニボの方と連携をとっております。 ご質問のそのほかの先進諸国への準会員国、準加盟国は、現在のところ、大きな活動はまだできておりませんで、若干の活動はありますが、まだ大々的な活動はない状況です。

【委員】ありがとうございました。先ほどの委員の質問とも関連するのですが、アソシエートメンバーという形で7つの国が参加していますが、その7つの国の支援の仕方と日本の支援の仕方で、どこが一番違っているかということについてお話を伺えればと思います。

【Tinsiri次長】  類似点はいろいろとありますが、若干違いもあります。違いとして例を挙げてみますと、ドイツ政府というのはヘルス分野、健康分野に非常に明確な焦点を置いておりまして、SEAMEOに資金を供給する際にも、ヘルス分野での人材開発にかかわる資金を供与しています。また、奨学金もヘルス分野に限って出しているという特徴があります。
 一方で、類似点も非常に目立っておりまして、様々な共同での活動を行っていくですとか、あるいはオーストラリア政府の方も、教育開発にかかわるプレスアワードというアワードをスポンサーしたりですとか、それから、カナダにおきましても、革新的な教育方法に対する資金提供するといった類似点もあります。

【副座長】今回、SEAMEOの次長さんがお見えになったということ、私も、昔、ユネスコの仕事とかいろいろやっておりましたけれども、こういう形でSEAMEOの方が文部科学省の公式な席でSEAMEOの活動を御紹介いただくということは、初めてのことじゃないかと記憶しております。そういう意味で、本当によく来ていただきましたし、よく活動を御紹介していただきまして、ありがとうございます。
 今のお話を伺いますと、SEAMEOは非常にいろんな活動もしているけれども、特に大事なのは、東南アジアの国々においての非常に情報のネットワーク、あるいは人のネットワークというのを持っているのではないかなというふうな印象を強く受けました。そういう意味で、我々日本もこの地域との協力をこれから更に発展させていこうというときに、SEAMEOの御協力も得ながら、そのネットワークも活用しながら進めていくということが非常にタイムリーであるのではないかなという感じを持ちました。1点、ここで書いてない国で中国とか、韓国とSEAMEOとの関わり合いということについて教えていただければ有り難いと思います。以上でございます。

【Tinsiri次長】現在のところ、中国、韓国と正式な協力関係というものはございません。中国は、実は今、思い返しましても、全くございません。韓国の方は、情報通信分野ICTにおける若干の活動がありますが、そこの若干と申し上げているのは、例えば会議への招へいといったようなものであります。したがいまして、今のところ、最大の御協力を頂いているのは日本政府からということになります。

【座長】ありがとうございました。ほかにございませんか。

【委員】どうも御説明ありがとうございました。ASEANの統合ということが非常に大きな課題である中で、やっぱり教育分野においても、こういうSEAMEOのような活動が続いていくということは、非常に有意義なことだと思います。 さはさりながら、ASEAN各国の開発レベルの差というのはやはりまだあるわけでございまして、それをどういうふうに埋めていくかということが一つの課題にはなっているわけでございますけれども、教育についても、それぞれ関心の分野というんでしょうか、課題の分野というのが異なっているのではないかと思うわけでございます。
 それで、今、ASEANのこの国々の中で19のリージョナルセンターがあるという御説明がございましたけれども、このそれぞれのセンターというのは、やはり国の特徴とかを生かした重点課題というものをもって、その中で分業というんでしょうか、Divison of Laborというんでしょうか、そういうことをやっているのかどうか。別の言い方をすれば、各国が同じことをやっていたのは、とても重複してしまうので、ある程度SEAMEOが調整をして、このセンターはこういう分野をやっていくというようなアレンジをなさっているのかどうか。その点についてお聞かせいただきたいと思います。

【Tinsiri次長】まずは、東南アジア各国における教育分野におけるギャップですけれども、これも教育において非常に大きなギャップがあります。この大きなギャップを埋めるべく、今、取り組んでいるわけであります。特にユネスコがゴールと掲げる万人のための教育、エデュケーション・フォー・オールというものを達成するために今、尽力中であります。ちょうど2年前に教育大臣が集まりまして、この2015年までにこのEFAゴール、ユネスコ及び国連のゴールを2015年までに達成するためのあらゆる対策をお互いに国の間で助け合いながら進めていこうということになりまして、この表明を受けまして、SEAMEOでは今、活動を行っています。特に大臣の閣僚会議において、10の協力プロジェクトというものが動き始めまして、SEAMEOはまだ教育が届いていない人たちに教育を届けるという名のもとプロジェクトを行っています。
 この10の協力分野というのは、リーチ・ツー・ザ・アンリーチということで行っているプロジェクトでありますけれども、基本的には各国がその各国において強みを持つ分野でイニシアチブ、リーダーシップをとってほかの国を助けていくという共助の精神に基づくものであります。例を申し上げますと、フィリピンとインドネシアの2か国については、防災、災害対策というもので、災害教育というものが非常に進んでおりますので、この分野で他国を助けています。また、タイは、コミュニティー・ラーニングセンターということで、特に周辺地域、農村地域における教育を、こういったコミュニティー学習センターを通じて行うという分野でたけておりますので、タイがほかの国をこの分野で支援をするという活動を行っております。こうすることで、この国民全員に対し教育が与えられるよう、10の協力分野を定めて協力し合っているところであります。
 また、2つ目の御質問の点ですけれども、必ずセンターを設立する前に、状況分析と、シチュエーション・アナリシスというものを行いまして、各国のニーズだけではなく、この東南アジア地域という地域のニーズを分析します。そして、既存のセンターと重複がないかどうかを確認し、SEAMEOのカウンシルレベルで設立を承認する形態をとっております。

【委員】ありがとうございます。今、御説明いただいたこととかなり重複するかもしれませんが、SEAMEOはASEAN各国の強いオーナーシップに基づいてつくられた教育支援のための組織と理解していますが、SEAMEOのプロジェクトとして位置づけられるためには、何か要件があるのでしょうか。ほかの国際機関とか、例えば日本でもSEED-Netとかありますけれども、他の機関が支援するプロジェクトとの違い、SEAMEOだからこそできることと、そういった比較ができれば教えていただければと思います。今のお話では、リージョナルな協力を非常に重視しているという印象を受けましたが、その辺も含めて教えていただければと思います。

