2011年4月21日
大臣官房国際課国際協力政策室
国際交流政策懇談会
平成23年3月
目次
1.はじめに
2.グローバル化に対応する教育の提供
(1)10年後に成人する現在の子供たちに対して
(2)内向き志向の現在の若者に対して
(3)国際的な舞台で活躍できる人材に対して
(4)若手研究者に対して
(5)教職員に対して
(6)持続発展教育(ESD)による国際社会で活躍する人材の育成
3.2つのワーキング・グループのとりまとめ後の対応について
(1)定住外国人の子供の就学支援について
(2)東アジアにおける交流の促進について
4.おわりに
(参考資料)
1.国際交流政策懇談会最終報告書 提言のポイント
2.参考資料及びデータ
3.国際教育交流政策懇談会及び国際交流政策懇談会設置要項
4.東アジアにおける交流に関するワーキング・グループ最終報告書
5.東アジアにおける交流に関するワーキング・グループ設置要項
6.定住外国人の子供の就学支援に関する緊急提言
7.ブラジル人学校等の教育に関するワーキング・グループ設置要項
我々が生きる現代は、いわゆるグローバル化の時代である。ヒト、モノ、カネの流動性の高まりにより「国境」の意義が曖昧となり、各国の相互依存が複雑に深化している。
グローバル化時代において我が国が存在感を高めていくためには、国際社会が模索する新たな制度構築の過程に積極的に参画していく必要がある。そのためには、我が国がこれまで推し進めてきた「知の国際化」を更に加速させ、「平成の開国」を支える礎にしていかなければならない。
「知の国際化」とは、我が国が培ってきた教育、科学技術、文化等の力を広く国際社会に発信していくことである。これには、我が国における多様な人材が生み出す不断のイノベーションが前提となるが、このためには、国際社会で活躍できる我が国の人材の育成とともに、海外の優秀な学生や研究者の受入れが不可欠である。グローバル化時代において、双方向の人的交流を活発にしていくことが、我が国の将来を左右する最重要課題となっている。
グローバル化した国際社会をリードする人材に求められる能力は、日本人としての素養、外国語で論理的にコミュニケーションをとれる能力、異文化を理解する寛容な精神、新しい価値を生み出せる創造力であると考えられる。国際社会で活躍する人材に求められる能力というと、とかく語学力が挙げられることが多いが、まずは国際社会で自らの考えや立脚点を臆することなく主張できる能力が必要であり、その際、我が国固有の文化や歴史に関する正しい知識を身につけ、自らのアイデンティティに係る自信と謙虚さを持つことが重要である。
また、少子高齢化社会を迎えている我が国が、今後も国としての活力を維持し続けるためには、優秀な外国人学生や研究者を受け入れることが不可欠である。平成20年7月には、関係省庁で留学生受入れのための方策をまとめた「留学生30万人計画」骨子を策定した。日本に留学した経験者は、いわゆる知日派として、これまでも外交や経済の舞台での我が国の大きな支援者となっている。現在、アジアをはじめとする世界各国で活躍する指導者の中には、そうした知日派が多い。
しかし、こうした日本留学経験を持つ指導者たちがあと数年で現役を離れ、次の世代は欧米への留学者が多数であるという事実は、我が国にとっては憂慮すべきものである。各国における将来の指導者層に知日派を確保するという観点からも、優秀な留学生の戦略的な受入れが喫緊の課題である。
上記を踏まえて、文部科学省は、平成21年1月に「国際教育交流政策懇談会」を設置し、同年12月までの約1年間にわたり、有識者で議論を重ねた。同年12月には、懇談事項に、教育交流のみならず、科学技術、文化、スポーツ・青少年交流も含めることとし、名称を「国際交流政策懇談会」(以下、「懇談会」という。)に変更した。
また、懇談会の下には、個別のテーマに基づいて、2つのワーキング・グループが設置された。一つは、「ブラジル人学校等の教育に関するワーキング・グループ」(平成21年1月設置)であり、昨今の景気後退の影響により、日系ブラジル人等定住外国人の子供が不就学となっている問題について議論を行い、平成21年4月に「定住外国人の子供の就学支援に関する緊急提言」をとりまとめた。
もう一つは、「東アジアにおける交流に関するワーキング・グループ」(平成21年12月設置)であり、政府の東アジア共同体構想に対応する形で、ASEAN諸国等を含む東アジア地域における大学間交流、科学技術協力、文化交流、スポーツ・青少年・教職員交流の在り方について幅広く議論を行い、平成22年7月に「東アジアにおける交流に関するワーキング・グループ最終報告書」を公表したところである。
本報告書は、各委員による大所高所からの提言をとりまとめたものであり、懇談会及び2つのワーキング・グループにおける議論を集約するとともに、今後の課題や展望を掲げるものである。
なお、本年3月11日に発生した東日本大震災に関して、この震災により亡くなられた方々に心から哀悼の意を表し、被害に遭われた多くの方々及び御家族、関係者に心からお見舞いを申し上げるとともに、ひとこと提言する。今回の震災で、日本に滞在する留学生や外国人研究者やこれから来日を計画している留学生等に大きな不安を与えており、留学生等には、災害時に関する迅速かつ適切な情報提供等が求められており、我が国の大学、関係省庁等が中心となって彼らに対する支援を進める必要がある。
