資料1 国際交流政策懇談会 第1回議事要旨(案)

1 日時    

 平成23年1月13日(木曜日)13時から15時

2  場所     

文部科学省3F2特別会議室

3  議事 

  • 東アジアにおける交流に関するWG最終報告書の概要説明
  • 報告書の作成に向けて 課題の整理
  • 報告書の骨子案について

4.配付資料

  • 資料1  東アジアにおける交流に関するWG最終報告書
  • 資料2  文部科学省の主な国際交流関係施策について 平成23年度予算案
  • 資料3  報告書の作成に向けてご議論いただきたいポイント 論点ペーパー
  • 資料4  参考資料及びデータ
  • 資料5  国際交流政策懇談会とりまとめ骨子案

5.出席者

(委員) 金澤座長、青木委員、池上委員、織作委員、佐藤委員、白石委員、角南委員、高橋委員、田中委員、牟田委員、渡辺委員

(文部科学省) 金森文部科学審議官、森口文部科学審議官、前川総括審議官、田中政策評価審議官、合田科学技術・学術政策局長、藤嶋国際統括官、池原国際課長 他

6.議事概要

 1 東アジアにおける交流に関するWG最終報告の概要説明

   昨年7月にとりまとめられた東アジアにおける交流に関するWGの最終報告書の概要について、東アジアWGの座長を勤められた白石委員より概要説明が行われた。

(委員) 

この報告書は、東アジアを中心とした人の交流に関して現在実施されている、あるいは今後強化していく必要がある施策についてまとめたものである。問題意識は、以下のとおり。

  • ASEAN+3、EAS、ASEMなど、東アジアにおける多くの地域協力枠組みにおいて、人材育成、教育、科学技術分野における協力の必要性が指摘されている。
  • 中国・香港・シンガポール・タイなどの大学は、近年世界の大学ランキング上位に入るようになり、日本の大学にとって、もはや支援の対象ではなく、対等のパートナーあるいはライバルになりつつある。
  • 東アジア域内における学生の流動性が高まっており、今後、日本とアジアの研究者による共同研究が増加することが予想される。
  • 教育交流、科学技術交流、文化、スポーツ、青少年交流においては、既に様々なネットワークが構築されているため、これらの既存の枠組みを活用しながら、交流内容によって関心の高い国がそれぞれ参加するなど、緩やかなネットワークとすることが望ましい。
  • 具体的な政策をおおまかに申し上げると、以下のとおり。
  • 質の保証を伴う交流に取り組む大学を重点的に支援し、キャンパス・アジアなどを通して、学位プログラムの可視化、体系化によって交流のための基準作りを始める。
  • 東アジア共通の教養教育・地域研究の推進、そのためのトップレベルの人材養成機関の構想を検討する。
  • 日本の研究資源を活用し、東アジア・サイエンス&イノベーション・エリア構想を推進すべく、世界のすぐれた研究者のネットワークを強化する。

この東アジア・サイエンス&イノベーション・エリア構想に関しては、昨年10月末のASEAN+6、東アジア首脳会議で、「take note」されたため、今後も日本が中心となって進めていくべきであると考える。

 (委員)東アジアWGは、鳩山前総理の東アジア共同体構想を受けて設置されたものの、このような考えは自民党政権時代から存在しており、政治的な環境によって、その重要性が変わるものではない。 また、国費留学生の予算が減額されている点について、これまで国費留学生制度の果たしてきた役割は、非常に大きいため、今後考えていく必要がある。

(委員)例えば、中国は、海外おいて中国語教育(孔子学院等)や中国文化の普及に力を入れているが、日本も、東アジア地域における日本研究や日本語教育を広めていくためにも、そのような活動を国として支援することが重要ではないか。

(委員)東アジアWG報告書の施策は、これまでにない新しいものをつくろうとしているのか、過去の流れを更に拡大若しくは発展させようとする提案なのか。また、「大学の国際化のためのネットワーク形成推進事業」について、30大学の選定に足る予算規模なのか。

