国際教育協力懇談会(2006年2月17日~)(第8回) 議事録

1.日時

平成18年8月30日(水曜日) 11時~12時

2.場所

如水会館 「ペガサス」

3.出席者

委員

 木村座長、荒木委員、内海委員、片山委員、工藤高史委員、工藤智規委員、廣里委員、弓削委員、渡辺委員
欠席者
 白石委員、千野委員

文部科学省

 馳文部科学副大臣、近藤文部科学審議官、瀬山国際統括官

オブザーバー

 国際協力機構人間開発部・末森部長
 国際協力銀行開発セクター部・橋本部長
 外務省経済協力局開発計画課・小野企画官

3.報告提出

 委員を代表して、木村座長より馳文部科学副大臣へ報告が提出された。

4.馳文部科学副大臣挨拶

 おはようございます。10年ほど前ですか、まだ私が参議院議員のときに、参議院の国際問題調査会のもとでODA小委員会を、山本一太先生と馳浩、当時の経済協力部の局長、大島さんだったんですね、大変な議論をさせていただきました。いわゆるODA大綱というものだけれども、これは法律的なものにして、予算化のところはあまり縛れないんだけれども、もう少し評価のところをしっかりやっていかなければいけないんじゃないかという話とか、あるいはシルバー人材を有効に使っていかなければいけないんじゃないかとか、あるいは南南支援の部分ですね。我が国がすべての発展途上国に支援していくのは難しいから、その拠点となるのはやはり大学だろうと。例えばアジアならフィリピンのこの大学とか、ベトナムのこの大学とか、それからその周辺国に支援をしていただくという議論をさせていただいて、与野党そろっていたんですけれども、その問題に関しては、当時、共産党の上田耕一郎さんも社民党の田英夫さんだったかな、一致団結してやっていくべきだという決意までしたことを思い出しました。今ちらっと、この目次も拝見しましたけれども、そういうことを考えると、限られた我が国の人材と、税金を使って一つでも多くの途上国への支援をしていくということを考えたときの有効な支援が必要だと思います。
 政務官をさせていただいた3年前は、タイのほうに行かせていただいて、バンコクで、あれはUNESCOだったかな、エデュケーション・フォー・オール、万人のための教育支援へ行きましてごあいさつをさせていただきましたら、ほんとうにアジアの国のその方々は、日本の戦後の支援に対して感謝していらっしゃるんですね。いわゆる寺子屋教育、その次の段階として給食、そして教材の開発、そういったことに対しての、もう激しいぐらいの期待を感じてビックリしました。むしろ、そういった、我々が今まで積み重ねてきた実績を、またアフリカであるとか南米等であるとか、まだまだ待っている地域に向けて支援申し上げていくということは、同時に外交的な戦略として必要なツールになってくると思いますし、そういう意味で、今回いただいたこの報告書は、また帰りにじっくり読ませていただきますが、いかにまた予算に反映させていくことができるかが大きな課題になってくると思います。
 JICA(ジャイカ)の末森部長、それから、きょうは外務省の経済協力局の小野企画官にご出席いただいておりますが、我が省の国際課と連携していただいて進めていただければと思っております。木村先生をはじめ、先生方、ほんとうにご指導いただいてありがとうございました。当然、予算厳しき折ではありますが、ここからがまた大事なところなので、JICA(ジャイカ)のほうも、また外務省等も連携しながら、ロビー活動、ODA族議員がたくさんいますから、塩崎先生や山本一太先生や、たくさんの先生方がぜひやってくれと、やらなきゃだめだということで、ご支持いただきたいと思います。
 前の国会の終わり、歳出削減チームで、私は文科省の副大臣として、外務省のほうの予算と、当然、財務省から厳しい厳しいカットの方針をいただいて、ご存じだと思いますけれども、みんなで財務省の主計官とやり合った。皆さん方にまとめていただいた理論武装をして、暮れの予算編成に向けて、概算は概算で上乗せ要求はしていますけれども、最後の絞り込みのときに、こういう報告書を理論武装してしっかりと主計官に理解させるというのが私たちの仕事だと思いますので、頑張ります。
 また、我が省の近藤先生、またよろしくご指導いただきますように、大ベテランですから、よろしくお願いします。では、きょうは失礼しました。

5.報告を受けた意見交換

【木村座長】
 副大臣からごあいさついただきまして、ありがとうございました。大変心強いメッセージをいただいたと思っております。
 それでは、事務局から配付資料の確認と、パブリックコメントを募集しましたので、その結果等について、大山室長のほうからご報告お願いいたします。

