資料3  議論いただきたい論点例

平成23年6月 大臣官房国際課

1.対中東産油国への協力について
(ODA非対象国における教育協力ニーズへの対応)

 中東産油諸国の大半がODA卒業国。しかしながら、原油枯渇後を見据えた産業育成・人材育成が各国の課題であり、教育強化のため、自国の予算を投じて先進諸国への留学生派遣、教育・研究者の誘致などを進めている。その中、サウジアラビアを初めとして日本型教育への関心が強まっているが、ODA以後の受皿が確立されておらず、日本側がその要望に十分対応できていない現状がある。

(1)理数科教育への協力
 とりわけ理数科の能力が低いことがこの地域共通の課題である(TIMSSにおいてはそれが如実に表れている)。理数科能力の欠如は、本邦の大学が同地域の留学生を受け入れること、本邦企業が現地人材を採用することにおいて大きな障害となっており、初等中等教育段階の理数科教育を改善することは大きな意義がある。その具体的な戦略及び協力の枠組みがいかにあるべきか。

(2)初等中等教育における日本式教育
 学校での清掃指導や給食指導、理数科教育など、日本式の初等中等教育技術や手法への注目が、特に湾岸地域で高まっている。現在アブダビでは日本人学校に現地児童を受け入れる形で対応しているが、これを恒常的に支援する、また、より大規模な形で現地児童に対して提供する方策はないか。

(3)高等教育への協力~本邦大学の国際化
 1)先方側が費用を負担してでも日本に留学生を送ろうとするニーズが示されている。しかし、上記理数科能力の問題等により受入れが進んでいない。上記の中長期的な取組に併せ、戦略的・組織的な予備教育の導入等、具体的な留学生受入れの強化策が考えられないか。
 2)サウジアラビアのKAUST、カタールのEducation Cityなど、中東産油国には、潤沢な資金を利用して世界中の研究者を集める高等教育・研究機関が存在する。これら機関に日本の大学や学生は進出すべきか。すべきだとすれば、どのようにして進出する大学や学生の数を増やすことができるか。
 3)中東・北アフリカ地域における日本型工学高等教育の拠点としてE-JUSTがある。E-JUSTの地域展開戦略を踏まえつつ、中東産油諸国における工学高等教育ニーズに日本としてどのように対応していくか。他国との競争において、本邦の高等教育の何を「売り」にしていけるか。

(4)日本型教育パッケージ輸出~中東諸国教育改革支援
 日本のしつけ教育、工学教育等は中東各国から注目を浴びており、大きな資金力を持つ中東産油国に対しては、日本型教育を「売る」ポテンシャルがあると考えられるが、現状は個別の小規模の取組に留(とど)まっている。関係者の連携により、オールJapan体制によるパッケージ型協力(日本型の初等・中等・高等教育の協力パッケージ)を相手方にオファーし、先方側費用負担による大規模な教育協力が実施できないか。

2.対ASEANの教育協力について (オールJapan協力)

 ASEAN諸国の多くは現在もODAの対象であるが、高中所得国のマレーシアなど、海外ODA依存の状況から抜け出しつつある国も多い。また、それらの国々においては、むしろ民間同士の関係がより重要な影響を持ちつつあり、ODAと民間の連携を強化することが課題である。 

(1)ODAで育成した現地人材・組織の活用について
 我が国ODAにより多くの現地人材が育成されてきている。ODA事業においては、事業目的が達成されたら協力が終了するのが基本。日本がODAで育成した組織・個人との関係が切れ、むしろ他国のプレゼンスが拡大している事例も少なくない。例えばSEED-Net事業においては、日本型工学高等教育を受けた人材が多く育っており大きな成果を上げている。これらの人材や大学間ネットワークをいかに発展・拡大していけるか。日本とASEAN大学の人的交流の拡大(共同教育プログラム、共同学位の推進等)はできないか。 

(2)官民(産学官)の連携について
 日本型教育を受けた人材の本邦企業への就職は、現地国側・日本側がともに目標とすることの一つである。(とりわけ、グローバル化の現在、中小企業を含む日本の多くの企業が新興国に進出している。優秀な現地人材を確保することは日本の企業にとって死活問題である)そのため、企業側の人材ニーズをいかに大学等の教育・人材育成プログラムに組み込むか、またそれら人材育成のため企業の協力をいかにして得るか。その枠組みがいかにあるべきか。

(3)ASEANとの協力関係強化について
 ASEAN地域は急速な経済成長を背景に世界的な地位を急速に高めており、日本のみならず世界の各国がASEANとの関係の強化を図っている。過去のODA等の影響により、従来日本は他国に比して優位な地位にあったが、この地位を維持・強化できるかは日本にとって生命線と言える課題。そのため、SEAMEOやSEED-Netと協働し、いかに後発ASEANへの協力を行っていけるか、それを通じて「ASEAN統合」をいかに促進していけるか。

3.教育協力の現場を活用したグローバル人材育成

 日本の若者が内向きと言われて久しい。現在、日本のグローバル人材育成のために様々な方策が検討されているが、国際協力の現場を活用した日本の若者の育成についても重要な検討課題。途上国のグローバル人材育成の取組と連携することで相乗効果を生み出せないか。

(1)大学間交流の推進
 SEED-NetやE-JUSTといった本邦大学と教員同士の関係が深い海外の大学との、学生の交流の推進。一定期間、途上国側学生を本邦で受け入れるとともに、本邦学生を現地に派遣することができないか。日本人学生にとっては、短期間であっても現地で優秀な人材と交流する機会が得られ、国際協力や海外への意識が高まることが期待出来る。

(2)インターンシップ・ボランティア推進
 日本人学生、外国人留学生の、現地日系企業でのインターン実施は、グローバル人材育成のために効果的であると考えられるとともに、企業にとっても優秀な人材を確保することにつながる可能性がある。現地企業や現地NGO等への学生のインターン参加を推進できないか。その手段はいかにあるべきか。

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