資料1  国際交流政策懇談会 第2回議事要旨(案)

1.日時     

 平成23年2月14日(月曜日)10時00分から12時00分

2.場所

 文部科学省3F1特別会議室

3.議事 

(1)最終報告書の作成について

(2)その他

4.配付資料

資料1  国際交流政策懇談会 第1回議事要旨(案)
資料2  国際交流政策懇談会 最終報告書 概要(案)
資料3  国際交流政策懇談会 最終報告書(案)
資料4  参考資料及びデータ 
資料5   次回懇談会の日程

5.出席者

(委員) 金澤座長、青木委員、池上委員、池田委員、佐藤委員、田中委員、田村委員、牟田委員、渡辺委員

(文部科学省) 金森文部科学審議官、森口文部科学審議官、前川総括審議官、田中政策評価審議官、合田科学技術・学術政策局長、藤嶋国際統括官、池原国際課長 他

6.議事概要

○概要案及び報告書案について、浅井国際協力政策室長より概要説明が行われたのち、自由討論が行われた。

(1)【はじめに】~【2(1)10年後に成人する現在の子供たちに対して】

【委員】具体論まで踏み込んでいないのが残念である。国際交流における戦略や戦術にも言及してはどうか。

【池原国際課長】この懇談会の再開後まだ2回目であり、事務局としても、本報告書案では、理念を中心に書かせていただいており、具体的な政策にまでは言及できていない部分もある。本日、委員から様々な御意見を頂き、それを報告書案に盛り込みたいと考えている。

【委員】報告書3ページの上から3段落目の部分について、「我が国が直面する厳しい国際競争の時代を生き抜くためには、日本人としての素養を大前提として、外国語で論理的にコミュニケーションとれる能力、異文化を理解する寛容な精神、新しい価値を生み出せる創造力が求められる」点については理解できる。他方、その後の文章で、「日本人の素養として、我が国固有の文化や歴史から培われた『独自の価値』」という表現には違和感があり、意味するところが狭いのではないかと感じる。日本人の素養として、我が国固有の文化や歴史に関する知識を身につけることは大変重要であると思うが、それを前提として、国際的に説得力のある価値観を持つという表現の方が適切ではないか。

【委員】同感である。視野の広さが重要である。自分たちの論理だけでは国際的には通用しない。国際的な視野を持って、様々な事象について考えることが重要だと感じる。また、4ページの「語学力の向上」についても、この記述では弱すぎる。学習指導要領を改訂し、小学校5年から英語教育を開始したことは一定の評価に値するが、それでも遅いと考える。OECDのブレインサイエンスプロジェクト等においても、かなり早い時期から始めなければ、外国語語学能力は一定の成果を上げないという結論を出している。このような事実に基づき、より幼少期から英語教育を実施することを記述してほしい。

【委員】本報告書案からは、英語教育をどのようなことを念頭に置いて実施すべきかが不明確だ。「外国語能力の向上に関する検討会」の記述もイメージが湧かない。もし、幼稚園や小学校低学年から英語教育を開始するとすれば、具体的にどのようなことをすべきか言及する必要があると思う。また、先ほどの、「日本人の素養」の部分については報告書の冒頭(例えば「はじめに」)で取り扱うべきである。

【委員】外国語については、まずは語学教育というよりも、言葉に慣れることが必要であり、この点を具体的にどのように行うかが問題だ。日本のような島国でなく大陸の場合、幼児段階から外国語に触れる多々機会がある。例えば、タイの場合、周りには、ベトナム人、カンボジア人、中国人等がいる。それに比べ、日本は外国語に対して不慣れな環境といえる。

【委員】日常会話は、例えば外国に半年も住めば何の問題もなくできるようになる。自分も、フランスに何も知らずに行ったが、半年後には日常会話をマスターできた。今、問題になっている点は、日本語を含め、英語で論理的に意思疎通をできるレベルが身についていないことではないか。論理的に意思疎通できる能力を日本人に身につけさせるために、ディベートやロールプレイング等の教授法の開発と普及が必要だ。そして、こうしたことができる教員の育成について、言及すべきだと思う。