【大山国際協力政策室長】
 それではお手元の資料、第8回の議事次第に続きまして、資料1が今回の報告書の本体、資料2がその概要、資料3が意見募集の結果について、資料4が前回議事録ということになっております。
 資料1、報告書本体でございますが、報告書に続きまして、後ろのほう半分は、関係の参考資料等をつけた形でまとめてございます。資料2、概要でございますが、1、2枚目にちゃんと文章でまとめたものに続きまして、3ページ目がこの報告書の内容を1枚でまとめたものでございます。また4枚目、この報告書を受けて、今後の予算要求とか政策展開の内容として、新たな、大学の知を途上国のニーズを生かした形で、関係者が連携しながらうまく生かしていくということの具体的な施策、予算の内容になっております。
 それから、資料3が意見募集の結果についてでございます。3週間ほど意見募集いたしました結果、2件のご意見をいただいております。1件は、青年海外協力隊の現職教員の特別参加制度の教員の派遣に加えまして、40代以上の教員も派遣できるような制度を創設できないのかというご意見でございましたけれども、教員を含む40歳以上の方々に関しましては、JICA(ジャイカ)さんの行っておられますシニア海外ボランティアの制度もございますので、対象となります派遣国からの要請の有無ですとか、あるいはそれぞれの自治体のご事情等も勘案いただいて、JICA(ジャイカ)さんの情報をご確認いただいて積極的にご参加いただいてはどうかということでお答えを用意しております。
 2ページ目に、もう一つのご意見でございますが、こちらは過去の国際教育協力懇談会の提言を受けまして、国立大学の幾つかに分野別、工学ですとか農学、法学、医学といったような形で、幾つかの国際教育協力の研究センターが置かれておりますが、こういった分野別センターとサポートセンター、今回サポートセンターを抜本的強化をするということになっておりますけれども、これらとの関係はどうなのか、連携を記述すべきということでございます。これにつきましても、分野別センターでこれまでに蓄積されましたさまざまな知見、経験をうまく生かす形で、サポートセンターと分野別センターとも連携、協力をしながら、一層連携強化してやっていくという趣旨でございますので、ご指摘いただいた内容は、既に報告書に含まれているというふうなことで、ご回答を用意いたしております。
 以上でございます。

【木村座長】
 ちょっと寂しくて2件しか意見が来ていないんですけれども、ただいまの件で何かご意見等ございますでしょうか。
 1番のご意見、青年海外協力隊の現職教員特別参加制度、この方のご意見は40代以上も何とかならないかということですが、これはシニアボランティアで可能なんですね。現状はどうなっているんですか。どのぐらいの方が、ちょっとこれは数字がわからないかな。

【末森部長(JICA(ジャイカ))】
 シニアボランティア自体は、毎年500名の予算をいただいて派遣することになっています。今言われました、現職教員の人数はわかりかねます。

【木村座長】
 そのシニアボランティアは教員だけじゃないですよね。いろんな分野ですよね。

【末森部長(JICA(ジャイカ))】
 ええ、いろいろな分野の40歳から69歳までということです。

【木村座長】
 その他、ご意見等ございますでしょうか。よろしゅうございますか。
 本日は8回目の会議でありますが、7回にわたって大変濃密な議論をいただいたと思っております。ということで、これまでの審議についての感想、また副大臣から大変力強い御言葉をいただきましたので、それについてのご意見、感想等、いただきたいと思います。
 荒木委員から順番にいきましょう。

【荒木委員】
 このタイトルの「知のODA」、渡辺先生のアイデアに落着したんですけれども、これは非常によかったのではないかと思いますね。私は、実は、文科省のほかの局で地域研究に関する、東南アジアと中東を含めた公募審査員をやっていますが、なんとプロポーザルが99点も集まったんですね。やはり大学に、人文科学系の研究者で、こういう地域研究をやりたいという若い人たちも含めて、相当いることがわかりまして、今、木村先生ともお話ししたんですけれども、日本が一番遅れているところは地域研究で、地域研究をちゃんとしないと、対外協力するときの相手の制度、あるいは地域内の相関関係を含めてよくわからない。ちょっとした行き違いが結構あるということで、この大学の地域研究の知の提供というのは、これから相当重要なので、ODAの分野も場合によってはうまく研究で連携をして、大学とそういう方向を発展させていくということをふと思った次第で、ちょうどそういう意味で、「知のODA」というものがこれから非常に重要な課題になってくるのではないかと感じている次第です。