【Tinsiri次長】実は、ほとんどのプロジェクトというものは、実は、まさにSEAMEOの元々の目的であり、この地域における協力を推進するという目的に基づいているものです。つまり、ASEAN、この東南アジア地域における人材開発を行っていくというものです。よって、ほとんどのプロジェクトはキャパビルであったり、あるいは人材開発及び教育に携わる人材の開発ということに焦点を置いており、国のレベルと地域のレベル、双方においてこの能力開発を行っているわけです。各国のキャパビルが進んで、各国の人材が強くなってきますと、それが大きく地域に貢献するというアイデアのもと、人材開発に焦点を置いて、協力を行っていくということに焦点を置いています。

【座長】ありがとうございました。時間まだいいですね。どうぞ。

【委員】どうも御説明ありがとうございました。こんなに大きな組織だったのを、私も長年ODAの仕事をやりながら存じ上げずに、本当に失礼いたしました。この大きな組織の、やはり財源の問題についてちょっとお伺いしたいと思いますが、やはり一斉にもう大きなかなりの事業をやっておられると思うんですが、トータルの予算と、それが、いわゆる通常の予算といいますか、人件費等の管理費と、それから、いわゆる事業費がどのぐらいの規模になっているのか。
 それから、その財源のリソースはいろいろパートナー等々見ますと、恐らくODAであるとか、いろんな官の資金が非常に多いんじゃないかと思うんですが、今後、やはりASEAN等々はだんだんODAが減っていくんじゃないかと。そういう中で民間資金の活用とか、そういうこともいろいろ検討されているのではないかなと想定するんですが、そういう民間との関係がどのように財源の中で考えておられるのか、どうなっているのかという点についてお伺いできればと思います。よろしくお願いします。

【座長】非常に重要な点だと思います。

【Tinsiri次長】まず、予算の全額といたしましては、130万USドルということで、非常に小さい規模で運営をしております。まだASEAN諸国は豊かではありませんので。3つのパートから予算は構成されています。
 まず1つ目、加盟国の拠出金、これはGDP及び人口の比率によって拠出金が決められます。これが一番大きな部分です。そして、2つ目は、このセンター、19のセンターがあると申しましたが、この19のセンターの運営費はそのホスト国がスポンサーするということで、ホスト国がこのセンターの運営費と、それから、一部のプロジェクトのスポンサーも行うということになります。3つ目の部分が、準加盟国及び準会員団体から拠出をされる部分で、少額ではあるんですけれども、特定のアクティビティに対して拠出をされるものであります。ただ、プロジェクトのほとんど、そして、大部分が1番目の加盟国による拠出金に依存しているのが現状であります。
 2つ目の御質問の民間からの資金ということですけれども、現在のところはほんの若干しかまだ民間からの資金は得られておりません。一方で、今後、地域協力ということを更に強化していくためには、Public Private Partnership、PPPという形をもっと模索して地域間での協力を促進するやり方を考えていく必要があると考えています。

【座長】ありがとうございました。よろしゅうございましょうか。では、最後に簡単な質問をさせていただきます。
 SEED-Netのことを御存じだと思いますが、この第3次を続けられるかどうか、非常に微妙なところに来ています。SEAMEOから御覧になって、SEED-Netのベネフィットみたいなものについて何かコメントがありましたら、お願いをしたいと思います。

【Tinsiri次長】タイとしての見方、それから、私個人としての見方を申し上げたいと思います。AUNの事務局がチュラロンコン大学の方にありまして、私自身がチュラロンコン大学を卒業しておりますので、そういうつながりがあるというのが一つと。それから、もう一つ、AUNの今、事務局長を務めていらっしゃいますDr.Nantanaと実はバリでASEANの会合で会談、面会をしたんですけれども、そのときにも非常にいいプロジェクトだということをおっしゃっておりました。特に東南アジア地域におきましては、エンジニアという点で非常に強いという名声をもう立てております。AUNを知っており、また、AUN/SEED-Netというものを知っている人に聞くと、非常にこれはいいというレピュテーションを持っております。SEED-Netでプログラムを行い、そして、奨学金を受けて日本に来た後、また、ASEAN地域、特にタイに戻って非常に重要で活発な活動を行っている方がたくさんいます。よりまして、このSEED-Netのプロジェクトというのは、今後のASEAN地域において非常に重要な役割を担う可能性のある大切なプロジェクトだと思っております。特に技術や職業面で産業との非常に強いリンクを今後もつくっていくという意味で非常に大切な役割を果たせると考えています。

【座長】ありがとうございました。

【Tinsiri次長】お呼びいただきまして、大変光栄に思いました。また、会議に出席でき、大変うれしく思います。今後も、SEAMEOと日本との協力関係を是非促進できるように希望しております。ありがとうございます。

【座長】どうもありがとうございました。

○続いて、「アセアン工学系高等教育ネットワークプロジェクト(AUN/SEED-Net)について、国際協力機構 小西人間開発部高等・技術教育課長より資料7に基づいて発表。引き続いて質疑応答を行った。詳細は以下のとおり。