【委員】「外国語による論理的なコミュニケーション能力」という記述には、多少、違和感がある。日本語による論理的なディベートすら、余り教育していないのが現状ではないか。

【委員】日本語ですら論理的思考ができない人が英語でそれができるとは、余り思えない。ただ、日本語で論理的に考えることができれば、英語でも論理的なプレゼンテーションや効果的な交渉ができるということには直ちにつながらないため、英語による論理的コミュニケーションをマスターするためには訓練が必要だろう。外国語による論理的な議論を実施するという点では、現在の大学生には、本格的な読み書き能力が欠けている。本格的な読書能力、作文能力がない者は、説得的な議論に参加したり、場合によっては相手を打ち負かしたりすることが難しい。こういったレベルを身につけさせることは大学入学までには難しいため、大学で、しっかり英語教育をすべきだ。

【委員】やや事務局的な発言をすると、学習指導要領の中でディベートの時間を導入しているので、今後、その教育方法も定着していくのではないか。例えば、OECDのPISA調査(生徒の学習到達度)等における議論でも、国際比較をする際の「学力」とは問題解決能力だということで共通理解がされている。我が国では、「生きる力」と表現しているが、学習指導要領も、国際的潮流の中で順次改訂されているということは付言しておきたい。

【座長】今までの意見を集約すると、4ページの第3パラグラフにより詳しく書き込むということになるだろう。

【委員】日本人として日本語を高度に扱えるということは、国際化の大前提であると思う。自分はよく例として、音楽の和声という技法を挙げるが、和声では、ハーモニーを出すためにいろんな人が集まって歌を歌う。皆が協力してチームの力を発揮するためには、メンバーそれぞれの特徴がないといけない。日本人も国際社会に出て行くには、まず日本人としての特徴がなければならない。2点目として、現在、国際社会で議論されているテーマは、コミュニケーション能力というよりは、Critical Thinking能力の向上だ。日本語によるCritical Thinking能力を身につけることで、国際的に通用する発言力が生まれる。国際社会では、Critical Thinking能力がなければ通用しない。すべての若者にその水準を求めるのは無理だが、少なくとも数万人単位の高校卒業生あるいは大学卒業生は、そのレベル達する人材として育成しなければならない。

【委員】同感である。すべての日本人に、ここで議論しているグローバル人材に求められる能力を要求するのは困難であろう。それぞれのレベルに応じて、すべての人には最低限○○を大学卒業レベルの人には○○を・・・というように、書き分ける必要がある。エリート教育のような発想だと思われると困るが、トップレベルの人材育成を国が放置してよいとも思わない。

【委員】例えば、「2(3)国際舞台で活躍できる人材」あるいは「2(4)の若手研究者」の箇所に、より高度な人材育成に関する内容を盛り込んではどうか。

【委員】この報告書は、国際な場で活躍する人を対象にする報告書だと認識しているので、少しレベルの高いことまで書いていいのではないか。 

(2)【2(2)内向き志向の現在の若者に対して~2(4)若手研究者に対して】

【委員】若者のすべてが内向き志向だという印象を与える表現は避けた方がいいのではないか。また、アメリカへの留学生数の減少について触れられているが、近年、アメリカ留学の場合、学費や生活費が著しく高くなっているという背景がある。日本人の学部生や高校生は、アメリカの大学に留学する場合、奨学金をほとんどもらえない。来年度予算案では、ショートビジットの事業等も計上されているため、それについても少し触れてほしい。

【委員】同感である。高校生の留学も資金面からの支援がもっと必要である。

【委員】自分の運営している高校は海外の高校や国内のインターナショナルスクールとの交流をさかんに行っているが、昨年4月にはアイビーリーグに8人進学したが、その際は、大学側が奨学金を用意してくれた。ハーバード大学等は、各国の高校を回り、学生募集をやっている。日本の大学も、優秀な学生を戦略的に獲得する努力を行う必要があるのではないか。 

【委員】学部生の場合、海外留学をする動機は何か。日本の大学に行っても仕方ないから欧米を目指す人もいるだろう。そういう意味では、日本の大学も、もっと日本人や外国人に対して魅力的な教育内容を提供しなければならない。

