国際教育交流政策懇談会におけるこれまでの主な意見から考えられる施策例(国際協力分野)

1.課題

  • 国際的な視点で物事を考える能力が養成できているか。
  • 国際社会で通用する人材が育っているか。
  • 日本の若者が内向きになっているのではないか。
  • 帰国後、時期を逃して就職できない者がいるのではないか。
  • 大学以前の海外体験・国際交流が重要ではないか。
  • 日本の初等中等学校が直接、途上国の学校と交流するようなモデルが必要ではないか 等

2.対応策

学校教育に国際協力活動を融合する取組を推進することにより、グローバル化に対応する人材の育成と、国民に対する国際協力活動への理解促進を図る。

3.施策案

1 高等教育段階

 学生による国際協力活動経験の推進とグローバル化に対応する人材の育成

  • 国際機関や援助機関、国際NGO等を通じた海外ボランティアやインターンシップの派遣と、事前学習や振り返り学習を含めた総合的な教育カリキュラムを融合させたプログラム(単位認定)の形成・実施を支援。
  • 国連ミレニアム開発目標(MDGs)等の国際社会の共通課題について、理論と海外の実地体験を組み合わせた学習プログラムの提供を通じ、グローバル化に対応する人材や、国際協力人材(国際公務員、ジュニア・プロフェッショナル・オフィサー(JPO)(注)、青年海外協力隊員等)の育成を図る。

(注)外務省では、将来正規の国際公務員を志望する若手邦人のために、JPOとして一定期間(2年間)各国際機関で職員として勤務することにより、国際機関における正規職員となるために必要な知識・経験を積む機会を提供している。

2 初・中等教育段階

 初等中等教育レベルから直接途上国の学校と交流等を通じて国際協力活動の実践ができるような活動の促進

  • 総合的学習の時間、特別活動などで、児童・生徒が途上国の現状や国際協力について学んだり、発展途上国の学校との交流を通じて国際協力活動を実践したりすることを通じて、地球規模課題や国際協力への関心をより深めると共に、児童・生徒の活動がMDGs、万人のための教育(EFA)、持続可能な開発のための教育の10年(DESD)等の達成への貢献に繋がるような取組の支援
  • 初・中等教育においてグローバルな人材育成や国際社会の共通課題・国際協力活動への理解深化が組織的に取組まれるよう、シニアレベルの教員や管理職にある教員、教育委員会関係者が国際的な経験を得られるよう支援(例:JICAシニア海外ボランティア制度の活用等)

(参考)具体例

1 学生による国際協力活動経験の推進の具体例

【事例1】関西学院大学

 関西学院大学が、国連ボランティア計画(UNV)との協定に基づき、2004年以来、開発途上国へ学生ボランティアを40数名派遣。UNITeS学生ボランティア※として、主にアジアでICTを活用する途上国活動に参加してきた(現在は国連学生ボランティアとして、ICT分野に限定していない)。派遣期間は5ヶ月、学部では、「国連学生ボランティア実習(12単位)」、と「国連学生ボランティア課題研究(4単位)」が、また大学院では「国連学生ボランティア特別実習(6単位)」、国連学生ボランティア特別課題研究(2単位)」が認定される。派遣者に対して、大学から30万円の奨学金が支給される。

※UNITeS大学ボランティア:学生や教員などの大学関係者をボランティアとして途上国に派遣し、その専門技術を現地における情報通信技術の向上に役立てることを目的としたプログラム。関西学院大学は、アメリカのジョージ・メイソン大学、スペインのマドリッド自治大学に続く3番目の協定締結校。UNVが調整機関としてプログラム運営にあたっている。

【事例2】広島大学大学院国際協力研究科

 青年海外協力隊事業(2年数ヶ月)と、大学院修士課程のプログラム(2年)を融合。具体的には、ザンビア国基礎学校へ理数科隊員として、毎年3名程度の院生(修士課程)をグループで派遣(第一フェーズ平成14-18年度、現在第二フェーズを準備中)。現地活動を必修単位である「インターンシップ(4単位)、「フィールドワーク(2単位)、「専門科目(4単位)」として認定。協力隊派遣期間の2年間を含め、標準3年半で修士号取得。

【事例3】帯広畜産大学

 平成16年、帯広畜産大学がJICAと「合意書」を締結し、平成16年度-20年度にかけて、フィリピンの協力隊チーム派遣「フィリピン酪農開発強化プロジェクト」に合計32名の短期隊員(学部生、院生)を派遣。派遣期間約5週間。隊員は、「インターンシップ(2単位)」の取得が可能。また、大学において支援委員会を組織し、大学予算による教員派遣や現地からの要請にもとづく技術的支援など、教官と学生が一体となった組織的なプロジェクト支援を行う。

【事例4】広島大学国際協力研究科

 「グローバルインターンシッププログラム-海外インターンシップ-」。
海外インターンシップの前後に一貫した事前研修、事後研修を行なう教育プログラム。インターンシップ科目として2単位の取得が可能。派遣期間は、派遣先により異なるが、概ね1~3ヶ月。平成17-18年度魅力ある大学院教育イニシアティブにより国際協力研究科で実施した上記教育プログラムを、現在は複数研究科へ拡大して推進中。(大学院教育改革支援プログラム平成19年度採択)

※平成20年度派遣先
UNSCAP(タイ)、JICA事務所(ガーナ、インドネシア)、ザンビア大学(ザンビア)、フィリピン大学(フィリピン)、ケニヤッタ大学(ケニア)、ガジャマダ大学(インドネシア)、グラミン銀行(バングラデシュ)、ICLEI(環境系NGO、フィリピン)、FORWARD(開発政策系NOG、ネパール)、(株)アルメック(ベトナム)、(株)サタケ(中国)、英国癌研究所(英国)、高雄Chang Gung 記念病院(台湾) 等

2 国際協力活動を実践する学校の具体例

【事例1】秋田市立秋田商業高等学校地域貢献部国際協力課

 秋田市立秋田商業高等学校は地域貢献部国際協力課を持ち、JICA「教師海外研修」に参加した教諭がおり、総合的な学習の時間を使って国際協力に取り組む。毎週1回国際協力の授業のコマが設けられており、秋田県のJICA国際協力推進員や同県在住の青年海外協力隊の帰国隊員が協力。国際協力の実践としては、同校のビジネス実践の恒例学校行事「AKISHOP」におけるフェアトレード商品の販売や、同県出身の協力隊員への使い古しスポーツ用品の寄付などが挙げられる。生徒たちは「最初はおとなしかったが、国際協力課の活動を通じて、見違えるように変わった」とされている。

【事例2】広島県立高陽高等学校

 広島県立高陽高等学校では、広島県の出前講座を活用した総合学習でピースウインズジャパンの講師の話を聞いたことを発端に、自分たちのできることから協力を始めることを決定。同NGOのフェアトレードコーヒーを文化祭で販売したり、同NGOとブックオフが行う「ブックキフ」(古本を回収しその販売で得た収益を同NGOに送るもの)に参加し、リベリアの井戸掘りを支援する。

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大臣官房局国際課国際協力政策室

(大臣官房局国際課国際協力政策室)