国際教育交流政策懇談会におけるこれまでの主な意見

1.日本から世界へ

(1)世界で通用する資質の養成

〈現状〉

  • 日本の教育は論理のぶつかり合いを通じて、自分を理解させ、相手を理解し、合意に達するという能力の養成ができていない。
  • 日本の教育は知識教育が中心で論理性を養う教育が弱い。国際的なスタンダードからはずれているのではないか。
  • 日本の教育は、国際的な視点で物事を考える能力が養成できていない。
  • 大学生の知的水準が低く、コミュニケーション能力が低いのが問題。今のままでは国際的社会で通用する人材が育たない。
  • 文系の博士号が日本では神聖化されて、出されにくくなっているのではないか。海外の国際機関などは学歴社会であり、これは問題。
  • 日本を知るには日本だけを知っているのではいけないのではないか。
  • これまで、どういう人材を求めるのか、企業・経済界側から大局的な考え方が示されてこなかったのではないか。

〈今後の方向性〉

  • 知恵、知識、説得力をもった人材の輩出が必要。
  • 英語等、語学教育の強化が必要。そのためには教員の資質が重要。
  • 小さい頃からの英語教育は効果的。
  • 数学の素養を身につけることが必要。

(2)日本人の海外留学等

〈現状〉

  • 日本の若者が内向きになっている。
  • 留学生の受入れに比べ日本人学生の留学支援にかける予算が少ない。
  • 就職活動が学生が海外に行く妨げになっている。
  • エンプロイアビリティ(雇用されうる能力)やコンピテンス(能力)の中に国際的体験をどう明確に位置づけるかという研究が十分に行われていない。
  • 企業の採用は変わってきており、国際経験を積んでその成果を表現できる人を評価するようになってきている。
  • 海外留学は依然として学生個人の事柄となっており、大学が組織的に取り組む体制になっていない

〈今後の方向性〉

  • 高校生の海外体験・国際交流が重要。
  • 日本では地域研究が十分実施されておらず、隣国の中国でさえまとまった研究拠点がない。今後、地域研究を推進し、そのフィールドに若者を参加させていくことを進めてはどうか。
  • 全体の平均的なグローバル化でなく、優秀な人を鍛えるために海外の大学に出し、また日本に戻す取組が必要。
  • 例えば武道や、ESDの理念など、日本から発信できるものが必要であり、これが自信につながる。
  • 就職などにおいて海外経験を評価するような仕組みがあればインセンティブになる。
  • 例えば、1年分の単位を海外で取得することを卒業要件にするなど、海外留学を大学においてプログラム化することが効果的。
  • 海外における体験や実習を組み込んだ留学プログラムで目に見える付加価値をつけることが大切。何ができるようになったか可視化することが必要。
  • 海外履修を義務づけるとすれば、それなりの経済支援が必要。
  • 若い人たち自身が自分で企画して実行するための支援があるといい。

(3)国際協力

〈現状〉

  • JICAの青年海外協力隊で途上国での経験をした人は成長している。若者を海外に出すことが革新を創造する人材育成につながる。
  • 帰国後、時期を逃して就職できない者がいる。
  • 国際協力が省庁縦割りになっている。
  • 日本の教育は、カリキュラム開発能力、国際標準の教材開発能力が弱い。このままではイギリスやオーストラリアなどと伍していけない。
  • 日本の一斉授業や集団に対する教育の技術レベルは高く、途上国にはみられないものである。
  • 日本の教員研修システムは、ほぼ全ての教員の取組を促している。

〈今後の方向性〉

  • JICAの青年海外協力隊での海外経験を評価し、修士号などにつなげていく仕組みが必要。
  • 国際協力については、各省が連携して、並行している政策と平仄のあったものとすべき。
  • 日本の初等中等学校が直接、途上国の学校と交流するようなモデルが必要。
  • 大学で育てた国際協力関係人材を活用する方策を考えることが必要。
  • 研究を基盤とする国際教育交流が必要。例えば、HIV、女子の就学機会の問題など、具体の問題解決をともにやっていく中で、当該国の研究機能を高め、持続可能性を高めていくことが必要。