【小西課長】JICAの小西でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 では、SEED-Netの概要を説明させていただきます。1枚目のスライドの中にAUN/ SEED-Netということで、私たちは略称としてSEED-Netと呼んでおりますが、日本語名ではアセアン工学系高等教育ネットワークプロジェクトという名称になっております。頭にAUNとついておりますが、これはASEAN University Networkということで、先ほどSEAMEOの方がお話しいただきましたが、SEAMEO自体が東南アジア教育大臣機構ということで、東南アジアの教育大臣の組織であるのに対して、このAUN、ASEAN University Networkというのは、ASEANに加盟している10か国に限定して、各国政府とASEAN事務局に認定されましたASEAN各国にあるメンバー大学間のネットワークで、大学間での活動を推進するネットワークの組織でございます。この事務局が、タイのチュラロンコン大学に置かれております。SEED-Netプロジェクトは、ASEAN事務局、及びASEAN事務局に認定されたその傘下の組織でありますアセアン大学ネットワーク事務局とJICAとのコラボレーションのプロジェクトです。
 JICAは、全世界でこれまで多くの事業を展開してきており、大学の事業も当然全世界で実施してきておりますが、ほとんどの事業が日本とある国との間の2国間の協力として実施しています。これはJICA事業は日本の国と相手の国との国際約束、ないしは条約等に基づいて事業を実施するということが法律で決められており、二国間では条約ないしは国際約束が比較的結ばれることが容易であるという事実があると思います。複数の国になりますと、さまざまな思わくや利害の調整が難しいということもあり、どうしても伝統的に2国間協力でほとんどの事業を実施してきております。昨今、この例もございますが、一部地域でリージョナルに事業を展開しているという事業もありますが、これはその1つの例です。
 私は10年ほど前、JICAタイ事務所に勤務しておりましたが、そのときに多くの教育関係の事業を担当しておりました。これらの案件は、モンクット王工科大学ラカバン校やチェンマイ大学、カセサート大学、マヒドン大学など、個々の大学の研究能力や教育能力を向上させるための協力でした。こうした案件はタイと日本との二国間での事業でした。ところが、今日紹介させていただくSEED-Netは、リージョナルな事業を展開しているところが特徴です。 ASEANに加盟している10か国から、合計19の大学がSEED-Netに参加しておりますが、2001年にこのSEED-Netを設立する際に、AUN事務局と調整し、各国の教育省に対して、各国において工学系でトップレベルの大学を2~3選ぶというメンバー大学選出の基準を提示しました。その基準に基づいて、各国の教育省が選んだのがこれらの大学になっています。当時、国によっては一つしか大学がなかったりとか、ないしはインドネシアのように何百と、ないしは千単位の大学があるような国もありますが、一応工学系のトップレベルの2~3の大学を選ぶという基準により選ばれたのがこれらの大学になっています。
 日本からの支援大学については、当機構からの依頼に基づき、文部科学省に選出していただきました11大学になっています。ASEANが19大学、日本が11大学、合計30大学で学術的な活動を展開しています。このSEED-Netの目指すものは、最終的には、このASEAN地域の持続的な経済・社会の発展と、そのために工学系の大学・大学院の教育・研究の質の向上にあります。
 このプロジェクトは1997年のアジア経済危機を発端にしております。アジア経済危機のときに域内の短期的な海外投資がどんどんと引き揚げられ、域内の産業界は非常に大変な状況になりました。そのときにASEANの域内で産業を支える人材を育て、育成していくことが大事だということをJICAは考え、相手関係政府にこの考えを提起して、このプロジェクトを始めました。こうした背景があり、プロジェクトの目標としては、ASEAN域内、ASEAN各国の工学系のトップ大学の教育・研究能力の強化と、大学の能力強化を通じて地域全体の優秀な工学系人材を育成する持続的な体制を構築するところにあります。
 具体的な活動は留学と共同研究とネットワーク形成という3つの活動が大きな柱です。これらの活動を行うアクターは3種類あり、日本の国内支援大学、ASEANのメンバー大学の中のホスト大学、そしてASEANメンバー大学の中の送り出し大学です。例えば留学の事業でが対象者はASEAN域内のメンバー大学の若手教員です。だれでもいいというわけではなく、あくまでもメンバー大学の教員の教育能力、ないしは研究能力を高めることが目的です。まだASEANの大学の中では、博士号又は修士号を持っていない教員がいますので、こうした若手教員に高位学位を取得するための留学を通じて教育・研究能力を高めてもらうことになります。留学先は2つあり、1つはASEAN域内の別の大学への留学です。先ほどアクターとして紹介した送り出し大学というのは、このように若手教員を留学に送り出す大学で、ホスト大学とはこれらの留学生を受け入れるASEANのメンバー大学のことです。
 もう1つは本邦大学の博士課程に留学することです。共同研究という活動がありますが、ホスト大学で留学生を受け入れるに当たり、留学生の研究活動に、留学生とその指導教員のほかに、本邦支援大学の教員は共同の研究指導者として参画します。これにより、留学生である送り出し大学側の若手教員、留学生を受け入れているホスト大学の教員、そして本邦支援大学の教員という3者で共同研究を実施しています。 
 このほかこうした教育・研究活動の成果の発表と活動計画を協議する場として、年1回、ASEAN域内で学術会議を工学の分野ごとに開催しています。こうした活動を通じて、ASEAN域内、そして本邦の教員の相互往来の機会を提供して、人的ネットワークを強化しつつ、社会に貢献する工学分野の学術活動の質の向上に努めています。
 あとは、工学と言っても、多くの細区分された分野・課題があり、現在は化学工学、環境工学、製造工学、地質・資源工学など9つの分野に分け、ASEAN加盟国の中でも中堅レベルの国であるフィリピン、マレーシア、タイ、インドネシアから参加している大学に対して、1大学1つの分野を責任持ってホストしてもらっています。このため、域内の送り出し大学の若手教員は、例えば化学工学の若手教員でしたら、域内で留学しようとすれば、フィリピンのデラサール大学に留学するということになります。日本の支援大学としても11の大学の中で、特に責任を持って指導していただくため、調整大学と呼称して分野ごとに担当の大学を複数決めています。
 SEED-Netは2001年にバンコクでその設立総会を開催しました。日本からは外務副大臣が出席し、ASEAN各国からは教育省の副大臣が出席して、合意文書に署名を行い、発足しました。その後、2年間の準備期間があり、2003年からプロジェクトという形で本格的に活動を開始しています。2008年までの5年間がフェーズ1で主に4つの成果があったと考えています。
 1点目が、メンバー大学の若手教員の人材育成がなされたというところで、その5年間の中で高位学位を取得した者が445名です。対象者は、一般の人ではなくて、メンバー大学の教員に限定しており、基本的には学位を取った後は自分の大学に戻って、教員として学生を指導しているので、大学の組織としてのキャパシティ・ディベロップメントに貢献しています。 なお、留学できる若手教員は、学生時代の卒業時成績が大学のトップ10%以内の成績を取った優秀な人に限定しています。 
