東アジアにおける交流に関するワーキング・グループ(第1回)における主な意見

1.東アジア共同体構想について(総論)

○ 東アジア共同体構想は、少なくとも10年以上前から議論されてきた構想だが、これまで必ずしも期待通りに議論が進んで来なかった。鳩山政権が東アジア重視を改めて掲げた好機を活かし、新基軸を打ち出す必要。
○ 共同体意識醸成のためにも、各国と議論し一緒に作り上げていく過程が重要。東アジアを考える際、「先進国」「途上国」という区分とは違う考え方をする必要。

2.具体的検討を進める上での論点

1.東アジアで教育、科学技術、スポーツ、文化等の分野における連携施策について

○東アジア地域という枠組みの中で、教育、科学技術、スポーツ、文化等の分野における施策を検討する意義・基本方針が必要。その上で、連携施策を具体的に提案する段階。
○教育、科学技術、スポーツ、文化等の分野は早く実績を出せるのではないか。

2.対象分野について

○取り組みやすく、成果の出やすいところから順次具体的施策を実施し、実績を積み上げていくことにより、結果的に共同体を形成すればいいのではないか。
○日本として、東アジア地域と今後どのような「近所づき合い」をしていくかを踏まえた上で、「近所づき合い」にふさわしいテーマの選定及びそのための資金の拠出の仕方・額をどうするか検討が必要。
○東アジアの枠組みではできないと思われる取組もある。制度設計の中で検討が必要。      

3.対象範囲について

○ASEAN+3中心か、ASEAN+6まで拡大するか、その他をどうするか、中心となる主体をどうするか等の議論はあるが、「東アジア」の範囲は柔軟にすべき。
○「東アジア」を自国を含む概念として定義できない中国にも「東アジア」の一員として積極的に参加してほしい。日中韓協力の枠組みは、「東アジア」の一員としての意識を持ってもらうには有効ではないか。
○オーストラリア等からの資金協力も期待できる点で、ASEAN+6はよい。

4.枠組みのあり方について

(1) アジア地域の特性

○東アジア共同体は、そばにいる多様な国同士が仲良くやっていくための「地理的共同体」ではないか。「トークショップ型」であったとも言える。各関係者が様々な枠組みを作り、重なり合うネットワークの中で、問題解決能力を高めていくというもの。
○アジア各国の多様性ゆえ、EUのような「クラブ型」にはならないだろう。 

(2)「ネットワーク型」か「制度型」か、或いはその中間型か

○ 従来の「ネットワーク型」を続けるのか、新たな制度を設計するのか。
○ EUのように制度的枠組みを構築する必要はないが、「ネットワーク型」と「制度型」の中間的なものを構想しなければ、改めて「東アジア共同体」という構想を持ち出す意味はないのではないか。
○ 「ベター・フォーカスト・フレームワーク」という方法も可能ではないか。
○ 既存の枠組みを利用するのが現実的。
○ 枠組みは柔軟に考えるべき。

(3)「問題解決型」であるべきではないか

○ 「具体的に何かつくる」視点がこれまでの議論には欠如。
○ 最近ようやく、議論しているだけではなくて次にどうするかという視点が出てきた。アジアの近隣諸国で資金を出し合い、具体的なものを作り出そうという動きは最近始まったばかりである。
○ 信頼醸成はトークショップの中でできるのではないか。長期的な信頼醸成のためには、「問題解決型」の連携を、資金協力の問題も含め検討する必要。

5.東アジア地域を取り巻く環境変化等について

○ 東アジアを取り巻く最近の環境変化を考慮に入れて今後の方向性、或いは方針・政策・枠組みをつくっていくべき。特に、教育交流を巡る環境がここ数年で大きく変化しており、頭脳循環や競争が色々な形で激化している。

  • 中国、シンガポール、タイ等の大学がTimes Higher Education 世界トップ200大学に入るようになってきた。
  • 大学間協力の分野では、SEED-Net(アセアン工学系高等教育ネットワーク)でASEANにおける工学系大学のネットワーク形成に協力し、留学生交流等も実施している。
  • 東アジアにおいて、高等教育を受けたバイリンガルやトライリンガルの人たちがアジア太平洋地域を活動領域とし、流動する現象が発生。今から子どもを育てようという家庭や、10代ぐらいの子どもがいる家庭では、こうした頭脳循環の中にいかにして我が子を送り込むかを課題としている。
  • 日中韓交流は、文化交流や大学間交流を通じて、近年、急速に進展。

3.その他、各分野に関する意見

【大学間交流・留学生交流等について】

○ 東アジア地域の共通認識、共通価値を醸成する一種のエリート機関として、「東アジア大学院大学構想」を日本が主導してつくるようなことはできないか。
○ 大学間交流の場合、一大学としての見方と国家としての観点とでは異なる。一大学として は、 世界中からどれだけ優秀な人材を獲得できるが重要。国としては、域内のどこでも、心身と も に健康で働けるような人材の育成が重要。
○ 国際的に活躍できるような人材を日本や東アジア地域の大学で育成するような取組ができ る とよい。
○ 中国、シンガポール、タイ等の大学が英国の 世界トップ200に ラ ンキングしてくる一方で、 日本の優位性をどこで発揮するかという発想が大事。日本の自由さ 等、魅力をより打ち出していくべき。
○ 頭脳循環を進める際、優秀な人材が一部の国へ集中しないか懸念。 域内交流を進める上で、格差拡大の是正及び循環の公平性の担保が課題。

【科学技術協力について】

○ これまでもトラック2外交や科学技術外交等について議論されてきたが、科学技術分野はアジア地域において協力体制を形成しやすい分野。日本がリーダーシップを発揮できる分野として、欧米からの期待も高い。
○ 現在は国毎にファンディング・エージェンシーが独立。研究を支援するファンドの出し方が国毎に異なるため、他国と共同研究を行う場合、それぞれの国で審査等手続きを行い、認められれば共同研究を開始できる仕組み。特に、急を要するような課題(防災、感染症等)が出てきた時に、国を越えて研究ができるような仕組みづくりが必要。
○ 経済や科学技術の水準の地域間格差をいかに克服するかが課題。わが国の科学技術政策の基本スタンスがイコールパートナーシップである以上、相手国の水準が同程度でないと共同研究が進まない。人材育成等中長期的取組も重要。
○ 科学技術分野に関しては、欧米に対して閉鎖的でない方がよい。
○ リサーチ・エリア構想は世界的に注目されている。欧米、アジア、アフリカにリサーチ・エリアが構築され、共にグローバルな研究体制を推進していけば、地球規模の課題(環境問題、感染症等)について共同或いは地域で研究を進めていくような体制ができる。

【青少年交流について】

○ 日本人学生がアジア近隣諸国に行く機会が不足。日本人がアジア諸国に行くことも含め若 者 同士の交流プログラムを考えていくべき。

【文化交流について】

○  文化交流に引き続きしっかり取り組むことで、連携する姿勢が出てくる。
○ 文化面では、比較的共通意識が醸成されつつあり、 中国や韓国、東南アジアでも日本の現代文化に対する関心が高まっている。
○ 利害関係が生じるゆえに難しい経済交流を、学術・文化交流で中和していけるのではない か。

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