グローバル化の進展に伴い、若者の中には、途上国での青年海外協力隊やボランティア活動に熱心に取り組む者や、スポーツ・文化芸術面で世界的な活躍を目指す者もいるものの、近年は、学生や研究者等の内向き志向が社会問題となっている。かつては、アメリカの大学等に在籍する留学生数は日本が首位であったのに、現在では、中国、インド、韓国等の他のアジア諸国の後塵(こうじん)を拝しているのが現状である。また、かつては、研究者のキャリア形成上必要なステップとされていた欧米の大学への留学も、近年では、帰国後のポストへの不安等から、躊躇(ちゅうちょ)する場合が多いという傾向も問題である。
資源に恵まれない日本が国際社会の中で競争力を保ち続け、存在感を維持していくためには、若者が海外で積極的に研鑽(けんさん)を重ね、幅広い人脈を築くことが不可欠であり、こうした内向き志向は、極めて憂慮すべき事態である。
現在の子供たちが、国際的に通用する人材として育成されるためには、幼少期から青年期に渡るまであらゆる教育段階において、グローバル化に対応する教育を提供する必要がある。
将来、国際社会でリーダーシップを発揮できるような人材を育成するためには、幼少期から多様な文化や言語に触れる機会を提供することが極めて効果的である。例えば、外国人の子供のための日本語学級を設けている小・中学校等もあり、そこでは、異文化コミュニケーションを育むユニークな取り組みが行われている。(※1) こうした国際性を持った学校が我が国に増えていくことが望まれる。また、国際交流に積極的な学校を増やすためには、国際的な素養のある教師の育成が求められるため、教員への海外研修の機会が広がっていくことが重要となる。
また、OECD(経済協力開発機構)は、PISA調査(※2) (生徒の学習到達度調査)を始め、加盟国共通の課題解決に向けて教育施策に関するデータの収集・分析や、情報の提供を行っている。グローバル化が進展する中で、我が国としても、積極的にOECDの取組に参画し、教育の質の向上や国際化に努めることが重要である。
内向き志向の要因の一つとして、語学力不足の問題が挙げられているが、今や国際社会の共通語となっている英語については、母国語である日本語に加え、少なくとも意思疎通ができるレベルに習得させなければならない。ASEAN諸国、中国、韓国いずれも英語教育には力を注(そそ)いでおり、その成果はめざましい。
現在、我が国も、英語をはじめとする外国語教育の充実に向けて、学習指導要領を改訂したところであり、平成23年度からは、小学校の第5・6学年で新たに「外国語活動」が導入され、「聞く」「話す」を中心とした活動によりコミュニケーション能力の素地(そじ)を養うこととなっている。
しかし、語学力の習得のためには、より早期の段階から外国語に触れることが脳の発達という観点からも重要であり、例えば、幼児向けの外国語のテレビ番組やアニメの英語版の放送等によって子供たちが身近に外国語を楽しめる環境を提供することが効果的である。また、帰国子女がせっかく外国語に親しんだ状態が帰国後に失われないように、意識的に外国語に触れられる環境を用意していくことが重要である。
現在、文部科学省では、「外国語能力の向上に関する検討会」を開催し、英語教育に関する目標設定の在り方や英語教員の英語力・指導力の強化、授業改善のための体制整備等について、有識者との意見交換を行っているところである。このような取組を通じて、初等中等教育から高等教育まで一貫した方針に基づく英語教育の更なる改革が図られることを期待する。
10代という感受性豊かで吸収力の大きい時期に異文化の人々と接することは、国際社会への関心を呼び覚ます大きな一歩となりうる。高校生の留学は、子供たちの異文化理解を深めるのみならず、諸外国との友好親善の増進に寄与し、高等教育レベルでの留学やその後の国際交流活動の拡大に資するものであることから、今後も積極的に支援することが望ましい。
日本の高校生の中には、高校卒業後に直接海外の大学に進学する者も増えている。こうした傾向は、高校時代の留学経験に触発されたり、我が国の高校が行う外国の高校との交流プログラムや国内のインターナショナルスクール等との交流によって、海外へと視野が広がったことによるものと考えられる。また、我が国の大学がこうした高校時代の海外留学経験を大学入試の際に評価していくことが望まれる。
国際交流の取組を積極的に行う高校が更に拡大するよう、国においては、各高校の取組を広く情報提供できるように努めるとともに、相手国政府や関係機関の協力を得てこうした事業が円滑に実施されるように支援することが望まれる。
現在、高等教育においては学生や研究者の流動性が促進されているが、その前段階である初等中等教育段階においても、我が国の教育環境を国際的な環境と適切に調和させることが必要である。例えば、来日する研究者の子供たちの教育環境の整備という観点や、我が国の子供たちが国内にいながら国際的な教育を受けられるという観点からは、いわゆるインターナショナルスクールや国際バカロレア(※3) のさらなる活用が求められる。