 2点目が、ASEAN域内の大学間、本邦大学とのネットワークの形成、ないしは強化ができたという点です。特にASEANについてはこれまで横同士のつながりがほとんどなかったと言われております。例えば、ASEANの大学の中堅ないしはシニアクラスの先生は、特に欧米、ないしは日本等で学位を取得していますが、自分の学位を取った大学、欧米ないしは日本の大学の教員や学会等で知り合った研究者との人的ネットワークは維持しているけれども、ASEANの横のつながりがこれまでなかったというところに、そのきっかけづくりをSEED-Netが行ったということです。
 3点目が、各工学分野のホスト大学の国際大学院プログラムの創設・強化ということです。これはたまたまタイミングが合ったということもあるのでしょうが、この10年間で世界的に学生、ないしは大学教員の流動性の高まり、その必要性の高まりが一気に強くなったというところがあります。その流れに乗ったのかもしれませんが、もともとSEED-Netでは意図していなかったところでありますが、先ほどのホスト大学の中で国際大学院プログラム等を創設した例もあり、SEED-Netを通じて、より積極的に取り組んでいる例も見られます。 
 4点目が、AUN/ SEED-Netの事業実施方法の実施体制の確立ということで、バンコクのチュラロンコン大学にSEED-Netの事務局も置き、そこがASEAN10か国のメンバー大学と日本の大学との間での相互調整機能を果たしているというところです。
 留学プログラムの国別実績については、大きく分けて、若手教員を留学生として送り出している方をオレンジ系統の色で、受けている側を緑系の色で示しています。一番左の端の日本は当然受け入れているだけですので、2011年の1月までですが、128名の留学生を受け入れたということです。シンガポールも67名受け入れたということです。マレーシアは108名受け入れて、17名送り出したということに、タイは206名受け入れて、30名送り出したということになります。インドネシアは受け入れと送り出しが逆転しておりまして、送り出しの方が多く、合計171名送り出しているということです。より開発が遅れているCLMVの国々については、送り出しの役割のみを担っております。 共同研究はさまざまなテーマで活動が行われていますが、一例としては手短な材料であるペットボトルや籾(もみ)殻等を活用した廃棄物汚水処理のシステムの開発があります。また、インドネシア・ジャワ島中部地震のときの地震災害対応のハザードマップの開発をインドネシアのガジャマダ大学が京都大学や九州大学と共同で作成し、住民の方々に配布したというものです。
 SEED-Netの波及効果としては、各国・域内での工学系の高等教育の底上げと各国での産業発展、そして、各国・域内での共通課題への解決のための事業展開を考えています。ASEANにおける高等教育とSEED-Netの関係をASEANの側から見たとき、ASEAN域内の留学生の伸びという点では、ASEAN域内で留学することに意義があります。日本への留学という点はあるものの、欧米やオーストラリアへの留学ではなく、ASEAN域内に留学し、それによって受け入れ側の大学の教育能力、研究能力も高められていくということがあります。またASEAN統合に関しては、ASEAN自体が2015年に、政治と経済と教育、文化で3つの柱で統合を目指しておりますが、これに特に人の連結性向上を通じて、特に文化の統合に貢献する事業であると考えています。
 日本の視点から考えると、少子・高齢化が進む中で、日本の大学にとっても学生の数、ないしは優秀な若手教員の獲得というのが非常に重要になってくるという点とか、アジアとの連携による研究領域の広がりであるとか、ないしはこの地域における政治的・経済的なプレゼンスの確保の必要性等があると考えます。 現在、実施中のプロジェクトは2013年に終了を予定しています。私どもJICAの事業は開発事業ということで、あくまでも基本的には途上国の自立的な開発を支援する立場である事業というところから、基本的にはその国がある程度のレベルまで開発に至ったら、私たちの協力は終わるというのが基本的なスタンスになっています。こうした観点から、一般的にJICAのプロジェクトは大体5年ぐらいを一つのスパンとして事業展開をしています。 
 現在のプロジェクトが2013年までとなっておりますが、外部からの強い御意見もあり、JICAとしても2013年で終えるのではなく、是非この事業も次も展開していきたいと考えています。そのときにどのような考えに基づき、どのような事業を展開するべきなのかという点につき、有識者の先生方に御議論をいただき、JICAの方に御提言いただき、それを私どもとして実現していくということを考え、SEED-Netの次期事業を検討する有識者委員会を昨年設置させていただきました。今日ここにいらっしゃっている木村先生や井上先生もその有識者委員会に入っていただいており、木村先生はその有識者委員会の委員長を務めていただいております。委員会は過去1年半にわたり、6回の会合を開催し、今年9月に一連の議論を終えました。現在、最終的な提言書のまとめに入っています。その御提言いただいている中で、幾つかの点を今日はピックアップしました。
 1点目がASEAN地域の産業界に貢献する事業であるべきという点です。有識者委員会での御意見を受けて、ASEAN域内の産業動向を調査しました。その結果、域内の産業界の動向としては、現地に進出している日系企業もそうですが、単なる製品の組立てというだけでなく、現地で新製品を開発したり、地域向けの製品モデルを開発するような事業展開に変化してきている現状にありました。一部の化学製品製造に関する企業では更に進んでいて、本当に高度な研究まで行っている例もありました。こうした状況を踏まえ、次のSEED-Netの事業展開としては、単なる組立て工場ではなくて、製品開発をする高度な技術を担う人材を輩出できるような大学になるように支援することが求められています。また、事業の展開が1か国の市場のための開発ではなくて、地域のため、例えばタイに開発拠点を置いても、そのターゲットは、インドネシアやマレーシア、ないしはアジア大洋州、オーストラリア等、この地域全体を市場として考えて活動している企業が散見されました。いわゆる企業活動のグローバル化も見られましたので、グローバルに活躍できる人材を大学としても育てるということも大事だろうという点があります。
 2点目は、国単位では解決できない地球規模課題への対応の重要性が増しているというところで、これは、先ほども現行プロジェクト2の活動の一例としてハザードマップの開発や汚水処理の話をさせていただきましたが、こうした課題に対して、知のネットワークということで、1か国ではなく地域で知の共有をして課題に取り組むべきということです。9月初めには、東日本大震災を踏まえ、このSEED-Netの中でもASEANメンバー大学の防災分野の教員を日本に招き、本邦大学や研究所での講義のほか、被災地に入って被災地の状況を視察してもらいました。日本の防災技術の紹介のほか、今回の災害発生時の対応として、上手く(うまく)機能したところと悪かったところについても、本邦大学の先生、行政機関の方、さらにはマスコミの方から説明し、議論をしていただきました。このように地域共通課題や地球規模課題への共同研究活動をより一層強化するべきということです。
 科学技術になると、どうしても欧米が中心になり、世界をリードしていくという構図になりますが、これに対してアジア、東南アジア、日本も含めた東アジアと言っても良いかもしれませんが、このアジアでしっかりとした知のネットワークのプラットフォームを形成するべきということが第3点目です。アメリカ、ヨーロッパ、そして、アジアというところで、アジアにおいて、1~2か国間の協力ではなくて、多面的でダイナミックな知のプラットフォームをしっかりと形成していくべきという御提言です。
 まだ次期事業につきましては、日本政府ないしは相手国政府の方から了解を得られているわけではありませんが、今後、さまざまなところからの御協力、御理解をいただきながら、次の事業を展開していきたいと思っています。