【委員】学部生に対する奨学金制度については理屈付けが難しく、例えば、我が国の優秀な高校卒業生がアメリカの一流大学に行こうとする場合に4年間奨学金を付与するというのを正当化する理屈はなかなか難しい。無難な方法としては、1年間の交換留学で先方の大学の授業料負担を援助するというやり方である。

【委員】企業への働きかけの記述のところは、海外に留学した経験を持つ学生を積極的に採用するよう、もっと強く提言すべきではないか。原案では、消極的なことが最初に書かれている。また、海外留学を義務づけている国際教養大学の例が挙げられているが、大学に努力を求めるだけで不十分で、「支援する」「方策を立てることが必要だ」というような前向きな書きぶりにしていただきたい。

【委員】インターナショナルスクールは、学校教育法上は各種学校の位置づけであるが、中にはライシャワー等(ら)の著名人が通ったような由緒正しき高度の教育内容を誇るインターナショナルスクールもあるため、それがいつまでも各種学校扱いなのは、どうかと思う。

【委員】国際バカロレアについては、教員の確保が問題ではないか。例えば、IB認定校になるためには、イマージョン教育という英語で社会や理科を教える授業が必要となるが、今はそれができる教員がほとんどいない。そのような資格のある外国人に対して、教育委員会が期限付の臨時免許状を与えるという仕組みになっているが、都道府県によって付与状況が様々であり、東京等ではほとんど免許を付与していないと聞く。

【委員】おっしゃる通りで、今は、外国人の優秀な教員が中国や韓国に行ってしまうため、日本に確保できない。また、国としては、イマージョン教育ができるような日本人教員をどのように育成するかという点をしっかり考える必要があるのではないか。教員=教育学部を卒業した人という概念にとらわれず、社会人として国際社会を経験してきた人は大勢いるため、例えば定年間際のそういう人材をうまく活用するということも一つの方策ではないかと思う。

【委員】企業の他にも、教育委員会への要望も書いたらよいのではないか。

【座長】社会全体で、若者の内向き志向の解消を見守るという観点からは、本年2月に出した日本学術会議会長談話「若者の就職問題について」を引用していただけると良いと思う。

【委員】国際バカロレアの普及を目指す際、何かインセンティブになるようなことはあるのか。

【委員】現場は、国際バカロレアを目指すことを余り考えていない。

【委員】卒業後の外国人学生に対する就職支援についても言及する必要がある。多くの学生は、日本で実務経験を積んでから自国に帰ることを望んでいる。また、留学生の帰国後のフォローであるが、例えばアメリカやフランスでは、帰国後すぐに大学から手紙が来て寄附の依頼等、関係維持の努力があるが、日本の場合は、国費留学生が母国に帰国したとしても、その後は関係が途切れることが多く、大変残念に思っている。留学制度を更に効果的にするためには、帰国後も、何らかの形で日本との関係を維持し、彼らをフォローすることが重要だと考える。

【委員】同感である。例えば、アメリカでは、最近、国務省がフルブライト留学先等でアメリカへ招いた人たちの中から「Most Prominent Person」を選ぶ制度を作っている。世界各国のアメリカ留学経験者50人を登録するというものだが、これは良い例ではないかと思う。

【委員】11ページの上から2つ目のパラブラフ「地球規模の問題解決で先導的役割を担い・・・・社会インフラの整備に関するパッケージ化した結合システムの海外展開を推進することが望まれる。」は、「2(4)若手研究者に対して」のところに記述する内容なのか疑問である。「2(3)国際的な舞台で活躍できる人材に対して」に書いた方がいいのかとも思う。

【委員】若者と接していると、国語力と会話力が著しく低下していると感じることが多い。その点は、幼児教育、初等教育の段階から留意する必要があるのだろうと思う。また、ギャップイヤーやアカデミックカレンダーを海外と合わせるという点については、自分も賛成である。企業人として、採用の際に留学を評価してほしいとの提言は、厳粛に受け止めたい。