(委員)委員の1点目の質問について、WG報告書は、これまで実施してきた様々施策を引き継ぎ、発展させていくものである。

(高等教育局専門官)2点目の質問について、「大学の国際化のためのネットワーク形成推進事業」は、既にグローバル30で採択している13件を継続させるための予算であり、新規大学の採択は想定していない。

(委員)大学の質保証に関連して、学位の相互認証条約(ユネスコ地域条約)に日本が入っていない点が気掛かりである。アジア諸国の大学とも交流を更に深めていくとすれば、本条約に入ることが必要だ。

2 報告書の作成に向けて(課題の整理)について

  報告書の作成に向けて(課題の整理)について、浅井国際協力政策室長より概要説明が行われたのち、自由討論が行われた。

  ・大学教育について

(委員)アカデミックカレンダーを国際基準に合わせることはどうか。10月から新しい学期が始まるのであれば、学生が留学しやすくなるだろう。

(委員)政策について、比較的海外に関心が高い人たちを対象にするものと、いわゆる「内向き」の若者を対象とするもの等、幅広く網羅することが大切である。例えば、前者については長期留学が、後者については初等中等段階における外国語教育の充実や短期留学の推進等が考えられる。また、企業というものは合理的に行動しており、海外留学経験者が優先的に採用されないことには、何らかの理由があるはずである。企業側が採用に関心を持つような仕組みを大学側も用意しなければならない。例えば、自分の所属する東京工業大学では、企業説明会をしっかりやっているが、その結果、サムスンなどの韓国企業はかなり採用してくれる。

(委員)日本学術会議でも、卒業後3年間は新卒扱いにしてほしいと思っている。また、教職につくような者(少なくとも高等教育における指導的立場に立つ者)は、異文化との深い接触を義務付けるくらいの考え方が必要だろう。

(委員)国際機関・国際企業で働く人材は、修士号・博士号を取得していることが常識になっている。この基準に習い、日本において修士号・博士号を持つ学生を増やす支援制度が必要だ。

(委員)非常に大胆なアイディアだが、大学の卒業要件の中に一定期間の外国留学を義務づけることが考えられる。

(委員)大学教育に留学を義務づける意見は大変斬新であるが、日本の全学生を受け入れるところが存在するのか疑問もある。留学を義務づけるよりも、大学における語学教育を充実させることが先決ではないか。

(委員)日本の大学において、短期外国語の集中特訓コースを設けることはどうか。個人的な経験として、語学学校に半年間ほど通い、集中して英語を勉強したところ、TOEFLの点数が大きく伸びた。半年間ほど集中して外国語の学習をすれば、ある程度の基礎ができ、話すことが可能になる。また、大学入試や大学教育プログラム等に実用的な英語力を測る尺度を導入すべきだ。

(委員)日本の大学において、短期外国語の集中特訓コースを設けることは非常に有効だと考える。私がハーバード大学に留学していた際の友人は、大学に設置されていた短期日本語の集中特訓コースを通じて聞いたり話したりすることが可能になった。このようなプログラムを日本の大学にも設けるべきだ。

(委員)大学入試や大学教育プログラム等に実用的な英語力を測る尺度を導入するという意見について、大学入試をTOEFLと連動できるようなものにすれば、留学を目的としない学生にも留学のきっかけが広がるのではないか。そうすれば、保護者は子供の教育について留学等を含めた長期的な戦略を立てることが可能になると思う。

 ・企業との関係について

(委員)政府は、企業が外国語を習得している学生を積極的に採用する仕組みを構築するよう働きかけることが重要。学生が利益を感じられるような具体的な政策がなければ、若者の内向き志向は変わらない。

 (委員)大学3年の冬から始まる現在の就職活動は、学生から専門課程を学ぶ機会を奪い、また、企業もそのような人材しか採用することができないという悪循環を生み出している。

(委員)自分は企業の出身であり、ある商社の人事部長も経験したことがあるが、企業としても、現在のままで良いとは思っていない。ただ、日本の企業は、横並びで動くことが多いので、こういう懇談会などを含めて、政府などが様々なところで企業に主張していくことが重要だと考える。皆で一斉に大学4年の7月から採用活動を解禁する努力をすべきだ。そうすれば大学在学中に留学を検討する学生が増えると考えられる。