2. 世界から日本へ

(1)初等中等教育段階における外国人の子どもの受入等について

〈現状〉

  • 日本語学級プログラムは外国人の子どもが日本の学校に通うにあたって非常に重要。
  • 運動会など共同して協調性を養う活動や給食の後片付けなど独立心を養う活動は欧米の学校にはみられないものである。
  • 外国人保護者からみて日本の学校の優れている点は、国語・算数など知育の他に芸術、道徳などにも力を入れていることである。学芸発表会などもすばらしい。

〈今後の方向性〉

  • 外国からの労働移入がないと日本の経済が成り立たなくなってしまうことを認めざるを得ない時期が近づいている。このため、我が国は自国の教育の質を向上させるだけでなく、国際理解教育の進展、あるいは「国際教育の進化」を推進していかなければならない。
  • 外国のことを理解しようとする姿勢や外国人と仲良くしようとする態度を養っていくことが大切。
  • 地域の実情に応じた外国語での対応が可能となる体制整備は重要。
  • 教育の現場に外国人の子どもを一定数受け入れるにあたっては、英語等による情報提供など、保護者等に対する支援も必要。
  • 「国際教育の進化」を図るためには幼稚園くらいから意識的に組み立てていくことが必要。
  • 定住外国人の子どもをリソースとして、マジョリティである日本人の国際化につなげられないか。
  • 国連などの活動もなかなか初等中等教育にまで及ばない。国際機関等における取組が学校現場に届くための仕組みが必要。

(2)留学生の受入れ

〈現状〉

  • 以前は学生の動きは、アジアから欧米という一方通行であったが、近年ではアジア域内での動きが急激に増えているので、日本もアジアの中でどのような立ち位置をとるのか検討が必要。
  • 東南アジアの指導者にかつては日本留学経験者が一定数いたが、日本社会が内向きになって、アメリカへの留学経験者が増えており、失ったものは大きい。
  • 帰国した留学生に対する対応が十分でなく、同窓会組織の立ち上げなども始まったばかり。

〈今後の方向性〉

  • 留学生をお客様として迎えているうちは予算増等である程度対応できるが、留学生30万人計画を掲げて本格的に受け入れるためには、外国人教員を増やしたり、教授会を英語で行うなど、運営体制まで変えていかなければならない。留学生等を日本人の国際化につなげ、大学等の体制を変えるリソースとして活用することが必要。
  • 大学教育を取引可能な経済財としてとらえて、ビジネスモデルとしての留学生受入の観点を明確にしていくことが必要。
  • 留学生30万人計画は大学の在りようを変えるのに大変大きなインパクトのあるいい計画だと思う。
  • 学部でも10%程度は留学生を受け入れ、大学院では50%程度受け入れるといった、国際化を目指す具体的な目標を掲げるべきではないか。
  • 現在、奨学金の多くは来日後でないと申請できないが、これでは大学がもとめる留学生を確保するのに使えない。大学が、奨学金制度を使って、優秀な留学生を戦略的に獲得できる体制づくりが必要。
  • 留学生を受け入れている高等教育機関においては、英語による教育と日本語教育の両方が必要。
  • 外国人の教員を積極的に受け入れて英語で教育する体制を築くことが必要。
  • 留学生を出口で日本社会に取り込む必要がある。
  • 日本の一次産業は成長分野であり、この分野に留学生を取り込んでいくべき。
  • ポスドク問題と留学生の就職問題については、あわせて、NPOなど公益的なところも含めた社会全体での受け入れを考えることが必要。
  • 日本に留学した指導教員が自分の学生を再び日本に留学させるような、世代を超える息の長い留学生交流が重要。
  • 例えば日本におけるブラジル人等の子どもの教育について、日本語を勉強しているブラジル人学生を留学生として招聘し、子どもの教育に携わってもらうこともできるのではないか。
  • 留学生が帰国した後の地道なフォローアップが重要。

3.その他

  • 大学教員の国際化も重要。
  • アジアにおける大学間交流を考えるにあたっては、大学間の実質的なつながりが裏にあることが必要。
  • 日本語をローマ字表記することによって、外国人とのコミュニケーションの改善を図ってはどうか。
  • 国際化に向けて計画を練り、予算が獲得できるよう、怠りなく各種会議で繰り返し意見を発信していくことが必要。

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大臣官房局国際課国際協力政策室

(大臣官房局国際課国際協力政策室)