平成23年7月20日
第2回国際協力推進会議
中東産油諸国の大半がODA卒業国。しかしながら、原油枯渇後を見据えた産業育成・人材育成が各国の課題であり、教育強化のため、自国の予算を投じて先進諸国への留学生派遣、教育・研究者の誘致などを進めている。その中、サウジアラビアを初めとして日本型教育への関心が強まっているが、ODA以後の受皿が確立されておらず、日本側がその要望に十分対応できていない現状がある。
とりわけ理数科の能力が低いことがこの地域共通の課題である(TIMSSにおいてはそれが如実に表れている:参考資料集p7参照)。理数科能力の欠如は、本邦の大学が同地域の留学生を受け入れること、本邦企業が現地人材を採用することにおいて大きな障害となっており、初等中等教育段階の理数科教育を改善することは大きな意義がある。その具体的な戦略及び協力の枠組みがいかにあるべきか。
学校での清掃指導や給食指導、理数科教育など、日本式の初等中等教育技術や手法への注目が、特に湾岸地域で高まっている。現在アブダビでは日本人学校に現地児童を受け入れる形で対応しているが、これを恒常的に支援する、また、より大規模な形で現地児童に対して提供する方策はないか。
1)先方側が費用を負担してでも日本に留学生を送ろうとするニーズが示されている。しかし、上記理数科能力の問題等により受入れが進んでいない。上記の中長期的な取組に併せ、戦略的・組織的な予備教育の導入等、具体的な留学生受入れの強化策が考えられないか。
(参考)GCC諸国の留学生数の推移(参考資料集p11参照)
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H16 |
H17 |
H18 |
H19 |
H20 |
H21 |
H22 |
クウェート |
11 |
7 |
7 |
6 |
6 |
7 |
8 |
サウジアラビア |
28 |
31 |
23 |
159 |
184 |
253 |
300 |
アラブ首長国連邦 |
11 |
10 |
14 |
8 |
19 |
33 |
46 |
バーレーン |
4 |
6 |
6 |
6 |
7 |
7 |
9 |
オマーン |
8 |
24 |
10 |
9 |
12 |
6 |
7 |
カタール |
1 |
0 |
0 |
0 |
0 |
1 |
2 |
合計 |
63 |
78 |
60 |
188 |
228 |
307 |
372 |
2)サウジアラビアのKAUST、カタールのEducation Cityなど、中東産油国には、潤沢な資金を利用して世界中の研究者を集める高等教育・研究機関が存在する。これら機関に日本の大学や学生は進出すべきか。すべきだとすれば、どのようにして進出する大学や学生の数を増やすことができるか。
3)中東・北アフリカ地域における日本型工学高等教育の拠点としてE-JUSTがある。E-JUSTの地域展開戦略を踏まえつつ、中東産油諸国における工学高等教育ニーズに日本としてどのように対応していくか。他国との競争において、本邦の高等教育の何を「売り」にしていけるか。
日本のしつけ教育、工学教育等は中東各国から注目を浴びており、大きな資金力を持つ中東産油国に対しては、日本型教育を「売る」ポテンシャルがあると考えられるが、現状は個別の小規模の取組に留(とど)まっている。関係者の連携により、オールJapan体制によるパッケージ型協力(日本型の初等・中等・高等教育の協力パッケージ)を相手方にオファーし、先方側費用負担による大規模な教育協力が実施できないか。
E-JUST等、本邦大学と教員同士の関係が深い海外の大学との、学生の交流の推進。一定期間、途上国側学生を本邦で受け入れるとともに、本邦学生を現地に派遣することができないか。日本人学生にとっては、短期間であっても現地で優秀な人材と交流する機会が得られ、国際協力や海外への意識が高まることが期待できる。
日本人学生、外国人留学生の、現地日系企業でのインターン実施は、グローバル人材育成のために効果的であると考えられるとともに、企業にとっても優秀な人材を確保することにつながる可能性がある。現地企業や現地NGO等への学生のインターン参加を推進できないか。その手段はいかにあるべきか。
大臣官房国際課国際協力政策室