【木村座長】
 ありがとうございました。
 では、内海委員。

【内海委員】
 私、昨日ケニア、ルワンダ、パリを回ってまいりました。JICA(ジャイカ)の研修コース「アフリカ地域を対象にした復興期の教育開発」コースのための調査を行ってまいりました。アフリカ地域や復興期の教育開発に関しては、日本国内に十分なリソースがありませんので、研修コースにUNESCOの下部機関で国際教育計画研究所、IIEPというパリにある機関のリソースを使うことを考えています。このコースはいわばUNESCOとJICA(ジャイカ)の協同の研修コースになります。
 こういう例はあまりないのですが、日本にリソースのないものに関しては、国際的な連携によって、日本のODAの質を高めていくことが非常に重要だと思います。IIEPの所長はこの間まで国際比較教育学会会長のマーク・ブレイ氏ですが、日本の事情もよく知っておりまして、JICA(ジャイカ)との連携を大変喜んでおり、非常に協力的でした。JICA(ジャイカ)にとっても、そういう国際機関との連携というのは、今後ますます重要になってくると思いました。
 そういうことを考えますと、このサポートセンターが行う、目利き人材によるコンサルテーションというのは、単に日本国内の大学の先生とODAをつなぐだけではなくて、もう少しグローバルな視点に立って、あるプロジェクトを実施するに当たって、どういう枠組みがいいのかまで含めて考えるような、ある意味では、ほんとうに視点の広い方を集めていく努力が必要だと思います。その意味で今回のサポートセンターの抜本的改革に非常に期待しているところでございます。

【木村座長】
 ありがとうございました。
 では、片山委員、お願いします。

【片山委員】
 今回の懇談会に、初めてNGOの代表といいましょうか、NGOの側から委員としての参加ができたということが、非常に画期的だなということを、最初のころから感じておりました。知的な分野で、あるいは教育の分野での日本の貢献をどう考えるかというのが大きなテーマで、具体的にどういうふうに進めていくかというときに、やはりNGOの持っている現場での経験、具体的な活動経験を、個々のNGOだけではなくて、ある意味でのオールジャパンといいましょうか、全体の中で生かしていくべきだというのが、意識としてあったと思うのです。そういうご認識を持っていただいたということを非常にうれしく思っております。それから、最後まで、いろいろな機会に発言させていただいたことを感謝いたしております。それが第1点です。
 第2点は、では具体的にどういうふうにしていくのかというのがこれからの課題であると思うのです。知的ネットワークの形成という中で、大学や行政あるいは援助関係者、NGOを含めたネットワークをどう形成して行くのかと言うことだと思います。特に大学では、今までのあゆみをもっと踏み込んで進めていこうと、サポートセンターを充実していこうということで、基本的には大賛成の結論になったのではないかと思っております。例えば欧米の大学とNGOの関係を比べますと、欧米のNGOは非常に大きくて、むしろ政府のいろいろな事業の実施はNGOがとっていて、大学と競合関係にあるというような状況もあるわけですが、日本ではまだそういうふうになっておりません。現段階において、大学とNGOが連携しようということが、日本の一つの特色になっていくのではないかなと期待をしております。ですので、これからもいいネットワーク形成のためにNGOの側も貢献していきたいと思っておりますし、また大学のほうもいろいろ改革するべき点があるということが今回はっきりしてまいりましたので、そういうこともこれから詰めていければと思っております。非常に有意義な懇談会だったと思っております。感謝いたします。