インターナショナルスクールは、明確な定義はないが、一般的には様々な国籍の子供を国籍に関わらず受け入れ、主に英語等により教育を行っている外国人学校のことを指すと考えられ、海外から来日した研究者や専門的職業人の子供の教育の場として、極めて重要である。しかし、インターナショナルスクールは、都市部に集中したり、小規模で様々な国籍の子供を教育する必要があること等から、経営が厳しく授業料も高額で、保護者の負担となっていることも事実である。こうした中で、平成21年に千葉市に設立された幕張インターナショナルスクールは、学校教育法第1条(※4)に規定されるいわゆる1条校である。1条校として認められると、私立学校への経常費補助金を受けることも可能になり、他の学校への編入学等もより円滑になると考えられる。なお、インターナショナルスクールでは、外国語で指導するための外国人教員が必要となるが、安定的な雇用が難しく、外国人教師の確保で苦労している学校が少なくないため、この点における各教育委員会の積極的な対応も期待したい。
また、国際バカロレアは、国際的に活躍できる人材を育成し、各国で認められる大学入学資格が付与されるという観点から高い評価を得ており、国際バカロレア資格を有する卒業生は我が国の大学の入学資格も得ることができる。現在、岡山大学のように国際バカロレア資格を取得した者を対象とした入学審査を行う大学も出てきており、インターナショナルスクール等を卒業した者に対する大学の受入れは広がりつつある(※5)。日本で活躍する海外の研究者等にとっては、国際バカロレア認定校は、安心して子供を通わせることができる教育機関であると考えられ、優秀な研究者等の来日を促すことにもつながる。また、日本人の子供にとっても、国際バカロレア資格を有していることは海外留学において一定の有利な条件となり得る。
現在、我が国では、インターナショナルスクールを中心に19校が国際バカロレアに参加している。最近では、1条校でも国際バカロレア教育の導入の動きがある(現在、5校が認定されている)。とりわけ、東京学芸大学附属国際中等教育学校は、平成19年4月に発足し、国の特別教育研究校及び教育課程特例校に指定され、平成22年度からは全国の国公立学校として初の国際バカロレア認定校となった。今後、同校の取組がモデルとなって、全国の公立学校等において国際バカロレア教育の導入が推進されることが期待される。
インターナショナルスクールや国際バカロレア認定校の存在は、日本の学生に高度な教育を提供するとともに、初等中等教育段階における人材の国際的な流動性を高めることに寄与するものである。今後も、シンポジウムの開催等により国際バカロレアの全国への周知・普及に努めるとともに、1条校化を希望するインターナショナルスクール等に対する情報提供等を促進することが必要である。これらの学校で育成された人材の我が国の大学へのより積極的な受入れが期待される。
日本人の若者が海外留学をためらうのは、語学力や留学費用の問題のみならず、厳しい経済状況下における就職活動の激化・長期化や、留学経験が必ずしも就職の際に評価されないという社会的背景等、多様な要因が考えられる。また、海外留学は依然として学生個人の事柄と見なされ、大学等が組織的に学生の留学促進に向けた体制を整えていない等の問題も指摘される。
本来は、学位取得を目指すような長期留学を促進することが望ましいが、学生たちの心を広く海外に向けるために、短期間の留学機会を提供することも長期留学への呼び水として効果的である。そのため、平成23年度予算では、新たに3か月未満の学生の海外派遣・受入れを行う「ショートビジット」「ショートステイ」等の事業も計上されている。金銭的な面から留学を躊躇(ちゅうちょ)する学生に対する経費面での支援や、目的に応じた留学期間を設定する等の多様な交流形態の推進は、若者の海外との接触を拡大していくことに大きく寄与すると考えられる。
学生の留学を促進するために、企業側においては、採用に当たり、留学経験やその成果を積極的に評価するという姿勢を期待したい。留学経験者に対する採用時期や就職活動開始時期の配慮等、留学経験者が就職活動で不利にならないような配慮も求められる。また、経済界には、日本のグローバルな事業活動をリードするような学生を対象とした奨学金設立の動きもあり、こうした試みが今後も拡大することが大いに期待される。
例えば、ギャップイヤーのように、学生や若者が一定期間、海外で社会経験を積むという制度も、内向き志向を打開する一つの解決策となりうる。日本学術会議は、本年2月に出された会長談話「若者の就職問題について」の中で、大学卒業後、3年間が新卒扱いになったならば、学生は、この期間を漫然と過ごすのではなく、自らの見聞や見識を高めるために有意義に活用してほしいと呼びかけている。例えば、留学によって異文化に触れて見聞を広める等、この期間を有効に活用して人生を豊かに充実させることを期待したいと指摘されているように、学生自身が主体的に自己研鑽(けんさん)に取り組んでいくよう、社会全体で支援していく必要がある。
他方、大学においては、日本人学生が留学を選択しやすくするために海外の大学とアカデミックカレンダーを合わせること等の抜本的改革から、語学教育に実践的なトレーニングを加える等の実務的な工夫まで、多様な内向き志向対策を検討していくことが望まれる。我が国でも、一部の大学で既に導入されている入試におけるTOEFL等公的英語能力試験の活用も、幅広い層の学生に海外留学の機会を広げる良い機会になると考えられる。また、例えば、国際教養大学では、在学期間中にすべての学生が1年間海外留学するカリキュラムを導入している。一定程度の語学力の習得を卒業要件とすること等も学生の海外留学の促進のためには有効であると考えられる。特にグローバル化を図る多くの大学において、今後、このような取組が積極的に取り入れられるよう、国としても支援することが必要である。