【座長】ありがとうございました。この委員の皆様方の中にはSEED-Netのことはよく御存じの方もいらっしゃると思いますし、あるいはそうでない方もいらっしゃるかもしれません。ということで、JICAの方から小西課長に来ていただいて御説明いただきました。
 私自身もかなりこれにコミットしております。非常に成果が上がっているプログラムですが、財政的な状況から、第1次から第2次にいくときもかなり危なかったというのが本当のところです。切られてしまう可能性があったのですが、何とか切り抜けることができました。今度第3次どうなるか、気が気ではありません。皆様に状況を御理解頂くためにJICAの方から説明いただきました。いかがでございましょう、何か御質問等ございますか。

【委員】ありがとうございます。2点ありまして、まず、ASEANとの関係の強化を求めている国というのは多いと思うんですけど、他国の取り組み、このSEED-Net的なものというのはあるのかどうかということ。
 それから、ASEAN各国、進出している日本企業、非常に多いわけで、今、お聞きしていると、現地の企業、産業界とこの取り組みとはどんなふうにつながっているのだろうか。何かその部分が少し、聞いている限りでは余りお見受けできなかったのかなと思います。
 今、2次から3次に、またこのプロジェクトを進めるために非常に厳しいというふうにおっしゃったんですけれども、やはり国内の目も、つまり、こういう協力をしたから、国際協力というのは多分見返りを求めるのがいいのか悪いのかという議論もあるかと思うんですけれども、今、これだけの財政状況の中で、こういう協力をしたことによってどういう波及効果が、単なるその現地の国だけではなくって、協力した側、あるいはそこで孤軍奮闘している民間企業とか、そういうところにどれほど波及効果があるのかという目も、以前に比べると非常に厳しくなっているような気がするんです。それは、やり方次第というところもあるんでしょうけれども、その当たりはどんなふうにお考えになっているのか。つまり、海外取材に行っていて非常に強く思うのは、ほかの国は非常に何かオール、まあ、国としてきているという感じがすごくあって、これだけ日本も国際協力やっているのに、片やこっちで見ると、非常に進出している民間企業が四苦八苦しているという状況をよく見るんですね。もうちょっとその当たり連携できたらいいのにと思うことがすごく過去あったものですから、いかにオールジャパンでこの取り組みをやっているかというところを打ち出すためにも、そのあたりの連携というのは非常に重要なのではないかと思うんです。いかがでしょう。

【委員】すみません。今の御質問に近い問題意識なので、つけ加えさせてください。

【座長】どうぞ。

【委員】ありがとうございます。今の御質問に関連し、私も同じような視点を持っています。最後に将来の事業案ということで、(意義)として3つ出されています。これは純粋に考えると、私は、方向性はとてもいいと思うんですね。ただ、まさに先ほど御指摘があったように、例えばポイント1について、今までやってきたこと、すなわち、メンバー大学の教員の人材を育成・高度化していくこと、学位を取って、共同研究をして、教育のための様々なトレーニングをしていくこと、これと、今度は産業界のニーズに合った人材を輩出していくこととの間には、活動タイプとして、多分ギャップがあるのかなという思いがしております。その辺、ギャップを埋めるために、今後、具体的にどういうことをしていければよいと思っていらっしゃるのか、御説明いただければ有難いです。
 また、座長が、財源の問題もあるとおっしゃっていましたが、恐らくそういった要因もあって産官学の連携の重要性が出てくるのではないかと思います。
 それから、将来の(意義)ポイント2のところで、知的ネットワークをつくっていくという点について。これは第2期までの成果として、当初、そこまで予期はしていなかったけれども、ホスト大学の中に国際大学院のプログラムができるとか、例えば地域の大学の中でだんだん分業が進んで、テーマ別に拠点ができてきたのではないかという印象を持ちました。そういった理解でよろしいでしょうか。今後は、こうして既にできた拠点があり、これらをもとにテーマごとのネットワークを作っていくという趣旨と理解してよいのでしょうか。その辺、確認をお願いします。

【座長】では、小西課長、お願いします。

【小西課長】御質問と御助言、どうもありがとうございます。
 まず、他国の取り組みというところですが、実は、AUNとの関係で申しますと、AUNに対しましては、EUや韓国、中国などが様々な協力をしているというようなことは聞いています。ただ、AUN関係者の話によると、その内容は単発のセミナーなど、事業として比較的短期のもの、単発のものというのが多く、SEED-Netのように10年間にわたってこれだけ継続的に、ないしは大きな投入で協力してくれる事業はないということです。日本は、コミットしてからスタートするのが遅いが、事業が開始するとしっかりやってくれる、他国はコミットは早く、支援も早いがその後の協力が続かないということを言われたことがあります。
 また、SEED-Netの活動の中でASEAN域内での分野別の学術会議を開催していますが、中国や韓国、オーストラリアの教員でたまたまASEANメンバー大学等にいる人が会議に参加することがありますが、こういったフレームワークはどうしてできたのか、自分たちもこのような活動をやりたいというコメント・質問を受けるという報告を現地から度々聞いています。 

【委員】今、ちょっとお話を聞いていて、やはり私もこういう、いわゆるメンバー各国に対してのプロジェクトですから、これは当然だと思うんですけれども、もう一方で、まず、日本の産業界との関係とか、そういうものをやっぱり視点に入れておく必要があるんじゃないかという感じがします。特に、御存じのように、日本というのは、やっぱり物を輸出していかないと食っていけない国。ところが、今の企業を見ていましても、こういう状況の中で為替がこういう状況になるにつれて、やはり輸出というものが難しくなってきている。そうすると、その第2段としてのどういうアクションを起こすか、投資と、海外投資というものをやっていく、企業買収とかやっていって、そこで生産拠点をつくる。さらには、もうその場で自ら進出せざるを得ないというような企業が今、出てきているんですね。特に、今は大企業だけじゃなくて、中小、中堅、小企業も、もう今の状況だと日本では食っていけませんという企業が出てきているわけです。そういう企業は出ていくと、それなりの投資が必要となりますから、そのためにはやっぱり人材とか、ノウハウとか、いろんなものが必要になってくるんですね。そのときに、じゃあ、日本から人を連れていくと当然の経費がかかってくる。だったら、地元にそういう優秀な人がいれば、そういう人に実際に来てもらって、それで、その部分で活躍してもらうと、そういうニーズはもう出てきていますし、これからも出てくると思うんですよね。やっぱりこういうところで、せっかく育成した人を、もちろん地元の各国の官庁なり、企業なり、いろんなところで活躍していただくというのもいいと思うんですけども、もう一方で、こういう日本企業、こういうアクティブな活動している中で、こういう人たちへの日本の産業界との関係とか、そういうのも少し視点を入れておいた方がいいんじゃないかなという。今、まさにこういう厳しい状況の中ではそういうものが求められているんじゃないかなという感じはします。 以上でございます。 