(委員)若者が内向き、企業が外向きというギャップは、これからますます広がっていくと考える。現在の日本社会は経済的に成熟化しており、内需が大きくなることは見込めない。そのため、現時点で国内のみを主な拠点としている産業・企業は、将来的に生き残るためにはグローバル化せざるを得ないため、大学や若者がギャップを埋める努力をしなければ、両者の差はますます広がってしまうだろう。また、就職活動において不利な状況が発生すると考え、留学をあきらめる学生が多いと聞いている。これは、企業や日本社会にとって大きな損失である。自分の才能を伸ばすために、若者が海外に行く機会を増やす必要がある。

(委員)海外に展開している企業は既に国際的な感覚のある人材を採用している。今後の課題は、国内の企業に対して、どのように国際的な感覚を持った人材を送り込むかが重要である。 また、新卒採用のみに重点を置かず、中途採用者の育成についても重視するよう企業に働きかけることが必要ではないか。

(委員)「内向きの若者を海外に出す抜本的な取り組み」について、企業側に対して採用基準で短期間でも外国に留学した人を優先的に採用するという基準をとるよう要望してはどうか。

 ・内向き志向の背景について

(委員)海外において英語でコミュニケーションを取れないために、若者が海外へ行くことを躊躇(ちゅうちょ)しているのではないか。コミュニケーションの道具としての英語教育を実施し、多少正確な英語でなくとも英語でコミュニケーションができる人材を育てることが重要だ。 

(委員)内向き志向は、経済発展やその他の発展がもたらした居心地の良い状態を表しているとも言える。北京外国語大学の副学長と会談した際、日本の様々な発展に対して感銘を受けておられた。内向き志向に対して悪のレッテルを貼るだけではなく、今後の日本の発展に必要なものは何かという議論を行う必要がある。

(委員)日本の社会が居心地のよい状態であるとの意見について、賛成である。ただ、海外からの留学生数が大幅に増えていないのには何らかの問題があると考えられる。大学や企業、社会全体の留学生受入れ体制に問題があると思う。

 ・海外の日本人留学生に対する施策について

(委員)海外に留学している学生は、就職に関する情報を手に入れにくい。そこで、留学中の学生に対して就職に関する様々な情報を提供することは、就職活動への影響のために留学をためらう学生に対しての支援になりうる。また、留学した優秀な学生が日本企業に就職できるよう支援する必要がある。この点、中国は、海外の留学生に対して、中国に帰国し、中国のために貢献するよう働きかけを行っている。こうした取組を日本も参考にしてはどうか。

(委員)角南委員の発言について、自分も同感であるが、敢(あ)えて意見をさせていただくと、就職に関する情報は、現在ではインターネット等を通じて非常に入手しやすくなっているのではないか。また、中国や他の途上国の行っている海外留学生への帰国の働きかけが、日本にも同じように有効かというと若干疑問である。

 ・外国語教育について

(委員)やはり、今の若者は、勇気がない。なぜ勇気がないかというと、言葉の問題が一番大きいように思う。文部科学省初等中等教育局が行っている「外国語能力の向上に関する検討会」の委員も勤めており、その検討会でも発言しているが、日本の英語教育は、正しいか間違っているかばかりが焦点になっている。それよりも、間違っていても人と議論ができるかどうかが重要である。読み書きだけではなく、話す聞くという能力をもっと身に着けなければならない。また、話す能力においては、論理性が不可欠である。例えば、フランスのバカロレアという入学資格試験は、すべて論文試験で、論理性が中心となっている。拙い英語でも構わないから、正確性よりは論理性に重点を置いた教育が求められる。

(委員)外国語が話せないということだけが、若者の内向き志向の原因ではないのではないか。幼児教育・初等教育の段階で子供たちの夢をふくらませる必要がある。こうした段階から外国語に親しみ、学ばせることで国際社会で活躍できる人材を育成することが可能だと考える。