【木村座長】
 ありがとうございました。
 では、経団連の工藤委員、お願いします。

【工藤(高)委員】
 前回と前々回と二度ほど欠席いたしまして、一番重要な報告書の案をまとめる段階に参画できなくて非常に残念で、ODAの観点からもっと申し上げたいなと思ったんですけど、議事録を拝見しますと、渡辺先生や荒木さんがその視点から発言していただいたので、安心しました。報告書もよくできていると思います。
 私も、文部科学省のこういう会合に出るのは初めてでございまして、色々勉強させて頂きました。折角の機会ですので、この懇談会を通じて感じたことを申し上げたいと思います。
 一つは、非常に勉強になった点ということですが、それは、今日のグローバリゼーションの中で日本の大学がいかにドメスティックかということが、よくわかりました。ある大学の教授が、どこかの国に国際的な貢献をするために行くというと、様々な障害があるという。送り出す制度が確立してないというんですね。皆さんボランタリーでやっているという。国際化の流れの中で、大学というのは何と遅れていると思いました。これから、少子化の流れの中で、大学の定員割れも出てきて、いわゆる優勝劣敗が起こる。絶対に大学もみずから何か特色を出していかなければいけない時期に、国際化していないということを、非常に残念に思いました。
 もう一つ感じたことは、以前の会合で、文科省の方がJICA(ジャイカ)の専門家派遣でアフガンに行ったという話がございました。そのときに、やはりJICA(ジャイカ)は、監督官庁の外務省とかJICA(ジャイカ)の専門家に対しては、現地の所長も非常に面倒見がいいけれども、外務省以外の省とか民間の専門家に対してはケアが十分ではないのではないだろうかと、私は思いました。今後知のODAという形で関係者の方々がJICA(ジャイカ)の専門家で行く段階においては、大使館やJICA(ジャイカ)の現地がケアしていただきたい。そうでないと目的が半減するんじゃないかというふうに思いました。
 さらにつけ加えて一、二申し上げたいのは、今、日系ブラジル人はじめ多くの国の方々が、愛知、岐阜などに住んでいますけれども、自治体では解決できないような非常に大きな問題がある。それは、彼らの子供が日本語ができないということなんですね。日本語ができないから小学校、中学校に行かない。ブラブラしている。彼ら自身もコミュニティに溶け込めないという。これから、少子高齢化に伴い、日本も海外から様々な労働者が入ってくる。経済連携協定EPAがらみでフィリピンなどからも看護士が入ってきますけど、そういった人達に対する日本語教育が重要になると思います。従って、日本語を教える資格に関し、いろいろな人が日本語を教えられるようなシステムというのを、考えていくべきだというのが1つ。
 もう一つは、大学じゃないですけど、中学校の英語の先生方の教育の問題です。例えばアメリカとかイギリスから帰ってきた帰国子女の子供が英語が日本に帰ってから下手になると言うんですね。なぜかというと、発音がうますぎるから先生が嫌がるとか。つまり、日本の中学校の英語教師の質が問題なんですね。だから先生を海外に留学させる。それも家族と一緒に海外生活を経験させるというようなことも考えていただければと思います。そうすれば教師自身の英語のレベルアップにつながり、帰国子女の気持ちもわかるし、帰国子女の英語力をその後にどんどん持続するようになるのではないかと思います。
 以上、雑駁ですけれども、最後の機会なので申し上げました。改めて、本懇談会に参加させて頂き、ありがとうございました。

【木村座長】
 ありがとうございました。
 では、工藤智規委員、お願いします。

【工藤(智)委員】
 ここまで報告書をまとめられて、事務局の方々に敬意を表します。私からは2点申し上げたいと思います。一つは、この国際協力、教育分野だけでなくて、今や世界中でいろいろな活躍をしていらっしゃるわけですけど、多くの第一線の方々には大変な善意をあてにしてやっていると思うんですね。すると、そういう方々の熱意とご努力に報いるのに、戦争用語じゃないですけど、後方支援を欠いてはいけないので、今、世界中に散らばって活躍している一線の方々への後方支援、人、物、金だけではなくて情報も大事でございますが、それをこの報告書でも謳っておりますように、まさに皆で協力していかなければいけないということで、限られた財政の枠組みで大変だと思いますが、せっかくこういう機会に、文部科学省だけではなくて外務省、JICA(ジャイカ)、JBIC(ジェイビック)関係の方々、同じテーブルについていらっしゃるので、この後も引き続いて、アンダーテーブルも含めて協力を密にしながら皆さんで頑張っていただきたいと、ご活躍を期待しております。
 もう一つは、この報告書の10ページの上に指摘してありますけれども、この懇談会は大臣官房国際課を中心にやっていらっしゃるわけですが、特に今回のレポートは大学人の活躍を期待するような提言になっております。特に大学は、今お話がありましたように、どうしても内向きというだけではなくて、研究中心主義という気風があります。研究は確かに大事なんですけど、こういう国際協力が単なる雑用ではなくて、ノーブリスオブリージェといいますか、これだけ日本が国力をつけた中で、政府だけではなくて、大学人も企業も、いろいろな立場の方々が何らかの貢献をするというのが、ある意味で責務なんだというのは、大学人にも認識してもらう必要があると思うんですね。それをこの10ページに謳っておりますけれども、そういう大学への啓発と取り組みの支援について、高等局にもよく相談いただいて、学長会議とかいろいろな機会に、これは国際課がどうも勝手にやっているらしいというのではなくて、文部科学省として大学へのメッセージ、こうなんだよということが伝わるように、ご努力をお願いしたいと思います。