【座長】私座長として第3次の、先ほど小西課長から紹介ありましたレポートをまとめたのですが、そこのところが主要なポイントになっています。いかにして現地の企業をサポートできるような人材を出して行くかということですね。 

【小西課長】私ども反省するべきところとして、いわゆるオールジャパンとしての事業展開がこれまで余り得意ではなかったり、ないしはそれを見せるのが得意ではなかったという点があります。しかし、昨今の厳しいODAを取り巻く環境の中では、きちんと日本にとってもメリットのある事業を展開し、それをきちんとアピールしていくことも大事であると考えています。その1つが、日本の産業界との連携であり、日本の大学にとってどういったメリットがあるのかということをきちんとアピールしていくということだと思っています。その産業界との連携、とりわけ日系企業との連携というところに関しては、これまでも、先ほど申しました地域での学術会議の場などに現地産業界の方を招へいして講義を行ってもらうなどの取り組みを実施してきましたが、次の事業展開の中ではそれをより強化するというところで、日系企業等を含めて共同研究をするためのファンドをつくったりとか、ないしは産学連携コーディネーターを配置して、日系企業も含め企業と大学との共同研究を含めた連携を強化・促進することを考えています。
 また、本邦大学についても日本の国内の少子化に対応できるように、優秀な域内の教員との共同研究の体制をしっかりと維持できるようなものであったりとか、これまで日本のODA事業というのは、どうしても相手国に対して指導する事業という性格ゆえに、例えば日本の学生というのは、基本的には学ぶ立場であり、指導する立場でありませんので、日本の専門家として送り出すということができませんが、これを日本の大学の研究室と相手国の大学の研究室の研究室同士での連携を通じて協力するという枠組みを作り、この中で、日本の大学院生や学生も現地に日本の指導教員と一緒に入って、共同研究の一部に参画することによって、日本の学生のグローバル人材化を促進するというようなことも考えていきたいと思っています。以上でございます。 

【委員】今、小西課長が既に回答の中でお話ししたことが実は質問項目でもあったものですから、重複するんですけれども、今日のお話を伺っていて非常に興味深いなと思ったのが、日本の大学対東南アジアの大学との関係はバイラテラルであるということと、しかしながら、ASEAN諸国内での学生の流動性ということを考えると、そこのところはマルチになっているわけですよね。そうすると、その今、おっしゃった産業界との連携というものがなぜ重要なのかというのが、日本の大学の視点から申し上げますと、例えば日本の大学のメンバー校11校ありましたけれども、その大学の先生がASEANのどの大学と連携をするかって表になっていますが、その大学が存在している各国のニーズというようなものが情報としてなかなかないというようなことがあるかと思うんですね。といいますのは、共同研究を、例えばどのような分野でしていけば、それは日本の大学のメリットにもなるし、現地の本当に重要な人材育成につながるのかというところ、それから、ASEANの国家内では、要するに、内々教育的に人材育成が行われているわけですから、そこの、例えばタイとベトナムのニーズというようなものも知った上でなければ、やはり共同研究って成り立たないと思うんですね。ですから、そういうところで、逆に現地で活躍している日系企業とか、あるいは日本で現地の企業に対して関係を持っている企業の人材育成としてどのようなものが必要なのかというところを入れた共同研究をしていかなければ、大学にとってのメリットも出ないし、マルチで行われている内々教育に対しての日本の教育も、やはり実質的なところが進まないのではないかと思っているのが第1点です。
 それから、2番目に言われた日本の大学が送り出していくという観点なんですけれども、このSEED-Netの試みは工学系の大学ということの連携としてできたものですけれども、日本の大学の文系の学生も、こうしたものにある程度関わりながら現地に行くというようなところに参画できていくと、そこのところでの日系企業との連携とかいうものも、やはり相乗効果が出てくるのではないかなという印象を持ちました。
 それから、最後の点ですけれども、地域間の協力、あるいは日本大学とASEAN諸国との大学の学位の点に関しまして、質の保証をどのようにしているのかというところをお聞きしたいと思います。今日、先ほどのSEAMEOの方のところにも質の保証というところでは、単位の交換とか、学生の流動性をどうするかということをバンコクのリージョナルセンターでやっているというお話が出ましたので、そことの、例えば連携があるかどうかとか、そのあたりを教えていただきたいと思います。 

【座長】大変広範な質問ですが、いいですか。時間がないので、手短にお願いします。 

【小西課長】共同研究のテーマにつきましては、おっしゃるとおり、現地のニーズ、産業界等のニーズというのをきちっと把握してからやっていきたいと思っています。今回、有識者委員会の活動の中で調査をして、現地の主に日系企業の活動状況や意見を確認しましたが、具体的なオペレーショナルなところでは、産学連携コーディネーターを配置して、より具体的に企業側のニーズを把握しながら、活動を進めて行きたいと考えています。
 日本人学生の送り出しについては、まさに現地での活動についても参画してもらうことによって、インターナショナルな場面に接してもらうというところによって、日本の学生にも学んでもらえる機会を提供していきたいと考えています。
 3点目の教育の質の保証は重要で、かつ難しい課題と考えています。いわゆるジョイント・ディグリー・プログラム、ダブル・ディグリー・プログラム等を今後、展開していきたいと思っていますが、先ほどのバンコクにありますSEAMEOの高等教育リージョナルセンターの前のセンター長がこのSEED-Netを立ち上げたときのAUNの事務局長で、Dr.スパチャイという人ですが、私もこのプロジェクトを立ち上げたときにバンコクにいたので、彼とは非常に親しいのですが、彼とメンバー大学の質の保証を各国の教育省の質の保証の中でどう絡めていけるのか、議論をしているところです。まだ、具体的なアクションをとろうというところまでいっておりませんが、いずれにしても、ダブル・ディグリー等を設置するその前提として、ある程度のお互いの質の保証がなされていないと、それが成立しないと思っていますので、そこがまさに重要なポイントと考えています。 