【委員】外国人及び日本人への奨学金に関して、様々な財団がそれぞれの趣旨で奨学金制度を有しており、申請する側(そば)としては、申請手続が煩雑である点が不便である。もう少し連携した統一的な奨学金システムを構築すべきではないか。例えば、来日した留学生にしてみれば、たくさんの団体に対して申請を行うわけであり、現状は非効率である。また、世界から優秀な学生を戦略的に獲得するための奨学金をもっと充実させる必要があると思う。今は既に渡日している私費外国人留学生への奨学金ばかりである。

【委員】優秀な人材を獲得するためには、その人の生活環境の整備まで充実させる必要がある。例えば、来日する家族への教育環境を整えることも大事である。

【委員】個人で国際機関への就職を希望する人への奨学金として、例えば、卒業後5年間国際機関で働いた人は返還義務を免除するというものがあってもいいのではないか。

(3)【2(5)教職員~4.おわりに】

【委員】米国への教員派遣について、本事業は1年だけ行っても意味がなく、「継続的に」行われるべきだ。「確実かつ継続的に実施」と記述してもらいたい。

【委員】13ページの「2.グローバル化に対応する教育の提供(6)持続発展教育(ESD)による国際社会で活躍する人材育成」について、ESDの国内普及に努めたい。「ESDの10年」は日本が提唱したものだが、現場の学校レベルではまだまだ取組が十分ではない。ユネスコスクール数を増加させることが重要だ。

【委員】青年海外協力隊について、「現職教員特別参加制度の対象者の一層の拡大が望ましい。」という記述については歓迎する。ただ、協力隊員として現職教員が途上国に行ったときのサポートについても、触れるべきではないか。現在でも、教材のデータベースなどで支援を行っており、これらを継続させていくことが重要だと考える。また、「大学及び高等専門学校の教職員」の箇所であるが、各大学のグッド・プラクティスを文部科学省で支援すべきではないか。

【委員】教職員交流について、米国、中国、韓国のみならず、欧州も含め、いろいろな国に派遣すべきではないか。また、教員に対する教育も重要である。

【委員】国際的に活躍している人材を直接教育の現場に送り込むことを検討してはどうか。例えば、自分の組織では、大学で、出前講義というような形でプロジェクトファイナンスという英語の講義をやっている。企業の人材で、国際社会の最前線で活躍している者を大学教育の場で活用するというのは良い方法だと思う。学生たちにも、より直接的に裨益(ひえき)するだろう。また、本報告書の内容が、例えば平成24年度予算概算要求にどのように施策に反映されたか、フィードバックを頂けると有り難い。

【委員】自分は、経済産業省の審議会などでは、アクションプランを作るようお願いしたこともある。それと、閉会してから後にどのように施策が動いているかを見るためにも、1年経過後に1回くらい報告会を開いていただくのも良いのではないか。

【委員】これは、懇談会の報告書なので、余り直接的な内容を書けないと思うが、この中から、来年度の予算案件がにじみ出るような書き方にすれば良いのではないか。

【委員】書き方が非常に難しいが、「はじめに」の部分で、これまで我が国が実施してきた人材育成という面での国際貢献について言及すべきではないか。これまで、アジア各国の要人の中には、日本の大学が受け入れて、教育して、母国へ返したという例が多数ある。

(4)タイトルについて

【座長】タイトルについて、「我が国がグローバル化時代をたくましく生き抜くことを目指して-国際社会をリードする人材(人財)」の「(人財)」は不要だと思うが、いかがか。

【委員】「リード」という語は、何か日本語で表現を代用できるのなら、日本語に変えられないか。

【委員】「グローバル化時代」という言葉は、若干、時代遅れの感じがある。グローバリゼーションやグローバル化という言葉は、少し前には多用されたが、今ではピークが過ぎたのではないか。「国際社会」と言ってもいいのではないか。

【委員】この懇談会は、もともとグローバル化についての議論から始まっているので、自分としては余り抵抗感はない。ただ、現在、「グローバリゼーション」という言葉を使用する場合、現在半分はネガティブな意味で使っているのは事実である。「日常的にいかにこの国際社会を生き抜くか」という表現の方が素直かと思うが。

最後に、座長より、次回の懇談会での議題について説明がなされ、閉会した。

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