(委員)外国語学教育について、教育開始時期が早まる傾向が進むと思われるが、今まで何が問題であったのか検証がなされていないため、過去の施策に対する検証を行う必要がある。検証が行われなければ、いくら予算をつけたところで、成果や効果が生まれない可能性がある。

(委員)私が知っているカリフォルニアの幼稚園・小学校では、午前中に英語による授業、午後は中国語の授業を行っている。こうした学校が日本にあってもよいのではないか。海外留学の推進だけではなく、国内における外国語教育を充実させ、学生が海外で活動可能な外国語能力を身につけられる教育を実施する必要がある。また、安易に「若者は内向き志向」という固定概念をもつことはよくない。海外に興味をもつ若者も大勢いる。

(委員)私の周りにいる保護者は、幼児からの教育に大変関心があり、特に外国語教育については、インターナショナルスクールへの入学や英語の家庭教師の雇用を検討しているなど、外国語教育に対する潜在的な需要は大変大きいと感じている。国としては、そのような需要に応える必要がある。 

(委員)メディアを使い、外国語にふれる機会を増やすことは、後々の外国語能力向上につながると考える。私の知り合いのフィリピン人は、英語・タガログ語を使いこなしている。その人にどのようにして英語を習得したのか尋ねると、テレビ番組を見たとのことだった。このような日常的に英語にふれる機会を設けることが重要ではないか。読み書き等はその後でも習得可能だと思う。

 ・外国人留学生の日本社会への受入れについて

(委員)国際交流政策という枠組みの中で考える場合、外国から来ている留学生を研究者として大学に迎え入れたり、あるいは企業に従業員として迎え入れたりすることを盛り込んではどうか。

(委員)企業の中にまで入れることは困難ではないか。

(委員)日本企業のグローバル考えるときには、海外人材をいかに活用するかということが1つのポイントだと思う。

(委員)頭脳流出の問題が引き起こされるため、実現は難しいのではないか。

(委員)海外人材の活用について、日本に留学した学生は、日本語の能力が上達するものの、母国に帰国するとその日本語を活かせる場が少なく、現状では彼らを十分活用できていない。日本の大学教育を現状より英語化することにより、留学生が帰国した際、日本と現地をつなぐ役割を担えるような形にすべきだ。そのような人材が増えると、日本の国際企業が現地に進出する際に強力なパートナーとなるだろう。

 ・その他の意見について

(委員)国際交流を考えていくときに、アジア・アメリカだけではなく、ヨーロッパについても考えるべきだ。特に高等教育においては、ボローニャプロセスによって5億人、46か国が参加する枠組みが完成している。

(委員)文部科学省や政府が海外に若者を送り出す抜本的な取組を行うよりも、若者が自分から海外に飛び出すような仕組みをつくることが重要だと思う。

3 報告書の骨子(案)について

報告書の骨子案について、浅井国際協力政策室長より概要説明が行われたのち、自由討論が行われた。

  • 報告書の内容について

(委員)2.2「内向き志向の現在の若者に対して」について、本日議論された若者の内向き志向の背景を踏まえ、より多くの具体策を盛り込むべきだ。

(委員)2.3「国際的舞台で活躍できる人材に対して」について、国際舞台で活躍している日本人の現状を可能な範囲で把握し、何が問題なのかを明らかにすべきだ。世銀で活躍した人が途上国の大学の学長になったという話も聞いている。こうした具体的な事例を検証し、本質的に何が問題で、どういった対応が可能なのかを検討する必要がある。

(委員)報告書は文部科学大臣に対して提出するものであるが、本日の議論を踏まえると企業や大学、社会に向けたメッセージ性の高いものになるため、内容は国民全体に向けたものになる。

(委員)日本社会のイノベーションというものを進めていくためには、異分野・異文化交流というものが必要になる。報告書の冒頭には、なぜ異分野・異文化交流が必要かを述べなければならない。

 最後に、座長より、次回の懇談会での議題について説明がなされ、閉会した。

お問合せ先

大臣官房国際課国際協力政策室

(大臣官房国際課国際協力政策室)