「知の国際化」を担う中心的な場が大学であることは言うまでもない。大学の国際化に向けた取組は、これまで中央教育審議会においても議論されており、大学国際化戦略事業、そして現在のグローバル30にも見られるように、様々な形態で実施されてきているが、これらの取組は決して十分とは言えない。我が国の大学を国際化していくためには、英語による授業数を学部段階から飛躍的に増やす等の大胆なカリキュラムの見直しや、外国人教員も含め、国際水準の授業を英語で行える教員を増加させる等の抜本的な取組が必要である。また、提供される教育の質の保証がなされることを前提に、教員のみならず、企業等で国際的に活躍している者が学生に講義を行うという方策も、国際感覚に優れた人材を育成する上では効果的であると考えられる。
高等教育の分野において、「国を開く」ためには、学生や研究者の流動性を高めることが求められ、そのためには、質保証を伴った大学間連携を推進することが重要である。質保証を伴った大学間連携の推進は、経済や社会の一体化が世界規模で加速する中、グローバルな視野で活躍できる人材の育成のための不可欠な要素である。実際、欧州においては、ボローニャプロセス(※6)という国境を越えた学生交流を活発化させ、域内の連携強化を図る取組が既に進んでいる。我が国としても、国内の大学の国際化を進めるとともに、アジア地域を中心として質の保証を伴った大学間交流・連携や学生交流を促進することが必要である。
日中韓3か国においては、日中韓サミットでの合意に基づき、単位互換や成績評価等の質の高い大学間交流を促進する「キャンパス・アジア」構想が進められており、引き続き具体的な交流プログラムの実施等の取組が進められるとともに、アジア地域全体を視野に入れた大学間交流の枠組み作りに取り組むことが重要である。
欧州においては、上述のようにボローニャプロセスやエラスムス計画(※7)によって活発な人的交流が行われているが、これはいわゆるリスボン相互認定条約(※8)を基礎としている。我が国では、現在、日中韓3か国における大学間の質保証や交流プログラムの推進に取り組んでいるが、今後、アジア各国の大学の連携強化により、アジア版のエラスムス計画と呼べるような構想を実現していくためには、その基礎として、学位等の質保証の制度整備が不可欠となる。
我が国が位置するアジア太平洋地域内における学位や単位の相互認定の制度を整えるための条約として「ユネスコ・アジア太平洋地域における高等教育の学業、卒業証書及び学位の認定に関する地域条約(※9)」(以下「地域条約」という。)があるが、我が国も早期に加盟することが求められている。
本年11月には、我が国のイニシアティブにより、東京で、地域条約改正案を採択するための高等教育関係閣僚会議が開催される予定であり、地域条約の改正案の成立と我が国の早期加盟に向けた取組が進められている。
人材獲得という趣旨から、より円滑かつ戦略的に、欧米、アジア等の優秀な学生を日本に留学させるためには、宿舎や日本語の予備教育を充実させるとともに、学費等の面で日本への留学を躊躇(ちゅうちょ)しないよう、奨学金制度の柔軟な運用が求められる。留学生に対する奨学金制度の情報提供に関しては、日本学生支援機構のホームページ内の「日本留学ポータルサイト」(※10)を充実することや奨学金関係団体の間で定期的に情報交換を行っていくことが望ましい。また、外国人学生の卒業後の進路に関するいわゆる出口戦略も重要であり、優秀な学生に産業界と共同で長期インターンシップ等の実践的な教育を提供する必要がある。あわせて、日本で学んだ留学生の帰国後のフォローも重要であり、人的ネットワークを積極的に構築し、優秀な人材には戦略的に投資していくという考え方も取り入れる必要がある。
上述した若者の内向き志向の一方で、世界の第一線での活躍を志す若者、青年海外協力隊のような国際協力活動への積極的な参加を志す若者がいることも事実である。このような意欲的な学生は、将来、国際的な舞台に羽ばたく貴重な人材であり、彼らの熱意と能力を十分に開花させるために、海外ボランティアやインターンシップとして、国際機関等へ派遣する機会を積極的に提供することが重要である。
そのためには、大学教育の中に、ボランティア活動やインターンシップという実践の場を取り入れ、プログラム化することが効果的である。例えば、関西学院大学は、国連ボランティア計画(UNV)(※11)と協定を締結し、国内での入念な事前研修の後、学生を国連学生ボランティアとして開発途上国に派遣するプログラムを単位化している。
今後、我が国の大学が、国際機関等における学生のインターンシップやボランティア派遣を実施し、その成果を単位として認定するプログラムを開発する取組を支援していくことが重要である。あわせて、こうした学生が将来国連ボランティアやアソシエートエキスパート、青年海外協力隊等の経験を経て、国際機関や国際的なNGO等の職員として活躍できるような体系的かつ総合的な人材育成計画について、外務省、独立行政法人国際協力機構(以下、「JICA」という。)、大学等の関係団体と連携して検討していくことが必要である。
また、国際社会で活躍するためには、日常会話のみならず、外国語による論理的な交渉が可能となる高度なコミュニケーション力も身に付ける必要がある。いわゆるCritical Thinkingといわれるような問題解決能力を養うためにも、ディベート等の教育方法が有効であり、こうした語学教育が初等中等教育から高等教育まで一貫して実践されることが望まれる。