【木村座長】
 ありがとうございました。
 では、廣里委員、お願いします。

【廣里委員】
 私は手短な感想としまして、個人的には、このような政策レベル、制度構築にかかわる懇談会に、一番若いかどうかちょっとわからないんですが、比較的若い委員として参加させていただきまして、非常に感謝しております。若輩者なので、せめてこの懇談会の出席に関しては皆勤を目指しておりましたところ、おかげさまで、それが達成できました。きょうは少し遅刻しましたが。
 提言に関しては、「大学発 知のODA」ということで、私は、大学に身を置いている一大学人、それから大学組織に属する者として、この懇談会提言の、今よく言われている言葉で「実質化」、つまり実効性を持たせるということで、改めて邁進していかなくてはいけないと思った次第です。先ほど工藤委員、それから同じく工藤委員からもご指摘があったと思うんですが、大学がほんとうに保守的ということで、このような政策レベルの提言を大学本部が明確にメッセージとして受け止められるかどうかが、直近のステップとしては重要と思います。私もこういう懇談会に参加しているということは、研究科レベルでは認知されているんですが、大学本部ということでは、国際協力推進室などが全国的にも幾つか出来ていると思います。これからも出来ていくと思いますが、そういったところをターゲットに、こういった報告書のメッセージが明確に伝わるような機会とか仕組みがありますと、今後の取り組みにとって非常に重要なステップかなと思います。どうもありがとうございました。

【木村座長】
 ありがとうございました。
 では、弓削委員、どうぞ。

【弓削委員】
 懇談会に参加させていただいて、どうもありがとうございました。先ほど、グローバルな視点ということが出ました。私は、国連機関の職員として日本に駐在しているわけですが、本部から、またほかの国際機関からの日本についての関心は高いですね。第二の経済大国、そしてODA大国第二である日本がどういうことをするのか、何を考えて、どういう政策で、どういう戦略でODAを進めていくのかということは、国際社会の非常に大きな関心事であり、また世界が注目しているということは、この数年間感じています。日本にいる日本人の方が感じているよりも、外からの関心は高く、注目されているということではないかと思います。それに関しては、私も機会があるごとに、日本はこういうふうに考えていますという説明はしています。
 日本は50年以上のODAの経験がありますので、このODAのリーダーシップを、額として第一位だった時代だけではなく、第二であっても、内容でも額でも勝負するということで、世界のリーダーとして発信をして、ODA事業を積極的に続けていくという、この両方が非常に重要だと思います。先ほど副大臣のほうからもありましたように、日本に対する期待は、途上国の期待だけでなく、国際社会、ほかの先進国の期待でもあるということは、日本の大学や教育機関ももっと認識を高めてもいいのではないかと感じております。
 先ほどオールジャパンという話も出ましたが、日本からの発信に関しては、もちろんODAを扱っている外務省、文部科学省やほかの省庁、それから実施機関であるJBIC(ジェイビック)、JICA(ジャイカ)などが重要であることは当然です。研究、分析、教育などで重要な役割を果たしている大学と、実践の場にいる政府機関がより緊密な連携をとることによって、分析や研究に裏づけられたよりよい発信を日本は国際社会にできると思います。提言を力強く世界に発信できれば日本の存在感も高まるし、開発分野での日本のリーダーシップもより高まると思います。今回のこの報告書が英語に訳されて、日本の文部科学省とODAに関連する方々が「大学発 知のODA」知的国際貢献に向けての考えを国際社会に発信するということが重要だと思いますので、まずこの報告書から発信を始めていただいて、そして発信力を強めて、どんどん発信していくということで、世界の期待に沿えるということだと思います。
 それからもう一つ、先ほど副大臣のほうからも、南南協力の重要性についてお話がありましたが、私もほんとうにこれは重要だと思います。南南協力に関しては、日本は大きな役割を既に果たしておりますし、まだまだ拡大の余地があると思います。アジアの国々の間での南南協力の促進は重要です。日本は、2008年はG8のホスト国であり、同じ年にはアフリカ開発会議(TICAD 4)のホスト国でもあるわけですが、それに向けて、アジア・アフリカ協力の拡大という意味でも、教育分野やほかのODAの分野で、日本がリーダーシップをとって南南協力を促進することが期待されています。TICADの共催機関である国連開発計画(UNDP)もお手伝いさせていただきたいと思っていますし、南南協力もどんどん進めていくということも重要だと思います。コメントを述べさせていただきました。