【委員】企業の立場として、質問というよりも、ちょっと感じたことを申し上げます。ASEANの地域に日本の企業が進出していくというところの歴史を振り返りますと、まず、やはりアウトソーシングという言葉で代表される時代があったと思うんですね。いわゆるコストの競争力を高めていくという意味で。日本のコストが高いのでそれをより安いコストでもって物づくりをするということでASEAN地域に出ていったわけですね。その展開の形は企業によって違うわけですけれども、その間、アジア通貨危機等の試練を経て、今現在、日本企業がASEANで海外拠点をつくって、そこで事業展開をする、その主たる目的は、コストセンターではなくて、プロフィットセンターである。そこで、事業収益を上げていくという目的でASEANに積極的に進出しているというのが現状だと思います。そうした場合、企業がASEANの地域でそこで新しい事業展開をするときに何を求めていくかというと当然のことながら、企業の原理として利益と、それから、事業規模の拡大という、この2つに尽きるわけですね。そうすると、そのASEANで活動する日本企業にとって、いかに利益を上げられるか、いかに事業を拡大できるかという観点でローカルな人材の質と量を見るわけです。それがローカルで優秀な人材が確保できるということは、日系企業にとっては非常に好ましい、望ましいことなわけですね。
 ですから、そういう仕組みをSEED-Netがつくっていただくということは、日系企業にとっては非常に有益なことなんですが、問題は、そういう日本が一生懸命協力をして人材育成をしたその若者が日本の企業にちゃんと就職をしてとどまってくれるのかどうか、これは、実は企業にとって非常に深刻な問題になってくるわけですね。よくジョブホッピングという言葉で表現されますけれども、私どもも随分それで頭を悩ましております。現実にインドネシアであるとか、フィリピンであるとか、あるいはシンガポールであるとかで我が社も数百人単位のローカルな人を雇っていますが、ジョブホッピング率は高い。したがって、そこはどうやってつなぎとめていくかというところが問題なので、このSEED-Netの仕組みの中にそのジョブホッピングの何か防止策みたいなものがあったら、日系企業としては非常に、有り難い。 一方、我々の業界団体でエンジニアリング協会というのがあるんが、そこがこの2年にわたって産業人材育成協力事業というのをやっています。そこが、タイとか、マレーシアとかで調査をしているんですけれども、そのときの調査結果として、こういう国の若者たちが今、何を望んでいるかというと、1つは、資格なんですね。資格を持つということは、彼らの就業機会を増やすし、より高いレベルの、高い給与をもらう、そういう職にありつけるということで、この資格というものに対して、彼らは非常に大きな関心を持っています。したがって、資格認定制度というものを日本が上手につくり出すと、これはある意味で彼らの目を日本に向けさせることができる。また、国際標準というもう一つの大きな彼らの目標もあるんでしょうけども、SEED-Netの卒業生というブランドと同じような意味で資格認定制度があると、これはもしかしたら、効果があるのではないだろうかと。
 ただ、資格を取ったが故に、それがまたジョブホッピングを助長するという懸念もあるんですけれども、それはそれでやむを得ないかなと思います。いずれにしても、日系企業から見たときに、このSEED-Netがどういう形で日系企業の求めている姿とうまく合致していくか。その辺の工夫をしていただけるとありがかな、そんな感想を持ちました。以上です。 

【委員】産業界からのお話とか、大学の個別的な事柄、共感するところもあるんですけれども、ちょっと違う話をさせていただきたいんですが、1つは、私、JICAとの関係で法整備支援にかかわっていまして、東南アジアとか、中央アジアの法整備支援をしている。それとの関係で議論をちょっと立てると、こういうことがあると思うんですね。つまり、法整備支援にしても、このSEED-Netにしても、要するに、その国におけるキャパシティをつくるということだと思うんですね。しかも、このケースの場合には、工学系教員の質を高めることによって、その国の産業発展の土台をつくる。そういう意味で、要するに、ブレーンのドレインとか、ゲインじゃなくて、ブレーンがうまくサーキュレートするという、こういう仕組みで非常に面白いと思っていますので、ここに日本がどう絡まるかというときに、最初に大学院に来るところに、域内もそうなんだろうけれども、日本にもう少し来れるような仕組みというのが、多分日本にとっては非常に重要な、それは産業界にとっても、大学にとってもそうだと思うんですね。そうすると、それとの関係で、例えばこの人たちが来るときに、それは文科省のいろいろな政策がどういうふうに絡められるか。多分みんな国費留学生で来ているんだろうと思うんですけれども、こういうものに対する通常の国費留学生というシステム、あるいはJICAからの推薦の国費留学生というだけではなくて、むしろ、文科省の観点からしても、こういうものに対するより違う視点からのやっぱり議論の立て方というのはあるんじゃないか。これが1点目です。
 それから、法整備支援をしていると、必ず日本の方の、我々は輸出というか、その受け入れをしてもらうわけですけれども、同時に、常にアメリカと、それから、ADB等も常に競争関係に立ってくる。そこで議論になってくることを応用すると、こういう形でキャパシティをつくる際に、どこの国に行って、何で来たかというのは非常に重要だとすると、やはり欧米の大学が同じような形で様々な支援してプルをしようとしているわけですね。それをどういうふうにこれで阻止、まあ、できるかどうかわかりませんけど、する仕組みがあり得るどうか。 それから、もう一つは、これに対して、それぞれの受け入れ国の観点からすると、このネットではなくて、それぞれの国がいろいろな国に対して、自分の国の大学の教員にドクターを取らせるためのシステムをつくり始めましたよね。例えば中国もそうだし、ベトナムもそうですね。そうすると、そのような各国がやっているものに対して、これがどううまく影響を与えるか、どういうふうにそれを取り込むかというのが多分これからの課題になると思うんですけれども、そのあたりについて質問というのか、意見というのか、ちょっとわかりませんけれども、お考えがあったらお聞かせいただきたいと思います。 

【座長】  どうですか。難しいですか。 

【小西課長】文部科学省の事業との区分けで申しますと、SEED-Netの活動の中で本邦大学への留学支援は、文部科学省の国費留学ではなく、JICAの中の長期研究員というスキームで実施しています。実は多くの申請がASEANメンバー大学側から出されているのですが、JICAの予算が厳しくて、ASEAN側からの希望に十分応え切れていないという状況にあります。日本の大学の先生方にもっと現地に行っていただくということに対しては、これは大学、ないしは先生個々人の取り巻く環境があってなかなか厳しいというのが現実と考えています。前回の会議でE-JUSTの紹介をした際にお話をさせていただきましたが、なかなか日本の大学の先生方は本来業務などで忙しくて現地に行くのが難しいというようなところがあり、そこは私どもはいつも頭を下げてお願いをして行っていただいているというような実情があります。できれば、より多くの本邦大学の先生に、より頻繁に現地に行っていただけるようにならないかと日々考えています。
 ADBとか、アメリカ、他国との関係の中で申しますと、どうしても欧米の方に目がいくというのが実態だと思います。ないしは、最近、中国も積極的に奨学金を出して中国に呼んで域内の人材育成を図っています。これに対して、日本がどれだけ魅力なプログラムを提供して、日本の中でASEANを引っ張っていけるかどうかというのは、まさに勝負だと思っており、それをしっかりとこの次期プロジェクトの中で魅力あるものをやっていきたいと思うし、それをしっかりつなぎとめておきたいと思っています。
 メンバー大学における大学院プログラムの充実と、日本の大学院への留学の競合というのはまさにそのとおりだと思っています。ある部分はしっかりとサポートし、ある部分はお互いに競争する中でどんどんと磨かれていく部分もあるんだと思っていますので、共同研究等のアカデミックな共同の活動の中を通じてお互いを高めていくこともあるかと考えています。 