国際機関等で働く日本人職員数が分担金や拠出金に比較して少ないという問題は、未(いま)だ抜本的な解決に至っていない。国際機関等で働く日本人職員は我が国の存在感を高めるための貴重な存在となり得るため、特に幹部職員の増加を支援する必要がある。また、国際機関の中には、我が国が戦後のめざましい経済復興やバブル崩壊後の経済の停滞等の経験の中で培った教訓に対して関心を示すところもある。我が国の行政官が蓄積してきた知見による貢献も大いに期待されるため、外務省等とも連携しながら、国際機関の幹部として活躍できるような行政官を育成するキャリアパスの構築が望まれる。
科学技術は、本来、国際性を有し、研究者の活動も国境を越えて展開されるものである。近年、世界規模で頭脳循環が進展する中で、海外との双方向の交流により、世界に通用する人材を育成・確保することが求められている。
しかし、我が国の研究者交流の現状を見ると(※12)、海外から我が国の研究機関への受入れ研究者のうち30日を超える研究者数は横ばいで推移している一方、我が国から海外へ派遣される研究者のうち、特に30日を超える研究者数はピーク時の半数以下にまで減少している。さらに、1年を超える派遣期間で見ると、平成21年度の調査では、派遣研究者数は全体の0.3%にすぎないことが明らかになった。このような研究者交流状況を踏まえ、世界的な頭脳循環の流れから我が国が取り残されつつあるのではないかという懸念がある。
長期派遣研究者数の減少要因については、日本の研究環境が整備されてきたといったことが挙げられる一方、帰国後のポストについての不安や、海外の機関へ移籍するための人脈がないこと等が挙げられている。このような状況も踏まえ、研究者が機関に所属したまま海外で研鑽(けんさん)を積むことのできる派遣制度の充実や海外の日本人研究者のネットワーク化等により、海外における研究活動を積極的に展開するよう支援の充実に取り組むことが必要である。大学等においては、若手研究者の育成・指導を行う際に優秀な若手研究者を海外へ積極的に派遣する指導方針をとるとともに、海外で研鑽(けんさん)を積んだ研究者を積極的に受け入れることが望まれる。
科学技術外交の観点から、アジア・アフリカ等との国際協力については、地球規模の問題解決で先導的役割を担い、我が国が世界の中で確たる地位を維持するため、これらの国々における科学技術の発展、人材養成等に貢献し、我が国とのネットワーク強化を図ることが必要である。このような取組を通じて、我が国の技術や規則、基準、規格の国際標準化や、社会インフラの整備に関するパッケージ化した結合システムの海外展開を推進することが望まれる。
また、地球規模問題の解決等のために開発途上国の支援という観点から行う国際協力に加え、東アジア共同体構想の一環として、参加国が互恵関係を構築し、地域共通課題の克服に資する研究開発を共同で実施するとともに人材養成や人材交流を促す「東アジア・サイエンス&イノベーション・エリア構想」を推進することが望まれる。
子供たちに最も身近に接する教員は、未来ある子供たちの目を世界に開く大きな役割を担っており、教員自身が様々な機会を通して国際的な経験を重ね、その経験を子供たちに教えることは、長期的な観点から、「日本を開く」ことの大きな一歩となりうる。こうした観点から、アジア、米国、欧州等、世界各国において、我が国の教員が海外経験を重ねることを支援することは重要である。
米国は、我が国にとって重要な国の一つであり、政治・経済に加え、教育の分野においても、米国と人的交流を拡大することは、我が国にとって大変有益なことである。
昨年11月の日米首脳会談において、菅総理が人材、文化等日米交流の強化に関する提言をした。この提言に基づく取組として、日本人の若手英語教員を米国の大学に派遣し、英語教育の教授法を学ぶとともに、米国の理解を深め、英語指導力等の充実を図る事業が行われることとなった。これにより日本の子供たちに対する英語教育の質の向上が期待されるとともに、中長期的な視点に立てば、日米同盟の深化・発展のための国民の幅広い層における相互理解の促進にも資するものであり、この事業の継続的かつ確実な実施が望まれる。
中国、韓国をはじめとする東アジアは、地理的・歴史的な観点から我が国と草の根レベルでの相互理解を育むことが不可欠な地域であり、教育に携わる者の交流の促進が求められる。平成22年5月の第3回日中韓サミットにおいて発表された「日中韓三国間協力ビジョン2020」には、「人的・文化交流及び協力を通じた友好関係の促進」として、3国間の教員交流を促進することが明記されている。これまで日中及び日韓の教員交流事業を通じて培われた教職員間の絆(きずな)が、姉妹校協定等学校間の交流にまで発展した例も増えており、今後も多くの地域で様々な交流の取組が活発に行われるこのような動きが起こることが望ましい。
日中・日韓の教員交流事業については、その成果の評価や活用を更に深めるとともに、日本から派遣される教職員数が少ないことを踏まえて、中国、韓国政府の協力を得ながら、バランスのとれた交流に努めることが望ましい。
青年海外協力隊は、国際協力の志を持つ者が途上国を訪れ、現地の文化・習慣に溶け込みながら、草の根レベルで途上国が抱える課題の解決に貢献する事業であるが、現職教員も参加できる制度となっている(※13)。