【木村座長】
 ありがとうございました。
 では、渡辺委員。

【渡辺委員】
 初めのころは、ちょっと欠席が多かったんですけれども、後半、かなりまじめに出席させていただきまして、何とか義務は果たしたんじゃないかと思います。欠席しても、大山さんをはじめ、わざわざ大学に来ていただき、非常にコンパクトな説明を受けまして、大変誠実な対応をしてくださって感謝しております。
 今回の報告書、大変コンシステントで力強いメッセージが出されていると思います。「大学発 知のODA」ですか、内容がとてもよく発信されているタイトルだと思います。若干のコメントもあります。一般的方向は力強く述べられているのですが、いかに、どのような方法でこの方向性を具体的に生かすかというところまで、まだ書き込まれていない。これは本会議の中でも申し上げたわけでありますが、いろいろ制約もあったんだろうと思うんですね。しかし、第1回目の報告書でこういう方向を出したわけですから、続く2弾、3弾で、今度はより具体性を持った報告書にしていただければありがたいと思います。これが一つのコメントです。
 もう一つのコメント、これも会議の中で、私、申し上げたことですけれども、大学といいますか、日本の教育界の国際協力という観点から見ると、これは全体の中のほんの一部を扱っているのに過ぎないということを、お互い自覚しておく必要があるだろうと思うんですね。今、弓削さんのほうからも話が出ましたけれども、研究についてはよくわかりますが、じゃ教育のほうはどうだという問題がありますよね。特に国内の教育、つまり開発教育人材を恒常的に生み出していく仕組みを日本の国内につくっていかないと、日本の今後のODAは、世界の中で生き残っていくことがほんとうに難しくなる、こういう問題があると思うんですね。
 これは大学だけではなくて、小中高を含めた開発教育の問題であるとか、そういった非常に大きな問題が背後に広がっております。でありますから、こういう文科省の会議もアドホックではなくて、コンスタントに続いていって、何年後かに日本の教育面における国際協力の全体系が明らかになるような、例えば5年ぐらいのスパンで、そういうふうな努力を積み重ねていくことができれば大変いいのではないかという感想を持ったわけです。ありがとうございました。

【木村座長】
 では、末森さん、オブザーバーの方もご発言をお願いいたします。

【末森部長(JICA(ジャイカ))】
 JICA(ジャイカ)も、今回のこの委員会にオブザーバーとして最初から最後まで出させていただいて、ありがとうございました。いろいろご意見を賜って、今回、教育協力の基本的な方向性というのも示されまして、JICA(ジャイカ)としましても、これらも踏まえ、取り組んでいきたいと考えます。先ほど工藤委員からありました、民間の援助プレイヤーに対するケアが少し足りないんじゃないかということについて、専門家、それからボランティアとして在外に行っておられる方が毎年1万人以上おられまして、日本においでいただく方も2万人近くおられます。具体的にはちょっとわからないわけですけど、おそらくおっしゃるようなこともあるかと思います。それも含めて、今回の具体的な方策の中で、我々も反省もしつつ、改善、改革をしていきたいと思います。
 それと、高等教育、科学技術分野につきましても、JICA(ジャイカ)の幹部がアフリカも含め途上国に出張した際、日本の科学技術分野の協力への期待が非常に高いとい、また、各国とも、科学技術立国を目指したいということで、日本の協力への期待が表明されています。科学技術、高等教育もいろいろな分野がありますけれども、理工学系も含めて、日本が特色とする分野での、大学の参加というのが極めて重要ではないかと思います。高等教育、科学技術分野に対する大学の参画、貢献が極めて重要です。基礎教育協力につきましても、現在、大学と連携していますが、そういう面で、いろいろお願いしていきたいと思います。
 初中等でも、この間JICA(ジャイカ)が主催しましたシンポジウム、文科省、それから外務省にも後援いただきましたが、科学技術のベースになる理数科教育の分野も極めて重要です。日本が得意とする分野をいかに特定して、特色の生きる協力をするかという意味では、理数科の分野もこれから、文科省、外務省とも相談しながら進めていく必要があるのではないかと思います。また、大学との連携を図りながらやっていきたいと思います。
 それから副大臣からございました、我々一生懸命増やしていこうというODAも、JICA(ジャイカ)のほうもピークから比べまして15パーセントぐらい減っております。我々自身も具体的なプロジェクトを国民に知らせるということが極めて重要でありますけれども、なかなかそこの部分がうまくいっていません。ASEAN(アセアン)10カ国の19大学を対象に、日本の11の大学と連携して、工学系高等教育ネットワークという協力をやっておりますけれども、日本の大学の参加が不可欠です。こういう案件についても、まずPRし、知っていただいき、さらにサポートいただくことが重要だと感じました。ありがとうございました。