【委員】次期の問題をいろいろ考えると、財源をどうするのかというのは本当に大きな問題だと思うんですね。ASEAN等に対する財源、グラントはもうどんどん減っていますよね。もう技術協力もどんどん減っていくと。そうすると、ローンしかないんじゃないかという感じなんですね。ローンだとバイラテラルの制度だから、もっと個々とやらないと駄目だというような、そこら辺を何か思い切って、そういうASEAN事務局にローンみたいなのができる基金をつくるとか、組織をつくるとか、あるいはアジア開発銀行の中に何かそういうものをつくるとか、アジア開発銀行でも駄目ですね。やっぱり個々とやらないといけないですからね。だから、そういう仕組みをそろそろもう考えてもいい時期なんじゃないかな、対ASEANの協力についてはですね。そんな気がしますね。
 あと、もう1点は、この地球規模課題への対応とか、産学連携研究活動の対応というと、JST、JSPS、あと、文科省の予算や、今、JICA連携のプロジェクトもありますよね。それと、産学連携も文科省のがありますよね、連携研究の。ああいうのと何か、オールジャパンで考えると、一体になってやるのがどうしてもイメージせざるを得なくなるんですね。JICA独自のグラントがもう予算が減っていく中で、そこら辺を何か新たな仕組みみたいなものを今、ちょっと考えていく必要があるのかなと、そんな気がしているんです。 

【座長】ありがとうございました。今、提起されました基金といいますか、ファイナンスの問題ですが、これはSEED-Netの議論の中でも相当出てきてまして、この件について何とかしないと、今のままの形では到底無理だろうという意見が多く出ています。仕組みですね、仕組みをどうするかということをオールジャパンとしてやらなきゃいけないだろうという意見は出ていますね。小西課長、何かありますか。 

【小西課長】JICAの予算が年間約6億円これに使っております。これに対して、ASEAN側からも様々な形で約1.5億円が支出されています。つまりコストシェアで事業が実施されていますが、松岡委員から言われたように、そのJICAの中でもほかのスキームもありますので、ほかのスキームもうまく取り込みながら、またJICA以外の事業などとも連携しながら次の事業を実施していきたいと思っています。 

【座長】ありがとうございました。私もバックグラウンドが工学部ですが、工学系だからできたというところはあるんですね。日本の工学系の11の大学または学部がサポートしています。また、ホスト大学については、従前から留学生がたくさん来ている。それで、その留学生が帰国して、教員になったり、あるいはエンジニアになったりして、そういうところから情報は全部とれていますし、それから、もう一つ大きな存在はAITです。バンコクにあります大学院大学です。ここへ日本のセカンドメントを随分長いこと続いて、日本から5人コンスタントに教員が行って、それで指導していたこの人たちがASEAN地区へ散って、今、非常に高い地位についています。そういうその前提があるからこのプログラムができたので、突然だれかが考えてできたということではない。長年に亘る(わた)積み重ねがあって、それでここまできたということなんです。ほかの分野とは全く違う背景があるということは、御理解をいただきたいと思います。
 それから、もう一つ、先ほど小西課長が言われたように、このプログラムは、大変な篤志家─篤志家と言うと怒られるかもしれませんが、E-JUSTもそうですが、一流の工学部の先生方が一生懸命これを育ててきたんですね。ですから、そういう人を少しでも増やさないといけないんですが、なかなか増えていかない。先ほどジョブホッピングの話が出ましたが、最近の若い研究者は、業績至上主義ですね。評価が悪いのでしょうが。なかなかそういうところに食いついてくれない。本当に人材不足ですね。辛うじてOB、それから、もう既に定年近い人でそういうことの意義を理解してくれる人が篤志家として信じられない働きをしてくれているんですね。 

【委員】このSEED-Netの意義について若干、短くですけれども、やはり1つは、当然ことながら、人材育成ということであって、日本の企業が海外、特にアジアに進出しているときに抱える課題として、どんな調査でも必ず出てくるのが管理職の人材が不足しているということと、それから、技術者の不足というのが非常に大きな問題点として挙げられていますので、これはトレナーズトレーニングというか、教育する人を育てるということですから、現場に出る人と直接結びついているわけではない。ちょっと迂(う)遠な形ではありますが、しかし、これがすそ野を広げるというか、波及効果があって産業人材を育てるという意味があると思うんですね。それが日本企業に定着するかどうかというのがもう一つ別の課題と、先ほど御指摘があったとおりだと思いますけど。
 2つ目の意義というのは、やはり標準化戦略になるんじゃないかと思うんですね。この3つ目に、アジアとしての科学技術振興のプラットフォームを形成というふうな書き方がされていますけれども、言い方を変えれば、日本発の技術をどれだけアジアに定着させて、それを、アジアを最初のステップにして国際標準にしていくかと。そのための大変有意義なツールになるんではないかと思います。もちろん法制度整備なんかも同じような考え方だと思いますけれども、その標準化ということを切り口にして、この意義というのを強調するということが1つ考えられるのではないかと思いました。 

【座長】つい最近、産総研が国際標準化のシンポジウムをやりましたが、相当我が国は標準化でやられてしまっています。もうけをみんな他の国に持っていかれているという状況なので、どうやってその辺の人材を日本で育成するかということも大きな問題であるし、今、委員がおっしゃったように、日本のあの地域での貢献がそういうところに結びついていくと非常にいいと思います。なかなか難しい問題ですが。ありがとうございました。本日は、2つのアジェンダについて御議論いただきました。大変濃い、いい議論ができたのではないかと思います。 

○ 最後に、事務局より次回の会議での議題について説明がなされ、閉会した。

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(大臣官房国際課国際協力政策室)