青年海外協力隊としての経験は、教員自身の指導力や人間力等の資質向上に大きく寄与しているのみならず、教員が途上国で困難を伴う環境の中に身を置くその姿勢こそが、子供達(たち)の目を海外に向けさせる強い影響力を持つこととなる。また、近年では、帰国後の教員が自らの派遣経験を生かして行う国際理解教育や外国人の子供への対応が効果的であることも注目されている。このような貴重な経験が日本の教育界において更に有効に活用されるような配慮が望まれる。
さらに、より多くの教員が青年海外協力隊の経験を積み、その経験をより多くの子供達(たち)に伝えることができるよう、教員が参加しやすい環境を整えるとともに、例えば、応募資格の年齢制限を緩和したり、対象学校を私立学校にも広げる等、「現職教員特別参加制度」の対象者を一層拡大することが望ましい。
あわせて、青年海外協力隊としての経験を社会的に正しく認知し、また評価する仕組みを整える必要がある。例えば、広島大学大学院国際協力研究科では、ザンビアにおいて、青年海外協力隊員として活動に従事し、その成果を修士論文にまとめることで、修士号を取得することができる「ザンビア・プログラム」をJICAと協力して実施している(※142)。こうしたボランティア活動と大学院教育を融合させた取組が各方面で広がることが望まれる。
現地で活躍する教員の支援も必要であり、現地で活用できる教材や情報データベースの整備等こうした成果を広く活用して、青年海外協力隊の活動がより成果を上げられるようにしていくことが重要である。
大学や高等専門学校の教職員も、国際協力の現場において、日本の技術を途上国に伝えて共同で新たな知を作り出すという両国の架け橋の役割を果たしている。具体的には、JICA専門家としての派遣が中心であり、国際協力の経験は、現地の開発に寄与することはもちろん、日本人学生への教育や、途上国からの外国人留学生に対する教育において大きな成果を上げている。こうした国際協力に参画する教職員の経験は、研究実績として適切に評価されることが望ましい。高等専門学校の教員についても、今後、国際協力への更なる参画を促進していく方策を検討することが必要である。
これからの社会を生きる子供たちは、異文化を尊重し、環境、エネルギー、資源、人権、貧困、格差問題等、地球規模の様々な問題を身近に感じていけるような国際的な視野を持つことが求められる。そうした子供たちを育成する上で、持続発展教育(ESD:Education for Sustainable Development)(以下、「ESD」という。)は、大きな意味を持つ。ESDとは、「持続可能な社会の担い手を育む教育」であり、例えば、人格の健全な発達や、自律心、判断力、責任感等の人間性を育むこと、他人、社会、自然環境との関係性を認識し、「関わり」「つながり」を尊重する個人を育むこと等の観点が必要とされており、初等中等教育から高等教育まで、あらゆる教育段階に取り入れられることが望ましい。つまり、日本人である前に「地球人」であることを認識させる教育である。
ESDは、我が国がイニシアティブを発揮して、国際社会で推進している教育である(※15)。途上国を含めた国際社会に広くESDを普及させることは、気候変動や生物多様性等の地球規模課題の解決に取り組む人材の育成につながり、こうした人材が世界中から数多く輩出されることは、科学技術外交や国際協力の推進に大きく寄与することとなる。
こうしたESDの概念を我が国の教育に明確に取り込むためにも、近年、学習指導要領に持続可能な社会の構築の観点が盛り込まれた。また、教育振興基本計画(2008年策定)においては、ESDが我が国の教育の重要な理念の1つとして位置づけられている。
国際理解教育や環境教育等のESDの研究テーマは、ユネスコスクール(UNESCO Associated School Project)(※16)の研究テーマと一致するため、我が国では、ユネスコスクールをESDの推進拠点として位置づけ、その加盟校増加、ネットワークの強化に取り組んでいる。2005年にはわずか19校であった我が国のユネスコスクールも、2011年1月現在279校まで増加している。今後も、更にユネスコスクール数を拡大し、教育委員会、大学等の関係機関、民間団体の支援体制が整備され、ESDが普及・促進することが望まれる。
本懇談会の下には、「ブラジル人学校等の教育に関するワーキング・グループ」及び「東アジアにおける交流に関するワーキング・グループ」の2つが設置され、それぞれ、提言や報告書が公表されている。これらを踏まえ、既に開始されている一定の取組の概要を以下に述べる。
この懇談会に設置された「ブラジル人学校等の教育に関するワーキング・グループ」では、平成20年秋のリーマンショック後の景気後退により、ブラジル人学校等への学費が払えなくなり、不就学・自宅待機となった子供たちへの支援として、国や地方公共団体、NPO等が連携して日本語指導や学習指導、地域交流等を行う場を提供することが緊急提言された。
それを踏まえて、平成21年度補正予算において約37億円を措置し、3年間の予定で「定住外国人の子供の就学支援事業」を実施することとなった。文部科学省から国際移住機関に拠出を行い、景気悪化により、不就学・自宅待機となっていたブラジル人等の子供に対して、日本語等の指導や学習習慣の確保を図るための「虹の架け橋教室」を外国人集住都市等に設置し、主に公立学校等への円滑な転入を目指している。