【木村座長】
 では、橋本さん。

【橋本部長(JBIC(ジェイビック))】
 国際協力銀行開発セクター部長の橋本でございます。この懇談会にオブザーバーとして出席させていただきまして、どうもありがとうございました。
 私どもがODAの中で担当しております円借款におきましても、毎年100億円から200億円ぐらいの教育セクターに対する支援をやっております。基礎教育分野の案件もございますが、大半は高等教育即ち開発途上国の大学教育に対する支援です。その関係で、最近とみに、日本の大学と連携をするケースが増えております。それから、教育セクターだけではなく、円借款の大半を占めるインフラ支援の分野でも、大学の知恵を求めることが、最近増えております。そのために、私どもの組織の中に、プロジェクト開発部というプロジェクトの形成を担当している部がございますけれども、その中に大学との連携を専門に担当する連携班を設けて、大学との連携に努めているところであります。
 それとの関係で、私ども、仕事のやり方として、委託ベースで大学にいろいろ連携をお願いするということをかなりの規模でやっているんですけれども、その際に、先ほどの話の中にもありましたように、先生の善意というか、個人的なご努力でやっていただく、対応していただくということに、なかなか限界がございまして、そういったことを踏まえますと、今回、この提言の中で、大学サイドでプロジェクト・コーディネーターというような方を育成されるとか、それから大学の中の教員組織とか事務組織が組織的に対応できるように強化されるというようなことをうたっていただいておりますことは、それらが実現しますと、私どもと大学との連携促進のためにも、非常にやりやすくなるなという具合に感じております。
 それから、具体的な細かいことで恐縮ですが、実証実験的なものに、文科省さんのほうで予算をとって大学を支援していただくということも、実は、私どもにとりましても非常に助かるなと思っております。と申しますのは、まずそういう実証実験的なものを通じて、事前に大学の皆さんに途上国の土地勘を掴んでいただいていると、いろいろ開発プロジェクトのほうに参画していただく際に、大学にも入ってきていただきやすいということで、これも非常に、私どもの仕事を進めていく上で助けになると思っております。
 それから、この報告書を見ましても、私どものほうとしてもやっていきたいということがございまして、引き続き連携班のほうで、連携マニュアルの整備等大学に対する事務面での支援は強化していきたいと思っております。
 それから、国際協力人材の育成ということで、援助機関のほうでインターンを受け入れてはどうかというような提言をいただいております。実は、2年前から、私ども毎年10名ぐらい受け入れているんですけれども、これも引き続きやっていきたいと思います。それから、まさに知的コミュニティの中に我々も入っていくということを、今後とも積極的に進めていきたいと思っております。よろしくお願いいたします。

【木村座長】
 ありがとうございました。
 では、最後に小野さん、お願いします。

【小野企画官】
 外務省の小野でございます。本日はありがとうございました。言うまでもなく、国づくりは人づくりから、ということで、教育はODAの重要分野の一つとして、従来からさまざまな協力を実施してきております。
 先ほど馳副大臣よりご指摘がございましたように、国際的にも、EFAやミレニアム開発目標の実現といった形で、教育協力の重要性への認識が高まっております。例えば、先般のサンクトペテルスブルグでのG8のサミットにおきましても、教育は三つの主要議題の一つになりました。また、発出された文書では、日本がこれまでやってきた取組が支持されて盛り込まれております。具体的には、ハード面とソフト面を組み合わせて協力を実施しているといったことですとか、基礎教育と高等教育・職業教育の双方を重点的にやるといったこと、学校教育だけではなく、ノンフォーマル教育の重要性、また途上国のニーズに合致した、分野横断的な支援を実施していく必要性といったようなことが盛り込まれております。更に、ただいまご紹介がありましたように、理数科教育の強化や人材育成分野での南南協力を支援していくことも記載されています。これは、こうした分野での我が国の取組が各国から強く支持され、評価されているということでございまして、我々としても、引き続き、これまでの経験に基づいて、また今回頂きましたさまざまなご提言等も検討させていただきながら、より質の高いODAを目指していきたいと思っております。
 他方、過去9年間でODA予算は35パーセントも減っているという厳しい現実がございます。我々としても、毎年、今年こそ、こうした流れを反転させようということで頑張っておりますが、その前段階として、我々としてもODA予算をより効果的・効率的に活用するため、今までのやり方を見直し、足りないところは改めていくという改革姿勢を示していくことが重要です。実際に、ODAの戦略レベルでは4月に「海外経済協力会議」が設置され、実施部門では、将来的にJICA(ジャイカ)にJBIC(ジェイビック)の円借款業務部分が統合されていくといった動きがございます。
 そして、企画・立案を担う外務省と致しましても、8月1日に、過去40年近く看板を掲げてきた経済協力局と、国際機関を通じた多国間援助を所管してきた国際社会協力部とを統合し、国際協力局を立ち上げました。先ほどもUNICEFとの協力についてご指摘いただきましたが、今後、国際機関と二国間援助との連携を一層深めていきたいと考えています。
 今回、オブザーバーとして参加させていただき、我々外務省と致しましても大変参考になりました。ODAをきちんと実施していく上では、皆様方のさまざまなご示唆をいただき、ご指導を仰ぎながら、戦略的かつ効果的なODAを目指して引き続き努力していきたいと思っております。どうぞ今後とも引き続きご指導とご協力、そしてご支援を賜れれば幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

【木村座長】
 ありがとうございました。私は、東京工業大学を退職してから10年になりますが、考えてみますと、東工大時代随分JICA(ジャイカ)のプロジェクトにかかわってきました。地震工学センターでは、若い助教授のときから15年程講義をやりましたし、インドネシアの高速道路の案件ですとか、タイもそうですが、個人としてJICA(ジャイカ)のプロジェクトに相当参画致しました。そのたびに、東工大からは個人としては随分多くの方がJICA(ジャイカ)の専門家として出ているんですが、大学総体として、その存在がはっきりしないということを感じていました。そういうことで、今回、私がこの「大学発」ということにこだわったのですが、「大学発 知のODA」というタイトルは非常によかったのではないかと思っています。経団連の工藤委員はウルトラドメスティックだとおっしゃいましたが、日本の大学も最近は随分変わっておりますので、知は相当蓄積されつつあると思います。ですから、ぜひそういうものをODAに使うということは、非常に日本としても大事なことじゃないでしょうか。私も議論を大いに楽しませていただきました。ありがとうございました。
 副大臣、何か一言、ご感想がありましたらお願いしたいと思います。

【馳文部科学副大臣】
 先ほど小野さんがおっしゃったように、マルチとバイの組み合わせは大事だと思いますし、よく使う戦略の目的は、やはり国益にいかにかなうかということ、そして、国際会議の中においても、我が国がリードすべきときに、いろいろな提案をしたときに、特定の国とか、あるいは当然、我が国が排除されない図式をいかにつくり上げるかということが、我が国の国益にかなった議論のリードの仕方になると思うんですね。やはり、そういった中でのマルチとバイの組み合わせ、そしていかに戦略を持つか、その戦略というのは我が国の国益にかなうということ。我が国の国益にかなうということが、世界の世界益にかなうということは、特定の案件に関してでも、ある特定の国が極端に排除されないような方向性の持っていき方というのが、極めて重要な戦略になっていくと思います。
 そんな中で、国に対するアピールとかをしながら、予算編成に関して、財務省の主計官が、ほんとうにターゲットにしてくるのは、やはり国民の理解はまだまだ十分でないのかなというところもあると思います。とは言いつつ、シニアも含めて、青年海外協力隊などへの期待というものは大きいですし、団塊の世代も大きく着目しておりますので、そういうところに重点的な予算配分をしていくような、めり張りのきいた対応をお願いしたいなと、改めて感想を申し上げまして、私も次の予定がありますので、失礼させていただきます。ありがとうございました。

【木村座長】
 どうもありがとうございました。
 それでは、大体予定の時刻になりましたので、以上で終わりたいと思います。

‐了‐

お問合せ先

大臣官房国際課国際協力政策室

(大臣官房国際課国際協力政策室)