平成21年度は34教室の「虹の架け橋教室」で約1,250人の子供たちが学び、約160人が公立学校・ブラジル人学校等に進学・転入した。平成22年度は42教室において事業を実施し、9月末時点で約1,200人の子供が通っている。また、授業参観や給食体験を始めとする小中学校との連携体制の構築や、地域交流の促進等様々な成果が上がっている。
本事業は、平成23年度で終了予定であるが、依然として厳しい経済情勢にある中、各地域から事業の継続について要望が寄せられている。今後、事業の評価・検証を行うとともに、ブラジル人学校調査等の情報も活用し、子供の就学状況や新たなニーズの把握に努め、効果的・効率的な事業として継続し、そのために必要な体制を整備する必要がある。
本懇談会に設置された「東アジアにおける交流に関するワーキング・グループ」では、豊かで安定し、開かれた東アジア共同体を形成するため、ASEAN+3、EAS(東南アジア首脳会議)、SEAMEO(東南アジア教育大臣機構)等、既存の枠組みを活用して、大学間交流、科学技術、文化、スポーツ、青少年等の交流・協力を促進しつつ、国際的に活躍できる域内の人材を育成することが重要であると提言した。
とりわけ大学間交流の分野については、我が国は、ASEAN工学系高等教育ネットワーク(AUN/SEED-Net)の構築等、工学系を中心に高度人材の育成を担う高等教育機関の整備につき、国と大学の協働により長期にわたり支援してきた。その結果、アジア諸国の大学との間に良好なパートナーシップが形成されるとともに、現在も、インド、マレーシア等から工学系高等教育に関する支援要請を受けている。
我が国の大学がアジア諸国の協力ニーズを踏まえながら自主的に実施する国際協力は、研究及び教育の活動に結びつけることで、他の開発主体では実施困難な多様かつ費用対効果に優れた事業が可能となる。これまでの我が国の大学の取組は、こうした点で高く評価されている。このような取組を通じて育成された日本とアジア諸国双方の人材が中心になって、教育研究だけでなく、政治や経済、文化等の様々な分野で幅広い信頼関係を構築していくことを目指す必要がある。このような観点より、今後の国際教育協力の在り方について、政府、経済界、JICA、大学等の幅広い関係者の参加により検討を進めていくことが必要である。
以上の提言を実現するに当たっての取組として、我が国の持続的な成長を支えるためにグローバル人材育成が緊喫の課題であることを広く社会で認識し、政府がグローバル人材育成のための施策を加速・拡大するために、国家戦略を策定することが必要である。
また、我が国が、今後とも人材の国際交流を加速化し、世界の活力を取り入れるためには、内容に応じて、二国間、多国間関係等、効果的な枠組みを戦略的に活用していくことが重要である。例えば、二国間関係においては、重点国と重点分野にかかる覚書の締結が有効である。我が国の国際交流の現状を踏まえ、締結相手国、重点的に推進する分野、取組を検討し、我が国から積極的に覚書の締結を働きかけることが必要である。これによって、教育、文化、スポーツ、学術・科学技術分野での取組を促進し、関係機関同士の交流を支え、持続的かつ発展的な交流という成果が期待できる。
また、多国間関係においては、ユネスコやOECD等の国際機関に加え、ASEAN+3、EAS(東南アジア首脳会議)、ASEM(アジア欧州会合)、APEC(アジア・太平洋経済協力)、SEAMEO(東南アジア教育大臣機構)等、東アジアを中心とした枠組みにおける教育に関する取組も積極的に活用し、我が国の考え方を提起し、協力関係を構築していくとともに、それらの成果を我が国の教育改革に生かしていく努力が必要である。
(※1)例えば、外国人の子供が比較的多く通う東京都港区笄小学校では、英語での授業、外国の文化に触れる「ワールド活動」、日本語学級等を設けており、特徴的な国際理解教育を行っている。
(※2)OECDが実施する学力調査で、義務教育修了段階の15歳児(日本は高等学校1年生が相当)が持っている知識や技能につき、実生活の様々な場面で直面する課題にどの程度活用できるかと評価することを目的とした調査である。2000年から3年ごとに実施しており、2000年は読解力、2003年は数学的リテラシー、2006年は科学的リテラシーを中心分野として調査。2009年は、65か国・地域が参加して、2度目の読解力中心の調査を実施。2012年には、数学的リテラシーを中心に調査を実施予定。
(※3)1968年にスイスに設立された非営利教育団体である国際バカロレア(IB, International Baccalaureate)機構による教育。全人教育の理念のもと共通のカリキュラムを設定し、国際バカロレア資格取得のための統一試験を実施している。設立当初は、インターナショナルスクールで学ぶ生徒に対して国際的に認められる大学入学資格を付与することを目的としていたが、現在では幼稚園・小学校・中学校・高等学校レベルのプログラムも実施し、インターナショナルスクールだけでなく多数の現地校がIB教育を実施する認定を受けている。2011年3月現在、世界全体で140か国の3,200校が参加している。
(※4)学校教育法第1条は「この法律で、学校とは、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校とする」と規定されている。インターナショナルスクールは、通常第1条に規定されている学校ではなく、学校教育に類する教育を行う「各種学校」(同法第134条第1項)として位置づけられているところが多い。
(※5)インターナショナルスクール卒業生の我が国の大学への入学資格については、文部科学省告示において、国際バカロレア、アビトゥア(ドイツ)、バカロレア(フランス)等、外国の大学入学資格の保有者に認められているが、さらに、平成15年より我が国において高等学校に相当する外国の学校の課程と同等の課程を有するものとして、外国の学校教育制度において位置づけられた教育施設の課程の修了者及び国際的な評価団体(WASC (Western Association of Schools and Colleges), CIS ( Council of International Schools), ACSI (Association of Christian Schools International) の3団体)の認定を受けた外国人学校の12年の課程を修了した者についても認められるようになった。
(※6)1999年採択のボローニャ宣言において示された「欧州高等教育圏」の実現を目指す取組。欧州47か国が参加するプロセスで、学生・教員の流動性の促進、共通の学位構造、単位互換制度、教育の透明性の確保、各国高等教育制度の多様性の尊重等、欧州諸国における高等教育分野での協力枠組みである。
(※7)エラスムス計画(The European Community Action Scheme for the Mobility of University Students : ERASMUS)は、1987年に決定された計画で、各種の人材養成計画、科学・技術分野におけるEC(現在はEU)加盟国間の人物交流協力計画の一つであり、大学間交流協定等による共同教育プログラムを積み重ねることによって、「ヨーロッパ大学間ネットワーク」(European University Network)を構築し、EU加盟国間の学生流動を高めようする計画である。EU加盟国及びアイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー、トルコの31か国、4,000以上の高等教育機関が参加。
(※8)ユネスコは、学生や研究者の流動性を高めるため、学位及び単位の相互認定、高等教育への入学、進学条件の互換性に関する原則を定めた条約を地域別(ヨーロッパ地域、アジア太平洋地域、アフリカ地域、アラブ地域等)に作成している。リスボン相互認定条約は、そのうち、ヨーロッパ地域における条約であり、正式名称は「Convention on the Recognition of Qualifications concerning Higher Education in the European Region」。1997年採択。
(※9)ユネスコが作成する学生・研究者の流動性を高めるための学位及び単位の相互認定、高等教育への入学、進学条件の互換性に関する原則を定めた地域別の条約(ヨーロッパ地域、アジア太平洋地域、アフリカ地域、アラブ地域等)のうち、アジア太平洋地域における条約。1985年に発効しており、現在締約国は21か国。我が国は職業資格等の問題で未批准。現在、より多くの国が加盟できるよう、職業資格の条項を外すとともに、高等教育の質保証に焦点を当てた改正作業が行われている。
(※10)日本留学に関する総合的な情報サイトであり、日本語・英語・中国語・韓国語の4言語で、留学前、留学中、留学後の分類に基づき、日本留学をサポートする豊富な情報が掲載されている。 http://www.g-studyinjapai.jasso.go.jp
(※11)国連機関のひとつで、ボランティア派遣機関。農業、通信、土木、医療等の技術開発分野から、紛争、自然災害対応等の緊急人道援助にいたるまで多様な分野の職種にボランティアを派遣している。通常は、大学卒業者、資格保有者、職務経験者等を派遣しているが、関西学院大学は、アジアの大学として初めて学生ボランティアの派遣を実施。
(※12)「国際研究交流の概況(平成20、21年度)」(文部科学省)
(※13)青年海外協力隊は、40年以上の歴史を持ち、延べ3万5,000人を超える若者が途上国に派遣されている。そのうち「現職教員特別参加」制度は、平成14年度から開始され、国公立学校の教員を対象にしており、これまでに約700名が参加している。
(※14)「発展途上国の諸課題の解決に取り組むことができる高度専門職業人の育成」という目的の一環として、広島大学とJICAによる連携協定のもと平成14年度より実施されている特別教育プログラム。前期博士課程に在籍する学生が青年海外協力隊(理数科教員)に参加。ザンビアにおけるJICAボランティア活動に従事する。その傍ら、学生は並行して研究活動を行い、大学教員による指導をメール等で受け、帰国後に現地での教育協力の成果を修士論文にまとめる。2年間の現地派遣期間を含め標準期間3年半で修士学位が取得可能。
(※15)2002年の国連総会で、我が国の提案により、2005年から2014年までの10年間を「国連持続可能な発展のための教育の10年(DESD)」とすることが決議され、ユネスコがその推進機関に指名されている。2014年のDESD最終年には、日本においてユネスコと我が国の共催でDESD最終年会合が開催される予定である。
(※16)ユネスコの理想を実現するため、ユネスコが認定し、平和や国際的な連携等を実践する学校。世界180の国・地域で9,000校以上のユネスコスクールがある。
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